と思いながらも書いた今回の話。
箒&リリモンルート
「制限時間、二分五十秒・・・・・」
リリモンはダークデュークモンを拘束した後、高速でバイオモンの所へと向かった。突然何かが迫っていると感じたのかバイオモンは箒から目標をリリモンへと切り替える。
「そうよ・・・・・お利口さんね・・・・・」
リリモンはバイオモンの前に降り立ったと思いきやすぐさま回し蹴りをした。
「後二分四十秒・・・・・・・」
「リリモン!何をしているんだ!?早く離れないとそいつに・・・・・・」
箒は立ち上がりながら言うがリリモンは攻撃をやめない。リリモンは、鞭を腕に何重も纏わせ、ボクサーグローブのような状態にする。しかし、どう云うわけか鞭も赤く発光し、蒸気を発していた。
「後、二分十秒前・・・・・・」
息を荒くしながらリリモンはバイオモンに向かってラッシュを仕掛ける。
「ダメだ!アイツに触れたら姉ちゃんも取り込まれちまう!」
マグナアルフォースブイドラモンは止めようとするが時すでに遅くリリモンの拳はバイオモンに命中した。
「遅かった!」
「ブ、ブロロロロォロ!!?」
「「「えっ!?」」」
しかし、三人が予想とは反対で逆にバイオモンが苦しみだした。それに生じた隙を逃さずリリモンは攻撃を続ける。
「ハア・・・・・・ハア!」
リリモンの息はさらに荒くなる。苦しんでいるバイオモンを見て箒たちは理解できないでいた。
「どういう事なんだ?俺たち三人で攻撃したときは苦しむ様子すら見せなかったのに奴がリリモンの攻撃で苦しんでいる?」
「って言うか姉ちゃんが真っ赤になってる!どうなっているんだ!?」
「まさか・・・・❝バーストモード❞を・・・・・」
箒は、今のリリモンの姿を一度見たことがある。それは一時的に己の限界以上の力を発揮する超究極体とは違う姿と言っても過言ではない。
だが、バーストモードには最大の欠点が存在する。
力を引き出す代償に体力が一気に消費する上に活動限界時間を過ぎると強制的に元に戻り、しばらくの間、思うように動かすことができず、戦闘能力が大幅に低下するなど相当な負担がかかってしまう。リリモンが一度バーストモードになった時は、僅か10秒しか持たず数日は動けなくなったほどだった。
(もしあのまま限界時間を過ぎたら・・・・・・・)
箒は思わずリリモンを見つめる。リリモンの体は高熱なのか蒸気が出ており、バイオモンは逃げるように攻撃を避けようとするが攻撃は次々と命中する。
「リリモン、すぐにバーストモードを解除しろ!」
箒の声が聞こえないのかリリモンは無視して攻撃を続ける。リリモンの攻撃を受けた箇所はまるで煮立った状態のようにドロドロ溶け始めていた。
「あれ?アイツ・・・・・・・どんどん溶けてる。」
「そうか!アイツは高熱のものに弱いんだ!だから、高熱のもの触れただけで沸騰を起こして触れた部分が死滅する。」
「だが・・・・奴の体の中には姉さんが・・・・それにこれ以上あの姿でいたらリリモンの体が持たない!」
箒は、空裂を持ち直してリリモンの所とへ向かう。リリモンはそのことに気がついたのかバイオモンを箒の方へと吹き飛ばす。
「箒!早くその刀を奴の胸に刺して!」
「えっ!?でも、そんなことをしたら・・・・・」
「いいから早く!もうあんまり時間がないの!早く!」
「わ、分かった!」
箒は吹き飛ばされてくるバイオモンに向かって空裂を構え直す。リリモンはバイオモンに向かってグローブ状にした鞭を解き、両手を前に突き出す。
「ハア・・・・ハア・・・・フォービドゥンテンプテイション!!」
リリモンから放たれた光線はバイオモンへと命中し、バイオモンの体はドロドロに溶けていく。
「バイオモンが崩れていく・・・・・!箒、あれ!」
ビクトリーグレイモンは驚いた顔で指を指す。バイオモンの体が溶解している中、コアと思われる場所に人の姿があった。
「あれは姉さん!」
箒は、急いでバイオモンへと近づく。
「ブ・・・・・・ブワアァアァ!!」
溶けかけているバイオモンは抵抗するためか右手を箒に近づけて攻撃しようとする。
「させるか!」
