それでも読む方はどうぞこのままお進みください。
ナノモンの研究所
「まさかここまで守りが硬いとはな。」
一夏は分解され自分に取り込まれていく青いメタルグレイモンを見ながら言う。一夏たち三人が研究所に向かう途中、タンクモン、メガドラモン、サイクロモンなどのデジモンが襲ってきたがどれもがナノモンに強化改造された上に理性を失っていた。
「私も以前何体かと戦ったことがあるがまさかここまで強化しているとは・・・」
アンドロモンは恐ろしそうに言う。一夏は周りを見ると気づく。
チビモンがいつの間にかいなくなっている。
「あのバカ。結局足手まといになっているじゃないか。」
「しかし、ナノモンの研究室ももうすぐだ。中のデジモンはほとんどいなくなったようだから後は捕虜になっているデジモンだけだから早く済ませよう。」
そう言うと二人は奥へと進んでいく。
ナノモンの研究室 牢屋
「兄貴~兄貴~!」
一夏とは別の通路でチビモンは迷っていた。
「うえ~ん、迷っちゃったよ・・・。」
チビモンは泣きながら一夏を探し求める。そのとき、牢屋から物音がした。
「うわあ!」
チビモンは思わず逃げようとする。
「まっ、待ってくれ!」
牢屋から声がする。チビモンは恐る恐る近づいて牢屋を見るとそこにはヌメモンが捉えられていた。
「うわあ~~!!ヌメモンだ!」
チビモンはすぐに身構える。無理もない、ヌメモンはウンチを投げつける下品なデジモンなのだから。
「待ってくれよ!俺たち閉じ込められているんだ!助けてくれ!」
「え?」
チビモンは牢屋の中をよく見る。牢屋にはヌメモンだけではなくモノクロモン、パグモン、アグモン、ベジーモンなど多くのデジモンが捕らえられていた。
「その辺に鍵が掛けてあるだろ?頼むからここから出してくれ。」
チビモンはすぐに鍵を見つけると牢屋から捕まったデジモンを開放するのであった。
ナノモンの研究室
一夏とアンドロモンは暗い部屋に入って行った。
「暗いな。」
「出て来い、ナノモン!これ以上悪行を重ねるな!」
アンドロモンが叫ぶと部屋の最深部が光りナノモンが姿を現す。
「まさかここまで来るとは意外だったよ君たち。」
「ナノモン、頼むからもうこんなことはやめてくれ!昔のお前はこんなことする奴じゃなかったはずだ。」
「変わったのだよ、アンドロモン。所詮この世は弱肉強食、強い者だけが生き残るのだよ。かつては君が強者で私が弱者だった。」
ナノモンはアンドロモンの頼みに答える気はなかった。
「しかし、今は違う。私は自分の持つあらゆる知識を活かし遂には合成デジモンの誕生に成功した。」
「合成だと!?」
「紹介しよう、私の最新作合成デジモン第一号キメラモンだ。」
ナノモンが言うと同時に後ろのキメラモンが映し出される。
「こ、これは・・・」
アンドロモンはキメラモンの姿に驚く。
デビモンの腕、グレイモンの胴体、ガルルモンの脚部、モノクロモンの尾、エンジェモンとエアドラモンの翼、スカルグレイモンの腕、カブテリモンの頭部。
それは見る限りデジモン版のフランケンシュタインと言ってもおかしくないものだった。
「どうだね?素晴らしいだろ?研究の途中ですべてを完全体のパーツにすることはできなかったが私の研究の成果のおかげで少なくとも究極体に近い強さになった。これで私は強者だ!」
ナノモンは狂気に満ちた笑いをする。
「・・・・・」
一夏はキメラモンを見つめる。
あまりにも醜い。かつて自分の姉の知人である篠ノ之束もISという狂ったような物を作り世界を作り変えてしまったが目の前にいるナノモンはそれ以上に見えた。
「・・・・・狂っている。」
「何!?」
「?」
一夏の一言にアンドロモンは驚く。
「自分の才能に溺れてこんな物を造るなんて狂っている。それに弱いというだけで嫉妬しているとは子供と同じ発想だ。」
「黙れ!貴様に私の何がわかる!」
「少なくとも嫉妬していたところまでは同じかもな。だが、それ以外の物はクズにまで堕ちた貴様よりはマシだ。」
「この名無しデジモンが!キメラモン!最初の標的はアイツだ!データのひとかけらも残すな!」
ナノモンの命令と同時にキメラモンの目が光り動き出す。
「すまないな、アンタまで巻き込んじゃって。」
一夏はアンドロモンに謝罪する。
「別に構わない。どの道こうなっていたのかもしれんのだからな。」
「やれ!この二人を粉々に消し飛ばせ!」
「ギャアアアアアア!」
