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ゲーム開始
IS学園 グランド
一夏たちはグランドの外に出てゲームの予告の時間を待っていた。
「・・・・・そろそろのはずなんだが。」
一夏は真剣な目で空を眺めていた。ルーチェモンの話ではゲーム当日にゲートを学園に繋げると言っていた。しかし、予告の時間まであと5分にもかかわらず現れる様子はない。
「あまりにも静か過ぎるわ・・・・・」
リリモンは不安そうに言う。それは一夏たちも同じだった。早朝は快晴だった空もだんだん黒い雲に覆われ、緊張感を感じるようになっていく。
「・・・・・・・・チビ。」
「ん?何、兄貴?」
一夏は隣に立っているブイモンに言う。
「リリモンと箒のことを頼んだ。二人の身が危なくなった時は全力で守ってくれ。」
「・・・・・・わかってるよ。でもさ、兄貴も負けちゃダメだよ。」
「ああ。」
一夏はヴリトラモンの姿へとなる。マントに身を包んでいる姿になるのはデジタルワールドを去ってからずいぶんのことだった。
「懐かしいわね、デジタルワールドを旅していたあの楽しかった日々のこと・・・・・」
「だから取り戻すんだ。この戦いで全てを。失った者たちのためにも。」
一夏は覚悟した顔で言う。そんな一夏の後姿を箒は心配そうに見ていた。
「・・・・一夏。」
そう思った矢先に空に異変が起こった。
黒い雲が渦を巻くように動き出し、ブラックホールのような光景を作り出したのだ。その渦の中心は広がっていき、やがて青く不気味な光が差した。
『フッフッフッフッ、どうやら皆様方全員お待ちしておられたようですね。』
光りの先からルーチェモンの声が聞こえてくる。一同は顔をしかめながら警戒する。
「ルーチェモン、ゲームの参加者はここに集まっている!お前の言うステージに案内してもらおうか!」
『やる気満々のようですね。結構、結構。では皆様方を世界を賭けたゲームの会場へとご案内しましょう。』
ルーチェモンの話が終わると一夏たちの周りが光りだし、渦の中へと引き寄せられるかのように吸い込まれて行った。その光景はデジラボ内からでも見ることができた。
「・・・・・・行ったか。」
「無事に戻ってきてくれればいいが・・・・・」
ロイヤルナイツのメンバーたちは心配そうにその映像を見る。その中には車椅子に座っているシャルロットの父であるマーク、そしてノエルとエリザも見ていた。
「シャルロット・・・・・・」
「シャル、何があっても絶対に諦めちゃダメよ・・・・」
その中でミレイはただ一人冷静に見ていた。
「この戦い・・・・・・何か裏がありそうね・・・・」
ゲート内
一夏たちは暗い空間の中を移動していた。かつてデジタルワールドから人間界へ移動したときのゲートとほぼ同じだが違いと言ったらすぐ近くで蠢くイーターたちぐらいだ。イーターたちは不気味に目を光らせながら一夏たちをとらえようと待ち構えている。
「・・・・・・・・・」
『御心配には及びませんよ。あなた方が通っているゲートは特殊なシールドで防御していますから。イーターに接触する危険はありません。』
しばらく進んでいくと目の前の道は5つに分かれた。
『ここからは各々方が考えた構成でお進みください。一つの道には織斑一夏、あなた一人だけで来てもらいます。それがあなたの言った条件ですからね。』
一夏は黙って中央の道を進んでいく。
「一夏!」
箒は思わず駆け寄ろうとするが何か見えない壁でもあるのかそれ以上進むことができなくなっていた。
「な、何なんだ!?これは!?」
「箒。」
一夏は箒たちの方を向く。
「これからの戦いは、みんな今まで以上に激しい戦いが予想される。だが忘れてはいけない。」
一夏は真剣な目で全員を見る。
「俺たちの戦いにはこの世界、デジタルワールドの未来がかかっている。負けは絶対に許されない。もちろん生きて帰れる保証もない。だが俺たちはやれるだけのことはやった。だから自分の力を信じて戦ってほしい。」
「一夏・・・・・」
「みんな、また生きて会おうぜ。」
一夏はそう言うと後ろを向いて歩き始める。
「兄貴!俺の進化は!?」
「おっと、いけねえ。忘れるところだった。」
一夏はデジヴァイスを取り出しブイモンに向かって翳す。ブイモンは一瞬にしてマグナアルフォースブイドラモンへと姿を変える。一夏はそれを確認するとまた後ろを振り向いて歩いて行った。箒たちはその後ろ姿を寂しそうに見るがしばらくすると消えてしまった。
「・・・・・・ここにいる全員に言っておく。今回の戦いは織斑の言うように私たちの世界の運命がかかっている戦いだ。試合の勝敗とは違い最悪な場合命を落とす。全員決して命を無駄にするな。」
