艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

他作ネタ、ネタ含みます。


艦これSS三百九話

 

 ○○鎮守府、一四○○ーー

 

 駆逐艦寮、共同厨房ーー

 

浦波「吹雪姉さん達大丈夫かな〜?」

磯波「提督さんも一緒だから、きっと大丈夫だよ」ニコッ

白雪「そうだよ。みんなちゃんと帰って来るから、私達は吹雪ちゃんと叢雲ちゃんのためにお料理作っちゃお♪」

 

 厨房の天井を眺めながらそうつぶやく浦波に、白雪と磯波は笑顔で返していた。

 するとその隣で初雪が人参の皮をピーラーで剥きながら口を開いた。

 

初雪「吹雪達は支援組だから大丈夫だよ。お腹空かせて帰って来るだけ……」

 

 艦隊は只今、本土沖へ出撃中であり『本土防空戦』の真っ最中である。

吹雪と叢雲を含めた第四艦隊は扶桑達と共に前衛支援任務へ赴いているのだ。

 

 そして今日の所は特に何の予定もない残りの吹雪型姉妹達は吹雪と叢雲のために、カレーを作りながら吹雪達や艦隊の帰りを待っていたのだ。

 

深雪「ほい、この人参も洗い終わったから剥い剥いしてくれ」つ人参

初雪「ん」ウケトリ

白雪「怪我しないようにね?」

初雪「ん」コクリ

 

 初雪と深雪はほぼ皮剥きや野菜洗いを担当している。

 何故なら初雪は野菜をいつも細かく切ってしまい、深雪は逆に大きく切ってしまうため、野菜を切る作業などは基本的に白雪がやることになっているのだ。

 

浦波「磯波姉さん、玉ねぎの皮、剥い剥いし終わった?」

 

 浦波がそう訊ねると磯波は「うん♪」と言って浦波にザルに入れた玉ねぎを渡した。

 浦波はそれを受け取ると丁寧に水洗いした後で、鼻まで覆うシュノーケルを装備し、玉ねぎを縦半分に切って芯を取り除き、切り口を下にしてまな板に置き、繊維と直角に包丁を入れて端から薄切りにしていった。

 こうすると火を通した時にしんなりするため、カレーなどの見込み物にはピッタリの切り方なのだ。

 

深雪「えらい重武装だな〜」ニガワライ

初雪「鼻つまむだけでいいんじゃないの?」

白雪「まぁ人それぞれだから」ニガワライ

 

 そんな浦波を見ながら居ると、浦波が玉ねぎのカットが終わり、白雪を呼んだ。

 白雪は返事をして浦波達のところに行くと、フライパンでその玉ねぎを飴色になるまで炒めた。こうするのとしないのとではカレーの味に雲泥の差が出ると言っても過言ではない。

 約三十分間焦げないように炒めた玉ねぎをお皿に移した白雪は、磯波達にお鍋へ水を入れるようお願いして、今度は人参等の野菜を切り始めた。

 

深雪「そう言えば、何で今回はじゃがいも入れないんだ?」

 

 野菜を洗い終えて暇していた深雪が手を拭きながら白雪に訊ねると、白雪はトントントンと小気味良い音を刻みながら答えた。

 

白雪「この前間宮さんに教えてもらったの。じゃがいもを入れると味がぼやけちゃうんだって。だから今回はじゃがいもを抜いて、その代わりに秋らしく色んなきのこを入れようと思うの」

初雪「私はじゃがいもがあった方が好き。でも白雪のカレーなら美味しいから何でも好き」

白雪「ふふ、ありがとう♪ 今度作る時はじゃがいももちゃんと入れるね♪」

 

 白雪が初雪に笑顔で返すと、初雪は「うん♪」と嬉しそうに頷いた。

 すると磯波が「お水入れました〜」と声をかけ、白雪は「じゃあ火にかけて♪」とお願いした。

 

白雪「えっと、お酒お酒……」

深雪「ほい」つ日本酒

白雪「ありがとう♪」ウケトリ

初雪「いつもお酒入れてたんだ」

白雪「うんん。これは磯波ちゃんから聞いたの♪」

 

 白雪がそう言うと磯波は「えへへ」と照れ臭そうに笑った。

 

浦波「お酒入れるとやっぱり違うの?」

 

 浦波が磯波に質問すると、磯波は頷いて説明を始めた。

 

磯波「お酒を入れると味に深みが増すんだよ♪ 入れたのと入れてないのとでは全然違うんだから」ニコッ

浦波「へぇ〜、それで日本酒なんだ」

磯波「日本酒だけじゃなくて、赤ワインとかビールもカレーには合うよ♪」

 

深雪「赤ワインはどんな感じになるんだ?」

磯波「赤ワインは渋みや酸味がカレーの味をより膨らませた仕上がりになるよ♪」

 

初雪「じゃあビールは?」

磯波「ビールはカレーのルーの深みが増すかな。ほのかな苦味がついて大人っぽいカレーになるの♪」

 

