ヒロインはデジモンでいいかなと思い始めた頃です。
だって、主人公もデジモンですから。
気に入らない方は引き返すことを勧めます。
俺は天才と呼ばれる奴は嫌いだ。
俺の人生は全てその「天才」のせいで狂った。
あまりにも優秀過ぎた姉、織斑千冬。世界を狂わせたISの開発者、篠ノ之束。
この二人がいなければ俺は人間としてまだ生きていたのかもしれない。
そう考えるだけで俺は自分を「天才」と呼ぶ奴らを許せない。
とある機械が多い街
この街はマシーン型、サイボーグ型のデジモンが多く住んでいる。そんな街に一夏はマントで身を隠しながら訪れた。但し一人ではなく二人で。
「兄貴!今度はこの街なの?」
一夏の後ろにいる青白の小さいデジモン、チビモンは一夏に話しかける。一夏はため息をつきながら言いかえす。
「俺の行き先は俺が勝手に決める。って言うかいい加減に俺から離れろ。」
「そんなこと言わないでよ兄貴!オイラ決めたんだ!兄貴に一生ついて行くって!」
このチビモン、一夏が旅の途中でゴブリモンの集団に襲われていた所を助けたものでそのときの一夏の戦いぶりを見て感動したのか一夏のことを「兄貴」と呼んでついてくるようになった。一夏はこれまで強くなるためだけに戦ってきたのにどうしてこうなったのかと頭を抱えるようになった。
「取り敢えず腹ごしらえでもするか。」
一夏は取り敢えず食事がとれる場所を探し始める。
???
一夏の訪れている街からかなり離れた山奥。そこにかなり規模が大きい研究施設のような場所があった。その建物の中の一部屋であるデジモンが一夏たちの姿を見ていた。
「あれが噂のマントを纏った謎のデジモンか。」
コンピュータの操作する小型のデジモン、ナノモンは映像を見ながら言う。
「これまでオロチモンを含めて何体もの完全体デジモンを倒し、この街まで来た謎の個体。私の試作品の相手には丁度いい。」
ナノモンはパネルを操作するとパネルにデジモンが表示される。
「メタルティラノモン五体か。奴の実力を試すには丁度いい。」
ナノモンはそう言うと赤いボタンを押す。すると施設のゲートが開き、そこからメタルティラノモンが出撃して行った。
「是非ともいいデータを取らせてくれたまえ。私が研究している合成デジモンのためにも。ヌフフフフ・・・・。」
ナノモンは暗い闇の中不気味に目を光らせていた。
街の食堂
「兄貴、この飯美味しいね!」
チビモンは一夏を見ながら笑顔で言う。一夏はそんなチビモンを無視して食事を勧める。
「ねえ、兄貴。兄貴ってなんで一人で旅してたの?」
チビモンは突然聞いてくる。
「・・・何が言いたい?」
「だって、兄貴って強いしカッコいいのにいつもマントで顔隠しているし、名前を名乗らないし、どうして一人になりたがるの?」
チビモンは不思議そうに聞く。一夏はしばらく沈黙していたがその後ゆっくりと口を開く。
「お前は人間と言う生き物を知っているか?」
「人間?なにそれ?」
当然、生まれてあまり外の世界を知らないチビモンが知っているわけがない。
「人間とは愚かな生き物でな。俺もそのうちの一人だった。だからか俺は生まれたときから名前はない。それに心も空っぽだ。だから旅をしてその空白を埋めようとしているのかもな。」
一夏は寂しげな表情で言う。人間の時のことを話そうとしたのは何故か自分にも分からなかった。チビモンは珍しく自分のことを教えようとした一夏の顔を好奇心旺盛な顔で見ていた。
そのときだった。
「大変だ!また、ナノモンの奴がデジモン狩りに来たぞ!」
ガードロモンが慌ただしく店に入ってくる。すると店にいたデジモンは慌ただしく出て行く。
「逃げろ!実験体にされるぞ!」
一夏が店を出るころにはもう既に複数のメタルティラノモンが迫っていた。
「どうしよ!?兄貴!?」
チビモンは戸惑いながら一夏を見る。一夏は考えながら手段を考えていた。
戦うのはいい。ただ相手は完全体複数だ。いくらこれまで完全体を倒してきたとは言え一度に複数を相手にするのはあまりにもリスクが高い。ここは悟られぬようにこの場から離れたほうがいい。そう判断し、一夏はチビモンと一緒にその場を離れようとした。
しかし
「きゃああああ!!!!」
女性のような悲鳴が聞こえた。後ろを振り向くと一体のリリモンがメタルティラノモンに捕まっていた。近くでは仲間なのか同じ女性型デジモンのライラモンが助けようと攻撃していた。
「リリモンを離して!」
ライラモンはそう言いながら攻撃を続けるがメタルティラノモンには歯が立たなかった。
「誰か助けて!」
捕まっているリリモンは泣きながら助けを求めていた。しかし、誰も助けに行こうとしなかった。
「兄貴どうしよう?あの人助けを求めているけどどうしたら・・・・・あれ?兄貴?」
チビモンが再び振り向いたとき一夏はもう既にその場にいなかった。
「ひどいよ兄貴!俺まで置いて逃げるなんて!」
チビモンは慌てて一夏を探そうとしたとき後ろからメタルティラノモンの悲鳴が聞こえた。慌てて後ろを向くと一夏がメタルティラノモンの腕をもぎ取りリリモンを救出していた。
「しっかり掴まっていろ。」
一夏はそう言うとリリモンを抱えたまま複数のメタルティラノモンを相手にする。メタルティラノモンは一斉に「ギガデストロイヤーⅡ」を発射するが一夏は奇妙なタイミングで避けていく。そして、一体の口の前まで来ると「コロナブラスター」を発射し大爆発させる。頭部を吹き飛ばされたメタルティラノモンはその場に倒れる。
「残り四体。」
一夏は一定距離まで離れる。残りのメタルティラノモンたちは一夏にめがけて突進してくる。
「酒ブレス!」
一夏は口からアルコール濃度が高いブレスを吐く。いきなり吐かれたメタルティラノモンたちはたちまち酔い始め同士打ちをし始める。
「後はこれでいいな。」
一夏はリリモンを降ろすと上空に飛び構えをとる。
「狐葉禊!」
一夏の周辺に光の刃が無数に現れ、メタルティラノモンたちの体を貫く。動かなくなった巨体は分解され、一夏の体へと吸収されていく。そして、一夏はその場で跪いた。
「はあ、はあ・・・・流石に一斉に五体相手はきつかったか。」
「兄貴~!」
チビモンは慌ててその場に駆け寄る。
「チビ助め、まだいたのか。」
一夏は呆れた顔で言う。でも、チビモンの顔は相変わらず好奇心に満ちた顔だった。
「スゲエよ、兄貴!あんな強い相手みんなやっつけるなんて!」
「う、運が良かっただけさ。運が・・・・・」
そう言い終わると一夏はその場に倒れてしまった。
「兄貴!」
いきなり倒れた一夏に対してチビモンは慌ただしく叫ぶのであった。
今回使用した技
コロナブラスター=ヴリトラモン
狐葉禊=レナモン
酒ブレス=オロチモン
言っておきますが本作の舞台であるデジタルワールドはオリジナルの舞台が多いため順来の作品通りだと思うと混乱するのでご注意ください。
次回は作れれば中編、または後編だと思います。
デジモン多すぎて考えるのが大変です。