転生したら狩人×狩人   作:楯樰

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別に私が太っている訳ではなく、貴女のサイズが大きいんです!

ビスケットの部屋にお母さんと一緒に泊まる事になった私はお風呂から出て、ウェーブのかかった髪から滴る水滴をタオルで拭き取る。

そして次にドライヤーで髪痛めないようを乾かしながら地肌に残っている水分を拭き取る。

昔……前世を思い返せば碌にドライヤーを使った記憶が無い……うん、というかちゃんと髪を拭いた憶えも無いような気がする。

……今ではちゃんと髪の手入れをしないとお母さんに『将来禿げるわよ…』と脅されるので馴れた作業だけど…。

 

そして髪が乾いた後はポケットマネーで買った結構高めの化粧水を少し手にとって顔に塗る。

私は元が良いので化粧はしないんだけど、コレもまたお母さんに『化粧水だけはしときなさい』と言われるのでやっている。

お母さんも前世は男だったはずなんだけど、なんでこんな女子力高いんだろ。

……疑問に思うと恐い目に遭いそうなのでこの辺で止めとこう。

 

部屋に備え付けの回転椅子に座って、ちょっと今日あった出来事を思い返す。

 

――ネテロ会長と三日後に此処…天空闘技場200階台の戦闘フロアで手合せをする約束をした。

私とお父さんが、だ。

……真に遺憾でござる。

何で私なんだよ! 私とやるくらいならお母さんとやって下さい、お願いします!(土下座

 

ちなみにフロアが借りれたのは『元フロアマスターの私とハンター協会会長のエキシビジョンマッチを行う』と天空闘技場に申請したためである。

そして『観客を入れていいのなら』ということでOKがでた。

また、既に観戦のためのチケット、公式賭博が開催されている。

――余談だけれども倍率は私が200倍、ネテロ会長が1.1倍。

おまけに予定変更で私が戦った後、ギャラリーが居なくなってお父さんが戦うことに……。

なんだかお父さんと会長が戦う事がメインなのに、私とネテロ会長の試合がメイン行事になっている気がする。

 

……はぁ。

 

――で、私としてはしたくなかった約束の後、下の双子二人に事の顛末を話すと、二人は『あの爺さん何者??』と疑問に思っていたようなので、ハンター協会の会長である事を教えた。

二人は、自分達をスカウトしてきた人物がまさかハンター協会会長その人だなんて想像出来ていたはずもなくかなり驚き、また『ハンターに一歩近づけた』と喜んでもいた。

 

少し話は変わるけど、私は原作と同じ第287期のハンター試験を受けようと思っている。

ただそれまでには45年近い期間がある。

そしてもし弟達がハンター試験に合格したときには『どうして試験受けないの』的な事を言われるに違いない。なにせハンター試験と両親による念の修行では、念の修行の方があきらかに難易度が高い。

普通の念の修行でさえハンター試験の裏試験と評されるくらいだから当然の事だろうけどね。

……そして三日後に迫るネテロ会長との手合せでは済まなくなってきた試合ではお父さんが十二支ん並みに注目される事は勿論、私が勝ち負け関係なく、また自惚れでもなく会長自身にハンターとなる事を薦められる可能性が高い。

 

そうなればこれから先45年もの間、肉親である双子とハンター協会のトップからの追及から逃げ続けなければいけない……そして逃げ続ける事は多分私には無理。

 

「はぁ……」

 

……あくまで全部、可能性があるというだけだけど。

無駄な気苦労かなぁ……。

 

「出たわよ~ってあら? どうしたのカトリア、ため息なんてついちゃって…」

「……いや、ハンター試験受けるの早めるべきかなって考えててね。……ところでビスケは?」

「うんー? ぐったりしてたからもう少ししたら出てくるんじゃない?」

「……ぐったりしてるの、お母さんのせいでしょ?」

「テヘッ☆」

「くっ……無駄に可愛いな…」

「…無駄は余計よ♪」

 

私がイスに座ってぐるぐると回転しながら思考に耽っていると、ビスケが先にお風呂に入っていた所へ突撃して一緒に入っていたお母さんが出てきた。

 

長い髪を頭に巻いたタオルの中に入れて胸元でタオルを巻いているスタイルで。

胸がでかいので下半身がタオルの丈ぎりぎりで隠れている。

狙っているやってるのか実に艶かしい。別に慣れたからムラッと来たりしないけど。

……私も下着姿だから似たようなものだし。

 

「……それで何でハンター試験早めに受けようなんて考えてるの?」

持ってきた旅行鞄から下着を選びながらお母さんは私に聞いてくる。

 

「うん。ビスケ達二人が合格したらきっと私に『何でならないの?』とか追及してきそうだし、三日後のネテロ会長との試合が終わったら絶対勧誘されそうだし……」

「なるほどねぇ……私はもう四十だし、念が使えるただの専業主婦だし、今の生活満足してるからなんとも言えないけどねぇ~…」

お母さんは選んだ下着をつけながら……って、

「お母さん、それ私の…」

――何がとは言わないけど。

「あ、ホント。どおりでフックがかからなかった訳ね。ちょっとサイズも小さいし……」

というか貴女のが大きいんですぅー!

私のより痩せてて二周りほどサイズ大きいのにフックが掛かるわけがない。

……確信犯め。

ちなみに私はG。…………何がとは言わないけども!

 

お母さんは“まだまだねぇー”と言いながら自分のを選びなおしてつけている。

「うん、とりあえず私が言える事は……」

「……ことは?」

「こまけぇことは気にすんな!」

「……はい?」

サムズアップしてニコリと笑うお母さん。

私いま『何言ってんだコイツ』みたいな顔になってる気がする。

「うっ……いやそんな顔しなくても……結構本気で言ってるのよ、私。――今気にしてもわからないこと、気にしだしたら限りがないじゃないの……その時その時考えていけばいいと思うわよ?」

……確かに。

「そっか。そうだよね、その時考えればいいか…」

「そう。いま考えても答えはでないし、ね?」

 

うん、なんだかすっきりした。

お母さんがお母さんでよかった……ちょっと尊敬。

「ありがとう、レミリアお母さん」

「……どういたしまして」

 

 

 

「……ところでビスケ出てくるの遅くない?」

「そうねー……って、ちょっとやばいかも!!」

 

この後、浴槽の中で気絶していたビスケは無事救出された。

本人曰く、『カラダ中揉まれた。もうお嫁にいけない…ぐすん』とのこと。

 

――まったく、お母さんって人は……。


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