艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦メイン。

少し真面目なシーン、独自解釈含みます。


艦これSS三百十四話

 

 ○○鎮守府、一一○○ーー

 

 防波堤ーー

 

高波「…………」

長波「…………」

巻雲「…………」

 

 高波達は防波堤で海を眺めていた。

 

高波「波がとても穏やかですね」

長波「だな〜。出撃や警備してるみんなには悪いけど、なんか気が抜けちまうよ」アハハ

高波「でもみんなで黙祷してくれて嬉しかった。きっとみんなも喜んでくれてるかもです」ニコッ

巻雲「そこは『かも』っていらないですよ」フフフ

高波「あ……えへへ、かも♪」

 

 今朝は埠頭で提督達は黙祷を捧げてから後段作戦の最終作戦を遂行しに出撃した。

 

 今日は一九四二年にルンガ沖夜戦が勃発した日であり、この海戦で駆逐艦『高波』が沈没してしまったのである。

 

 この夜戦は駆逐艦のみで鼠輸送任務にあたっていた時に発生。

 長波を旗艦とし、高波・親潮・黒潮・陽炎・巻雲・長波・江風・涼風という航行体形で前日の夜中から航行していると、日付けが回った頃にアメリカ軍の偵察機がこの輸送船団を発見。

 するとアメリカ軍は直ちにこれを阻止すべく、重武装の重巡洋艦四隻を含む十一隻の艦隊を編成し、長波達へ攻撃を開始した。

 

 船団から先行していた高波はそこで集中砲火を浴びるも、魚雷を発射。

 しかし高波は集中砲火を絶え間なく受けることになり、闇夜の中、爆炎と星弾の光で高波だけが常に姿を晒し続ける状態で、魚雷発射管が爆発、続いてボイラーも轟音を上げて炸裂し、さらに三つの主砲も全て被弾。

 艦上構造物は完全に破壊され、あっという間に高波は洋上に浮かぶ鉄の塊と化してしまった。

 

 しかし高波に被害が集中したこと、また高波が本隊と距離をおいて航行していたこともあり、その間に長波を始めとした七隻はしっかりと戦闘準備に入ることが出来、奇襲攻撃だったアメリカ軍の砲撃を、奇襲にさせなかったのは高波の大きな功績だった。

 

 その後、各艦は一斉に酸素魚雷を発射。

 見つかりにくい酸素魚雷はアメリカ艦隊に襲いかかり、アメリカ重巡『ノーザンプトン』を沈め、更にはアメリカ重巡『ミネアポリス』・『ニューオーリンズ』・『ペンサコラ』の三隻も大破させた。

 内、ミネアポリスとニューオーリンズの被害は、高波の魚雷発射記録と両重巡の被害時刻から高波の放った魚雷によるものだと推定されおり、高波はただ囮になっただけでなく、自身もまた大きな戦果を挙げ、日本に勝利をもたらした。

 

 ただ高波集中砲火を浴びたため、生存者は僅か三十三名しか助からないという大被害だった。

 

 そんな辛い日なので、提督は出撃する前に高波に『帰ったら美味いのご馳走する』と約束し、高波の頭を優しく撫でてから出撃していった。

 高波は自分のこと、そして共に戦い、散ってしまった多くの英霊の人々をちゃんと考えてくれる提督に感謝した。

 そしてそんな大好きな提督をお出迎えしたくて、あの夜を共に駆けた姉二人とこうして防波堤で待っているのだ。

 

 すると、

 

「お前らも艦隊……てか提督待ちか?」

 

 と三人に声をかける者が居た。

 三人が振り返ると、そこには飛鷹・隼鷹・北上・大井の四人が立っていた。

 

隼鷹「あたしらも提督を出迎えに来たんだ♪」

 

 そう言って隼鷹達は笑顔を見せた。

 隼鷹と北上の二人にとってもこの日は特別な日なのだ。

 

 あの戦争を戦い抜いた二人はこの日、揃って海軍から除籍した日なのだ。

 そんな二人にも提督はちゃんと黙祷と敬礼をし、出撃前には高波に伝えたことと同じことを伝えてから出撃したのだ。

 

飛鷹「さっき大淀の所に連絡があってね、もう鎮守府の正面海域に入ったそうよ」ニコッ

大井「大破者は居るけど、ちゃんとみんな無事ですって♪」

 

