次の話ぐらいで臨海学校編を終了しようと思います。
付いて来れない人は急いで引き上げましょう。
海岸
「急げ急げ~!」
海上を移動している兎のような鎧と言ってもおかしくないような物体が付き進んでいる。
「待ちなさいよ、ラピッドモン!」
その後ろを甲龍を装備している鈴が追いかける。更にその後ろにはホーリーエンジェモン、バードラモン、タオモンなどが続いていた。
「まさか本当に進化できるなんて思わなかったよ。」
シャルロットは進化したタオモンを見ながら言う。
「私もここまで進化するのは初めてだ。」
「ピヨモンも進化できたのは流石に驚きましたわ。」
「でも、一番驚くのはあれよね。」
鈴はしかめっ面で前方を見る。そこにはシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラと全身がほとんど金属で覆われたメタルガルルモンが高速で移動していた。
「あれって究極体よね?アイツだけどうしてあそこまで進化できるのよ?(汗)」
「ボーデヴィッヒさんによると鍛え方が違うと言っていましたけど・・・・」
「どんな鍛え方しているのよ・・・・」
「前方に何か見えてきたぞ。」
ラウラは速度を遅くし停止する。全員はその場で止まると目の前の出来事に驚いていた。目の前では巨大なアーマゲモンと竜の顔を持った騎士カイゼルグレイモンが睨み合っていた。そして、彼の後方には箒たちがいる。
「よかった、篠ノ之さんたちは無事のようですわ。」
「でも、あのごっつい鎧騎士は誰?」
鈴たちはカイゼルグレイモンを見ながら箒に合流する。
「箒~!助けに来たよ~!」
ラピッドモンは慌ただしく言う。
「みんな来てくれたか!」
「一夏は!?見た限りいないようだけど・・・・」
「あれが一夏だ。」
箒はカイゼルグレイモンに指を指す。全員一斉に驚いた顔になる。
「あ、あれが一夏!?」
「あんなに大きくなるものなの?」
「進化であそこまで変化するんだ・・・・そりゃあ、パタモンのそうだったけど・・・」
全員の会話にセシリアは困惑する。
「ど、どういうことですの!?あれはもしかして一夏さんの炎龍の第二移行ですの!?」
「あっ、そう言えばセシリアには教えていなかったね。」
シャルロットはできるだけセシリアが混乱しないように説明する(結局混乱したが)。
「うおおおおおおおお!!!」
一夏はアーマゲモンに向かって一気に接近して顔を殴る。巨体に似合わずアーマゲモンは吹っ飛ばされるがすぐに態勢を立て直し、背部と「銀の鐘」から光弾を発射する。一夏は高速移動で回避しアーマゲモンの尾を掴み、ジャイアントスウィングをしたうえに海面に向かって投げた。
「グワアアアアアア!!」
アーマゲモンは怒り、アルティメットフレアを放つ。一夏は背中から龍魂剣を引き抜くとアルティメットフレアを真っ二つにし、突き進んでいく。
「ねえ・・・・あんなのあり?」
鈴は隣にいるメンバーたちに言う。
「あれほどのエネルギー波をあんなやり方で防ぐとは・・・・」
「いくらなんでも無茶し過ぎだと思うけど・・・」
「まるでドラ〇ンボー〇の戦いだな・・・。」
一同はそれぞれの意見を言いながら一夏の様子を見る。
「獣王拳!」
一夏は拳に気を込めてアーマゲモンの頭部に直接放つ。怯んだアーマゲモンの隙を利用して一夏は龍魂剣でアーマゲモンの胴体の中心部を突き刺した瞬間、奇妙な現象が起こった。
「何?」
一夏が気がついたとき目の前は真っ暗な空間の中に立っており目の前で戦っていたはずのアーマゲモンはどこにもいなかった。
「馬鹿な。これは一体全体・・・・」
一夏は飛行しながら移動するとどこからか鳴き声が聞こえてきた。
「この声・・・・・もしかして・・・・」
一夏は方向を変更して移動する。すると目の前に真っ白なシャツを着て、背中に大きな翼を生やした福音をイメージしたような少女が泣いていた。
「ごめんなさいマスター・・・・・本当にごめんなさい。」
「あの少女はまさか・・・・福音の意思?」
一夏は少女の目の前に降り立つ。少女は突然現れた一夏に驚く。
「ひ、ひい!」
「おい、お前は福音の意識なのか?」
「あ、ああ・・・・」
「あ、突然現れてすまない。お前は福音の意思なのか?」
「は、はい・・・・」
突然現れて驚かしたことを謝罪する一夏に少女は頷く。
「まあ、見た目はこうだが俺はお前の敵じゃない。お前とお前のマスターを助けに来たんだ。」
「で、でもその恰好・・・」
「見覚えがあるのか?」
「昨日の夜、貴方に似たような連中が私のコアのプログラムに変な卵を送り込んだの。そのときは単なるデータだったんだけど今日になって化け物が生まれて私のデータを壊しながら成長して・・・・」
