びょうじゃくぐらし。   作:久里浜燐

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11話、ちかしつ

「…ってわけで、昨晩一階を調べてたら…地下への階段があったんだ。」

「へぇ、こんなところにあったのか…。」

「それで、何人かで物資がないか見てきてほしいのだけど…。」

学園生活部の部室では、朝から会議のようなものが始まっていた。

昨日の夜に俺と佐倉先生が見たマニュアルの存在を隠して、地下倉庫の存在を話す。

事実を隠すのは申し訳ないと思うが、この事実を教えたら…その先のことは、今の俺には考えられなかった。

「…佐倉先生、一つ提案がある。」

「どうしたの、七辻君?」

だったら、今は俺に出来ることをすればいい。

「俺が偵察に行く。一応暗い中で行ったんだ、迷わずに行けるさ。」

「え…」

佐倉先生が驚くのも無理はない。あの後、一人で扉の前までは行ったんだ。

「…大丈夫なのか?七辻。」

「大丈夫だ…とは言い切れないが、必ず帰ってくるさ。」

「…そうか、なら…こいつを貸すよ。」

そういって恵飛須沢が渡したのは、いつも使っているシャベルだった。

「必ず返しに帰ってこいよ、七辻!」

「おう、任せとけ。」

受け取って俺は、懐中電灯とモールで手に入れた花火とマッチを持って、めぐねぇに一つ、頼みを言って地下に向かった。

 

 

「ふむ、こっちが備蓄倉庫で向こうが機械室か…。」

ドアの前に書かれたプレートと見ながら、マニュアルに書いてあった地図を頭の中に思い起こす。

「…15人が一か月、か…」

単純に計算すると俺たち7人が二か月過ごせるだけの資材。だが、今はあくまで偵察なのだ。

一階にいた大量のあいつらは、扉が半開きになっていた地下室に何体も来ていた。

呻き声がしたら、そっちをシャベルで切る。構造を確認しながらのその作業は、精神が完全に慣れてしまった。

「っ…!?」

そんなとき、だった。俺が咳をして膝をついてしまう。たった一日休んだだけではこれまでの疲労は抜けないのか。

もともと体が弱かったのに、体を酷使したから。そのツケが、今廻ってきた。

そんな俺の異常に気付いたのか、あいつらは此方に向かってくる。

思うように体が動かない。一つ、二つをシャベルで切ったあと、もう一体と言ったところで懐に入られて、脇腹を噛まれた。

「っ…この…っ!」

引き剥がして切る。頭がまともに回らない。抗生物質もこの倉庫にあったはずだが、自分で探すことは無理に等しい。

「しゃべる、かえすか…」

そうだ、シャベルだ。シャベルを返さねば…。帰ってくると約束した以上、帰らねば。

その後の、俺の判断は、彼女たちに、任せよう。

「もどら、なきゃ…。」

約束を、果たさねば。痛みの所為かか、ウィルスの所為か…重たい体を何とか部室まで持って行って、戸を開ける。

「おうお帰り、七つ、じ…?」

「な、ななくん!」

そこまでが精いっぱいだった。薄れゆく意識の中で、少しでも伝えなければならない。

「ミス、った…。」

だが、俺の口から出せたのはその一言だけで、他には何も伝えられずにその場に倒れこんでしまった。




どうも、色々な物に追われている久里浜です。
11話は前々から考えてました。というか原作で死んでるキャラ(佐倉先生)を生かしたのはこうさせたいから、というのもありましたが…まあ、救済の目的もありましたよ?

そんなこんなで終わった11話、七辻が感染しましたね。
次回は、おそらく自身初の試みです。今まで七辻の心の中だけを書いてきましたからね…あまり視点を変えたくないのですが…。
というか、私の中では薬を取ってくるパートを飛ばしたいんですよねー…だって、正直に言って今の胡桃やらみーくんやらは負けませんもん。ただのゾンビ相手に。

…長くなりましたが次回は先ほども言ったように、誰かの視点になります。
あと毎回のことですが誤字脱字指摘・ご意見・ご感想待ってます!

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