千冬は全員の前で敢えて言う。
「では組み合わせは以下のとおりに篠ノ之・リリモン・ブイモンチームとオルコット・凰チーム、私とジャスティモン・エンジェウーモンチーム、デュノア・ボーデヴィッヒチーム、更識姉妹チームで行く!全員、生きてまた会おう!」
箒たちはそれぞれの道に別れて進んで行った。
一夏ルート
一夏は暗く閉ざされた道をひたすら歩き続けていた。周りは未だにイーターが蠢いて気味の悪い動きをしていた。
「・・・・・・・箒、リリモン、チビ、千冬姉、そしてみんな・・・・・死ぬなよ。」
やがてゲートの出口が見え始め、出てみるとそこは薄暗いダークエリアの七大魔王の拠点の一つであるルーチェモンの居城だった。目の前ではルーチェモンが紅茶を飲みながらくつろいでいた。
「お待ちしておりましたよ。」
ルーチェモンは笑みを浮かべながら言う。一夏は早速オメガソードを展開する。
「そう早まらないでください。私とあなたの戦いはこのゲームのメインイベント、お楽しみのようなものなんですよ?」
「ふざけているのか?」
一夏はオメガソードをルーチェモンの首に向ける。
「まあまあ、落ち着いてください。せっかくここに来たのですからそこに座ってお茶を飲みながら他の方々の戦いでも拝見しようじゃありませんか。」
「何!?」
一夏は上空を見る。そこにはそれぞれのゲートを移動中の箒たち姿が映されていた。
「これは一体・・・・・」
千冬・ジャスティモンルート
千冬たちはゲートを歩き続けていた。
「ジャスティモン・・・・・私、なんか怖くなってきたわ・・・・」
エンジェウーモンは体を震えさせながら、ジャスティモンに寄り添う。
「心配するなって!いざという時は俺が守ってやるからさ!」
「ジャスティモン・・・・・・」
「エンジェウーモン・・・・・」
「・・・・・・二人ともイチャイチャしているところ悪いが気を引き締めてくれ。」
二人の後ろを歩いている千冬はジエスモンに抑えられながら言う。危うくいつもみたいに出席簿で叩くところだったからだ。
「わかってるって、千冬の姐さん!姐さんのことはしっかりサポートしますよ!」
「・・・・・今更思うがその姐さんというのはやめてくれないか。」
「いいじゃないですか!俺の恩人たるヴリトラモンのお姉さん、だから尊敬を意味して姐さんで!」
「はあ・・・・・・・・こいつは私のクラスの馬鹿どもよりもバカかもしれん・・・。」
「い、いいじゃないかな?こういうのは頼りになると思うし。」
四人はやがて出口に出た。目の前を見るとギリシャの遺跡をモチーフにしたような壊れた建物密集するエリアだった。
「ここが私たちの戦場か・・・・・・ん?どうした二人とも?」
千冬は固まってしまったジャスティモンとエンジェウーモンの方を見る。ジャスティモンは辺りを見回す。
「・・・・・・ひ、光の街?」
「光の街?どういうことだ?」
「昔、私が住んでいたデジタルワールドの一つの街で光のスピリットが保管されていた場所なんです。」
「そして、俺が滅ぼした街・・・・・」
ジャスティモンは先ほどの態度とは打って変わって暗い雰囲気を漂わせていた。そのとき、離れたところから声が聞こえてきた。
「そう!ここがあなたを暴走への一途を辿られた始まりの場所です!ジャスティモン。」
千冬たちは顔を上げる。少し離れた山の上でメルキューレモンと赤いローブを纏ったデーモンが立っていた。
「メルキューレモン!てめえ!!」
ジャスティモンはこぶしを握り締めてメルキューレモンを見上げる。しかし、千冬はそのメルキューレモンの目の前にいる車椅子に乗っている包帯だらけの少女を見て驚いた表情をしていた。
「あれは・・・・・」
その少女は無表情で生気を感じさせない目をしていたが包帯に隠れているところを除けば千冬そっくりだった。
「どうしたんですか!?姐さん!?」
ジャスティモンは唖然としている千冬に戸惑う。そんなジャスティモンたちに対してデーモンは笑いながら言う。
「ハッハッハッハ!!人のことより自分のことを心配した方がよいのではないか、ジャスティモン?」
「うるせえ!七大魔王に言われるほどまだ有名じゃねえよ!」
「言うところそこ?」
「あれはもしかして・・・・・・・マドカ?いや、そんなはずは・・・・・・」
一夏ルート
「マドカ?」
千冬たちの映像を見て一夏は不思議そうに言う。
「聞いていないのですか?消息を絶ったご両親と妹のことを。」
「何?」
一夏は何を言っているのか全然わからなかった。
ジャスティモンが千冬を姐さんと呼ぶのは恩人である一夏の姉という意味での尊敬の現れです。
次回、織斑家の過去が明かされる?
多分オリジナル設定についてこれなくなるのでご注意を。