びょうじゃくぐらし。   作:久里浜燐

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13話、おてがみ

「皆でお手紙、書こう!」

「は?」

ノータイムで疑問をぶつける。

まあ…丈槍が提案をするのはいつものことだが、それはあまりにも唐突過ぎた。

「だから、手紙を書くんだって!」

「丈槍先輩…それだけですか?」

「違うよけーちゃん!手紙を書いて風船で飛ばすんだよ!」

「風船、って…うちの高校にあったか?」

「たしか、去年の文化祭の残りがあったはずだけど…中の気体はどうするの?」

「あー、それなら確か実験室か準備室かにヘリウムがあったはずです若狭さん。こっち来て最初にやった実験で使った記憶がありますし。」

なんやかんやで手紙は飛ばせそうだ。たまにはこういう息抜きも…って、この間体育祭をやったばっかだったな。

「んー…それなら七辻、手伝ってほしいことがあるんだが…いいか?」

「要件によるが…まあ、いいぞ?」

「おう、それじゃあ後で話す。」

恵飛須沢から皆の前で話せない依頼…まあ、今回のことに関わることなんだろう。

「あら、相変わらずの仲ねぇ…。」

「ち、違うってりーさん…。」

「…俺と恵飛須沢はいくつもの戦闘を乗り越えてきた戦友でー…。」

「そ、その冗談は前やっただろ!」

そんなこんなで今日の…今俺が心の中で命名した部活会議は恵飛須沢をからかって終わった。

 

「そんで…手伝うことって、なんだ?」

時間は経って昼飯を済ませた後、部室の前で恵飛須沢に尋ねる。

「風船のこと、だが…購買部の部屋にあるんだ、」

「ええと…確か二階だったよな…?」

「おい、土日に行くモールの構造は殆ど完璧に覚えていて平日通ってる学校の構造は把握しきれてないってどういうことだよ…」

そう言って恵飛須沢が頭を抱える。

「そりゃあモールに通うのは、楽しみだし?」

「まあ、そうだけどさ…」

「…んで、行くんだろ?購買部。」

「おう、そうだな。」

そう言って恵飛須沢は背中に隠してあったであろうシャベルを二丁…片方は恵飛須沢ので、もう片方は最初に俺がここに殴りこんだときに使ってたものを出し、俺が使ってた方を渡してきた。

「制圧したっていっても、残党はいるからな。」

「だから、これは殲滅専用…ってことだな。」

受け取って軽く振るう。自分を奮い立たせるために、寒気から来る震えを抑えるために。

「…よし、行こうか。」

 

 

 

 

「…それで、購買部に行ってきたの?二人だけで…。」

「ああ、りーさん。ほら、風船持ってきたぜ。」

「これで手紙が飛ばせるね!」

「ゆきちゃんはちょっと黙ってて?」

さて、俺と恵飛須沢は今若狭さんに怒られている。

理由は単純に、無断で他のフロアに行ったからだ。

「突然いなくなって、私たちも心配したんですよ?屋上探したりとか…」

「まあ、下のフロアは武器が無かったので行ってないんですけどねー…。」

後輩たちにも怒られる。先輩としての威厳が…。

「まあまあ、七辻君も恵飛須沢さんも無事に帰ってきたんだから…ね?」

「めぐねぇ、それは結果論でしょ?」

あ、佐倉先生も落ち込んだ。

「しかも七辻くんはこの前…倒れたばっかでしょ?無茶しすぎよ。」

「…はい、申し訳ない…です。」

駄目だ、これ俺が一番怒られるパターンの奴だ。

「くるみちゃんも、そんな状態の七辻くんを誘って…何かあったらどうする気だったの?」

「ぜ、全然考えてなかった…。」

はぁ、と若狭さんがため息をつく。

「…そうねぇ、罰として…勉強、丈槍さんに教えられるぐらいしてね?」

…俺と恵飛須沢は、若狭さんの背中に見えたオーラに従わざるを得なかった。




ドーモ、閲覧者=サン。久里浜です。
っと、忍殺めいたアイサツは置いておいて…今回は原作であれば地下探索の前に行われた手紙を書く話です。まあ、前回までの暗い雰囲気を一旦リセットしたいというのもありますが、手紙がきっかけで起こるイベントがありますからね。そちらを起こすためには…。

いまさらですがここで主人公の軽い説明を作中に出てないどうでもいい部分を加えて。
七辻マサ君は高校2年生の暮れに事故で大きな怪我をして入院、その時に少し大きな病気が見つかり検査と療養もして病院で一年過ごしています。また、入院のきっかけとなった事故で母親を失ってます。それで、退院した春に巡々丘に単身赴任してたランダル製薬部門の父の住居に住んでいます。その時に巡ヶ丘学院に(父に勧められて)転入しています。

とまあ、病み上がりで"びょうじゃく"な理由を書いたのですが、全然本編で触れられてませんね…。
っと、後書きが長くなってしまいましたがいつものように!ご意見ご感想批評誤字脱字の指摘を待っています!

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