ヴリトラモン・ストラトス   作:赤バンブル

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なんかそろそろ三月も終わり・・・・・・。
サイスルの新作マジで楽しみ!




One Summer Death

一夏ルート

 

「はああぁぁぁぁぁぁ!」

 

一夏は龍魂剣をルーチェモンに向かって振る。

 

「炎龍撃!」

 

『無駄なことを。』

 

一夏がから放たれた斬撃はルーチェモンの片手で受け止められる。

 

『そんな体では本来の力を発揮することもできないでしょう?』

 

「それでもだ!」

 

一夏はルーチェモンへと接近していく。

 

『ホッホッホッホッホッ・・・・今の私の前ではあなたなど虫けら同然。相手をするならこれが良いでしょう。』

 

ルーチェモンはそう言うと掌から黒い結晶を作り出し、一夏の前に投げる。結晶は光を帯び、一体のデジモンへと変化し始める。それは一夏の見覚えのあるデジモンだった。

 

「オ、オメガモン!?そんな馬鹿な!」

 

結晶はオメガモンの姿になった。体色もオリジナルと同様で一瞬見間違えそうになったが顔を上げると顔の方は単眼になっていて本人ではないことを表していた。

 

『私が新たに作り出したオメガモンです。いかがです?一瞬本人と見間違えたでしょう?』

 

「それも神とかになったお前の力か・・・・」

 

『では、楽しませてください。私の力はまだまだこんなものではないのですから。やりなさい、クローンオメガ。』

 

「・・・・・」

 

クローンオメガは、無言のままグレイソードを展開し一夏に斬りかかる。

 

「くっ!」

 

一夏は左足のグレイソードで受け止め、オメガ・バスターを撃とうとする。

 

「!」

 

一夏は無くなった右腕を見て思い出した。すでにオメガ・バスターは使用できないことを。戦いに集中しようとするあまりに忘れてしまっていたのだ。思わず動揺している隙を見てクローンオメガはガルルキャノンを発射する。

 

「ぐう!」

 

一夏は地面にぶつかりながらもなんとか態勢を整え直す。しかし、クローンオメガはグレイソードで一夏の右脇腹を斬りつける。

 

「くそ!」

 

一夏はすれ違い様に龍魂剣でクローンオメガの左腕を斬り飛ばす。

 

「これでお互い片腕なしだ。」

 

「・・・・・・・・・」

 

クローンオメガは無言のまま一夏の方を振り向き、落ちた左腕を拾う。するとまるで片手が取れた玩具にくっつけ直すかのように自分の左腕をくっつけ直した。左腕は何事もなかったのかのように動く。

 

「なんて奴だ。」

 

クローンオメガはグレイソードを再展開すると一瞬にして消える。

 

「何!?奴はどこ・・・・ぶっ!」

 

探そうとした瞬間、一夏は謎の衝撃に吹き飛ばされる。よく見ると目の前にクローンオメガがいた。高速で自分に攻撃してきたのだ。一夏は岩盤に叩きつけられる。クローンオメガは容赦なくグレイソードを一夏の右胸に突き刺した。

 

「ぐわあぁぁぁぁ!!」

 

激痛に一夏は叫ぶ。クローンオメガは自らグレイソードを折ると今度は一夏の落とした龍魂剣を腹部に突き刺す。

 

「があ・・・あ・・・・」

 

更にとどめとばかりにオメガブレードを奪い、左胸にも突き刺す。そして、ガルルキャノンを発射する態勢に入る。

 

「こ、こんなところで・・・・・・」

 

一夏はどうにか龍魂剣を引き抜こうと左腕を伸ばす。しかし、深く喰い込んでいるため抜くのは困難だった。

 

「こんなところで負けるわけにはいかないんだ!・・・・・ん?」

 

その直後にクローンオメガに異変が起き始める。体のあちこちにヒビが入り、ガラス細工のように崩れてしまった。

 

『おや?どうやらこの能力には時間制限があるようですね。あと少しだというのに。』

 

