ヴリトラモン・ストラトス   作:赤バンブル

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ついにラストバトル。
本章は少なくともあと一回か二回で終わる予定です。

なんか雑になっていますがご了承ください。

それでは。


戦いの終わり

上空

 

『き、貴様!なぜ生きている!?あの攻撃を耐えるとは信じられん!!何故だ!何故!?』

 

ルーチェモンはゆっくりと近づいてくるスサノオモンに向かって言う。

 

「・・・・・確かに俺一人だったら危なかったかもしれないな。」

 

『!?』

 

「俺は今まで一人で何でも背負おうとした。この世界に戻ってきてからずっと・・・・・・・でも、今は違う。」

 

『ぬっ!?』

 

ルーチェモンは一瞬、スサノオモンの後ろに一夏と箒の姿が見えた。

 

「今は、すぐ傍にいる箒はもちろん千冬姉や鈴たち、そしてチビや他のデジモンたちと共に戦っている。それに比べて貴様はどうだ?仲間まで犠牲にしてその力を手にした上に神になる?ひどい話だぜ。」

 

『くっ!お黙りなさい!あなたに何が分かるのです!二度も消された私の何が分かるというのです!?滅んでいったデジモンの生への執着、アポカリモンとして舐めさせられた屈辱、・・・・・そう!どれにしても世界から拒絶された私の何が分かるというのです!!』

 

ルーチェモンは怒りの形相でスサノオモンを見る。

 

「・・・・・だったら、何故手を取り合って生きようとしない?アポカリモンの時だってお前にその意思があれば十闘士とも戦わずに済んだはずだ。」

 

『フン!甘いですね・・・・・・表の者は裏の者が出ようとしたら必ず排除しようとする。それは人間とて同じ、自らの脅威とありかねない存在はどんな手を使ってでも排除しなければ気が済まない。排除しなければならない存在・・・・・あなたにはわかりますか?私は生を受けた時からすでに排除しなければならない存在なのです!そんな運命を受け入れる者がいると思いますか?』

 

「だが、お前はその運命に抗うために多くのデジモンの命を奪って来た。それも二度も!!そして、今度は世界そのものを滅ぼそうとしている!!貴様一人のために全てを犠牲にしていいはずがない!」

 

スサノオモンは、ルーチェモンの言葉に怒りを感じ、拳を握り締める。

 

『織斑一夏、世間から拒絶されてきたあなたなら少しは私の気持ちを理解してくれると思っていましたが・・・・・・』

 

「俺は確かに世間から拒絶された。でも、俺はその中でも生きようとした。滅ぼそうと考えているお前と一緒にするな!」

 

『ならば、どちらが正しいかここで決めて差し上げましょう!』

 

ルーチェモンは分離していた結晶体を砕き、自らの体に取り込む。するとルーチェモンの体から蛇のような顔が付いた無数の触手が生えてきた。

 

『喰らいなさい!ポイズン・ウィップ!!」

 

無数の触手がスサノオモンを襲う。スサノオモンは大剣を展開し、切断するが次々と再生していく。切断した触手がスサノオモンの体に付着するとそこからまるで硫酸をかけられたのかのような音がし始める。

 

(・・・・不味いな、このまままともに受ければ体が溶かされてしまう。)

 

『ホッホッホッ・・・・・・・・切断した物がそのまま落ちるとでも思っているのですか?』

 

「何!?」

 

スサノオモンは、自分の体を見る。体のあちこちに切断した触手の肉片が付着し、それがまるで意思でもあるのかのように這いずり回っていた。

 

「こ、これは・・・・・・」

 

『隙ができましたよ!』

 

「ぬっ!?」

 

一瞬気を取られた瞬間無数の触手がスサノオモンの体に巻き付く。スサノオモンの身体中から溶け始めているような音がし始める。

 

「ぐうぅ・・・・・・」

 

『どうです?体を溶かされる気分は?しかし、それだけでは終わりませんよ?体が動けなくなるところまで溶かして・・・・私の体に取り込んで差し上げますからね。』

 

「うぅ!!」

 

スサノオモンの体が溶けはじめる。

 

(このままでは溶けてしまう・・・・・・・それにダメージは俺と同時に箒にまで影響を及ぼしてしまう・・・・・俺はいい・・・・だが・・・・)

 

(一夏。)

 

(箒?どうした?苦しく・・・)

