艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

313 / 330
正規空母メイン。

キャラ崩壊、ネタ含みます。


艦これSS三百三話

 

 ○○鎮守府、一七○○ーー

 

 空母寮前ーー

 

加賀「…………」

 

 加賀はある物を手に持ち、頭を悩んでいた。

 

 つい先程、明石酒保へメモ帳を買いに行った加賀は、そこで猫の頭の形を模した可愛らしいメモ帳を買った。

 購入後はルンルン気分でここまで戻ってきた加賀。

 そして我慢出来ずに寮の前まで来た所で開封してみると、困ったことが起きた。

 

加賀「どうしようかしら……」

  (()()……)

 

 加賀が手にしているのはそのメモ帳のおまけとしてついていたネコにゃんシールだった。

 ネコにゃんとはそのまま三毛猫の愛くるしいキャラクター(オータムクラウド監修)だ。

しかし、加賀は自分がシールは使わないことを理解している。仮にとっておいても絶対に使わず、寧ろ存在その物を忘れそうだいうことをちゃんと理解している。

しかししかし、だからといってこの可愛らしいシールを捨てることなど到底出来るはずがないと分かっている加賀は、こうして悩んでいるのだ。

 

「加賀さん?」

 

 背後から声をかけられた加賀が振り向くと、そこには潮が立っていた。その手にはサツマイモが入った手提げを下げて。

 

潮「加賀さん、どうしたんですか? ずっと首を傾げてましたけど、何かあったんですか?」

加賀「いえ、大したことではないの。心配を掛けてごめんなさいね」ナデナデ

潮「いえいえ! 尊敬する加賀さんのためですから!」フンス

加賀「ふふ、ありがとう」ニコニコ

 

 潮は前から加賀を慕っていて、実は朝潮よりも前から一航戦の二人とお泊り会をする程の仲なのだ。

 加賀としても潮は朝潮と同じく可愛い妹分で、他のみんなを差別するつもりはないがこの二人は特に可愛がっている。

 

加賀「っ」キュピーン

 

 すると加賀はあることを思い出した。

今自分の目の前で頭を撫でられて目を細めている潮。

潮はシールコレクターなのだ。

 

 潮が着任したての頃、彼女の性格からなかなか思い切った行動を取れず、敵艦を撃ち漏らすことや自分の意見をちゃんと言えることが出来ないでいた。

 そんな彼女のために、提督が取った行動はちゃんとハッキリと行動出来た数の分だけシールシートにシールを与えるということだ。

 潮としてはこれは目で見える自分の評価であったため、数が増える毎に自信を付けていった。

そして改二となってシールシートは卒業となったが、シールが好きになった潮はその後もちょくちょくシール収集に励み、今では三リットルのペール缶で四缶分になるまで集めているのだ。

 

 それを思い出した加賀は今自分が手にしているシールをあげようと考えたのだ。

 

加賀「潮さん、これ良かったら貰ってくれないかしら」つシール

潮「わぁ〜、可愛い〜! いいんですか!?」キラキラ

加賀「えぇ、あなたなら大切にしてくれそうだから」ニコリ

潮「ありがとうございます♪ 大切にします!」

加賀「えぇ」ニコニコ

 

 すると潮が「あ、それじゃあ」と言って手提げをガサゴソを弄った。

 

潮「二個ずつで申し訳ありませんけど、赤城さんと食べてください♪」つサツマイモ

加賀「…………気にしなくていいのよ?」

潮「いえ! 加賀さんが気にしなくても私が気にするんです! どうか受け取ってください! 美味しいですから!」

加賀「わ、分かったわ」ウケトリ

潮「はい♪」ニッコリ

 

 潮の勢いに負けた加賀はそのサツマイモを受け取った。

それを見た潮は満面の笑みを浮かべ、改めてシールのお礼を言ってからスキップで駆逐艦寮へと戻っていった。

 

 そして加賀はまたその場に立ち尽くして、頭を捻った。

 

