艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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遠征組の臨時休暇。


艦これSS四十九話

 

 ○○鎮守府、一三○○ーー

 

 本日は波が高く、とても遠征するのは困難な為臨時で休むことになった。

 この前の子犬の一件で資材が激減したものの、深刻な程ではないので遠征中止を決めた。

 

 執務室ーー

 

提督「すまないな、せっかくの休みなのに手伝ってもらって……」

五十鈴「全然平気よ♪」

由良「何かしてる方がちょうど良いから」ニコッ

名取「遠征が出来ないなら、お手伝いで提督さんのお力になりたいですし」ニコニコ

提督「ありがとう、三人共」ニコッ

五・名・由『////』キュンキュン

 

 コンコンーー

 

提督「入りなさい」

 

 ガチャーー

 

長良「失礼します」

鬼怒「失礼しま〜す!」

阿武隈「失礼します……」

提督「どうかしたか?」

長良「五十鈴達を迎えに来たんです」

鬼怒「お昼一緒に食べようって約束したじゃん!」

阿武隈「お腹減った〜〜」

 

五十鈴「あ……」

名取「忘れてたね〜」テヘ

由良「ごめんなさい」ペロ

提督「そう言えばもう午後の一時なのか……三人共ありがとう。長良達とお昼に行きなさい。後は私一人で済むから」

五十鈴「でも……」

提督「厚意は素直に受け取るものだぞ?」ナデナデ

五十鈴「」エヘヘ

鬼怒「提督もまだなら鬼怒達と一緒に食べようよ!」

長良「名案! 食べてからの方がお仕事の効率も上がりますよ!」

由良「提督さん……」ギュッ

阿武隈「提督……」ギュッ

 

提督「君達には敵わないなぁ」ハハ

名取「じゃあ……」

提督「あぁ、ご一緒させてもらおう」ニコッ

姉妹『やった♪』

 

 ダダダダダダッ

 

全員『?』

 

 バタンーー

 

初春「失礼するぞ!」

初霜「失礼します!」

提督「どうした? 落ち着いてゆっくり話しなさい」

初春「ゆっくり話しては居れぬぞ!」

初霜「早く逃げてください!」

五十鈴「逃げる? どうして?」

鬼怒「ちゃんと説明してよ」

初春「だから……っ!?」

初霜「あわわ……とにかく早く逃げてくださいね!」

 

 バタンーー

 

 ダダダダダダッ

 

全員『???』

提督「一体何が……っ!?」

姉妹『くっ!?』

 

 初春達が去ってすぐ、鼻をつんざくような匂いが漂って来た。

 

五十鈴「ねぇ、今日のみんなの遠征班は? 因みに私達は第三十駆逐隊(睦月、如月、弥生、望月)よ」

長良「私のとこは第二十一駆逐隊(初春、子日、若葉、初霜)」

名取「私達は……第十七駆逐隊(浦風、磯風、浜風、谷風)……」

全員『!!?』ガタガタ

 

 彼女があれを持ってここへ向かっていると言うのか!?

 

提督「……皆」

長良「うん……」

五十鈴「提督も気づいたようね」

 

 先程から室内だけでなく、鎮守府全体の空気が変わった。

 

名取「なんだかざわざわしてます……」

由良「この雰囲気は……」

鬼怒「変に胸がイソイソする……」

阿武隈「ちょっと様子を見てきます」

長良「いや、ここはお姉ちゃんの私が行ってくるよ、みんなはここに居て」

五十鈴「なら私も行くわ。二人なら何とかなるわよ」

 

 まるで大規模作戦中のような空気の中、二人は執務室のドアを開けて部屋を出る。

 

 ドアの外ーー

 

長良『……ううっ!?』

五十鈴『……くあっ!?』

 

提督「長良、五十鈴!?」

妹『(お)姉さん(ちゃん)』

 

 ただならぬ様子に、私達も執務室から飛び出した。

 

 ガチャーー

 