 

(私は大丈夫だ。それよりも聞きたいことが・・・・・)

 

スサノオモンの中で一夏と箒は何やら作戦を練り始める。

 

「・・・・・・・・・」

 

『おや?抵抗するのをやめた様ですね。どうしたのです?』

 

ルーチェモンは突然抵抗しなくなったスサノオモンを見る。

 

「・・・・・・・どうやら、この触手で完全に動くことができなくなってしまったようだ。もう、手足の感覚がほぼなくなっちまった。」

 

スサノオモンは戦意を喪失したのか諦めたように言う。

 

『そうですか。ならすぐに楽にして差し上げましょう。』

 

触手で完全に固定し、ルーチェモンの胸がバックりと割れる。そこへスサノオモンは取り込まれて行く。

 

『イグドラシルに続いて十闘士の力まで取り込めるとは・・・・・私はようやく因縁に蹴りが付いたというわけになりますね。』

 

「・・・・・・・」

 

『もはや話す力も残っていませんか。では、さようなら。』

 

スサノオモンはルーチェモンの体の中へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジラボ

 

「痛てててて!!」

 

「我慢してください。」

 

「こっち!早く消毒と包帯!」

 

デジラボでは、戻ってきたデジモンたちの治療が行われていた。その一方では大破してしまったIS各機をどうにか直そうと悪戦苦闘しているクロエとパイルドラモンの姿がある。ゲートを通じて戻ってきた千冬たちは、別れていた鈴と合流していた。

 

「千冬さん!」

 

「凰、どうやら無事の様だな。」

 

千冬は鈴の顔を見ながら言う。絆創膏がいくつかしてあるがそれ以外に目立った怪我はない。

 

「ところで五反田の様子はどうだ?さっき一緒に来たと聞いていたが。」

 

「はあ、弾以外はかすり傷程度でそこまでひどくはありませんでした。でも、弾の方は、右足の方が瓦礫で骨折した様で・・・・・」

 

「そうか。」

 

取りあえず命に別状はないと分かると千冬は安心する。

 

「・・・・・しかし、一夏の方が心配です。何しろあんなひん死の状態から戻ってきたから今頃どうしているのか・・・・」

 

「アイツのことだ。心配することは・・・・・」

 

その直後ラボにあったテレビが突然起動する。映像にはルーチェモンの姿が映し出された。

 

『人類諸君、御機嫌よう!!私はルーチェモン、神となった存在です。長きにわたって栄えてきたあなたたち人類ももついに最後の時が訪れました!』

 

「何っ!?」

 

千冬は思わず声を上げる。それは鈴たち、パートナーであるマグナアルフォースブイドラモンとビクトリーグレイモンも同じ気持ちだった。

 

「い、一夏が負けたって言うの!?」

 

「そんな!?」

 

「兄貴が・・・・そんな!!」

 

『最後まで抵抗した者もいた様でしたが残念ながら神である私の前には全く無力でした。』

 

「野郎!!」

 

マグナアルフォースブイドラモンは思わずテレビを殴ろうとする。

 

「よせ!ブイモン!これはテレビだ!奴じゃない!」

 

「くそ・・・・くそ!!!」

 

ビクトリーグレイモンに抑えられながらマグナアルフォースブイドラモンは跪く。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

そんな状況の中、束とミレイだけは冷静だった。

 

『これより、私はあなた方人類に対して最後の攻撃を行います。安心してもいいですよ?ほんの一瞬、苦しむこともなくあなた方の体は消滅するのですから。』

 

ルーチェモンは悠々話をする。

 

『ではカウントを始めます。30数えきったところで攻撃を行います。それでは行きますよ、30,29,28・・・・』

 

「ぐおおぉぉぉぉ!!!嫌だぁ!まだ死にたくねえ!」

 

みんな唖然としている中ジャスティモンは一番騒いでいた。

 

「ジャスティモン・・・・・アンタ、最後ぐらい静かにしなさいよ。」

 

「黙れ!!俺はまだやりたいことが山ほどあるんだ!!そんな簡単にくたばってたまるか!!」

 

鈴に言われてもジャスティモンは止めない。

 

「エンジェウーモンとはまだハネムーンにも行っていないし、俺たちを主役にしたヒーロー番組も作りたいし、後・・・・」

 

