ある意味でまずいシーンもあるかも。
取りあえず後はエピローグ系かな。
IS学園
「雲が晴れていく・・・・・・」
簪はさっきまで暗雲で暗闇になっていた青空を見ながら唖然とする。それは鈴や千冬たちも同じ反応だった。
「・・・・・・・どうやら、彼らはルーチェモンを倒したようだな。」
デュークモンは空を見上げながら言う。
「・・・・・と言う事はセシリアたちの世界は救われたってことだよね!」
セシリアの隣でピヨモンが言う。
「そ・・・そう言う事になりますわね。」
「やった~!鈴たちの世界は救われたんだ~!」
鈴の頭の上でテリアモンはぐったりしながらも嬉しそうに言う。そんな中マドカは空を眺める。
「お父さん・・・・・お母さん・・・・・お兄ちゃんがやったんだよ。お兄ちゃんが。」
隣では千冬と束も空を眺めている。
「あんな出来事が嘘だと思えるぐらい晴れてしまったな。」
「まあね、でも夢ではないのは確かだよ。」
「しかし、ルーチェモンを倒したのはいいがこれからデジモンたちはどうするんだ束?」
「無論、デジタルワールドが現段階でデジモンたちが住めない以上、こっちで暮らすことになるだろうね。でも、人間との共存はかなりの道のりになるよ。ISが兵器から本来の目的である宇宙開発に使われるようになるまでと同じようにね。」
束は少し皮肉そうに言う。
「ルーチェモンを倒した段階ではデジタルワールドは元の姿には戻れないのか?」
「そんなラスボスを倒したら平和になりましたなんてゲームみたいなことにはならないよ。それにイグドラシルがいない以上デジタルワールドの修復はできないし、当然、デジモンの転生システムも働かないよ。」
「そうか・・・・・・ん?束、今なんて・・・・」
「あっ!一夏よ!」
「本当だ!!」
束と千冬の会話は、鈴たちの叫び声で途絶える。二人も空の方を見るとスサノオモンが徐々にこっちに向かっているのに気付いた。
「さて、まずは世界を救ってくれたいっくんたちの最後の仕事を手伝わないとね。」
束はそう言うとクロエたちと共にラボの方へと向かって行く。
「最後の仕事?どういうことだ束?」
「言った通りのことだよ。」
二人がそう言っている間にもスサノオモンはゆっくりと一同の前に着陸する。
「兄貴!」
「箒!」
ビクトリーグレイモンとマグナアルフォースブイドラモンはアグモンとブイモンに退化し、スサノオモンの方へと駆け寄る。
「兄貴!勝ったんだよな!ルーチェモンに。」
「・・・・あぁ。」
「やった!流石兄貴だ!」
『私はどうなんだ?』
「あっ・・・・・ほ、箒姉ちゃんもすごいぜ!?(汗)。本当に兄貴と合体しちまうなんてさ。」
『本当に褒めているのか?』
「お、俺は正直者だから本当だよ!!」
「『ハッハハハハハハ。』」
ブイモンの反応を見てスサノオモンは笑った。それに続いて見ていた鈴たちも吹き出しながら笑う。
「わ、笑うことはないじゃないか!!」
「でも、本当にあれはまずかったよ。」
「うっ!!」
アグモンにまで言われてしまいブイモンは何も言えなくなってしまう。その光景を見た後スサノオモンは、何をしようというのかデュークモンの方へと行く。
「デュークモン、アンタに聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「イグドラシルの居場所を教えてほしい。」
「イグドラシルの!?しかし、イグドラシルは既にルーチェモンと共に・・・・」
デュークモンが言いかけたときスサノオモンは光る球体を見せる。
「イグドラシルならこの通り無事だ。最も意識はまだ目覚めていないがこのコアを戻せばデジタルワールドも本来の機能を取り戻せるかもしれない。」
「確かに、だが長い間ルーチェモンに取り込まれていたイグドラシルが果たして完全に復活できるのか・・・・」
「でも、可能性はゼロじゃない。それならやる価値は十分あるはずだ。」
「・・・・・そうだな、いいだろう。このデュークモンが案内しよう。」
「ありがとう。」
デュークモンは早速ゲートを開こうとするがよろけてうまく展開できない。