「似たような連中?おい、それはどんな奴らだった?」
「一人はあなたとは似て龍のような顔をしていて、他の人は西洋騎士の甲冑のような頭、そしてリーダーみたいなのは獅子をイメージしたような奴らだったの。」
「獅子?」
一夏は一つ思い浮かぶことがあった。獅子のイメージをした騎士。
「まさかだとは思うが・・・・」
「う!うう!」
福音は突然頭を押さえる。
「どうした!?」
「またあの化け物が私の中に・・・・・い、いやああああああああ!!」
「おい!・・・・う、うわあああああ!!」
一夏は強制的にその空間から追い出されていった。
「うおお!?」
一夏はアーマゲモンに振り落とされ、墜落するところを箒に受け止められる。
「大丈夫か一夏?」
「すまないな、もう大丈夫だ。」
「グオオオオオオオ!!!」
目の前にいるアーマゲモンは咆哮を上げると徐々に巨大化し始めた。
「アイツまさかさらに成長しようというのか!?」
「どうやらその様だな、このままだとパイロットを助けることができなくなる。だが、このままおめおめと引き下がる俺じゃない。」
一夏は龍魂剣を構え直すとアーマゲモンに向き合う。そこへ鈴たちが来る。
「一夏、冗談言っている場合じゃないよ!?アイツは強すぎて私達じゃ歯が立たないって!」
「動いていない今が引き上げるチャンスですわ。」
鈴たちは撤退を勧めるが一夏の決意は変わらなかった。
「俺がアイツと接触したとき、福音が助けを求めていた。逃げればアイツのことを裏切ることになる。」
一夏は一同の方に向き直る。
「みんな、すまないが俺に力を貸してくれ。はっきり言って俺一人の力ではアイツを倒すことは不可能だ。みんなの力がどうしても必要なんだ。頼む。」
鈴やセシリアは戸惑うが箒は真っ先に答えた。
「私は一夏が言うのなら協力する。いくら暴走したとかデジモンに取り込まれたから手を付けられないからと言って見殺しにすることはできない。」
「俺も箒の意見に賛成だ。やるだけやってみよう。」
箒の言葉にラウラ、簪、シャルロットも頷く。
「私も軍人としてこの場に奴だけ残すわけにはいかんな。」
「みんなで戻らなくちゃ話にならないし。」
「僕もできる限る手伝うよ。」
残されてしまった鈴とセシリアは困った顔をしていたがパートナーの方を見て考えを改める。
「一夏さんだけ残すなんてできませんわ。」
「こうなったらとことんやらないとね!」
「ありがとうみんな。」
すると一夏のデジヴァイスが光りだす。光はエクスブイモンにあたり体が大きくなり始める。
「これは・・・・超進化か?」
「エクスブイモン、超進化!」
エクスブイモンの体は大きくなり始め、翼はさらに大きくなり肘には剣の様は刃が生える。
「エアロブイドラモン!」
エアロブイドラモンは自分の進化に驚きながらも一夏を見る。
「行くぞチビ!」
「分かった兄貴!」
全員で巨大化しつつあるアーマゲモンへの攻撃を始める。
「行くぞ!メタルガルルモン!」
「了解!」
ラウラとメタルガルルモンはレールガンとミサイルを発射しアーマゲモンの目をそちらに向ける。アーマゲモンはすぐにブラックレインを展開し、これを全て相殺させる。
「ヘブンズゲート!」
密かに背後に回っていたホーリーエンジェモンは空中に円を描くとゲートが現れ、アーマゲモンは亜空間へと引きずられていく。
「奴に効くか分からんが・・・・」
ラウラは一気にアーマゲモンに接近しAICを展開する。完全にとまではいかなかったがアーマゲモンに動きは一気に鈍った。
「今だ!」
一夏の指示と同時に全員はアーマゲモンの胴体の中央部に総攻撃を仕掛ける。
「トライデントガイア!」
「ドラゴンインパルス!」
「メテオウィング!」
「梵筆閃!」
「ゴールデントライアングル!」
更に箒たちの一斉攻撃でアーマゲモンの甲殻にひびが入る。
「一夏!」
「うおおおおおお!!!」
一夏は龍魂剣を振り下ろしアーマゲモンの甲殻を砕き中に腕を突っ込む。予想外の出来事にアーマゲモンは抵抗しようとするがラウラに変わって、メタルガルルモンがコキュートブレスで手足を凍らせた上にタオモンが結界を張り動きを完全に封じてしまった。
「待ってろよ・・・・・もうすぐ・・・・!これだ!」
一夏はとらえたものを引きずり出す。既に福音は待機状態になっており、パイロットは気を失っていた。
「一夏、早く離れて!私の力でも限界だ!」
タオモンが言うと同時にアーマゲモンを固定していた氷と結界が解ける。コアを抜かれたアーマゲモンは縮小し始め、同じ種族のディアボロモンに退化する。