 飛鷹と大井がそう告げると、高波達は安堵の笑みをこぼした。

 

北上「何奢ってもらおうかな〜♪」ニシシ

隼鷹「あたしは出来れば鳳翔さんとこで奢ってほしいけどね〜」ケラケラ

 

 そんな二人に高波達を含めた全員が『相変わらずだな〜』と言ったように笑った。

 

 そうしていると、沖に影が見えてきた。

 

大井「那珂が先頭だから支援艦隊が先に到着したみたいね」

飛鷹「みんなちゃんと居るわね♪」

 

 そしてその後すぐに、多くの影が姿を現した。

 提督を含めた鎮守府の連合艦隊・決戦部隊の帰還である。

 

高波「お出迎えするかも〜!」

 

 高波は艦隊を見るなりそう言って立ち上がると、艦隊に両手を振りながらその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 そんな高波につられるように、他の者達も手を振って艦隊を出迎えた。

 

 艦隊は防波堤で手を振る高波達に大手を振って応えながら、埠頭から陸に上がった。

 

 高波達が艦隊へ駆け寄ると、みんな「出迎えありがとう」という意味で敬礼をした。

 そして、

 

高波「司令官! おかえりなさい!」

 

 と言って高波は提督の胸に飛びついた。

 提督はそれを笑顔で受け止め「ただいま」と言って高波の頭を優しく撫でた。

 

 その後からやって来た長波達はみんなに労いの言葉をかけながら、艦隊の帰還を喜んだ。

 

提督「帰って来たぞ、高波」ニコッ

高波「はい♪ 信じてました♪」ニパー

提督「はは、ありがとう」ナデナデ

高波「えへへ〜♪」

 

長門「ふふ、まるで親子だな」ホホエマー

陸奥「本当ね、うふふ♪」

赤城「美しい光景ですね♪」

加賀「えぇ、本当に」フフフ

大鳳「頑張った甲斐ありますね」ニコニコ

グラーフ「あぁ、次も頑張ろう」フフ

 

秋月「高波さん、嬉しそう」ニコニコ

照月「そりゃ嬉しいでしょ♪」

矢矧「午後の出撃もまた頑張りましょう♪」

酒匂「頑張るっぴゃ〜♪」

プリンツ「みんなで力を合わせましょう」フンス

ザラ「うん♪ 粘り強く行こ♪」

 

 連合艦隊のみんなは提督と高波の絆を見て、更なる躍進を誓った。

 

提督「では皆、補給と修復に向かってくれ。バケツも使って午後の出撃に備えてほしい」

全員『はっ!』ケイレイ

提督「そして、みんなにも昼食をご馳走する。食堂で待っているよ」ニコッ

 

 提督が出撃した艦隊全員にそう告げると、みんなは元気に返事をして各自足早にドックや補給室へと向かった。

 

提督「では我々は食堂へ行こうか」ニコッ

高波「はい♪」

隼鷹「ゴチになりゃ〜す♪」人

北上「ここにいる大井っち達にも、ご馳走してくれると嬉しいな〜♪」

提督「勿論、そのつもりさ」ニッ

 

巻雲「ご馳走様です」ニパー

長波「やったね♪ ありがとよ、提督♪」ニシシ

飛鷹「あら、嬉しい♡」

大井「ありがとうございます、提督♡」

 ↑鼻血が出そうなのを堪えている

 

 こうして高波は辛い日でも、提督や姉妹、艦隊のみんなに囲まれて過ごすのだった。

 そして艦隊はまた午後からも最終作戦海域に意気揚々と出撃したーー。




今日は本編に書きました通り、駆逐艦『高波』が沈んでしまった日です。
この日に沈んだ駆逐艦『高波』と、亡くなってしまった多くの英霊の方々に心からお祈りします。
そして本日除籍された空母『隼鷹』と軽巡洋艦『北上』に心から感謝を送ります。

本編での情報はWikipediaと『大日本帝国海軍 所属艦艇』より得ました。

更に今日は那珂ちゃん、酒匂ちゃん、暁ちゃん、磯風ちゃんの竣工日です!
みんなおめでとう!

ではでは此度も読んで頂き本当にありがとうございました☆

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