ルーチェモンは残念そうに言いながらも一夏の真上に明らかに巨大な赤いエネルギーの塊を撃つ。

 

『でも、まあここまでやったのですから良しとしましょう。お疲れさまでした。では、そろそろ裁きを受けてもらいましょう。』

 

一夏はもはや動きようがなかった。

 

『愚かなデジモンに裁きを!弾けろ!ブラッドレイン!』

 

ルーチェモンが拳を握ると同時にエネルギーの塊は爆散し、無数の赤い針の雨となって一夏の全身に突き刺さっていく。

 

「がはぁあ・・・・・・・・・リリモン・・・・・箒、チビ、千冬姉・・みん・な・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲート内

 

「くっそ~!一体どこまで続いていやがるんだ!この道は!」

 

マグナアルフォースブイドラモンはイライラしながら進んでいた。彼だけではない。みんな一刻も早く一夏に合流しなくてはと考えていた。特に箒は何か嫌な予感がするのか落ち着きがなかった。

 

「全員、焦る気持ちはわかるがその焦りが時に取り返しのつかないことを引き起こしかねない。そのことを忘れるな。」

 

「とは言っても姐さん、ここに入ってからもう随分走ってるんだぜ?いくら何でも時間がかかりすぎるぜ。」

 

千冬の隣でジャスティモンは束を抱えながら言う。実際、一同がゲートの中に入ってから随分経っていた。にもかかわらず出口が見える様子はない。

 

(・・・・・もう随分走っている。こうしている間にも一夏が・・・・・・)

 

「箒。」

 

隣でビクトリーグレイモンが心配そうに声をかける。

 

「ビクトリーグレイモン・・・・・」

 

「一夏はきっと大丈夫だよ。だって箒だって知っているじゃん。一夏は俺たちの中で一番強いんだからさ。少し落ち着かないと・・・・・」

 

「でも・・・・」

 

「箒がそんなに心配していたらブイモンだってそうだし、織斑先生だって・・・・・・」

 

「・・・・・あぁ、そうだな。一夏は確かに私たちの中で一番強い。少し心配し過ぎたのかもしれない。すまないな。」

 

箒はそう言いながらも心配で胸が張り裂けそうな思いだった。自分たちでさえあそこまで苦戦したのだ。一夏だってそれ以上苦戦していてもおかしくない。もし間に合わずリリモンのような事態になっていたら・・・・・・

 

「出口が見えて来たわ!」

 

鈴が指を指しながら言う。かなり離れた場所にゲートの出口らしきものが見えてきていた。

 

「やっと出口ですわ!」

 

「これで一夏と合流できるね。」

 

全員急いで出口に向かって行く。

 

(一夏、無事でいてくれ。もしリリモンの時のように一夏を失ったら私は・・・・・・・)

 

箒は一夏のことで既に頭が一杯だった。千冬たち一同はゲートの出口へと出る。

 

「出られた!一夏は!?」

 

「・・・・・お姉ちゃん!あれ!」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏ルート

 

「はあぁ・・・・・・はあぁ・・・・・」

 

全身と言う全身に血を流しながら一夏は息を荒くしていた。

 

『この攻撃を受けてもまだ死なないとは・・・・・・・しぶとさは褒めて差し上げましょう。』

 

ルーチェモンはそう言うなり今度は巨大な赤い槍を作り出す。

 

『しかし、悪運もここまで。そろそろ終わりにしましょう。』

 

「ぐう・・・ぐ・・・・」

 

とどめを刺されそうになっても一夏は動こうと突き刺さっている剣を引き抜こうともがく。

 

『さようなら、織斑一夏。ブラッドラ・・・・・・』

 

「ジャイアントミサ~イル!」

 

『ん?』

 

槍を投げようとしたルーチェモンにミサイルが命中し、投げた槍は一夏から外れて遠くへと飛んで行ってしまった。飛んできた方向を見るとセントガルゴモンがルーチェモンに向かってきていた。