全員『……うぐっ!?』

 

 外に出た瞬間、脳天を刺されるような激臭が私達の鼻を貫いた。

 

提督「こ、これは……っ」

名取「まさか……」キョウガク

鬼怒「この酷い臭いって……!」

由良「」コクリ

阿武隈「や、やっぱり……」ガクブル

 

長・五『……うううう……』フラフラ

提督「長良、五十鈴……」クラクラ

 

 真っ青な顔で振り返った長良や五十鈴と私達は視線が合う。

 

全員『』コクリ

提督「逃げよう」

 

 ここに居てはいけない。早く避難しないと『錬金術師』が来る! 全員でアイコンタクトを交わし、そう決めた瞬間ーー

 

??「おー、司令に長良さん達も、ここに居たのか」

提督「!?」

 

 すぐ向こうから声をかけられ、私達はピタリと固まる。

 

姉妹『ひぃ!!』

提督「くっ!」

磯風「ふふふふ〜」ニコニコ

 

 恐る恐る声のした方を見ると、鍋を持った磯風が五メートル程離れた場所に満面の笑みで立っていた。

 

提督「遅かったか……!」

 

 気が遠くなりそうな激臭の正体。それは、間違いなく、磯風が持っているあの鍋の中にある。

 

磯風「司令〜! みんな〜!」ニコニコ

阿武隈(きゃああああああ!!)

鬼怒(近づいて来るううううぅう!!)

由良(お慈悲を〜〜〜〜〜!!)

長・五・名『』オワタ

提督(どどどどどどうしたらぁあああぁ!?)

 

 私達に向かってまっすぐに、磯風が危険物体を持ったまま駆け寄ってきた!!

 

提督「万事休すか……」トオイメ

姉妹『(陸で轟沈するなんて……)』ハイライトオフ

提督「皆、すまない……」

長良「そんなこと言いっこ無しですよ」ニコッ

五十鈴「死ぬ時は一緒よ」ニコッ

名取「最期までご一緒出来たこと、誇りに思います」ニコッ

由良「幸せだったわ」ニコッ

鬼怒「それに楽しかった」ニコッ

阿武隈「最高の時でした」ニコッ

 

 みんな何とも良い笑顔だった。

 その笑顔は私はとても誇らしく見えた。

 

 さぁ、覚悟を決めよう。

 あれは私だけで食すのだ!

 誰一人も轟沈させてはならぬ!

 

雪風「ふみゅ〜」フラァ

磯風「あっ」

 

 するといきなり右側から雪風が倒れ込んだ。

 磯風も突然のことで避けられず、倒れた雪風につまづいた。

 

姉妹『うわ』

提督「雪風!」

磯風「わぁっ!!」

 

 磯風は転び、鍋が宙を舞った……。

 

 ガシャーーンーー

 

 鍋の中にあった粘着質の液体は、見事に全てが廊下に散乱した。

 

姉妹『……え』

磯風「……あ……」

提督「雪風! 磯風!」ダッ

磯風「うぅ〜……」ナミダメ

雪風「」チーン

 

 我に返った私は、ベタベタで激臭を放つ液体を気にすることなく雪風と磯風に近寄った。

 

提督「二人共、無事か!?」

磯風「磯風は大丈夫だが……日頃の感謝を込めて作ったカレーが……」

全員『(カレーだったのか(ね)……)』

提督「そうか。残念だったが、磯風が無事ならそれで良い」

雪風「雪風は沈みません……」ガクッ

提督(お前は最高の女神だよ)ナデナデ

 

 その後、長良達には雪風をドックへ運んでもらい、私は磯風と共に床に散乱したカレーなる物を片付けた。

 

 掃除中に誤って手にカレーが触れてしまったヶ所がかぶれたのは私の心の中にしまっておこう。

 

 




磯風ちゃんがお嫁さんの方々、どうかご了承とご理解を。
味見って大切ですよね。人に出すなら特に!

読んで頂き本当にありがとうございました!

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