ヴリトラモン・ストラトス   作:赤バンブル

46 / 103
サブタイトルは関係ほぼなし。

今回も気に入らない方はすぐに引き上げることをお勧めします。

それでもいい方はどうぞ。


ハイパースピリットエヴォリューション

花月荘 宴会用の大座敷

 

「そんなことがあったのか・・・・・」

 

簪の報告を聞いて千冬は驚きを隠しながらも言う。

 

「それで一夏が時間を稼いでいます・・・。」

 

「炎龍と福音の反応がロストしたのはおかしいと思っていたがまさかISがデジモンに変化するとは予想外の事件だ。」

 

千冬は首をかしげながら考える。本来の一夏の話ではもしものことがあったら鈴たちを向かわせるようにと言われていたが簪の話によればアーマゲモンは福音と同化しているうえに搭乗者を人質にしているため迂闊に攻撃できない。

 

「困っているようだね~ちーちゃん?」

 

そんな千冬の所へまたもや束がひょっこりと顔を出す。

 

「・・・・何の用だ束?」

 

「またまた、いっくんたちがピンチなんでしょ?」

 

束はニヤニヤしながら千冬の顔を見る。一夏を心配している千冬は思わぬことを言う。

 

「束・・・・まさかだとは思うが今回の事件、お前が黒幕なんじゃないだろうな?」

 

「ひどいな~ちーちゃんは。いくら私でも我が子(紅椿)を傷つけるような行為をすると思う?」

 

「しかしな、このぐらいの芸当ができるのはお前・・・・」

 

「あの・・・・」

 

二人が会話している間にパタモンが困った顔をして言う。

 

「早くしないと一夏とブイモンたちが危ないんだよ。だから早く助けに行かないと・・・」

 

「織斑先生、早く二人の救援に私達を行かせてください!お願いします!」

 

簪は頭を下げてお願いする。千冬は戸惑うがこれ以上時間が過ぎると二人が危ないと判断し、決意を固める。

 

「仕方ない。更識は鳳、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒと共に織斑、篠ノ之の救助に向かえ!ただ恐らく福音はまだ近辺にいる危険性がある。くれぐれも注意して行動するように!」

 

「ちょっと待って、ちーちゃん。」

 

千冬が命令した直後に束が割って入るように言う。

 

「はっきり言うけど、あの個体の目を誤魔化していっくんたちを助けるのは難しいと思うよ?なにしろ究極体はそこら辺のデジモンじゃ敵わないほど強いからね。行ってもさらに被害が増えるだけだと思うよ?」

 

「だったら他に方法があるのか!?現に一夏の反応は福音の反応が消えると同時に消えているし、篠ノ之の反応は現場近辺の孤島で留まっている。それに奴はもはや生物だ。獲物を見つけるまでは探し続けるぞ?」

 

「そんなことがあろうかと思いましてね・・・・杏ちゃん。」

 

「はい、こちらです。」

 

いつの間にか来ていた杏子は持っていたケースを開け、そこからタグ端末のような物を見せる。

 

「なんだそれは?」

 

「束様がデジモン強化用に調整した進化プログラムです。」

 

「これをえ~っとカンちゃんだったかな?」

 

「は、はい!(かんちゃんって本音にしか呼ばれたことがないのに何でいうのかな?)」

 

「これを君たちのデジヴァイスにインストールすれば今よりももっと進化できるようになるよ。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「僕ももっと強くなれるの!?」

 

簪とパタモンは驚いた顔で言う。

 

「た・だ・し!このプログラムで進化できるのは一段階だけ!それも一回使ったらしばらく使えなくなるから気をつけて使うようにね。」

 

「束、これを使ったら救助の可能性はどのくらいになるんだ?」

 

「見積もっても60パーセントが限界かな。飽くまでも時間を稼いでいる間にいっくんたちを助けると言うのが前提だから。福音の搭乗者を救助するのを踏まえたらかなり下がるよ?」

