艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

真面目なシーン有り。
ちょい長めです。
若干のキャラ崩壊、独自設定含みます。


艦これSS八十六話

 

 ○○鎮守府、○四○○ーー

 

 駆逐艦寮、朝潮・大潮・満潮・荒潮部屋ーー

 

満潮「」パチッ

 

 モゾーー

 

 ふと目が覚めた。壁に立て掛けてある時計を見ると、まだ起床時間までかなり余裕がある。

 しかし二度寝してしまうと怖い時間帯でもあった。

 

満潮(取り敢えずトイレ行ってこよ……)

 

 ノソッーー

 

 部屋のドアをゆっくりと開け、ゆっくりと廊下へ出て、同じ様にドアを閉める。

 

 廊下は部屋よりも冷え切っていた。

 

満潮(何か羽織ってくれば良かったわ……)

 

満潮E.フワもこ着ぐるみパジャマ(パンダ)

 

満潮(流石の川内も寝たみたいね……静かだわ)

 

 用を済ませ、また部屋へ戻りつつ、ふと窓の外を見ると、見慣れた人影を見つけた。

 

満潮(司令官……よね)

 

 外はまだ薄暗く見えにくいが、それは確かに提督の姿だった。

 

満潮(あの方角とこの時間からして、朝稽古かしら……)

 

 提督はいつも早朝か深夜になると、必ず剣術の鍛錬をしている。それは小さい頃から欠かさず続けていると前に本人から聞いたのだ。

 

満潮(様子見に行こうかな……)

 

満潮(そうよ。こんな時間から起きて稽古なんてして、風邪を引かれたら艦隊のみんなが迷惑するから、それを注意する為に行くのよ! 心配とか鍛錬してる時の真剣な顔が見たいからとかそんなんじゃないんだから!)

 

 本音が駄々漏れである。

 

満潮(タオルと温かいお茶……いや、鍛錬後なら冷えたスポーツドリンクの方がいいかしら……)ウーン

 

満潮(両方持っていけばいいわよね! うん!)

 

 満潮はそれから一度部屋に戻ってから制服に着替え、スポーツタオルを持ち、温かいお茶とスポーツドリンクをそれぞれ自販機で購入してから、提督がいつも朝稽古を行っている、室内訓練場へ走って行った。

 

 

 室内訓練場ーー

 

 室内訓練場とは、主に雨天時に艦娘達がストレッチ、室内トレーニングをする為の施設である。

 正規空母達が使う弓道場とはまた違い、訓練場内は全面板間で体育館的な内装をしている。

 

 室内訓練場へ着くと、訓練場のドアは大きく開いていた。

 

満潮(ドアくらい閉めなさいよ……全く……)ヤレヤレ

 

満潮「」キョロキョロ

 

ドア|ω・)ζチラッ

 

 取り敢えずドアの影に隠れて中の様子を覗いてみることに……。

 

 

提督「す〜……は~……」

 

 提督は白の道着に藍染めの袴で身を包み、既に滝のような汗を掻き、刀を鞘に納めた状態で身を中腰に構え、息を整えていた。

 

満潮(相変わらず凄い気迫……こっちまで緊張感が伝わってくるわ)ピリピリ

 

 提督の目の前には何も無いが、その眼光は確かに相手を見据え、まるで見えない敵と立ち合っている様に見える。

 

 カシャーー

 

満潮(動くわね)

 

提督「……っ!」カッ

 

 シュン、ブォン、ヒュッーー

 

 小気味良く一太刀、また一太刀と左右に刀を振るう。

 まるで演舞でも見ているかの如く、流れるような刀捌き。

 

 ブォン、ブォン……カチン……ーー

 

 そして力強く刀を振るい、刀を鞘に収める。

 最後の二振りはまるで演武のような豪快な太刀筋で、微かに風すら感じる程であった。

 

提督「す〜……は~……」

 

 そしてまた息を整え、刀を構える。

 

満潮(凄い……)

 

提督「っ!!」カッ

 

 シュババババ!ーー

 

満潮「!?」ビクッ

 

 満潮は小さく声をもらしてしまった。

 

 提督の太刀筋が上段、中段、下段と流れるように繰り出され、その都度空気が豪快に音を立てる。

 更には目では追いきれない程の連続斬りなのだ。

 