白雪「それで日本酒の場合は、ほのかな甘さが加わって、お肉も柔らかく仕上げてくれるのよね?」ニコッ

磯波「うん♪ 中にはブランデーとかウィスキーを入れるって本には書いてあったけど、好みが分かれるんだって。だから日本酒をおすすめしたの♪」

 

 磯波の説明に初雪達は『へぇ〜』と口を揃えて言い、とても感心した。その一方、磯波は珍しく得意気に胸を張った。

 

 それから白雪は野菜を煮込み、更にそこへ一口サイズに切った鶏胸肉と日本酒を入れて更に煮込み、アクが出るとその都度そのアクを取っていった。そしてその都度取った分の水も加えて。

 

初雪「アクってそんなに取らない方が美味しいんじゃないの?」

深雪「あ〜、確かにな〜。旨味とか全部取っちまうことにならねぇの?」

 

 二人の疑問に白雪はアクを取りながら答えた。

 

白雪「アクを取っても味が薄くなる訳じゃなくて、寧ろ味わいが深くなるの♪ ルーのスパイスの味や香りまで際立つんだから♪」

 

白雪「因みにアクを一度も取らないと、野営とかキャンプの時みたいな野趣あふれる味わいのカレーになって、一度だけ取ると味に親しみが加わって懐かしい味わいになるの♪ 間宮さん達が作るカレーはいつもそうしてるんだって♪」

 

浦波「カレーって奥が深いですね」オォー

磯波「艦娘やご家庭の数だけ味があるからね」クスクス

深雪「初めて比叡さんのカレー食った時は卒倒したな〜。今は美味しくなったけど……」ニガワライ

初雪「隠し味が隠れてないカレーなんてカレーじゃない」ウンウン

磯波「あれはただカレー風味のチョコレートだった気が……」ニガワライ

浦波「そ、そんなことが……?」

深雪「浦波は料理が出来るようになった比叡さんしか知らないからな〜」

初雪「因みに磯風のカレー(自称)は司令官が食べて、一週間重湯しか食べられない体にしたよ」フフフ

浦波「((((;゚Д゚))))」ガクガクブルブル

磯波「今はちゃんと普通の作れるよ」ニガワライ

 

 そんな話をしながら居ると、白雪は一度火を止め、中辛のルーと辛口のルーをブレンドした物を溶かし入れ、一時間半煮込んだ。白雪の中でこの方法が一番みんなに合っているからだ。

 

 

 そしてーー

 

白雪「よ〜し、カレー完成♪ みんな味見して♪」

 

 出来上がったカレーを小皿に取り、みんなに味見をお願いする白雪。

 そして初雪達が味見をすると、

 

初雪「美味しい……辛さもべリグ〜」∑d

深雪「人参も甘くて最高!」∑d

磯波「スパイスの香りもコクもバッチリです♪」

浦波「こんなに美味しいの初めて食べました!」キラキラ

 

 みんなから絶賛の嵐だった。

 そして白雪達は美味しいカレーを作り、吹雪と叢雲の帰りを待つのだったーー。




 おまけーー

 一九○○ーー

 駆逐艦寮、吹雪・白雪・初雪・深雪部屋ーー

吹雪「うわ〜、このカレー美味しい〜♪」モキュモキュ
叢雲「本当……煮込み具合とか味の深さとか、全部が完璧」キラキラ

白雪「ふふふ、二人のためにみんなで作ったの」ニコッ
磯波「殆どは白雪姉さんがやったけど、みんなで野菜洗ったりはお手伝いしたの」ニコッ

吹雪「みんなの優しい味がするよ」ニコニコ
叢雲「本土沖の作戦も無事に終わったし、最高の気分で最高のカレーが味わえて嬉しいわ」ニコニコ

浦波「次は前段作戦最後の『本土沖太平洋上・艦隊作戦第三法』ですね」
吹雪「そうだよ。本土を急襲した敵艦載機はシャングリラから放たれたんだって」
深雪「それを捕捉して、連合艦隊で叩くって訳か〜。頑張らないとな♪」

初雪「相手に私達のシャングリラ魂を見せつけなきゃ!」キリッ
叢雲「あんたの言うシャングリラとは違うシャングリラだからね?」
初雪「あんたは頭で考えてる理屈を言ってる……! 人は理屈で動くもんじゃない!!」
叢雲「…………ツッコまないからね?」
初雪「分かるよ。センチメンタルだよ、あんたの」キリリッ
叢雲(よし。殴ろう♪)サワヤカエガオ
浦波「堪えて叢雲姉さん!」ウデオサエ
叢雲「この手を離して浦波! 私がこいつを修正してやる!」
初雪「これが若さか……」フフリ
叢雲「〜〜!」ピキピキ
浦波「初雪姉さんも火に油を注がないで〜!」

 こうして本日も賑やかに夜は更けていくのだったーー。

ーーーーーー

今日は磯波ちゃんの進水日なので、吹雪型姉妹の日常回にしました!

磯波ちゃん、おめでとう!

おまけは分かる人にしか分からないネタになりましたが、ご了承を。
因みに本編のカレーは私自身のカレーの作り方です♪

では此度も読んで頂き本当にありがとうございました☆

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