「くっ、先ほどの戦闘のダメージで思うように展開できんか。」
『やはりすぐには無理なのか?』
「面目ない。」
「デュークモンでこれじゃ他のロイヤルナイツもしばらく休まなくちゃダメか。」
スサノオモンは首をかしげながら言う。
「その心配はないよ。」
そこへ束が戻ってくる。
『姉さん。』
「束さんのラボのアクセスからイグドラシルの居場所に行けるようにセットしたから箒ちゃんたちがここでゲートを展開して移動すれば自動的にイグドラシルまで行けるよ。」
束の言葉にロイヤルナイツ一同は思わず言葉を失う。
「し、篠ノ之束・・・・・・貴様、いつそんな情報手に入れた・・・・・」
スレイプモンは、質問する。
「私はいろいろ情報通なだけどよ~。」
「・・・・・・・奴だけは絶対に敵に回したくないな。」
クレニアムモンは、飄々としている束を見ながら冷や汗をかく。
「わかった。ありがとう束さん。」
スサノオモンは早速ゲートを展開する。
「じゃあ、千冬姉。俺たちもう少し行ってくるよ。」
「あぁ。」
『姉さん、行ってくる。』
「行ってらっしゃい。」
スサノオモンはゲートの中へと突入して行った。
デジタルワールド
デジタルワールド。
かつて美しい自然に溢れ、多くのデジモンが暮らしていたその大地はイーターの壊滅的浸食によって荒廃した世界となり果てていた。イーターがすべて消え去った今も緑は戻ることはなく、黒く染まった大地が延々と広がっていた。その上空をスサノオモンは高速で移動していた。
「・・・・・・リリモンが言った通り、随分変わり果ててしまったな。俺が人間界に戻る前の面影はどこに・・・」
『ここがアグモンたちの故郷なのか。ここまで荒れ果てているということは余程恐ろしい出来事だったんだろうな・・・・』
そんな会話をしながらスサノオモンはデジタルワールドをひたすら突き進んでいく。
そして、どのくらい移動したのか気がつけば周囲は何もない空間へと変化していた。
『ここは?』
「以前、オメガモンたちに連行されたときと人間界に行くときの二回しか見ていないがここがイグドラシルの中枢に通じる場所だ。」
スサノオモンはさらに奥へと進む。すると、目の前に巨大な黒い物体があった。イーターに浸食された影響で何だったのかはわからないが一夏は元は何だったのかは何となく見当がついていた。
「随分派手に侵食されていたようだな。」
『い、一夏。まさかこの黒い物体が・・・・』
「ああ、イグドラシルだ。」
『こ、こんなゴミの塊みたいなものが!?』
『・・・・・・・言葉を慎め。人間よ。』
そのとき、手に持っていた光の玉から声が発せられた。
『!?い、今のは!?』
「もう目が覚めたのか?イグドラシル。」
一夏はイグドラシルに声をかける。
『・・・・・・その娘と貴様が移動しながら話している辺りからな。まさか、あのルーチェモンを倒すとは成長したものだ。』
「俺一人の力じゃないさ、箒や父さん、母さん、みんなの気持ちがルーチェモンを倒す力を分けてくれたんだ。俺一人だったら今頃ここには来れなかったさ。」
一夏は少し恥ずかしそうに言う。
『・・・・・・・ふん。最初に会った頃は、道を外すのではないかと少し心配していたが・・・・・・その心配は無用だったようだ。最早何も言うまい。』
スサノオモンはイグドラシルのコアをそっと本体の中へと入れる。すると、黒い表層が崩れ始め、中から女神像を模したような本体が姿を見せ、光を発し始める。
『貴様には、大きな借りができてしまったな。ヴリトラモン。』
「もう、その名前はいいさ。俺は織斑一夏、それ以上もそれ以下もない。ただの人間さ。」
『そうか。』
『あの・・・・』
『ん?何か用か篠ノ之箒?』
『一つ聞いておきたいがおま・・・・・じゃなかった。あなたが本体に戻ったということは機能が回復してデジタルワールドも元の姿に戻すことができるという事なんだよな?』
箒の質問にイグドラシルはしばらく黙る。
『・・・・・・本来ならそうしたいところだが・・・・』
『無理なのか?』