 

「方法は?」

 

「はいはい、説明するから。杏ちゃん。」

 

束が言うと杏子は空中投影ディスプレイでアーマゲモンの映像を見せる。

 

「これが通常のアーマゲモン、これを今の奴と重ねて見るとおそらく奴の胴体の中心に福音のコアと一緒に搭乗者が囚われているんだよ。」

 

「さっきから気になっていたがなぜ福音はそいつに変貌したんだ?」

 

「ISのコアはネットーワークと繋がっているからね。おそらくデジタマの状態で潜入して暴走時にはすでにデータを捕食して成長していたんだよ。それがいっくんたちと交戦して形態移行しようとした衝動でその個体が急成長し内部から外部へと進出しちゃったってわけ。」

 

「お前ではないというんだな?」

 

「束さんはそこまで悪人じゃないよ~。ってわけで話を戻すけどアーマゲモンの巨体を維持するためにはこのコアが重要になるんだよ。」

 

「つまり、そこを攻撃して搭乗者ごと救出すれば・・・」

 

「倒せなくても一気に弱らせることはできるね。でも、それには究極体クラスの強さじゃないととてもだけど奴の体に傷を付けるのは難しいね。」

 

「そうか・・・。」

 

「束さんは今回はいっくんたちを優先して助けることを勧めるよ。流石に今回は分が悪すぎるからね。」

 

束はそう言うと部屋から去って行く。簪は残された端末を見ながら言う。

 

「織斑先生、やらせてください!可能性が低くても私は必ず一夏たちを救出します!」

 

「僕も頑張るからお願いします!」

 

二人は揃って頭を下げる。

 

「・・・・・どの道これしか方法はなさそうだな。更識は鳳たちを呼び集めてくれ。作戦開始は二十分後だ、分かったな?」

 

「はい!」

 

そう言うと簪はパタモンと一緒に部屋を後にして行った。

 

「一夏、篠ノ之・・・・・無事でいてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「ここはどこなんだ?」

 

一夏はヴリトラモンの姿で見知らぬ森の中を歩いていた。その森はどこかで見たような光景で辺りは霧に包まれていた。

 

「・・・もしかして俺は死んだのか?だとしたらここはあの世で・・・・」

 

そのとき、物凄い地震が起きた。一夏は目の前を見る。そこには一体の龍の姿が見えた。姿は自分とそっくりであった。

 

「エンシェント・・・・グレイモン・・・」

 

「待っていたぞ、我が遺志を継ぎし者よ。」

 

エンシェントグレイモンは一夏を見つめていた。

 

「俺があなたに会ったということは俺は死んだのですか?」

 

「それは違う。今のお前は瀕死の重傷を負い、この空間に流れ着いた。」

 

「この空間?」

 

「簡単に言えばスピリットの中に込められている我等十闘士の記憶の世界、また別のことで言えば貴様の夢の中と言ってもおかしくないだろう。」

 

「・・・・」

 

「どうやらまだわかってはいないようだな。貴様は一時的に気を失いこの記憶の世界へと飛ばされたのだ。」

 

「それは何とかわかりますが俺は一体どうすれば元いた場所に戻れるんですか?このままだと・・・・」

 

「わかっている。だが、そのままの実力で奴(アーマゲモン)に敵うと思うか?」

 

「それでも・・・俺は大切な仲間を守りたい。それに約束をしているんだ、必ず帰ってくるって。」

 

一夏の目には強い意志が込められているように見えた。それを見るとエンシェントグレイモンは安心したように言う。

 

「その心得があればあるのならもう心配いらんだろう。」

 

そう言うと同時にヴリトラモンの体が光り始める。

 

「これだけは言っておく。これから先、お前は更に強大な敵と戦うことになるだろう。だがそれを自分の力だけで何とかしようとは考えてはならん。仲間を信じろ。それがやがて強い力を生み出し、お前をさらに強くしていく・・・」