満潮(司令官が深海棲艦を倒せるのも納得だわ……)ドキドキ

 

 カシャン……ーー

 

提督「ふぅ〜……」

 

 その息を吐く声とともに今までも緊張が張り詰めた空気が消え、朝の特有の静けさが戻ってきた。

 

満潮(終わったのかしら……今ならーー)

 

提督「そこに隠れているのは満潮か?」

 

満潮「ぴぃっ!?」ビククッ

 

提督「?」クビカシゲ

 

満潮「んんっ……お、おはよう、司令官」ヒョコ

 

提督「あぁ、おはよう、満潮」ニカッ

 

満潮「……そっちに行ってもいい?」オズ

 

提督「? 勿論構わないさ」

 

 トコトコーー

 

満潮「ん」つタオル

提督「おぉ、これはありがたい」フキフキ

満潮「ねぇ……」

提督「ん?」

満潮「なんで司令官は今でも稽古するの? 闘うのは私達で足りるのに……やっぱり私達じゃ役不足だから?」

提督「役不足なんてこれまで一片たりとも思ったことはない」キッパリ

満潮「じゃあなんで?」

 

提督「守られてるだけってのが性に合わないからだ」

満潮「は?」

提督「自己満だがな……」

満潮「ふーん……」クビカシゲ

 

提督「私の力では深海棲艦に攻撃を与えられても、轟沈させることまでは出来ない。だが、だからといって最前線で闘う満潮達の影に隠れてるのは嫌なんだよ」

満潮「」ドキン

提督「それにな、目の前で大切な者達が沈んでいく様なんて見たくない。そんな現実を避けるためにこうして剣の腕を磨き、いざという時にお前達を守れるように稽古しているんだよ。毎回一緒に出撃出来てないのが悔しいが……」

満潮「ホント……自己満ね」ヤレヤレ

提督「そうだな」ニガワライ

 

満潮「でも……」

提督「?」

満潮「司令官のそういうとこ、嫌いじゃないわ。最初は生温い鎮守府だと思ってたけど、今は本当に司令官の手腕の凄さを実感出来てるもの」

提督「満潮にそう言われると嬉しいな」ニカッ

 

満潮「べ、別に褒めてるんじゃないのよ!? 評価してあげてるってだけだからね!!////」カオマッカ

提督「分かっているさ……しかし、満潮はよく私の悪い所を指摘してくれるから、そんな満潮から評価してもらえて嬉しいんだよ」ニコニコ

満潮「わ、私、そんなに悪い所ばっかり指摘してる……わよね。ごめんなさい」

提督「謝る必要は何処も無い。満潮のお陰で私は慢心せずにいられるのだからな」ナデナデ

満潮「そ、そう……////」ニヘヘ

 

提督「さて、そろそろ皆も起き出してくる時間だな……」

満潮「結構時間立ってたのね……気が付かなかったわ……」

提督「時間とはそういうものさ」

満潮「もう冷えちゃったけど、これ……お茶とスポーツドリンク」つペットボトル

提督「これはまたありがたい……本当に今日は朝から気分が良いな」ニコニコ

満潮「そ////」ニマニマ

 

提督「では私は軽くシャワーを浴びて、自室に戻るとする。満潮も戻って朝の仕度をしてきなさい」

満潮「言われなくてもそうするわよ♪」

提督「ん。それでは、またな」ニカッ

満潮「えぇ、風邪引かないようにね」

提督「あぁ」ノシ

満潮「」ノシ

 

 シャワー室へ向かう提督を見送り、満潮は訓練場から外へ出た。

 

 出ると朝日が鎮守府全体を照らしていた。

 

満潮(目の前で大切な者達が沈んでいく様なんて見たくない……か)

 

満潮「私、なんでこんな部隊に配属されたのかしら……」フフ

 

満潮(簡単に沈めないじゃない!)ニパァ

 

 

 それから満潮は今まで以上に任務、訓練に精を出した。

 提督の思いに応えるようにーー。




真面目回として、満潮ちゃんメインで書き上げました!

そういえば冬イベ始まりましたね〜。
提督をしている方々は共に頑張りましょう!

読んで頂き本当にありがとうございました!

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