艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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戦艦、駆逐艦メイン。

少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自解釈含みます。


艦これSS三百七話

 

 ○○鎮守府、○七三○ーー

 

 食堂ーー

 

金剛「テイトク〜♡ 食べさせてクダサ〜イ♡」アーン

提督「ははは、少し待ちなさい……ほら」つトースト

金剛「ん〜♡」モキュモキュ

 

浦風「提督さ〜ん♡ 金剛姐さんに食べさせたら、今度はうちが食べさせちゃるけぇのぉ♡」ニコニコ

提督「ありがとう。もう少し待ってほしい」ナデナデ

浦風「ゆっくりでええよ〜♡」デレデレ

 

 金剛と浦風は提督に尽くし尽くされていた。

 二人は締りのない顔で朝食を食べ、そして食べさせている。

 

大和「処す?」ハイライトオフ

長門「処そう」ハイライトオフ

ウォスパ「是非処そう」ハイライトオフ

武蔵「少しは落ち着け」ニガワライ

陸奥「今日ばかりは仕方ないわよ」ニガワライ

アイオワ「落ち着いて」ニガワライ

比叡「金剛お姉さまが司令とあんなに仲睦まじく……ごふっ」ハナジダバー

榛名「ひぇ〜!?」

霧島「寧ろよくぞここまで耐えられましたね」つティッシュ

 

利根「うぉ〜////」ガンミ

筑摩「羨ましいですね♪」クスクス

加賀「ちっ」シタウチ

赤城「いいな〜」ユビクワエ

瑞鳳「ホントホント」ユビクワエ

祥鳳「まぁ今日は仕方ないかと」ニガワライ

 

秋月「皆さんの視線が凄いわね」ウワー

照月「う、うん……なんか怖い」

初月「」ジーッ

秋月「初月?」

初月「」ジーッ

照月「あ〜、初月もいつの間にかあっちだったのね」ニガワライ

 

磯風「浦風のやつ……」グヌヌ

雪風「あわわ、落ち着いてください」ガクブル

浜風「今日はあの二人にとって特別な日ですから」ドォドォ

谷風「そうそう、仕方ないって」ニガワライ

陽炎「不知火も露骨に見過ぎ」ニガワライ

不知火「不知火に落ち度でも?」ギロッ

黒潮「落ち度も何も今日はしゃあないやろ」ニガワライ

親潮「落ち着いてください」ドォドォ

 

 LOVE勢は提督達のテーブルを見ながらそれぞれ修羅と化していた。

 それでも暴動にならないのは、金剛と浦風の二人にとって、今日は特別な日だとみんなが理解していたからだ。

 

 一九四四年のこの日、戦艦『金剛』と駆逐艦『浦風』はサマール沖海戦からの帰投中をアメリカ潜水艦『シーライオン』に狙われ、台湾海峡で雷撃を受けて沈んでしまった日なのだ。

 

 アメリカ潜水艦が金剛へ向けて放った魚雷本の六本内、二本が命中。

 

 損傷による傾斜の度合いから見て、当初は沈没はしないだろうと多くの者がそう思った。

 しかし、この当時で金剛の艦齢は既に三十一年。

 老朽化した船体に魚雷の損傷を耐える力は残っておらず、更にはサマール沖海戦でも至近弾を受けていたため、金剛の船体はじわじわと傾斜角度が上がって行った。

 そして傾斜角度が十八度に達した時に、ようやく退艦命令が出されるものの、時既に遅し。

 機関停止後に転覆、そして一番砲塔の弾薬庫からの爆発と相次ぎ、多くの乗員達と海へ沈んでいった。

 

 一方の浦風は第十七駆逐隊(当時は雪風・浦風・磯風・浜風)の面々と共に第二水雷戦隊の一員として、共に帰投している長門・大和・金剛の護衛任務に就いていた。

 金剛が沈み始めたのを見て、磯風と浜風は急いで金剛の乗員を救助し、偉大な高速戦艦の最期を看取ることになった。

 