キメラモンは一夏たちに向かって襲い掛かる。
ナノモンの研究所 牢屋
「やった!俺たちは自由になったんだ!」
ヌメモンたちは喜びながら飛び跳ねていた。
「ところでナノモンの部屋知らない?俺ナノモンのところに行きたいんだけど。」
「ナノモンだって!?」
チビモンの言葉を聞いた瞬間、ヌメモンたちは驚く。
「やめた方がいいぜ、殺されちまう!」
「アイツのせいで酷い目にあわされたし逃げた方がいいぜ!」
「でも、兄貴たちが・・・・」
「今頃やられてるさ!早く逃げないとまずいぜ!」
一同は逃げるように勧めるがそのとき空っぽになったはずの牢屋から声がした。
「逃げようが戦おうが無駄さ。」
チビモンが牢屋を除くとそこにはおっさん顔のデジモン、ナニモンが外には出ずタバコを吸っていた。
「何やってんだよ、ナニモンのおっさん!早く逃げねえと・・・」
「逃げてどうする?」
「え?」
「逃げてもどの道ナノモンに捕まるが落ちさ。それにそこにチビ。お前の兄貴がいくら強くてもナノモンが作ったキメラモンには敵いはしねえさ。」
そう言うとナニモンはそっぽを向いてまたタバコを吸う。
「いやだ!」
「!?」
チビモンはシーンとした空気の中叫んだ。
「いくら敵わないからと言って俺は兄貴を見捨てて行くなんてことできないし、このまま逃げたらあの町はナノモンにメチャクチャにされちまう!だからどうしても行かなきゃいけないんだ!」
チビモンの言葉に捕まっていたデジモンたちは唖然としていた。そして、ナニモンはチビモンの方を見ながら聞く。
「おい、チビ。」
「チビモンだい!」
「チビモン、おめえの言っていること本気で言っているのか?」
「そうだ!だから俺は兄貴たちの所へ行かなきゃいけないんだ!」
チビモンの言葉にナニモンは思わず圧倒される。
(コイツ、小せえくせになんて度胸だ。)
ナニモンは牢屋から出るとチビモンを頭の上に乗せて歩き始める。
「おい、おっさん!どこへ行くんだ!?」
ベジーモンは驚いた顔で言う。
「ちょっとこのチビに付き合ってくる。おめえらは先に逃げてな。」
そう言うとナニモンは奥へと走って行った。
「どこへ行くんだ?おっさん?」
「なに、おめえの兄貴次第だが勝てる方法が一つだけあるのさ。」
ナノモンの研究室
「狐炎龍!」
一夏は体を丸めて高速回転し炎の龍をキメラモンに直撃させる。
「どうだ!」
しかし、爆風の中から傷を負いながらもキメラモンが体当たりし、一夏に直撃させる。
「グハァ!」
一夏は壁に激突し吐血する。
「ハハハハハハハ!いいぞ、キメラモン!そのまま奴を引き裂いてしまえ!」
キメラモンは四本の腕で一夏を捕らえ、引っ張る。
「ぐわああああ!」
「ハハハハ、いい響きだ!これぞ私が求めた強さだ!」
ナノモンは笑い続ける。しかし、そこにミサイルが飛んできてキメラモンの顔に直撃する。怯んだ隙に一夏は脱出する。
「アンドロモン、私の邪魔をするな!プラグボム!」
ナノモンは小型のミサイルでアンドロモンを攻撃する。
「ぐああ・・・」
アンドロモンはミサイルに仕込まれていたウィルスによって動けなくなる。
「ブースタークロー!」
一夏は自分の右腕を先ほどの戦いで倒したメタルグレイモンのに変え、キメラモンの背後を攻撃する。キメラモンはエンジェモンの翼をもがれ、地上に落下する。
「おのれ、だがたかが飛べなくなったぐらいで!」
ナノモンはキメラモンに新たな指示を送ろうとしたとき異変が起きた。キメラモンがナノモンを捕まえたのだ。
「な、何をするキメラモン!?」
ナノモンには何が何なのか訳がわからなかった。すると、今までしゃべらなかったキメラモンの口が開いた。
「オマエ、モウイラナイ。俺、モウ誰ノ命令モ受ケナイ。」
キメラモンはそう言うと口を開いてナノモンを近づける。
「や、やめろ!?私はお前の生み親なんだぞ!やめろ!やめろおおおおおおおお!!」
ナノモンの叫びも空しくキメラモンはナノモンを食い殺した。捕食した影響なのか翼が再生される。しかし、それはエンジェモンの物ではなくデビモンの物だった。
「な、なんて野郎だ・・・。」
一夏は息切れしながらキメラモンを見る。キメラモンは続いての標的を一夏に向ける。
「次ハ、オマエダ。」
キメラモンは一夏に向かってメガフレイムを放つ。
「くっ!」
一夏は飛行して避けるがそれも束の間、尾で叩き落とされる。
「オワリダ!」
キメラモンはメガブラスターを放つ。