ビクトリーグレイモンはドラモンブレイカーでバイオモンの右手を切り飛ばす。箒はその間に空裂でバイオモンを斬りつけ、束を体内から摘出する。束はぐったりして身動きする様子はなかったが無事なのは確かだった。
「離れるぞ!」
ビクトリーグレイモンに抱きかかえられ、箒たちはバイオモンから離れる。コアともいうべき束を失ったことによりバイオモンはさらに溶けていき、動きが鈍くなってきた。
「ブオ・・・・・ブロォ・・・・・」
やがて、バイオモンの動きは完全に止まり、完全にただの液体へとなり果てた。箒たちはその姿を見て安堵するが急いでリリモンの方を見る。リリモンの方はバーストモードを解除したのかフラフラの状態で立っていた。
「リリモン!」
箒は、束をマグナアルフォースブイドラモンに任せ、紅椿を解除してリリモンの方へと向かう。
「リリモン!やったぞ!姉さんを助けられたんだ!」
箒は嬉しそうにリリモンの方を見ながら走ってくる。リリモンも笑みを浮かべて疲れ切った体を動かしながら手を振ろうとする。
「・・・・・・・・・うっ!!」
そのとき腹部に何か刺された痛みを感じる。リリモンは下を向いてみるとさっきバイオモンが落としたはずの剣が自分の腹を貫通していた。
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・」
「よくも私をここまで痛めつけてくれたな!」
後ろにはさっきまで拘束していたダークデュークモンが怒りの眼で睨みつけていた。リリモンは力を失ったのかのように倒れる。
「リ・・・・・・・リリモオォォォォォンンン!!!」
一夏ルート
(!?なんだ!?この胸騒ぎは!?)
一夏は戦っている最中、思わず嫌な予感を感じていた。
(この感覚・・・・・・誰かがやられたような気がする・・・・・チビか?それとも箒?ラウラ?シャル?・・・・・まさかリリモンがやられるとは信じられないが・・・・・)
一夏は不審に思っているのを察したのかルーチェモンは戦うのを中断する。
「ん!?」
「どうやらお仲間のことが気になってしょうがないようですね?」
「何?」
「だったら見せて差し上げましょうか?ウォーミングアップもいいところですし。」
ルーチェモンがそう言うとデスモンが一匹飛んできて目玉を光らせ映像を移す。映像にはラウラとシャルロットの姿が映っている。
「おや?こちらの方は既に試合終了になっているようですね?それにかつての同胞の姿も。」
ルーチェモンは少し驚いた顔で一緒に写っているベルゼブモンの姿を見る。
「まさか彼が我々に反旗を翻しているとは・・・・・・意外ですね。」
「そうかよ。(よかった・・・・二人は無事なようだ。)」
「では次の映像を見てみましょうか。」
ラウラ&シャルロットルート
「ちっ!無駄にデススリンガーを五発も喰らわせることになるとはな!」
ベルゼブモンは舌打ちしながら言う。目の前では黒焦げになったリヴァイアモンが動く様子もなく沈黙していた。
「わ、私たちがあんなに苦戦していたリヴァイアモンをたった五発で・・・・・・・あれが魔王の力だというのか?」
目の前でくたばってしまっているリヴァイアモンを見てラウラは呆然としていた。無理もない、散々特訓をしてきた自分たちが苦戦していた相手を割り込んできたベルゼブモンがこうもあっさり倒してしまうのだから。そんなラウラの様子に気がついたのかベルゼブモンは彼女の頭に手をのせて言う。
「ぬっ?貴様、何のつもりだ?」
「そうがっかりすんじゃねえよ。てめえらが弱らせていたからこれだけで倒せたんだ。流石、あのバカ(デュークモン)が短い間に鍛え上げたことだけはあるな。」
「う、うるさい!べ、別にがっかりなど・・・・・」
「あのバカ?」
「あぁ・・・・それはこっちの話だ。それよりも先に進めるようになったようだぜ?」
ベルゼブモンがそう言うと目の前にゲートが出現する。
「コイツをくぐって行けばルーチェモンのところへ行けるってわけか。無理やり突破していくよりもよっぽど効率がいいぜ。」
「そろそろ僕たちも行かないと。」
シャルに押されながらもラウラは前に進んで行く。
「ラウラ、今は一夏たちに合流することが・・・・・」
