「…これより、突入作戦の最終確認を行う。」
俺の車の後部座席を倒した上で、みんなを集めて話し合いをする。
「まず私と七辻でやつらから二階への通路を取る…。」
「その後にすぐ私たちが走って二階へ…」
「二階へ上る時、殿は俺が務める。」
佐倉先生と恵飛須沢はきちんと覚えててくれたようだ。
「それで…二階の旅行用品のところでできるだけ大きなリュックを取って、安全圏まで逃げる。」
「その後、班分けをして行動を決めるんだよね!」
若狭さんと丈槍も覚えていてくれたみたいだ。
「…確認が済んだところで、作戦を実施しよう。」
恵飛須沢はシャベルを、俺は数丁のエアガンと大型のバールを手に取り、車から出て一気にモールまで走った。
「ちぃっ…思ったより数が多いな…!」
このままだと埒が明かない。仕方がないが一気に走ってきてもらおう。
「…恵飛須沢ァ!走って一気に上るって伝えてこい!」
「わかった!すぐに戻る!」
俺は通路の確保だ。右手にバールを、左手に9ミリ拳銃のエアガンを構えて臨戦態勢を整える。
まずは恵飛須沢を追いかけようとしてるやつに一発。そいつが振り向いたところをバールで殴る。
「っ…!」
シャベルで殴った時は気付かなかったが、意外と硬い。
おそらく骨はまだ硬いのだろう。
「…オラぁ!」
声を出して一気に殴る。死ななくても吹っ飛んでいく。
…そもそもこいつらに死という概念はあるのだろうか…。
「って、ヤバっ…!」
後ろの呻き声をよけ、足をバールで潰す。倒れたら、頭と脇腹。
動かなくなったら、障害物として使う…。ここまで人だったものに無情になれる自分が、恐ろしい。
「…うし、こっから走るぞ!」
恵飛須沢の声で我に返る。そうだ、俺は彼女たちを通さなければならないんだ。
「準備オッケーだ!早く来い!」
恵飛須沢の今の声で向こうに向いた集中を、もっと大きな声でこちらに寄せる。こちらを見なかった数体は恵飛須沢のシャベルの犠牲となった。
先陣を恵飛須沢が、次いで若狭さん、丈槍…最後に佐倉先生が通ってすぐに向きを変えて追いかける。
「振り向かずに走れ!」
恵飛須沢の声に従っているのか、はたまた本能的なものか知らないが俺たちは一気にエスカレーターを走り抜け二階へと上って行った。
「こ、ここは安全…か…。」
肩で息をしながら恵飛須沢が言う。俺達四人には答えるほどの余裕がなかった。
陸上部で走るのを鍛えられてた恵飛須沢がこうなのだ、少なくとも俺は病み上がりだぞ?
「それにしてもやるなぁ、七辻。」
「はぁ、はぁ…よしてくれ、後半は追っかけるだけで精一杯だったんだ。」
「そうじゃなくて、最初の…バールと拳銃なんて、私には無理だ。」
ああ、あれか…と思ったときに、奴らの呻き声が聞こえた。
「…あまり音を立てずに、やり過ごそう。」
小声でも十分に聞こえただろう、皆は身を屈めて静かになった。
…そうだ、どれぐらいの音までなら聞かれるのだろうか。そう思った俺はポケットの中の小銭を数枚、遠くへ投げる。
小銭が床で跳ねる音がすると、あいつらはそっちのほうへ向かった。
「…これぐらいならいいのか…。」
思わず呟いたその言葉は、あいつらの足音にかき消された。
音を立てず、ゆっくりと忍び寄る。一体だけのようだった。
後ろにつくと、一気にバールを振り下ろす。
勢いがついたのか、頭蓋骨を砕いて中身を撒き散らす。
…先ほどの戦闘で、だろうか…見慣れてしまった。
「…あまり、見ないほうがいいぞ。」
…俺が皆と亡骸に間に入り、見えないようにする。
まだ、ショッピングモール攻略は始まったばっかりだ。まずはこの作戦を終了させないと…。
…久里浜です。やってしまいました土曜投稿破り…罰として水曜日に書きます…。
と、いうわけでショッピングモール編の初回!いやー、書きたいネタが色々とあるんで長くなりそうです。ただ、一話一話の長さはそこまで変わりそうにないです。
ご意見、感想並びに誤字脱字の訂正待ってます。