「ここまでか・・・・」
一夏は立ち上がろうとするが間に合わない。しかし、そのとき一つの人影が一夏の体を持ち上げその場から離れる。
「ナニ?」
キメラモンは不思議そうに下を見る。下にはナニモンとチビモンがいた。
「兄貴!助けに来たよ!」
「お、お前・・・・」
「感謝するならそこにチビの言うんだな。俺はあっちのアンドロモンを助けに行く。」
ナニモンはそう言うと動けないアンドロモンの方へ行く。
「兄貴、これ。」
チビモンは一挺の大型の銃と小さい置物のような物を一夏に渡す。
「これは?」
「ナニモンのおっさんが『これでキメラモンを倒せるのかもしれない』って持って来たんだ。」
一夏は置物のような物体を見つめる。それは赤い角の生えた戦士の鎧のようなもので何か暖かく感じた。
「な、なんだが力が戻って・・・・いや、みなぎってくる。」
置物のような物は一夏の体に引き寄せられ、体の中へと取り込まれていった。すると一夏の体の傷は完全に癒え、大型の銃は右腕と一体化する。
「今の俺なら奴を倒せるのかもしれない。」
一夏は翼を広げてキメラモンに向かって飛び立つ。一方のキメラモンは逃げているナニモンたちを攻撃していたが一夏に気づくと攻撃対象を変える。
「死ネ!」
キメラモンは火球を連続で放つが一夏は紙一重に避けていく。
「馬鹿ナ!?奴ノデータハ既ニ登録済ミノハズ。ナノニナゼ避ケラレル?」
一夏はキメラモンに向かって銃を連射する。するとキメラモンの体が見る見る傷ついていく。
「ソンナハズハナイ!俺ハ最強ノハズナンダ!貴様ゴトキニ負ケルハズガナイ!」
キメラモンは一夏に突っ込んでいく。
「お前はいてはいけない存在なんだ。」
一夏は銃にエネルギーを収束させていく。
「消エロ!」
キメラモンが近距離まで近づき一夏をスカルグレイモンの腕で引き裂こうとする。
「兄貴!」
チビモンが下で叫ぶ。
「メテオバスター!!」
銃から高エネルギーのビームが放たれる。
キメラモンの体は徐々に分解されていく。
「ナゼダ!ナゼ負ケタンダ!?俺ハ強イハズナノニドウシテ!?ナゼ・・・・・」
キメラモンの体は完全に消滅し、一夏の体へと引き寄せられていく。
「こいつをロードするのだけはごめんだな。」
一夏は取り込まず、粒子は自然に消滅していった。
「た、倒したのか?キメラモンを。」
アンドロモンはナニモンの肩に捕まりながら言う。
「どうやら本当に倒しちまったようだな。全く、驚くばかりだぜ。」
ナニモンは感心しながら言う。
「スゲエ・・・・兄貴、やっぱりスゲエよ・・・。」
一夏は三人に見守られながら着地する。すると銃は消滅する。
「・・・・・勝ったか。」
一夏は安心したのかその場で尻もちをついた。
「結局、間違った奴は死ぬまで直らないか・・・。」
一夏はそう言いながら先ほどの攻撃で空いた天井の空を見る。空は青く澄み渡り、美しく見える。
「兄貴ー!」
チビモンが走って近づいてくる。
「やっぱ兄貴スゲエよ!あのキメラモンをやっつけちまったなんてさ!」
「まあな。そう言えばチビ、なぜあの置物が俺に必要だったと思ったんだ?」
「ええっとそれは・・・・・・わかんない。何となく持って来ただけ。」
「そ、そうか・・・。」
「ところで俺役に立った?」
チビモンは歩いている一夏の頭の乗りながら聞く。
「まあ、役には立ったな。」
「よっしゃあ!」
「でも迷子になるからそれでマイナスだな。」
「そんな~。」
そんなことを話しながらも四人は街へと帰って行った。
今回の技
狐炎龍=キュウビモン
ハイブリッドアームズ=キメラモン(本編呼称なし)
ガトルングミサイル=アンドロモン(本編呼称なし)
プラグボム=ナノモン
メガブラスター=カブテリモン
ブースタークロー=メタルグレイモン
メガフレイム=グレイモン
メテオバスター=本作オリジナル
・メテオバスター
ヴリトラモン(一夏)の腕と銃が一体化した武器。デザイン的にはパイルドラモンのデスペラードブラスターがベルゼブモンブラストモードみたいに装備した物。現在再登場は未定。
・注意 今回出てきた置物(炎のヒューマンスピリット)ですが一夏は事情があってアグニモンにはなりません。
今回でかなりの読者が呆れることが予測されます。次回があればその後の話も作る予定です。では、機会があればまた。
チビモン「俺まだ一度も進化していないんだけど・・・・(´・ω・`)」