『いや、いくら私とはいえ長い間コアだけの状態でルーチェモンに取り込まれてしまった影響でな。すぐにデジタルワールドを再構築するのは困難な事なんだ。殆どの力を失いかけたうえ、存在そのものまで奴と一体化されたためにね。』
「と言うことはすぐに元の姿には戻せないというだけで戻すことができないというわけじゃないんだな?」
『ああ、機能が完全に回復するまではデジタルワールドの再構築も時間がかかる。だが、他のことならできる。』
「『他のこと?』」
『デジタルワールドで散ったデジモンたちの魂の開放だ。』
IS学園 グランド
「・・・・・兄貴たち遅いな。もう夕方になっちまったよ。」
ブイモンは空を眺めながら言う。
「もしかして、何かあったのかな?」
アグモンも心配そうに言う。それは、千冬たちも同じ気持ちだった。
「束、一夏たちは本当にイグドラシルの所へたどり着いたのか?」
「いやだな~ちーちゃん。束さんは間違ってはいないよ。」
「織斑先生!あれ!」
簪が驚いた声で指を指す。
「あれは?」
千冬も驚いた顔で見る。
破壊された街の方で何か光るものが無数に飛んでいるのだ。
「あの辺は・・・・・・一夏と箒がルーチェモンを倒したあたりよね?」
「うむ、間違いはない。」
鈴とラウラが言っている間にも一つの光が一同に向かって飛んでくる。
「こっちにも飛んできましたわ!?」
「みんな離れて!」
楯無の指示のもとに全員急いで落下すると思われる辺りから離れる。光は鈴たちがいたところに丁度落下する。
「みんな気をつけろ!一体何が・・・・・・!?」
全員に注意を呼びかけようとするジャスティモンの口が突然止まる。それは落下してきた光の正体を見たからだった。
「お、俺は確かイーターに・・・・・」
金色の装甲を纏ったビクトリーグレイモンとは別系統にグレイモン系デジモンが驚きながら周囲を見る。その姿を見てジャスティモンは思わず叫ぶ。
「ウォー!!ウォーじゃねえか!?」
「えっ?兄貴!?」
ジャスティモンたちは周りを見て困惑しているウォーグレイモンの所へと集まる。
「間違いねえ!本物だ!!」
「はっ!?いや、急に何言ってんだよ、シャイン?」
「よかった、よかった~!」
ジャスティモンは思わず嬉し泣きをし始める。
「ちょっ、兄貴一体どうしたんだよ!?なあ!?エンジェウーモンも何か言って・・・・」
「よかった・・・・本当によかったわね・・・・」
「エンジェウーモンまで泣かないでくれよ!?シャインも・・・」
「うおぉ~~!!我が兄弟よおぉ~!!」
「・・・・・・ダメだこりゃ。」
周りに泣きつかれウォーグレイモンは参ってしまう。
そして、また一つの光が一同の前に落ちる。今度はリリモンと同系統の妖精型のデジモンだった。
「・・・・うぅ・・・・・・」
妖精型デジモンは頭を押さえながら顔を上げる。それを見た瞬間、ブイモンは口を開いて驚く。
「ね、姉ちゃん!?」
「・・・・・・チビちゃん?」
ライラモンはブイモンを見て言う。その声を聞いた瞬間、ブイモンは今まで我慢していたのか目からダムが決壊したかのように涙が出始める。
「うわあぁ~~~!!!ライラ姉ちゃあぁ~~~~ん!!!」
ブイモンは泣きながらライラモンに抱き付いた。突然の出来事に驚いたライラモンではあったが泣いているブイモンを見るなり落ち着かせようとする。
「あらあら、そんなに泣いちゃったら周りから笑われるわよ?」
「姉ちゃあぁん・・・・・」
ブイモンは、ライラモンの声を聞きながら泣くのをやめようとしない。周りで死んだはずのデジモンたちが次々と目の前に現れているのに鈴たちは驚きを隠せなかった。
「束、これは一体どういう事なんだ!?この二人は確かイーターに捕食されて死んだはずではなかったのか!?」
「あ~~~~ちーちゃんには説明しなかったんだけどデジモンには『転生』っていうシステムがあって、死んだデジモンは僅かな確率で前世の記憶を引き継いだまま生まれるというシステムがあるんだよ。」
「だが、これではただ生き返っている様ではないか!?」
「う~~ん、多分イグドラシルのせいなんじゃないかな?」
