艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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不思議な動物を保護した。の談。

独自設定、他作ネタ含みます。


艦これSS二百九十五話

 

 ○○鎮守府、一五○○ーー

 

 執務室ーー

 

提督「ふぅ……」

 

 本日の業務をいつもより早く終えた提督は、ペンを置いてグッと背伸びをした。

 そこへ本日秘書艦の陸奥が提督へお茶を差し出すと、提督はそれを笑顔で受け取った。

 

提督「今日はいつもより書類が少なかったからか、早く終えたな」ズズッ

陸奥「そうね。たまにはこんな日もあるわよね♪」フフフ

 

 適当な雑談をしていると、執務室のドアがノックされた。

 提督がいつものように声をかけると、開いたドアから長門が姿を見せた。

 

長門「休憩中申し訳ない。今少し時間はあるか?」

提督「仕事は終えたところだから気にしなくていい。それよりどうした?」

長門「それがーー」

 

 長門はゆっくりと説明を始めた。

 今日の長門は休みで駆逐艦の者達と裏山へ保護者役も兼ねてきのこ狩りへ出向いていた。

 長門の話によると沼地へ出た所で傷ついた()()()()()()()動物を保護したというのだ。

 どうしてそのような曖昧な説明なのかと陸奥が訊ねると、長門は『パッと見るとヤマネみたいだが、体格がイタチみたいデカい』とのことで、ハッキリとした見解が出せないようだった。

 

長門「今は睦月達がその場で保護しているのだが、どうしたものかと思ってな。意見を仰ぎに来た」

提督「ふむ……では私も現場へ行こう。陸奥、救急箱を」

陸奥「分かったわ」ニコッ

 

 こうして提督は陸奥を執務室に待機させ、救急箱と水、動物が食べても大丈夫そうな缶詰を持って長門と共に現場へ向かった。

 

 

 その頃、鎮守府隣にある沼地ーー

 

睦月「大丈夫かな〜?」

如月「骨とかは折れていないみたいだけど……痛そうよね」

 

 睦月と如月は持って来たタオルにその怪我した動物を包み、心配そうに見つめていた。

 

弥生「卯月は噛まれたところ大丈夫?」

卯月「血は止まったから大丈夫だぴょん♪ まだヒリヒリするけど」ニガワライ

水無月「絆創膏持って来といてよかったよ」エヘヘ

 

 最初は動物も警戒していた。それでも保護しようと手を差し伸べた卯月が指を噛まれたのだ。

しかし卯月は「大丈夫」と呼び掛け、やっと保護出来た。

噛まれたところからは少し血が出たが、水無月が持っていた猫さん絆創膏で応急処置を施したので今は痛みが引くのを待っている状態だ。

 

文月「帰ったら消毒しなきゃね」ヨシヨシ

卯月「染みるのは嫌だぴょん……」ズーン

長月「名誉の負傷だな」ウンウン

菊月「痛むかもしれないが、こればかりは耐えるしかないだろう」ウンウン

皐月「でもちゃんと安心してくれたみたいで良かったよね♪」

三日月「うん♪ あとは長門さんが戻って来るのを待つだけだね♪」

望月(ナ○シカっぽいシーンに見えたのはあたしだけかな?)

 

 そしてそこへ提督と長門が到着。

 提督は動物を治療し、卯月にもちゃんと適切な処置を施した。

 

 ーー。

 

睦月「あはは♪ お腹空いてたんだね♪」

如月「夢中で食べてるわ♪」

文月「まだあるからね♪」

 

 治療が終わった動物は提督が持って来たツナコーンの缶詰を一心不乱に食べている。

 みんな微笑ましくその光景を眺めるが、提督と長門は難しい顔をしていた。

 

提督(はて……この動物は何なのだろうか?)

