びょうじゃくぐらし。   作:久里浜燐

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6話、こうりゃく

「…これより、突入作戦の最終確認を行う。」

俺の車の後部座席を倒した上で、みんなを集めて話し合いをする。

「まず私と七辻でやつらから二階への通路を取る…。」

「その後にすぐ私たちが走って二階へ…」

「二階へ上る時、殿は俺が務める。」

佐倉先生と恵飛須沢はきちんと覚えててくれたようだ。

「それで…二階の旅行用品のところでできるだけ大きなリュックを取って、安全圏まで逃げる。」

「その後、班分けをして行動を決めるんだよね!」

若狭さんと丈槍も覚えていてくれたみたいだ。

「…確認が済んだところで、作戦を実施しよう。」

恵飛須沢はシャベルを、俺は数丁のエアガンと大型のバールを手に取り、車から出て一気にモールまで走った。

 

 

「ちぃっ…思ったより数が多いな…!」

このままだと埒が明かない。仕方がないが一気に走ってきてもらおう。

「…恵飛須沢ァ!走って一気に上るって伝えてこい!」

「わかった!すぐに戻る!」

俺は通路の確保だ。右手にバールを、左手に9ミリ拳銃のエアガンを構えて臨戦態勢を整える。

まずは恵飛須沢を追いかけようとしてるやつに一発。そいつが振り向いたところをバールで殴る。

「っ…!」

シャベルで殴った時は気付かなかったが、意外と硬い。

おそらく骨はまだ硬いのだろう。

「…オラぁ!」

声を出して一気に殴る。死ななくても吹っ飛んでいく。

…そもそもこいつらに死という概念はあるのだろうか…。

「って、ヤバっ…!」

後ろの呻き声をよけ、足をバールで潰す。倒れたら、頭と脇腹。

動かなくなったら、障害物として使う…。ここまで人だったものに無情になれる自分が、恐ろしい。

「…うし、こっから走るぞ!」

恵飛須沢の声で我に返る。そうだ、俺は彼女たちを通さなければならないんだ。

「準備オッケーだ!早く来い!」

恵飛須沢の今の声で向こうに向いた集中を、もっと大きな声でこちらに寄せる。こちらを見なかった数体は恵飛須沢のシャベルの犠牲となった。

先陣を恵飛須沢が、次いで若狭さん、丈槍…最後に佐倉先生が通ってすぐに向きを変えて追いかける。

「振り向かずに走れ!」

恵飛須沢の声に従っているのか、はたまた本能的なものか知らないが俺たちは一気にエスカレーターを走り抜け二階へと上って行った。

 

「こ、ここは安全…か…。」

肩で息をしながら恵飛須沢が言う。俺達四人には答えるほどの余裕がなかった。

陸上部で走るのを鍛えられてた恵飛須沢がこうなのだ、少なくとも俺は病み上がりだぞ?

「それにしてもやるなぁ、七辻。」

「はぁ、はぁ…よしてくれ、後半は追っかけるだけで精一杯だったんだ。」

「そうじゃなくて、最初の…バールと拳銃なんて、私には無理だ。」

ああ、あれか…と思ったときに、奴らの呻き声が聞こえた。

「…あまり音を立てずに、やり過ごそう。」

小声でも十分に聞こえただろう、皆は身を屈めて静かになった。

…そうだ、どれぐらいの音までなら聞かれるのだろうか。そう思った俺はポケットの中の小銭を数枚、遠くへ投げる。

小銭が床で跳ねる音がすると、あいつらはそっちのほうへ向かった。

「…これぐらいならいいのか…。」

思わず呟いたその言葉は、あいつらの足音にかき消された。

音を立てず、ゆっくりと忍び寄る。一体だけのようだった。

後ろにつくと、一気にバールを振り下ろす。

勢いがついたのか、頭蓋骨を砕いて中身を撒き散らす。

…先ほどの戦闘で、だろうか…見慣れてしまった。

「…あまり、見ないほうがいいぞ。」

…俺が皆と亡骸に間に入り、見えないようにする。

まだ、ショッピングモール攻略は始まったばっかりだ。まずはこの作戦を終了させないと…。




…久里浜です。やってしまいました土曜投稿破り…罰として水曜日に書きます…。
と、いうわけでショッピングモール編の初回!いやー、書きたいネタが色々とあるんで長くなりそうです。ただ、一話一話の長さはそこまで変わりそうにないです。

ご意見、感想並びに誤字脱字の訂正待ってます。

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