 

「うお~!突撃~!」

 

『・・・・・・愚かな。神に対して挑戦してこようとは実に愚かです。』

 

「みんなで一夏を守るのよ!」

 

「「「「「わあぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

鈴たちが一斉にルーチェモンに向かって行く。一方の箒と千冬、束、マドカとジャスティモンたちは倒れている一夏に向かって行く。

 

「一夏!一夏!」

 

箒は、一夏のところに行くと急いで突き刺さっている剣を抜く。一夏はほぼ瀕死状態になっていた。

 

「はあぁ・・・・はあぁ・・・・・」

 

「いっくん・・・」

 

束は一夏を見るなりかなり動揺していた。

 

「ちーちゃん、デジヴァイスを貸して。」

 

「あ、あぁ。」

 

千冬は束にデジヴァイスを渡す。束は受け取るとデジヴァイスに何かを入力しはじめ、一夏の前に翳す。するとデジヴァイスが一夏の体をスキャンする。

 

「・・・・・・・・」

 

「姉さん、一夏は・・・・・一夏は助かるだよな?そうなんだろ!?姉さんならきっと・・・・・」

 

「・・・・・・もう、手遅れだよ。」

 

「!?」

 

束の一言で箒は信じられなかった。

 

「既に急所を貫かれているし、この多量出血・・・・正直言って生きているのが奇跡なぐらいだよ。」

 

「そんな・・・・・嘘だろ?姉さん。姉さんにできないことなんてないだろう?ねえ?」

 

箒の質問に束は何も答えることはできなかった。千冬は涙目になっていたが涙を流すのを耐え、マドカに見せないように顔を隠させた。ジャスティモンたちは悔しそうに拳を握り締めながらも鈴たちを援護すべくルーチェモンの方へと飛んで行った。

 

「嘘だ・・・・・・・そんなの嘘だ!一夏が死ぬなんて!絶対嘘だ!」

 

「箒ちゃん・・・・・」

 

「リリモンと約束したんだ!一夏を頼むって!なのに・・・・・・・・・なのに何もしないまま一夏が死ぬなんて・・・・・そんなの絶対に嫌だぁ!」

 

「束さんだって同じ気持ちだよ・・・・・でもね、私だって神様じゃないんだよ。どんなに優れている人間でもどうやっても越えることができない壁がある。もう、手の施しようがないんだよ・・・・・。」

 

「じゃあ・・・・・・このまま一夏が死んでいくのを見ることしかできないのか?私たちは?それしかできないのか?」

 

「・・・・・・」

 

「そんな・・・・・・一夏・・・・・一夏・・・・・」

 

箒は、弱り果てている一夏を抱きしめながら泣き始めた。その光景を見て束は複雑な顔をしていた。

 

「くそ!兄貴をこんなにしやがって!絶対に許さねえ!」

 

マグナアルフォースブイドラモンは怒りのあまりにルーチェモンに向かって飛んで行った。

 

「待て、ブイモン!」

 

ビクトリーグレイモンも続いて飛び去って行く。千冬は束の方を見る。

 

「束、本当に一夏を助ける方法はないのか?せめて命を取り留めることだけでも・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

一瞬何かを言おうとしたが束はすぐに黙る。

 

「本当にないのか?一夏を助けることができるんなら私は何でもする!だから・・・・・」

 

「ならば、そいつを頂こうか!」

 

「むっ!?」

 

聞き覚えの無い声がしたかと思いきやいきなり突風が吹き、一夏を何者かが奪い取って行った。

 

「い、一夏!」

 

箒は突然目の前から消えた一夏を探し始める。すると謎の黒マントで全身を包んだ何者かが一夏を片手に掴んでルーチェモンの所へ向かおうとしていた。

 

「貴様!一夏を返せ!」

 

箒は紅椿を展開し、後を追う。箒が去った後、束は真剣な顔で千冬の方を見る。

 

「・・・・・ちーちゃん、確かに方法はあるんだよ。でも・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「返せ!」

