思いつき短編集   作:御結びの素

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ハイスクールD×D と メガテン
HSD×DS(ハイスクール・デジタル・デビル・ストーリー)


 

 

 只野仁成は、高校三年生である。

 只野仁成は、老け顔の高校生である。

 クラスメイト達から、「中年」、「おっさん」、「渋いぞコノ」、などと言われていても高校生である。

 只野の通う私立駒王学園には、オープンスケベなことで有名な2年生も存在するが、只野はムッツリである。どちらかと言えばムッツリである。

 つまり、結局のところはスケベなのである。

 

 そして、只野(ただの)仁成(ひとなり)は、悪魔召喚士(デビル・サマナー)である。

 

「ようこそ、邪教の館へ」

 

 スケベな只野は、ムッツリとした表情を崩さぬまま、街のいずこかにある邪教の館へと訪れていた。只野を出迎えたのは、青っぽい服装をしたこれまたエロそうなおっさんだ。暗い室内なのに、なぜかかけているサングラスの奥には、いやらしい瞳が隠されているに違いない。

 

「例の件で来た」

 

 例の件。

 只野はそれを実現させるため、多大な努力を続けて来た。

 悪魔を召喚し、それを使役する力を得るために、常人であれば気が狂いそうな修練を踏破したのだ。

 全ては、そう、この時のために。

 

「承知しておるとも。すでに準備は万端、あとはお主の用意して来た生贄と、お主自身の内包するMAG次第」

 

 只野は、人間の女性にモテたことはない。努力をしてはみたが、玉砕することばかり。

 ならば、悪魔だ。エロい悪魔だ。

 ムッツリと口数の少ない只野。口の回らない只野。おっさん顔の只野。

 そんな只野相手でも、むしろ向こうから積極的に狙って来てくれるような、そんな理想の女性を呼び出すのだ。

 

「リリム」

 

 かつての偉大な悪魔召喚士が残したと言う悪魔全書。

 そこに記された無数の悪魔の中から、只野はその一体の悪魔を選んだ。

 その性質、その容姿。それでいてさほど強力ではない点。

 今の只野でも制御することが可能で、それでいて目的には十分すぎる。

 完璧な悪魔だ。

 

「待ちきれん、といった様子じゃな。よかろう、しばし待て」

 

 館の主が、悪魔合体の準備を始める。合体とは言うものの、その実態は複数の悪魔を生贄に捧げ、より強力な悪魔を呼び出し支配するといったものだ。

 生贄召喚とでも呼ぶ方が、正しいのかもしれない。

 今回の生贄たちが、召喚用の筒の中で叫び声を上げる。これから始まる邪悪な儀式の結果、自分たちがどうなるのかを理解しているが故だ。

 生贄に捧げられたものの魂と肉体は、悪魔全書へと吸収される。

 そして、その対価として悪魔全書は捧げられた生贄に見合う悪魔を呼び出してくれるのだ。

 悪魔召喚皇の遺物。その呪力、おそるべし。

 

「始めるぞ」

 

 館の主の声と共に、筒の中に薬液が満ちて行く。悪魔すら容易く溶解するその薬液の製法は、館の主だけが知っている。

 薬液が筒を満たした。そこにはもう、生贄たちの姿はない。

 始まるのだ。召喚が。

 

「悪魔全書よ。この世の全ての悪魔を支配する、大いなるものよ。我は求め、訴える――」

 

 館の主に続く形で、只野もまた呪文を唱える。

 筒から抽出された魔力が、悪魔全書へと吸い込まれ、黒い光を放つ。

 黒い光を放つ。黒い光を放つ。黒い光を放つ。黒い光を放つ! 黒い光を放つ!!

 

「むむむ! いかん! 事故じゃ!」

 

 空間が震えている。目に映る光景の明暗が反転し、轟音が只野の鼓膜を揺さぶった。

 

 邪教の館の中に、黒煙が立ち込める。漂って来る香りは、麝香のものだろうか。

 

「うーっす! 呼ばれて飛び出てリリンちゃん参上! 今後ともよろちく」

 

 悪魔合体に事故は付き物。完全に防ぐことは不可能だと聞いてはいた。

 しかし、これは無い。

 美少女悪魔との、あんなことやこんなことに満ちた生活を求めていた只野にとって、この悪魔はあまりにもひどい存在だった。

 

「ふーっむ……。似て非なる者を呼び出してしまったか。しかし、これはなんとも強力な悪魔。本来であればお主の従えることの出来るような存在ではない。――おめでとう、と言うべきなのだろうな」

 

 只野の目的を知っていた館の主は、呼び出された存在に気を遣って、おめでとうと言った。ただ、そこにある憐みの響きは隠せていない。

 

「なぜ、こんなおっさんが……」

 

 つらく厳しい修行。爪に火を点す用にして貯めた資金。命がけの戦いで捕獲した生贄用の悪魔。

 それらは、只野の求めたエロい女の子ではなく、ふざけた態度の偉そうなおっさんになってしまったのだ。

 只野の膝がガツリと床を打つ。オメガドライブである。

 

「おいおい、そんなに嫌がられると、おいちゃん泣いちゃうよ。ヨヨヨヨヨ……」

 

 ウザイ。

 ウザイが強い。このおっさん悪魔、恐ろしく強大な魔力を内包している。

 事故でこんな強い悪魔が得られるなんて、なんという幸運。しかし、おっさんである。

 おっさんである。ウザイおっさんのクセに、顔が良いのが腹が立つ。

 

「それでも、リリムが良かった……」

「まあ、わからんでもないがね。まあ、楽しんでいこうや。マイ・マスター」

 

 只野が呼んでしまった悪魔の名は、リリン。本名はもっと長いらしいが、面倒なのでどうでも良い。

 おっさんの名前なので、どうでも良い。

 とりあえず、強い悪魔ではあるので、こいつを使って稼ぎなおそう。そうしよう。

 リリムでは失敗してしまったので、今度はゴモリーでも狙ってみよう。そうしよう。

 

「そうそう、その調子。うひゃひゃひゃひゃ……応援してるよーん。今度は上手く行くといいねーって、な」

 

 新たなる決意の元、只野の冒険が始まった。

 

 

 

 

「出でよゴモリー!」

 

 何故か紅髪の美形男が出て来て、リリンと仲良く口喧嘩している。

 只野が確認してみると、紅髪の男性悪魔は、サーゼクス・グレモリーっという名前だったことがあるらしい。

 美人の妹がいるとも言っていた。自慢げに。

 どうせなら、そっちが来てくれたら良かったのに、と只野はまた「Ω」の姿になってしまう。  

 

「いや、ここまで落ち込まれると、困るな……」

「俺の時もこんなだったねぇー、ひゃーひゃっひゃっひゃっひゃっ」

 

 

 きっと、美少女を求める煩悩が、求める者がやってくることを邪魔しているのに違いない。

 そう考えた只野は、方向性を変えてみることにした。

 金色のゼリーボディが可愛らしく見えなくもない、偉霊アルビオン。ザ・ドラゴン、といった雰囲気の竜王ペンドラゴン。こういった感じの見た目まったく女の子ではない悪魔こそ、実は美少女なのかもしれない。

 リリムがおっさんで、ゴモリーがイケメンだったのだから、ありえなくもない話だ。

 

 次の目標は、アルビオンとペンドラゴン。

 

 ウザイおっさんと、イケメンの兄ちゃんを連れて、只野の冒険はまだまだ続く。

 




別の作品で、リリムの話を考えていたら思いついてしまった。

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