「姿が変わりましたわよ!?」
「完全体に退化したのか?」
「いや、本来はあの姿が究極体なんだ。」
「え~!それってまだ危ないってことじゃん!」
「いや、よく見ろ。」
よく見るとディアボロモンの顔色はかなり悪そうだった。
「大方コアが抜かれたせいで大半のエネルギーはなくなって弱っているんだ。」
「じゃあ早く止めを・・・」
「待ってくれ。元々は何の悪意もなしであんなことをしたんだ。」
「ではどうするつもりなんだ一夏?」
一夏は自分のデジヴァイスを取り出す。
「やったことはないがコイツの悪意のあるデータだけスキャンする。そうすれば普通のデジモンに戻るはずだ。」
そう言うと一夏はパイロットを箒に任せてディアボロモンに近づく。デュアボロモンは抵抗しようとするがもう既に力がなくなっているため攻撃することができなかった。
「その穢れた魂を・・・このデジヴァイスが浄化する!」
一夏のデジヴァイスが光りだしディアボロモンは光に包まれる。するとコードのような物がディアボロモンを多い、一瞬ではあったが周辺を眩い光に包まれた。箒たちが目を開けるとそこにはすでにディアボロモンの姿はなく一夏の姿だけがあった。
「一夏、あのデジモンは?」
「これだ。」
一夏は自分の両手を見せる。そこには小さなクラモンが眠っていた。
「なんか意外とかわいいかも・・・・」
鈴はじっとクラモンを見つめる。
「信じられませんわね。こんなに小さい生き物がさっきまで戦っていた怪物だったなんて・・・・」
「でもさ、私達とて考えを誤ればパートナーさえもあの怪物のようにしかねない。」
ラウラはそう言いながらメタルガルルモンを見る。セシリアはバードラモンを見ながら言う。
「もし、私も悪い考えを持っていたらピヨモンもあんな怪物に・・・・」
「そんなことはないと思うよ。セシリアは私に優しいし、私のことを本当の家族のように大事にしてくれるから。」
バードラモンはセシリアに優しく言う。
「取り敢えず戻ろう。織斑先生たちが心配しているだろうからな。箒、重いだろうからコイツと取り換えよう。」
一夏はクラモンを助けたパイロットと取り換えようとする。
「大丈夫だ。このぐらいなら私でも運べる。一夏はさっきの戦いで疲れているから無理しないでくれ。」
「そうか、ならその言葉に甘えさせてもらう。」
一夏はエアロブイドラモンを見る。
「やっと完全体まで進化できるようになったな、チビ。」
「うん!これでデジタルワールドにいるリリモンとライラモンの姉ちゃんにちゃんと合わせる顔ができたぜ!」
エアロブイドラモンが喜んでいると各パートナーデジモンは突然光りだす。
「な、なんだ!?」
一夏たちは驚きながら見ていたがエアロブイドラモンたちはみんなチビモン、アグモン、ツノモン、トコモン、ポコモン、グミモン、ピョコモンに退化してしまった。突然の退化に全員驚いたが慌てて自分のパートナーを回収した。
「箒、助けて~!!(汗)」
一匹だけ成長期のアグモンは箒の足に掴まりながら叫ぶ。箒は一旦福音のパイロットを鈴に持ってもらい、アグモンを背中に移動させる。
「どうやら全員エネルギーを使い過ぎて退化したよだな。」
「そんな~!やっと完全体にまで進化したのにまたチビモンからやり直し~!?」
一夏の肩の上でチビモンはしょぼんとする。
「そう落ち込まないでよチビモン。」
ツノモンがチビモンを慰める。
「そうだよ、しばらくすれば元に戻るんだから。」
「僕もトコモンの時が長かったから気持ちはよく分かるよ!」
「み、みんな・・・・」
「さあ、帰ろう。」
一夏は全員その場を去って行った。その直後、ゲートが開き黒い影がじっと一同を見ていた。
「まさかアーマゲモンが敗れるとはな・・・・それにあのヴリトラモンの姿は初めて見た。もしやヴリトラモンは我らロイヤルナイツでさえも凌ぐ力を持つ危険因子かもしれん・・・・」
そう言い終わるとゲートは再び閉じ、海は再び静けさを取り戻した。
今回の技
獣王拳=レオモン
ヘブンズゲート=ホーリーエンジェモン
トライデントガイア=ビクトリーグレイモン
ドラゴンインパルス=エアロブイドラモン
メテオウィング=バードラモン
梵筆閃=タオモン
ゴールデントライアングル=ラピッドモン
コキュートブレス=メタルガルルモン
エクスブイモンはエアロブイドラモンに進化できるかどうか曖昧で迷っていましたがサイバースルゥースで進化できたと思うのでやってみました(間違っていたらすみません)。
次回は後始末的内容なのでご気をつけください。
それでは次回。