 

箒は、黒マントに向かって空裂のエネルギー刃を飛ばす。しかし、まるで動きを呼んでいるかのように黒マントは攻撃を避け続ける。

 

「無駄だ。お前の攻撃パターンは既に前の戦闘で経験済みだ。」

 

黒マントはまるで知っているかのように言う。

 

「くそ!」

 

中間距離からでは攻撃が当たらないと判断した箒は一気に距離を詰めて戦おうと距離を縮める。それを察したのか黒マントは移動するのをやめ、箒を待ち構える。

 

「小娘が。」

 

黒マントは一夏を持つ手を変えるとランスを展開する。

 

「はあぁぁ!!」

 

箒は一夏を取り返さんと二刀流で黒マントに斬りかかる。

 

「無駄だと言っているだろうが。」

 

「何故だ!何故私の動きが分かる!?」

 

相手の避け方に違和感を感じたのか箒は一旦距離を取り直して黒マントと対峙する。

 

「言ったではないか。お前の攻撃パターンは既に経験済みだと。」

 

「そんなはずはない!私は貴様に会った覚えはない!」

 

「ほう?ではこの顔に見覚えはないか?」

 

黒マントは自分の顔の部分のマントを外し、その素顔を見せる。

 

「そ、そんなはずは!お前は!?」

 

箒は唖然としていた。形状は多少違うとはいえ、その顔は箒にとって憎い敵の顔だった。

 

「ダークデュークモン!」

 

その顔は箒がここに来る前に倒したダークデュークモンそっくりだった。

 

「正確には私は『カオスデュークモン』だがな。」

 

そう言うとカオスデュークモンは一夏を真下に落とし、盾を展開し箒の前で構える。

 

「まさか!」

 

箒は、急いで自分の前に展開装甲で防御態勢に入る。

 

「ファイナル・エリシオンだと思ったか?馬鹿め!ジュデッカプリズン!!」

 

カオスデュークモンは盾から暗黒波動を放つ。箒の前に展開した展開装甲は彼女を防御するが次の瞬間、腐食し始める。

 

「何っ!?展開装甲が腐っていく!?」

 

「この私、カオスデュークモンの魔盾『ゴーゴン』から放たれるジュデッカプリズンはデュークモンのファイナル・エリシオンと反対にあらゆるものを腐食させ、やがて死に追いやる。そのまま自分の身まで腐ってしまうぞ?」

 

箒は急いで展開装甲を雨月で切り離し、反撃態勢に入ろうとするが紅椿が警告表示を出し始める。

 

「これは!?紅椿のプログラムまで侵されて・・・・・・くっ!」

 

よく見ると紅椿のあちこちが腐食し始めていた。箒は止む得ず紅椿を解除し待機状態にまで戻し、捨てる。同時に紅椿は完全に黒に変色し、粉々になった。

 

「ハハハッハハハハ!これでもう貴様には何もできん!」

 

カオスデュークモンは槍を構え、箒に迫っていく。

 

「その惨めな姿のまま死ぬがいい!デモンズディザスター!!」

 

槍の連撃が箒に襲い掛かる。

 

「くそ・・・・・・」

 

箒は何もできないままそこで立ち尽くす。

 

 

 

 

 

 




今回の技

ブラッドレイン=ルーチェモン エンド
ジュデッカプリズン=カオスデュークモン
デモンズディザスター=カオスデュークモン


新デジモン


クローンオメガ(オメガモン複製体)(?・?・?)

ルーチェモン エンドが生み出したオメガモンの複製。外見はオリジナルと瓜二つだが目のみはモノアイみたいな感じになっている。オリジナルとほぼ同一のスペックではあるが寿命が異常に短く、時間が経つと砕けてしまう。これはルーチェモン自身がまだ自分の能力を把握しきっていないため。正確にはデジモンではないため痛覚も存在しない。


カオスデュークモン(究極体・暗黒騎士型・ウィルス種)

突如現れたデジモン。






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