「やめてくれ兄貴!俺たちのライフポイント(いろんな意味で)がゼロになっちまう!って言うか俺たちの社会的立場があぁ!!エンジェウーモンも・・・・・」

 

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!!私も死にたくない!ジャスティモンと離れたくない!!いやああああ!!!」

 

「・・・・・・・最後の最後までこれかよ・・・・・兄貴もエンジェウーモンも。」

 

シャイングレイモンは頭を抱える。そう言っている間にもルーチェモンのカウントダウンは迫っている。

 

『12,11,10,9・・・・・』

 

「一夏・・・・・くそ、姉である私が何もできないとは・・・・」

 

千冬も悔しそうにするがそんな千冬の肩に束が手を置く。

 

「束。」

 

「大丈夫、いっくんたちはまだやられていないよ。」

 

「だが、スサノオモンの姿が・・・・」

 

『6,5,4、・・・・・・・』

 

「エンジェウーモン!愛しているぞ!」

 

「私もよ、ジャスティモン!!」

 

「ええい!人生の最後ぐらい静かにしてくれ!!」

 

抱き合っているジャスティモンとエンジェウーモンに対してラウラが怒鳴る。

 

『3,2,1・・・・ぐう!?』

 

その直後、ルーチェモンのカウントダウンが止まった。

 

「あれ?止まったよ?」

 

シャルロットは不思議そうに言う。一同はテレビをよく見てみる。ルーチェモンが突然苦しみだしたのだ。

 

「な、何が起こりましたの?」

 

「あっ!よく見て!奴の胸に穴が!」

 

簪に言われてルーチェモンの胸をよく見ると何か巨大な手が出てきていた。その腕が中から出ようと胸の傷を拡げ始める。

 

「あれって・・・・・」

 

「まさか!」

 

割れ目が完全に開きとそこから出てくるものに一同は声を合わせて行った。

 

「「「「「「い、一夏!!」」」」」」

 

「ねっ?」

 

束はニヤニヤしながら千冬に言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空

 

『ぬ・・・・ぬっぐう・・・・・・』

 

ルーチェモンは裂けた胸を押さえながらスサノオモンを見る。

 

『き、貴様・・・・・・何故・・・・・』

 

「ちょっとしたアイディアでな、お前の体内に侵入させてもらった。」

 

スサノオモンは右手に光る何かをルーチェモンに見せる。

 

『そ、それは!?』

 

「お前はダークエリアにいたとき、イグドラシルを取り込んだと言っていた。よくよく考えてみたらお前を倒したらイグドラシルを一緒に倒してしまうことになる。そうしたらデジタルワールドは滅んだままだ。」

 

『だから、私が一夏に提案して動けなくなった振りをして貴様の体内に侵入し、イグドラシルの救出を考えた。そして、救出した後元来た所から脱出したんだ。』

 

『お、おのれ・・・・・・』

 

ルーチェモンは傷を治しながら睨みつける。

 

「痛いかルーチェモン?お前に消されたデジモンも同じ苦しみを味わいながら消えて行ったんだ。かつて自分にされたことをお前はデジタルワールド全てにやったんだ!」

 

『黙れぇ!!』

 

ルーチェモンは真紅の大型剣を作り出し、スサノオモンに斬りかかる。しかし、スサノオモンは横に避け素手で叩き割った。

 

『何!?』

 

「・・・・・・貴様にために志半ばにして散って逝った者たちの苦しみを存分に味わってもらうぜ。」

 

スサノオモンは拳を振り上げ、ルーチェモンにぶつける。

 

『グバアァ!?』

 

「これは俺とチビの帰りを待って散ったライラモンの分!」

 

更に一撃を腹部にめり込ませる。

 

「これは貴様の策によって消されたオメガモンとマグナモンの分!」

 

『グウゥ!!』

 

顔面。

 

『グウオォ!!』

 

「今度はパートナーのために自らの命を託したドゥフトモンの分!!」

 

更に蹴りを連続でお見舞いする。

 

『ブッ!ブッ!ブオォ!!!』

 

「これは貴様に殺された父さんと母さん、そして、人形として動かされ続けたマドカの分!!!」

 

ルーチェモンは触手で再び拘束しようとする。

 

「八雷神!!」

 

八方から破壊の雷を放ち、ルーチェモンの触手を完全に破壊する。

 

『グワアァァァ!!!』

 