「分かっている。お前にも心配かけさせてすまないな。」
ラウラはメタルガルルモンを撫でるとゲートの中へと入って行った。
箒&リリモンルート
「がはっ!」
リリモンは血を吐き出す。ダークデュークモンはそんな状態のリリモンを踏みつけ、箒の方を見る。
「篠ノ之箒!姉が救出できてうれしいか?だが、それもここまでだ!」
ダークデュークモンはそう言うとバイオモンが入ったカプセルを取り出す。
「アイツ、まだカプセルを!」
「今度という今度は容赦せん!」
ダークデュークモンはカプセルを自分で割り、バイオモンを付着させる。するとダークデュークモンの体は液体のように溶け始め、倒れているリリモンに向かって落ちていく。
「ぐう!があぁ!?」
「アイツ!姉ちゃんに何するつもりなんだ!」
マグナアルフォースブイドラモンは拳を握り締めながらもその光景を眺めることしかできなかった。しばらくするとダークデュークモンの体は完全に溶けきり、液体はリリモンの体に吸収されていった。
「アイツ・・・・・まさか・・・」
箒は警戒しながらも紅椿を展開しなおす。倒れていたリリモンは起き上がり、箒の方を見るや不敵な笑みを浮かべる。
「そう・・・・・そのまさかだ。」
声はリリモンだったが明らかに別人のしゃべり方だった。よく見ると腹部の傷も完全になくなっている。
「コイツ!姉ちゃんの体を乗っ取りやがった!」
「フフフフッ、いくら貴様たちでも仲間には傷つけることはできまい!」
リリモンの体を乗っ取ったダークデュークモンは学ランを脱ぎ捨て甲冑を展開し身に纏う。
「貴様!リリモンの体から出ていけ!」
ビクトリーグレイモンはドラモンブレイカーで斬りかかろうとする。
「いいのか?そんなことをしたらこの娘が死ぬぞ?」
「・・・・・それでも!」
「それに例えこの小娘を殺しても私は分離すれば痛くも痒くもない。それでも殺すか?」
「くっ!」
「レイジ・オブ・ワイバーン。」
「ぐわあぁぁぁぁ!」
ビクトリーグレイモンはデュナスから発する光線に吹き飛ばされる。
「さあ、次はどいつから来る?」
ダークデュークモンはデュナスを担ぎながら箒たちを見る。
「できるはずがない・・・・・・・リリモンを攻撃することなんて・・・・・・・」
「箒姉ちゃん・・・・・・」
マグナアルフォースブイドラモンは束を庇いながらも心配そうに箒を見る。箒は武装をしまう。
「どうした?攻撃しないのか?」
ダークデュークモンは箒を蹴り飛ばす。ISの絶対防御があるとはいえ、その衝撃は凄まじく箒の体は勢いよく飛んで行った。
「ぐう・・・・」
「ほれ、どうする?このままだとお前も死ぬぞ?」
ダークデュークモンは箒のところへ飛んでいき彼女の首元にデュナスを傾ける。
「や、やめろ・・・やめてくれ・・・・・リリモン・・・・お前とは戦いたくない・・・・・」
「ふん、いくら喋ろうとも奴には届かん。」
ダークデュークモンはデュナスを持ち上げる。
「さよならだ!篠ノ之箒!愚かな虫けらが!」
「・・・・リリモン!」
箒は悔しそうに言う。
「もう駄目だ・・・・見ていられねえ・・・・」
マグナアルフォースブイドラモンは思わず目を瞑った。
「・・・・・・・・ん?」
いつまでも経ってもデュナスが箒の首を切断することはなかった。箒は恐る恐る上を向く。
「・・・・・き、貴様!まだそんな力が!」
ダークデュークモンは苦しそうな表情をしてデュナスを落とす。
「そ、そう簡単にうまくいくと思ったら・・・・・・・お、大間違いよ・・・・・」
「リリモン!」
今の一言で箒は理解した。
リリモンはまだ完全に取り込まれていない。今もダークデュークモンに抵抗しているのだ。
「ほ、箒・・・・・・・」
リリモンは自分の首にかかっている首飾りを外し、箒に渡す。
「これを・・・・・」
「こ、これって」
箒は首飾りのことに関しては一夏に聞いていた。だから、今、この場で自分に渡すことに思わず驚いた。
「あ、後は・・・・・よろ・・・しく・・・・・」
リリモンはそう言うと箒から離れてバーストモードを発動させる。
「何をする気だリリモン!」
「も、もう私は助からないわ・・・・・・だから・・・・・・あなたの手で・・・・・止めを刺して・・・・」