加賀(どうしようかしら……)

 

 加賀はサツマイモが嫌いな訳ではない。寧ろ大好きであり、加賀としてはあの赤城の相棒。好き嫌いなどという文字は加賀の辞書からは滅殺されている。

 

 では何故頭を捻っているのか……それは、自分のバルジが黄色信号なのだ。

 最近加賀は龍驤からリンゴを貰ったり、朝潮からミカンを貰ったりと食べ物を貰うことが多かった。

 そして加賀は赤城と違い、食べたらちゃんと太る身体の持ち主である。

これまでは訓練や食べる量を抑えることで体型維持をして来たが、貰った物を腐らせるのは貰った相手にも、美味しく育った果実にも申し訳ない。

そのため食べて消費するしか方法が無く、加賀はそれによりとうとう自分で決めていたイエローゾーンに入ってしまったのだ。

 赤城やグラーフにあれだけ厳しくしている自分が太ったとなれば、二人はどんな顔をするだろうか。

呆れられるにしろ、罵倒されるにしろ、これまで築いてきた自分の信頼が崩れ去ることには変わらない。

 加賀はどうしたら良いのか分からず、その場から逃げるようにある場所へと向かって走り出した。

 

 

 居酒屋『鳳翔』、一七三○ーー

 

鳳翔「まさか提督がこんなに早くいらしてくださるだなんて思いませんでした♡」ニコニコ

提督「今日はどうしても鳳翔の煮物が食べたくてね……急いで書類を終わらせて、すぐに来てしまった。私こそ早くに押しかけてすまない」ニガワライ

鳳翔「いえいえ、私は嬉しいだけですから♡」エヘヘー

提督「そう言ってくれると助かる……」ニコッ

鳳翔「〜♡」ルンルン

 

 ガラガラッーー

 

加賀「提督、鳳翔さん。今、大丈夫ですか?」

 

 するとそこへ加賀が来店して来た。提督と鳳翔が笑顔で招き入れると、加賀は提督のすぐ隣の席に腰を下ろした。

 

提督「よく私がここに居るのが分かったな」

加賀「急だったので偵察機で調べました」

提督「そうか」ニガワライ

鳳翔「」フフフ

 

提督「それで何かあったのか?」

鳳翔「ゆっくりでいいからね? はい、お水」つコップ

 

 加賀は二人に頭を下げ、水を一口ゴクッと飲むと、ここに至るまでのこと、これからどうしたらいいかということをゆっくりと二人に話した。

 

提督「ふむ……人の好意は無下に出来んからな」

鳳翔「皆さんは加賀さんを思っての行動ですからね」

加賀「はい……そのお気持ちは嬉しいですし、喜んで頂きますが……このままでは……」ズーン

 

 すると提督が加賀の頭をポンッと優しく叩くように撫でた。

 

提督「では食べて消費するのではなく、他で消費するのを考えればいい」

加賀「他……ですか?」

鳳翔「そうですね……例えば、頂いた物を使ったお料理を頂いた方々にご馳走するのはどうでしょうか?」ニコッ

 

 鳳翔の提案に加賀はハッとした。

 そう、何も黙々とそれを食べるだけが相手への感謝ではないのだ。

 お礼としてその物で料理を振る舞うことも相手に感謝を伝えるのに有効である。

 

加賀「とてもスッキリしました。本当にありがとうございます。明日にでも作って皆さんに振る舞いたいと思います」キラキラ

提・鳳『どういたしまして』ニコッ

 

 後日、加賀はリンゴをくれた龍驤にアップルパイ。ミカンをくれた朝潮とその姉妹達にミカンのタルト。潮とその姉妹達にスイートポテトをそれぞれ振る舞い、自分もイエローゾーンからの脱却に成功するのだったーー。




今日は加賀さんと潮ちゃんの進水日なので二人を登場させた日常的な回にしました!
二人共おめでとう!

では此度も読んで頂き本当にありがとうございました♪

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。