「これは俺と箒のために最後まで勇敢に戦ったリリモンの分!!!」

 

ルーチェモンはあまりにも大きいダメージに地上へと落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上

 

『グハッ!!』

 

飛ぶ力もなくしたのかルーチェモンは、自らが破壊した市街地へと墜落していった。

 

『ぐう・・・・・・・・・さ、再生が遅い・・・・・・やはりコアであるイグドラシルを抜き取られたのが原因か・・・・・』

 

そこへスサノオモンが冷徹な眼差しを向けたままゆっくりと降下して来る。

 

『ハア・・・・ハア・・・(殺される!あの目・・・・・・間違いなく私を殺しに来た目だ!)』

 

ルーチェモンはもがきながら移動を始める。

 

(逃げなくては・・・・・・ここは逃げなくては・・・・・神であるはずの私が負けるはずが・・・・・・)

 

「どこへ逃げるつもりだ?」

 

『!!』

 

這いずり回っているルーチェモンの目の前にスサノオモンが立っていた。

 

『た、助けてくれ!!私が悪かった!!大人しくダークエリアに引き返す!!そして、二度と現れない!だから頼む!情けをかけてくれ!!い、命だけは!!』

 

ルーチェモンは必死に命乞いをする。

 

「・・・・・・貴様、そうやって命乞いしてどれだけのデジモンや人間を犠牲にしてきたと思っているんだ?」

 

『頼む!!!』

 

ルーチェモンは土下座をしながら詫びる。スサノオモンは、そんなルーチェモンに対して後ろを向く。

 

「・・・・・・・いいだろう。今回は戒めとして生かしておいてやる。」

 

スサノオモンは歩き去ろうとする。

 

(くうぅ・・・・・・この私は神なのだ・・・・・・負けは許されない。それもたかが人間如きに・・・・・)

 

ルーチェモンは真紅の槍を精製し、スサノオモンに向ける。

 

『この私が絶対にして唯一の神なのだあぁぁぁぁ!!!ブラット・スピア!!!』

 

ルーチェモンは全ての力を槍に込め放つ。槍はスサノオモンの腹部を貫く。

 

「グウゥ!!」

 

『ハハハハハハハハハ、やったぞ!!私の勝ちだぁ!!!』

 

「どこを見ているんだ?」

 

『ハッ!?』

 

後ろからもう聞くこともないはずの声を聞いてルーチェモンは思わず振り向く。

 

『ば、馬鹿な!?どうして貴様が私の後ろに!?』

 

そこには目の前で倒したはずのスサノオモンがいた。

 

「俺はずっとお前の後ろにいたぞ。」

 

『そ、それじゃ・・・・・目の前にいたのは・・・・・しかし、スピアはどこに・・・・・・』

 

「お前に刺さっているそれじゃないのか?」

 

『何・・・・・・・ぐ、グワアアアァァァ!!!』

 

ルーチェモンは自分の腹部を見るなり悲鳴をあげる。そこには自分が投げたはずの槍が刺さって自分の体を突き抜けているのだ。

 

「それは、お前の攻撃で犠牲になった人たちの苦しみだ。」

 

スサノオモンはルーチェモンから少し離れ、ゼロアームズ:オロチを展開する。

 

「そして、これがお前によって両親を失い・・・・・苦しめ続けられた・・・・・俺と・・・・」

 

『貴様たちの企みによってかけがえのない友を失った私の・・・・』

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

「俺と」

 

『私の』

 

「『怒りだあぁぁぁぁぁ!!!!天羽々斬!!!』」

 

スサノオモンはゼロアームズ:オロチから放たれる大出力のレーザーサーベルでルーチェモンを一刀両断する。

 

『グバアァァァァ・・・・・・・・・』

 

ルーチェモンは真っ二つに切断され、その後さらにバラバラに分解されていき、完全に消滅する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・終わった。」

 

ルーチェモンが完全に倒されたのを確認するとスサノオモンはゼロアームズを外し、空を眺めた。

 

『・・・・・・・勝ったんだな、私たち。』

 

「あぁ、俺たちは勝ったんだ。」

 

 

空は先ほどの暗雲が晴れ、青い空が広がっていた。

 

 

 

 




今回の技

ポイズン・ウィップ=ルーチェモン エンド
八雷神=スサノオモン


次回はいろいろ後始末になりそうです。

次回「世界の再生(仮)」。


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