ヴリトラモン・ストラトス   作:赤バンブル

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臨海学校編二本目。

今回も別作品のネタが混ざっています。

嫌な方は引き返しましょう。

それでもいい方はどうぞ。

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紅椿起動

翌日

 

臨海学校二日目

 

この日は専用機持ちにとってはかなり大変な一日である。本国より送られてきたパッケージのテストが行われ、各種装備試験運用とデータを取るからだ。しかし、集められた専用機持ちたちはある疑問を持っていた。それは専用機持ちではない箒がこの場にいることだった。

 

「あの織斑先生~!どうしてこの現場に箒がいるんですか?」

 

代表として鈴が千冬に質問する。

 

「それはだな、篠ノ之は今日から・・・・・」

 

「ち~~~~~ちゃ~~~~ん!!!」

 

千冬が答えようとした瞬間、何者かが砂煙を上げながら無茶苦茶な速度で此方に走ってきた。

 

「こ、このプレッシャーはまさか!」

 

ウサギのカチューシャに胸元が開いたデザインのエプロンドレス、それは紛れもなくISの開発者であり、千冬の友人で箒の姉。そして、一夏が探していた相手篠ノ之束そのものだった。

 

「会いたかったよ、ちーちゃん!早速ハグして・・・・」

 

「UUURRRRYYY!!」

 

一夏は反射的に千冬に接近してくる束にライダーキックを喰らわせようとする。

 

「おっと!」

 

「何!?」

 

束はそのキックを紙一重に避けた。

 

「甘いよ、いっくん!その程度の攻撃で束さんにダメージを与えられると思って・・・・アダダダダ!?」

 

一夏の攻撃を避けた束を千冬はアイアンクローで手加減なしに掴む。

 

「痛いよ、ちーちゃん。」

 

「・・・・・自己紹介ぐらいしろ、束。」

 

束は苦しみながらも千冬のアイアンクローを外す。

 

「やあ!私が天才の篠ノ之束さんだよ~!以上自己紹介終わり!」

 

束のあっけない自己紹介に生徒一同は沈黙する。

 

「束様、そんな自己紹介では生徒が困るだけですよ。」

 

少し離れた所から金髪の女性が歩きながらやって来る。顔にはサングラスを付け、胸元を大きく開いたシャツ一枚とホットパンツ、ストール一枚を巻くのみという束と同じぐらい独特な格好をしたのでそれを見た生徒たちは更に唖然とした。

 

「え・・・・あ、貴方は?」

 

「申し遅れました。私は暮海杏子、束様の助手をしている者です。」

 

杏子と名乗る女性はサングラスを取ると丁寧に挨拶をする。一方の束は箒の方へ行く。

 

「久しぶりだね箒ちゃん。元気そうでなによりだよ~。」

 

「ね、姉さん・・・・」

 

親しげに接してくる束に箒は戸惑いを感じる。

 

「まあ、そんなわけで気を取り直して。さあ、大空をご覧あれ!」

 

束が直上に指差すと金属の塊が落下してきた。

 

「ジャン、ジャジャ~ン!! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』なのだ! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

金属の塊と思われていた物体はどっかの昔話に出てくる桃のように開き、中から真紅の装甲に身を包んだIS『紅椿』が現れる。

 

「こ、これが私の専用機・・・・・」

 

箒は驚きながらも紅椿に乗り、束の元で最終調整を行う。

 

調整をしている束の変わり、杏子が紅椿の性能を説明する。そのカタログスペックに他の専用機持ちはただ唖然とするばかりだった。

 

(まだ世界各国が第三世代の開発を競っているときにこんなイレギュラーなものを創り上げるとは・・・・束さんは一体何を考えているんだ・・・。)

 

他の生徒が騒いでいる中一夏はそう考えながら調整をしている束を見る。

 

「さて、箒ちゃん。今度は各部のチェックをするから試しに飛んでみて。」

 

「は、はい。」

 

箒は試しに紅椿で空を飛んでみる。そのスピードは順来のISを遥かに上回っており専用機持ちたちはただ茫然とその姿を見ていた。

 

(す、すごい!打鉄とは比べ物にならないくらいの速さだ!これなら一夏と互角の勝負ができる!)

 

箒は思わずうれしくなった。この紅椿なら一夏の炎龍と互角の勝負が望める。だが一夏はそんな箒の表情に対して複雑な顔をしていた。

 

 

 

 

 

そんなときである。

 

「お、織斑先生!た、た、た、大変です~!!!」

 

真耶が血相を変えて走り、普段とはまるで違う真面目な表情・・・・と言うよりも大混乱な状態でで千冬に何かを話す。その途端、千冬は真剣な目で生徒たちを見る。

 

「全員注目! 現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。尚、専用機持ちは全員集合しろ!」

 

そう言われると女子たちは一瞬騒ぐが千冬の一括ですぐに静まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館 宴会用の大座敷

 

暗い照明の中で一夏含める専用機持ちたちは大型の空中投影ディスプレイで映し出されている映像を見ていた。

 

「数時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音 シルバリオ・ゴスペル』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった。これに対しIS委員会はIS学園に対処を要請、日本政府及び学園上層部がこれを承諾した。よって、今回の作戦は、福音の沈黙及び操縦者の救出だ。」