束はとぼけたような顔で答える。そこへオメガブレードを持ったクロエがやってくる。
「束様、先ほど修復したオメガブレードなのですが・・・・」
言いかけた瞬間、今度はオメガブレードに光が落ち、剣は一瞬にしてオメガモンへと姿を変える。
「グハッ!?」
突然の出来事にクロエはオメガモンに押し潰されてしまう。
「クーちゃん!?」
流石の束もこれには参った。オメガモンは驚きながらも体を起こしてクロエを助ける。
学園から少し離れた森
イグドラシルのコアを本体に戻し、スサノオモンは人間界へと戻っていた。
「まさか、イグドラシルが言った開放とはイーターに捕食されたデジモンたちの帰還だとはな。」
スサノオモンは空を見上げる。空には今だに無数の光が飛び回っており、至る所でデジモンたちが復活していた。
『・・・・・・一夏。』
「ん?」
『あの光の中にはリリモンもいるのかな?』
「・・・・・・・いや、リリモンは正確には捕食されたんじゃなくて死んだんだ。だからあの中にはいない。」
『・・・・・そうか。』
箒は一夏の答えに少ししょんぼりする。
「だが、アイツもきっと再生され始めたデジタルワールドで生まれ変わって、きっと俺たちも目の前にまた姿を見せてくれるさ。」
『・・・・・そうだな。』
「それじゃ、俺たちも分離してみんなの所へ帰るか。」
一夏がそう言うとスサノオモンは光を発し、分解され始める。同時に分解された粒子は二つに分かれ、一つはヴリトラモンの姿をした一夏に、もう一つは箒の姿へと戻って行った。
「・・・・・・・ふう・・・・・・えっ?」
「ん?どうした箒・・・・・・・・ゲッ!?」
箒の方を振り向こうとした一夏は思わず両目を手で隠す。
確かに箒は元の姿に戻っていた。
だが、そこからが問題だった。
「な・・・・・・何で私が裸なんだあぁ!?」
箒は両手で秘所を隠しながら近くの茂みに身を隠す。
そう、何故か裸になっていたのだ。
「私は合体するときISスーツを着ていたんだぞ!?なのにどうして裸の状態なんだあぁ!?スーツも一緒に元通りになるんじゃないのか!?」
「・・・・・お、おそらく元の姿に再構築される際にスーツまで再構成できなかったんじゃないのか?」
「そんな・・・・・・それじゃ、私はどうやって学園まで帰ればいいんだあぁ・・・・・・」
箒は思わず涙目になる。
「・・・・・しょうがねえな。」
一夏はマントを脱ぎ、箒に渡す。
「とりあえずこれを体に巻いとけ。」
「でも・・・・・」
「心配するな、俺が抱いて行ってやるから。それなら途中で脱げる心配はないだろ?」
「う、うん。」
箒はさっさと体にマントを巻いて一夏に抱いてもらう。
「それじゃ・・・・・・帰るか。」
「ああ。」
一夏はゆっくりと歩き始める。森を抜けると夕焼けの空が広がっていた。
「・・・・・一夏。」
「ん?」
箒は、顔を赤くしながら歩いている一夏を見る。
「その・・・・・お前は人間の姿には戻らないのか?」
「はっ、はあぁ!?俺まで裸だったらどうするんだよぉ!?それこそまずいだろ!!」
箒の質問に一夏は、思わず顔を赤くした。それを見て箒は少し残念そうな顔をするがすぐに一夏の顔を見つめなおす。
「一夏。」
「今度は何だ?」
「愛してる。」
「・・・・・ありがとう。」
二人は軽いキスをした後、歩いて学園まで行き千冬や束たちに温かく出迎えられた。
「「ただいま。」」
なんかR指定になりそうなシーンがあるけど大丈夫かな・・・・・。
この章はとりあえずここで終わりです。
イーターに捕食されたデジモンの復活は章が始まる当初から考えていました。オメガモンに関してはオメガブレードが残っていたので可能というわけにしました。
ちなみに書いてはいませんでしたがデュークモンもこの時点でかつての戦友たちと再会しています。
次回はエピローグに入りますがこの章のタイトル回収は一夏がスサノオモンになったことで伝説は受け継がれたという感じで意味が取れたかな・・・・・。
次回「エピローグ編 『卒業!それぞれの旅立ち!!(仮)』」
・・・・・言っときますがまだ仮なのでこうなるとは限りません。