 

エンシェントグレイモンの周りに他のデジモンも姿を現す。

 

エンシェントイリスモン、エンシェントボルケーモン、エンシェントメガテリウムモン、エンシェントトロイアモン。五体のデジモンから光が発せられヴリトラモンを包み込んでいく。

 

「行け、我らの意思を継ぎし者よ。」

 

「その力を善に使うか悪に使うかは貴様次第だ。」

 

「己の力を信じろ。」

 

「その手で未来を掴め・・・・」

 

そこから一夏の意識は現実へと引き戻されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孤島

 

「・・・・・・・」

 

一夏はゆっくりと目を開ける。目の前では泣いて後なのか涙の流れた跡が顔に残っている箒の姿があった。

 

「一夏・・・・・戻ってきてくれたんだな・・・」

 

箒は思わずまた泣きそうになる。一夏は自分の姿を確認する。ヴリトラモンに比べ、龍の要素は減り騎士と言ってもおかしくない姿になり、背中には巨大な剣「龍魂剣」が装備されていた。

 

「よかった・・・」

 

箒は思いっきり一夏に抱き付き、結局泣いてしまった。

 

「心配をかけたようだな。」

 

一夏は箒を落ち着かせると空を見上げる。

 

「さて、散々待たせちまったようだから行かなくちゃな。」

 

一夏はゆっくりと浮遊する。

 

「い、一夏!」

 

箒に呼び止められて一夏は振り向く。

 

「私は・・・・・確かに足手纏いかもしれない。さっきお前が倒れたのも私の責任だったし・・・・・でも、私はお前の力になりたいんだ!私も手伝わせてくれないか?」

 

一夏は箒の目を見つめる。箒は覚悟を決めたのかその意志は強く見えた。

 

「わかった、着いて来てくれ。」

 

一夏は優しく箒に言う。

 

「ありがとう、一夏。」

 

箒も上空に移動し一夏たちは自分達のパートナーを助けるべく、急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エクスブイモン・ビクトリーグレイモンside

 

「はあ、はあ・・・・くそ・・・」

 

エクスブイモンはボロボロの状態でアーマゲモンを睨み付けていた。

 

「うおおおおお!!!」

 

ビクトリーグレイモンもドラモンブレイカーでアーマゲモンの体を斬りつけるが切れた部分は自己形成を始めケラモン、クリサリモンへと変化していく。

 

「こ、こんなことってありか・・・・」

 

ビクトリーグレイモンはあまりの現実に戦意喪失しかけていた。本来ならエクスブイモンを助けた後、高速離脱する予定だったが斬り落としたアーマゲモンの足が変形し、クリサリモンなどの同種属のデジモンになったため逃げることができなくなってしまったのだ。

 

「俺は・・・・兄貴の敵すら討てないのか・・・」

 

エクスブイモンはクリサリモンの集団に包囲される。そこから全個体がインフェルモンに進化し、総攻撃を行おうとしていた。

 

「兄貴・・・・・あの世でまた会おうぜ・・」

 

エクスブイモンは諦め潔く攻撃を受けることにした。そして、インフェルモンはヘルズグレネードを口から発射しようとしていた。

 

「炎龍撃!!」

 

光の矢が包囲していたインフェルモンを一掃した。エクスブイモンは思わず矢が放たれた方を見る。

 

「あ、兄貴・・・・?」

 

その先には龍魂剣を持った一夏、カイゼルグレイモンと箒がいた。

 

 




今回の技

炎龍撃=カイゼルグレイモン

今回のデジモン

カイゼルグレイモン(ハイブリッド体・竜戦士型・ヴァリアブル種)

一夏の新たな形態。この形態になると体が一回り大きくなるが本人の意志で等身大に戻ることは可能。メテオバスターは強化版の「カイゼルバスター」にパワーアップし、威力は倍以上になっている。オメガソードの出番はないかも。

次回ついにアーマゲモンと決着か?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。