びょうじゃくぐらし。   作:久里浜燐

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1話、いきのこり

「ったく、この世界はいったいどうなってやがんだ…!」

久しぶりに見た窓の外の光景に俺は思わず叫んでしまった。

 

俺は七辻マサ、この春に19歳になった高校三年生だ。

浪人はしていないが留年はした。丁度去年の誕生日に母の頼みで買い物に付き添っていたら運悪く車が突っ込んできた。

俺も母もすぐに病院に担ぎ込まれたが元々身体の弱かった上に俺を庇った母親は最善を尽くしたが敢え無く。俺はというと一命を取り留めたものの遺伝か知らないが身体が弱っており、長期入院を余儀なくされた。

そのために、親父が単身赴任していた巡ヶ丘に越してこっちの病院で入院。どうせ進級も卒業も無理とのことで親父が働いてる製薬会社傘下の私立学園に翌年度から三年生として転入した。

その頃には体調も良くなっており、俺の身体の事を知っているのか先生たちも優しくしてくれたため、あっという間に時は過ぎていた。そう、あの日までは。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日から数日前の事だった。

あの日は、検査で病院に行くためにたまたま学校を休んでいた。

検査はいつもより早く午前中に終わり、医者先生たちは多数担ぎ込まれた救急患者を診るべく俺やそういった人たちを早く帰した。思えば、あの時無理に残っていれば今は生きていない…否、人として生きてはいなかっただろう。

家に帰ってパソコンを立ち上げてオンラインゲーム。昼食を取ったらショッピングモールでもふらつこうか…何て考えていたら家に一本の電話が入る。

その電話は親父からで、家に鍵をかけて何があっても家から出るな…今にして思えばあの時は守って正解だったと考えられる半ば命令のようなものを残して一方的に電話を切られた。

隠し事はするが嘘はつかない親父だ。何か凶悪犯罪でもあったのか、それなら後でニュースでも見るかなんてのんきなことを考えながら命令を実行する。その後に部屋に戻ってオンラインゲームからログアウト、SNSで『巡ヶ丘 事件』で出てくると確かにいくつかがヒットした。

『一般市民、謎の暴動!』『巡ヶ丘駅で集団飛込み、運行再開は見通し付かず』などなど…どの記事も、今日書かれたものだった。

病院がパンク、警察機能が飽和状態。テレビをつけると緊急時でものんきな局も入れたすべてのチャンネルで、巡ヶ丘の異常事件を取り扱っている。

どうして親父が俺に連絡を…製薬会社の一研究員である親父が、こんなことを予想できたのか?

ならば、何故?

突然起こったパンデミックかバイオハザード…ゲームや何かの小説で見たようなことが、現実に起こっている。そうとしか考えられない。

だが、そうじゃない可能性も僅かにある…そう、信じたい。

とりあえず俺は、非常食を探すのだった。

 

そうこうして数日間、親父が買っていた缶詰や即席麺、俺が趣味で買っていたレーションやらで食いつないでいたがそろそろ先が見えていた。

一度豊かな暮らしをすればもう前には戻れない…何かで見た一文が、酷く脳裏に残っている。

電気と水道こそ、太陽光発電と一般家庭にしては大きい貯水タンクが有ったから大丈夫だが他はダメだ。

それならどこかに行って、また何かあれば戻ってくればいい。

残りの食糧、数丁のエアガン、ノートパソコンとスマホ、それ用のバッテリーやらを段ボールに詰め込む。

さてどこに行こうかと思った時にふと脳裏にいま俺が通っている学校、巡ヶ丘学園が思い浮かぶ。

そうと決まれば、善は急げだ。

ワンボックスのライトバンに段ボールを詰め込むと、下手したら二度と帰ってこないだろう家を発った。




どうも、久里浜です。
びょうじゃくぐらしリメイクプロジェクト第一話、いきのこり(Ⅱ)です。
お前艦これはどうした!とか大学編はどうした!とか言われそうですが、正直どちらもあまり筆が乗らないです。
1話ですが、前バージョンでも今バージョンでも話としては繋がっております。
新しい「びょうじゃくぐらし。」を、よろしくお願いします!

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