 その一方で雪風は後方の大和・長門を守るために少し離れた位置で警戒をしていたが、そこにもう一隻居るはずの浦風の姿がどこにもなかった。

 浦風は長門へ向けて発射された第二波、魚雷三本の内の一本が直撃し、そのたった一分後に海へと沈んでしまっていたのだ。

 そして雪風は浦風の轟沈を目の当たりにしてしまった。救助へ向かおうとするも、浦風は瞬く間に海へと姿を消してしまったため、救助に回る時間も無かった。

 雪風はやむなく大和と長門の護衛に回ったと記録が残っている。

 

 金剛と浦風にとってこの日がどんなに辛い日なのか分かっている提督は、みんなと埠頭で黙祷を捧げた後で、二人の希望を聞いて今の様に朝食を取っているのだ。

 提督としてはこの日に亡くなった英霊の方々を思い、こうしたことは却下しようとしたが、今をこうして生きる彼女達の笑顔や幸せになるならと考えて今に至る。

 

金剛「テイトク〜♡ 今日ずっと一緒に居てほしいネ〜♡」スリスリ

提督「一緒に居てやりたいが、本日も私は第一艦隊と共に出撃する予定だ。留守は頼んだぞ」ナデナデ

金剛「ムゥ〜! ならワタシも行きマス!」

浦風「うちも一緒に行きたい〜」クイクイ

 

 普段聞き分けのいい金剛と浦風の行動に提督は戸惑ったが、こんな日くらい我が儘も言いたくなるだろうとつくづく思った。

 しかし、提督は心を鬼にしてこんな日に二人を出撃させないと決めた。

 

提督「いいかい、二人共。良く聞いてほしい」

金・浦『?』

 

 提督の真面目な顔付きに、二人は姿勢を正してしっかりと聞く体制をとった。

 それを確認すると、提督は金剛と浦風の手をそれぞれ握りしめてからゆっくりと諭すように語りかけた。

 

提督「今日は金剛、浦風にとって本当に辛く、特別な日だ。そんな日くらい二人の希望通りに過ごさせてやりたいと心から思っている」

 

提督「しかし、今日の出撃だけはダメだ。いくら私と共に前線へ赴いているとしても絶対に許可出来ない。ましてや二人を潜水棲姫の討伐になど行かせる訳にはいかない」

 

提督「臆病者と思われても構わない。私はあの日のように二人を……大切な二人を失いたくないのだ。どうか分かってほしい」

 

 提督はそう言って何度も何度も「頼む、今日だけは」と二人に懇願した。

 この日に敢えて出撃し、生きて帰ってこそ、あの日とは違うのだと見せつけるという考えもあるだろう。

しかし、戦場に立てば何が起きてもおかしくはなく、都合良く奇跡なんてものは、そうそう起こるものでもない。

失ってからでは何もかもが遅い世界なのだ。

 また着任させることは可能だとしても、共に過ごして来た金剛と浦風とは同じようでいて絶対に同じではないのだ。

 だからこそ提督はこれまで共に歩んで来た、今の二人にこうして懇願したのだ。

 

金剛「That makes sense(分かりました)……でも条件がありマス! 」

浦風「」コクコク

提督「何かな?」

金剛「出撃したら、必ず皆サンと一緒に帰って来て、ランチもディナーも一緒に食べてクダサイ!」

浦風「提督さんならこれくらいの約束、守ってくれるじゃろう?」

 

 二人の言葉に提督は「約束する」と力強く頷いた。

 その返事を聞いた金剛と浦風はニッコリと微笑み、また提督の腕にそれぞれ抱きつくのだったーー。




今日は本編に書きました通り、戦艦『金剛』と駆逐艦『浦風』が沈んでしまった日です。
この日に沈んでしまった金剛、浦風。そしてその艦と運命を共にした多くの英霊の方々に心からお祈りします。

本編内の情報はWikipediaと『大日本帝国海軍 所属艦艇』から得ました。

そして今日は比叡さん、利根さん、照月ちゃんの進水日です!
みんなおめでとう!

ということで此度も読んで頂き本当にありがとうございました☆

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