 

千冬は映像を見せながら事の重大さを言う。集められたメンバーは全員福音に対する意見を出し合う。

 

「ちょっ~と、待った!ここからは私の出番だよ!」

 

いつから聞いていたのか天井から束がどっかの蜘蛛男のようなポーズで登場する。

 

「こんな時になんだ束?今作戦を・・・・」

 

「この作戦はね・・・・断然、紅椿の出番なんだよ!」

 

「何?」

 

束の言葉に千冬は顔をしかめる。

 

「紅椿は高機動パッケージ無しでも超音速飛行が可能なんだよ!さらに展開装甲のスピードがあれば直ぐに福音に近づけるのよ!これが!」

 

束は紅椿のデータを見せながらどっかのテレビショッピングの紹介のように説明する。

 

「ちょっと待った。」

 

「ん?何いっくん?」

 

束が紅椿の出番と言っている中一夏は険しい表情で言う。

 

「確かにアンタの言う通りこの作戦には紅椿は最適なのかもしれない。だが、箒は紅椿を使い始めたばかりでまだ使いこなしていない。それ故に今回の作戦に参加させるのは危険だ。」

 

「な、何を言っているんだ一夏!私は・・・・」

 

「そう焦るな箒。別にお前をこの作戦に参加させないとは言っていない。」

 

箒が問い詰め問うとした瞬間一夏は制止する。

 

「では、織斑。お前に何か作戦はあるか?」

 

「俺は、前線で後方に更識、篠ノ之。俺が応戦をするが更識と篠ノ之はバックアップとして待機してもらう。だが場合によっては援護をしてもらう可能性がある。」

 

「待ってくれ!どうして私が待機なんだ!」

 

「箒・・・・今のお前では作戦をする以前に返り討ちに会う危険性がある。」

 

「な、何!?」

 

「お前はさっき紅椿を動かしていたとき、自分でもわかっているだろうがお前はあまりの性能に笑っていた。」

 

「それは・・・そうだが・・・」

 

「俺が何を言いたいか分かるか?自分の機体の性能に自惚れている奴に前線を任せることはできないと言っているんだ!」

 

「そ、そんなことはない!私は・・・・」

 

「静かにしろ、篠ノ之。」

 

「ち、千冬さん・・・。」

 

「今回の作戦にまだ専用機を扱いきれないお前を参加させることは本来ならできないことだ。参加できるだけでもいい方だ、諦めろ。」

 

「う・・・」

 

箒が落ち込んでいる中、千冬は命令を下す。

 

「よし、では本作戦は織斑による目標の追跡及び撃墜を目的とする。そしてバックアップで更識と篠ノ之。残りは旅館に待機。作戦開始は10分後。各員、直ちに準備にかかれ!」

 

 

 

 

 

 

 

出撃前

 

「織斑先生、ちょっといいですか?」

 

一夏は出撃前に密かに千冬に声を掛ける。

 

「なんだ織斑?」

 

「今回の作戦・・・・・ブイモンたちを連れて行く。今回の作戦は福音の撃墜だが今の箒は何か焦っている。それ故に暴走する危険があるからその抑えとして連れて行く。」

 

「構わないが大丈夫なのか?」

 

「箒のアグモンは完全体にまで進化すれば飛行可能だし、簪もパタモンは成熟期までは進化できる。全員飛行可能なら問題もないだろう。」

 

「そうか。」

 

「後、もし俺が撃墜された時のために鈴たちをいつでも出せるようにしておいてくれ。」

 

「何?どういうことだ?」

 

「今回の事件・・・・何か嫌な予感がする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「予定通り、福音は奴らがいるポイントへ誘導させた。」

 

「そうか。それで潜ませておいた奴は?」

 

「ああ、福音のコアに寄生虫のように群がってデータを捕食しながら成長している。」

 

「騎士としてはあまり気が進まんな。」

 

薄暗い照明で照らされている空間で四人の黒い影が語り合う。

 

「ヴリトラモンは確実に現れ、福音を撃墜する。最も奴が敗れれば話は別だが・・・」

 

「なぜ奴が負けると言えるのだドゥフトモン?」

 

「あのデジモンは別の世界とはいえ、一度はオメガモンを倒した個体の同類。いくら十闘士の力を引き継いだ奴とて敵うはずがない。」

 

「しかし、奴が表に出る前に倒したら・・・」

 

「そんなことで敗れる程度の機体ならこんなことはしないさ。」

 

「む・・・・」

 

四人は移動している福音の映像を見る。

 

「さあ、諸君。それでは見物しようではないか。十闘士の遺志を継いだ者の最後を。」

 

 

 




ここでのキャラ紹介

暮海杏子

元ネタは「デジモンストーリー サイバースルゥース」に出てきた主人公側のキャラ。但し、一致しているのは外見だけで中身はアルファモンではなくベルスターモン。彼女の擬態(というよりも着替えてマスクを外しただけ)した姿で口調も束だけしかいないときを除いては丁寧な口調で話す。実はと言うと仕事の時以外はこれが彼女の普段の形態。

次回、いよいよ福音戦です。


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