UAもまもなく50,000件突破です。
今回は鈴と簪が登場します。
事前に言いますが気分が悪くなったらすぐに戻りましょう。
それではどうぞ。
一年一組
この日、一年一組ではある噂で持ちきりだった。
「ねえ、織斑君知ってる?今日、二組に新しい転校生が来るんだって!」
「転校生?この時期にか?」
本を読みながら一夏は意外そうな顔をする。
「織斑君はどんな子が来ると思う?」
「さあな~。」
「その転校生のことだけど中国の代表候補生だそうだよ。」
「中国か・・・・・(鈴の奴元気かな・・・そう言えば弾たちにもまだ会っていないし・・・)。」
一夏はかつての旧友たちのことを頭に思い浮かべる。
「でも、織斑君が代表ならフリーパスもウチの組に間違いないでしょ!」
「そうそう、専用機持ちも一組と四組だけだし優勝は・・・」
「ちょっ~と、待ったあああ!!」
クラスの女子たちが話を盛り上げている最中、扉の方からの声が会話を止めた。
見るとそこにはツインテールで頭の上に小さな動物の人形を乗せた少女が扉にもたれ掛かっていた。
「生憎だけどその情報はもう古いよ!」
女子生徒たちは唖然としていたが一夏の方はもっと驚いていた。
「お、お前・・・・・鈴か?」
「久しぶり一夏!」
「ま、まさか二組の転校生ってお前のことなのか?」
「その通り!そして今日一組代表のアンタに宣戦布告しに来たのよ!覚悟しなさいね!」
鈴は一夏を指で指しながら言う。そのとき、一夏は鈴の頭の上に乗せている人形に目が着く。
「鈴、それは?」
「ふっふ~ん!コイツは私の相棒のテリアモンなのだ!可愛いでしょ?」
鈴はちらちらと見せながら自慢する。しかし、一夏はそれ以外のことを気にしていた。
(なんでデジモンを堂々と見せているんだ・・・・・・)
「と言う訳で今後とも・・・・・」
その直後鈴の頭を何かが叩いた。鈴は思わず後ろを振り向く。
「もう予鈴が鳴っているぞ。さっさと自分の教室に戻れ。」
「ち、千冬さん!」
「ここでは織斑先生だ。返事は?」
「わ、わっかりました!」
鈴は慌てて自分の教室へと走っていった。
「鈴・・・・・僕、頭が痛いよ・・・・・。」
走っている鈴に対してテリアモンは泣きそうな声で言う。
「ごめん・・・・まさか千冬さんが一夏のクラスの担任だとは思わなかった・・・。」
「改めて紹介するぜ、箒。彼女は凰鈴音、お前が引っ越してから入れ違いで俺の学校に転校してきた友人だ。」
「よろしく!鈴って軽く呼んでもいいよ!」
昼休みの食堂で一夏は鈴を箒に紹介する。
「私は篠ノ之箒だ、よろしく。」
「へ~。篠ノ之箒か。まあ、よろしく!」
「ところで鈴。」
「ん?何?一夏。」
「そのテリアモンどこで見つけた?」
「え?」
「私も聞きたいと思ったがなんでデジモンを堂々と人前に見せているんだ?」
二人の質問に硬直する鈴。頭の上に抱き付いているテリアモンは一瞬ビクッとしたがすぐに人形のフリをし直す。
「・・・・・あの・・・・お二人さんもしかして・・・・・デジモン知っているの?」
一夏と箒はデジヴァイスを取り出して鈴に見せる。ブイモンたちが収納されているデジヴァイスを見て鈴は唖然とする。
「そんな使い方があったの?」
「知らないで持っていたのか?」
「いや、私はてっきり進化するための道具かなと思って・・・・・テリアモンは知ってたの?」
「・・・・・・」
テリアモンは黙って首を縦に振る。
「そうだったの~!」
「僕は鈴がワザと出していてくれたんだと思ったから・・・・・・」
テリアモンは申し訳なさそうな顔をして言う。
「まあ、気づかれないうちにさっさとデジヴァイスにしまったほうがいいんじゃないのか?」
「え~!でもさ別にこのままでも気にならないんじゃない?テリアモン一目見ても人形にしか見えないんだからさ。」
「お前な・・・・」
「あら?お三方一体何を話していますの?」
そんなところへセシリアがやって来た。テリアモンは慌てて人形のフリをする。
「おおう、セシリアも来たのか。」
「ええ、ところでその方は?」
「ああ、箒にも丁度紹介したところだ。彼女は凰鈴音、小学五年から中二までの同級生だ。」
「アンタがセシリア・オルコットだね!一夏にコテンパンにやられたって言うのは!」
鈴はお構いなしにセシリアに向かって言う。セシリアは急に顔を赤くする。
「な、なんですのこのおチビちゃんは!?」
「ところでさ一夏、今度のクラス対抗戦だけどさ・・・・私が勝ったらさ・・・・」
「人の話を聞きなさい!私はこれでもイギリス代表・・・・・」
「あっ、ゴメン。そこまでは興味ないから・・・・・」
「なんですってえええ!!!!」
鈴の反応にセシリアは思わずカッとなる。
「おいおい、二人ともお互い国は違うと言えど代表候補生なんだからそう怒るなよ。」
