艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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軽巡洋艦メイン。

少し真面目なシーン、独自解釈含みます。


艦これSS二百九十八話

 

 ○○鎮守府、一三○○ーー

 

 中庭ーー

 

川内「ん〜……ふぁ〜〜……」クシクシ

那珂「あはは♪ 大っきなあくび〜♪」

神通「お昼からそんなに大あくびしないでください」ニガワライ

 

 川内達は昼食を終えた後で食休みを兼ね、中庭のベンチで日向ぼっこへ来ていた。

 

川内「秋刀魚漁の護衛任務もっとやりたかったな〜」

神通「漁業にもちゃんと制限や規律があるのですから、そう言わないでください」

 

 川内の言葉に神通はため息混じりで返すと、川内は「は〜い」と若干ふてくされた感じに返した。

 

那珂「そう言えば、護衛任務が多かったから川内お姉ちゃんの大切な日にちゃんとまとまって黙祷出来なかったね」

川内「あ〜、神通と那珂はその日お休みだったから知らないのね。ちゃんと任務が終わった時にみんなで黙祷したよ」

那珂「えぇ〜! 私、神通お姉ちゃんと二人で黙祷したのに〜!」

神通「そう言うことはちゃんと伝えてくださいよ」

川内「いや〜、あの日の任務は午前三時に終わったからさ〜……わざわざ起こすのもどうかなって」ニガワライ

 

 川内の心遣いということで神通と那珂は不満の表情を浮かべながらも、それ以上のことは何も言わなかった。

 

 一九四三年・十一月二日はパプアニューギニアのブーゲンビル島の攻防でブーゲンビル島沖海戦が勃発し、この海戦で川内は轟沈してしまった。

 

川内「あの時は大変だったな〜。いっぱい砲弾は飛んでくるし、航行も出来なくなるしでさ……」

那珂「第三ボイラー室をやられちゃって、真水が全部流れちゃったんだよね?」

川内「そうそう……でも乗員のみんなはそれでも諦めなかったんだよ」

神通「動きさえすればと海水を使用して動かそうと考えたんですよね」

川内「不純物があるからものすっごい量の黒煙を煙突から出したけどね〜」ニガワライ

 

 苦笑いを浮かべてそう話す川内はその次の瞬間、フッと顔を下に向けた。

 

川内「でもさ、あの時の私はもう浮いてるのがやっとだったんだよね……」

那珂「お姉ちゃん……」

神通「スクリューの損傷、ですよね」

 

 神通の言葉に川内は「そう」と頷いて、ゆっくりと前を向いた。

 

川内「どんなに主砲とかが無事でも推進装置が動かなきゃ話にならないからね……みんながちゃんと退艦したのを見届けてから、私は横転したっけ」

 

 そう言うと川内はパッとベンチから立ち上がって一方だけ前に踏み出した。そしてクルッと神通達の方に体を翻し、満面の笑みで口を開いた。

 

川内「ミッドウェー以外、私はずっと夜戦続きで、最後も夜戦で終わった。私はそれで十分満足なの♪ あの日亡くなった人達には悪いけど、そうでもしないとあの人達に悪い気がするから」ニッコリ

神通「姉さんが出した答えなら、私達は何も言いません」ニコッ

那珂「そうだよ♪ ただ、今度はちゃんとみんなで黙祷しようね? それだけは約束!」

川内「なら、今から三人で黙祷しようか♪ 日頃の報告とか感謝はいつ送ったっていいんだもん♪」

 

 川内の提案に神通と那珂は笑顔で賛成し、三姉妹は仲良く揃ってあの日の英霊の人々に黙祷を捧げに埠頭へ向かった。

 

 そんな川内達の話を少し離れたベンチから聞いている者達が居た。

 

雪風「川内さん達は仲良しですね♪」

時津風「あたし達だって仲良しじゃん♪」

天津風「私達はみんなで黙祷したものね」ニコッ

初風「妙高さん達も来てくれて嬉しかったわ。謝られた時は驚いたけど」ニガワライ

 

 それは雪風達、第十六駆逐隊だった。

 初風も川内と同じく、ブーゲンビル島沖海戦に参加し、沈んでしまった艦の一人である。

 

 アメリカ艦隊の猛攻の中、回避行動をとっていた初風はその中で妙高と衝突。その被害は艦首を切断してしまうほどの大惨事だった。他にも白露と五月雨が衝突、更には先に書いた通り、川内も沈没してしまう。

 衝突による航行不能になった初風はそのまま集中砲火を浴び、川内の後を追うように海へと姿を消していった。

 そして日本軍が大混乱に陥っている一方で、アメリカ艦隊はほぼ日本側の攻撃を受けずにこの海戦を終えることとなった。

 

時津風「そう言えばさ、初風はあの後妙高さんに連れられて何処に行ってたの?」

初風「? 話してなかったかしら?」

雪風「聞いてません!」

天津風「二人のことだから敢えて深くは聞かなかったのよね」ニガワライ

 

 すると初風は「そんな隠すようなことじゃないわ」と言って、簡単にその日の出来事を語り始めた。

 

初風「えっと、あの日は……妙高さん達のお部屋にご招待されて、お部屋で妙高さんの妙高特製カレーをご馳走になったわ。知らない間にトンカツがソッと添えられてたけど、それも美味しかったわね」ニコッ

雪風「わぁ♪ 良かったですね〜♪」

時津風「あたしも前にご馳走になったことあるけど、確かに気が付いたらトンカツが乗ってるんだよね〜。何でだろ?」

天津風「不思議ね……」ニガワライ

   (大方見当は付くけどね……)

 

初風「でもあの時食べたトンカツってすごく美味しかったのよね〜。豚肉とスライスチーズが交互に重ねてあって、ミルフィーユみたいで」

天津風「カロリーがえらいことになりそうね」ニガワライ

初風「ちゃんと運動すれば平気よ」フフ

時津風「牛、豚、鶏、羊、山羊、馬、鹿のお肉を使った究極の肉鍋をいつだったか、戦艦の人達が作ってたよね♪」

雪風「アク取りが大変そうですね〜」ニガワライ

初風「でもそこはお料理上手な人達がしっかりやったんじゃない?」

雪風「それもそうですね♪」

天津風「と言うか初風の話からご飯の話題になったわね」クスクス

時津風「暗い話題も明るい話題になるのはいいことだよ。うん」ニコニコ

初風「ふふ、そうね。さてそろそろ部屋へ戻って衣替えを再開しましょ」ニコッ

 

 初風の言葉にみんなは『お〜!』と笑顔で答え、寮へと戻っていくのだったーー。




此度はかなり過ぎてしまいましたが、一九四三年の十一月二日に勃発したブーゲンビル島沖海戦について書きました。
あの日に沈んでしまった軽巡洋艦『川内』と駆逐艦『初風』、そして亡くなってしまった英霊の方々に心からお祈りします。

本編の情報は『大日本帝国海軍 所属艦艇』から得ました。

では今回も読んで頂き本当にありがとうございました!

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