「そ、そんな!」
箒は思わず泣きたくなった。
出会って数カ月。
初めは一夏の恋人と言う認識で打ち解けず、悩んでいたが彼女と話していくうちに打ち解け、かけがえのない親友になったリリモンが自分に止めを刺してほしいと頼んでいるのだ。
「そんなこと・・・・・・できるわけないじゃないか!」
箒は泣き始めた。
「なんで友達をこの手で殺さなくちゃいけないんだ!」
「箒・・・・・」
「お前も一夏が好きなんだろ!だから帰って一緒に告白して決めてもらうって!これじゃ私の勝ち逃げじゃないか!」
「いい加減にしなさいよ!」
リリモンは思わず怒鳴った。
「今は個人のどうこうよりも世界の行く末の方が重要でしょ!」
「し、しかし・・・・・」
「アンタも私もここで死んだらイチカは余計悲しむに決まってんじゃないのよ!アンタが生き残らなきゃ誰がイチカのことを支えるのよ!」
「リ・・・・リリモン・・・・」
箒はリリモンの顔を見る。リリモンの顔も涙で濡れていた。
「こんなこと・・・・・・・アンタにしか頼めないじゃない。だから・・・・・お願い。」
「うぅうう・・・・・」
「・・・・・・・箒姉ちゃん、姉ちゃんの言う通りにしてやってくれ。」
マグナアルフォースブイドラモンは顔を伏せたまま言う。
「姉ちゃんは覚悟を決めたんだ・・・・・・奴の言いなりになるぐらいなら箒姉ちゃんに止めを刺してもらった方がいいって・・・・・・・兄貴を任せられるのは箒姉ちゃんしかいないって・・・・・・・」
箒は震えた声で言うマグナアルフォースブイドラモンを見る。
このままだとリリモンは再びダークデュークモンに乗っ取られて自分たちを殺しにかかる。
そして、自分たちも死ねば一夏も悲しむ。
それだけは避けたい。
だから親友の手で葬られたい。好きな男を任せられる人に・・・・。
それが彼女のせめての頼みだった。
「・・・・・・わかった。」
箒はそう言うと同時に両肩の展開装甲をクロスボウ状に変形させて武装「穿千」にして構える。
「一夏のことをよろしく・・・・・・・」
「あぁ・・・・お前と出会えて本当によかった。」
出力を最大にして標準を合わせる。
「くっ!このまま巻き込まれてたまるか!」
ダークデュークモンは死に物狂いでリリモンから分離しようとする。
「無駄よ・・・・・」
リリモンのバーストモードの影響かダークデュークモンの分離が止まる。
「く、くそ!こんな奴らに!こんな虫けら共に!」
「私たちが虫けらならアンタはそれ以下よ・・・・・・・・・。」
臨界点を超えたのかリリモンの体が燃え始める。
「うぅ・・・・うう!」
箒は涙で溢れる目を擦りながら穿千をリリモンに向ける。
「箒!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
箒は穿千から高出力のエネルギー波を発射する。
「ぬぐうわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ダークデュークモンはもだえ苦しむような叫びをあげながら消えていく。
そんな中リリモンは笑みを浮かべて箒を見る。
「さよなら、箒。アンタに会えて・・・・・・・・・・・よか・・・・・・・」
「うぅ・・・・・・・リリモン・・・・・」
攻撃を終えた後、箒は彼女の形見である首飾りを握り締めながら泣いていた。傍ではパートナーであるビクトリーグレイモンがせつない顔で彼女を見ていた。
「・・・・・・ごめん、箒。」
「うぅ・・・・・うう・・・・・リリモン・・・・・・リリモン・・・・・」
箒はしばらくの間、泣き続けた。
かけがえのない友の死を悲しみながら・・・・・・・。
サブタイトルの元ネタは超電子バイオマンの第十話のサブタイトル「さよならイエロー」から。
こちらでもタイトルの通り、メンバーのイエローフォーが仲間を庇って死んでしまうという回(こちらでは俳優の突然失踪が理由での回)。
デジモンって作品ごとにポケモンにはない「死」という概念があるから悲しくなるものです。
次回、「絶望への序曲(仮)」。
一夏とルーチェモンの最終決戦が始まる。