「もう怒りましたわ!一夏さん、クラス対抗戦でこのおチビちゃんを懲らしめてくださいまし!」
「フッフ~ンだ!私は負けはしないよ~だ!アンタは素直に指を咥えて大人しくしているんだね!」
二人の喧嘩はエスカレートしていく。
「な、なんかすごいことになっていないか?」
「やれやれ、おかげで昼飯が不味くなりそうだ。」
一夏は呆れながら二人の様子を見るのであった。
放課後アリーナ
『兄貴、今日は何しに来たの?』
「ああ、炎龍の武装確認だ。まだ使っていない武装もあるから今日確認するんだ。」
そう言いながら一夏はアリーナの整備場に歩いて行く。
「ん?」
『どうしたの兄貴?』
「どうやら先客がいるようだ。」
一夏は扉の陰に隠れながら様子を見る。整備場では水色の髪で眼鏡を掛けた一人の少女、更識簪が未完成状態のIS「打鉄弐式」を制作していた。
「よっ!隣ちょっといいかい?」
「ひっ!」
いきなり声を掛けてくる一夏に簪は驚く。
「いやあ、悪い悪い。黙ってはいるのもなんかと思ってさ。」
「お、驚かさないでください。」
そう言うと簪は再び手を動かし始める。一夏はそんな光景を見ながらも炎龍を展開させる。
「この翼は電磁砲としても応用できるのか・・・・。」
「・・・・・・・」
「・・・・・アンタ、毎日ここでIS作っているな。」
「え?」
今まで黙って手を動かしていた簪は手を止める。
「どうしてそれを?」
「ここ一週間、俺のことをこっそり見ていただろう?」
「うっ!」
一夏の急な発言に簪は黙る。
「俺のISを見て自分の専用機にそのノウハウを応用しようとしたんだろ?」
「・・・・はい。」
「素直に聞きに来てくれればいいのをどうして隠れて見ていたりしたんだい?」
「・・・・私は・・・友達とかそう言うのいないから・・・・」
「自分から作ればいいじゃないか?」
「それはそうだけど・・・・・・」
一夏の質問に簪は戸惑う。
「自分の姉と比べられていると思って言えないのか?」
「!?」
「やっぱりな。俺も似たような境遇があったからよく分かる。」
簪の反応に一夏は納得する。
「一人で努力することは確かに大事だ。でもな、時には支えてくれる友達も必要なんだ。」
「あ、あの・・・・織斑さん・・・・」
「一夏でいい。」
そう言うと一夏は炎龍を待機状態に戻し、未完成状態の簪の専用機の方へと行く。
「手伝ってやるよ。」
「え?で、でも・・・・」
「俺はこれでも少しは機械に強い方なんでね。友達と手伝ったほうがいいだろう?」
「友達?」
「ああ、友達だ。それにそこの小さい奴も一緒に手伝っていたんだろ?」
「え!?」
簪は驚いた顔をして言う。すると機材の物陰から白く四足の小さい生き物が出てくる。
「こ、これはその・・・・・」
「隠さなくてもいい。俺もデジモンを知っているからな。」
一夏はデジヴァイスからブイモンを出す。
「あ、貴方もデジモンを!?」
「まっ、そんなところだ。じゃあ、早速・・・・・」
「だ、大丈夫です!私もそろそろ今日は終わろうと思ったので!」
「え?でも、まだ途中・・・」
「いいから!先に戻ってください!」
簪は何故か顔を赤くして一夏を押し返す。
「そうか・・・・じゃあ、また今度来るわ。行くぞチビ。」
「え?でも兄貴・・・・」
「迷惑になると失礼だからな。じゃあな、簪。聞きたいことがあったらいつでも来てくれ。」
そう言いながら一夏はブイモンをデジヴァイスに戻してその場から去って行った。現場には簪と小さい生き物トコモンが残された。
「簪・・・・・どうして手伝ってもらうの断ったの?」
トコモンはピョコピョコと歩いて簪に近づいて聞いてくる。それは簪自身もよく分からなかった。それでも自分の中の何かが熱く感じられた。
「ど、どうしてなんだろうね・・・・」
簪は落ち着きながら言う。
(変わった人・・・・でも、格好いい。)
これが簪の一夏の第一印象だった。
鈴の宣戦布告。
ちなみに簪のパートナーは当初レナモンかルナモンを考えていましたがどちらも別のヒロインのパートナーにしたのであえてトコモンにしました。
トコモン(幼年期Ⅱ・レッサー型)
簪のパートナーデジモン。まだ幼年期ではあるが勇気は人一倍あり、いつも簪のそばにいる。簪と楯無の仲をどうすれば改善できるか考えているらしい。性格は一様アドベンチャー版ベース。現段階では近いうちにパタモンに進化する予定。出会った時期はおそらく原作開始の少し前。
何故トコモンなのかと言うと・・・・・可愛いんですよ。映像化されている個体はどれもかわいらしく見えるんです(最も幼年期のデジモンはどれもかわいく見えるのですが・・・・パグモンはともかく)。
次回は鈴対一夏、そしてゴーレム襲来の予定です。
次回があればまた。