 

 見た目は長門が言うようにイタチやヤマネを彷彿とさせる。全体は白い毛に覆われていることからイタチ科辺りに区分されていそうだ。

しかし頭の中央から尻尾の方へかけて紫色をした針のようなたてがみが生えているのだ。これはどう見てもイタチではない。

 

 すると、

 

「やっぱりこっちに来ちゃってたのね」

 

 林の中から一人の女性が姿を見せた。

 その女性を見ると、その動物はすぐさまその女性の元へ走って行き、彼女の肩まで登ると自分の頭を女性の頬へ擦り寄せた。

 

提督「貴女がその子の飼い主かな?」

 

 提督が女性へ訊ねると、女性は「はい」と言って林から姿全体を提督達の前に現した。

 

 その女性は赤が強いピンクの髪をしていて、髪型は那珂と同じお団子ヘアだが、お団子には白のシニヨンキャップをしている。

服は白とワインレッドのチャイナドレス風の物を着用していて、上着の胸元には大きな牡丹の花飾りと、そこから伸びる茨模様が目を引く。そして下のスカートは黄緑色の膝丈スカート。

 更に目を引くのは包帯で包まれた右腕と鎖付きの枷がはめられている左腕だった。

 

女性「この子がお世話になりました。飼い主として心から感謝します」ペコリ

提督「いや、私は簡単な治療をしただけで、保護してくれたのはここのみんなです。お礼ならみんなに言ってあげてください」

 

 提督がそう説明すると、女性はクスッと笑って今度は睦月達に「ありがとう」と優しく声をかけた。

 睦月達はみんなしてニコッと笑って『その子がお家に帰れるならそれでいい』と伝えた。

 

女性「それで、あの……気分とか大丈夫ですか?」

全員『?』クビカシゲ

 

 女性の質問の意図が分からずにいると、女性は何ともない提督や睦月達を見てホッと胸を撫で下ろした。

 

女性「そう……大丈夫ならいいの。この子、静電気凄いので」ニガワライ

提督「あぁ、そういうことですか。私はこの通り手袋をしていましたから問題ありません」ニコッ

長門「加えて我々艦娘は静電気等には反応しない構造体だからな。普段から艤装を扱っているのに静電気が原因で発火してしまっては一大事だからな」ニコッ

 

女性「艦娘……そう、貴女達が()()()の言ってた……」ブツブツ

提督「艦娘を見るのは初めてかな?」

女性「え、えぇ。友人から聞いてはいましたが、本物を目にするのは……」

 

 そう言うと睦月達は目を輝かせてその女性の周りに駆け寄った。

 

睦月「私睦月って言います! 駆逐艦なんだよ!」

卯月「うーちゃんは卯月だぴょん♪」

皐月「皐月だよ♪」

水無月「水無月だよ♪」エヘヘ

文月「あたし文月って言うの〜♪」フミィ

 

 次々と自己紹介をする睦月達に女性は戸惑いながらも、笑みを浮かべて「よろしくね」と返した。睦月達としても自分達を知ってもらいたかったのだろう。

 その後、睦月達はその女性と仲良くお話をした。

 

 ーー。

 

女性「では私はそろそろ元の場所へ戻ります。何から何までお世話になりました」ペコリ

提督「いえいえ、お気になさらず。帰ったらその子をちゃんと医者へ見せてください。やはりちゃんとした治療を受けた方がいいと思うので」

女性「はい、分かりました」ニッコリ

 

 そして女性は最後に睦月達へ優しく手を振って、また林の中へと消えて行った。

 

 提督達はそれを見送ると自分達も荷物を持って鎮守府へと戻るのだった。

 

長門「なぁ、提督。あやつは何者だったのだろうか? ここ自体鎮守府の者以外は近寄らないはずだが……」

提督「……さぁ、何者なのだろうな。だが、悪い人ではないだろう」

 

 色々と謎は残るものの、提督はそんなに気にしていなかった。何故なら睦月達と話していたあの女性はとても優しい笑顔をしていたから。

 

 

 ーー。

 

「探し物は見つかったかしら、仙人様?」ウフフ

「えぇ、この通り。本当にありがとう」

「ふふ、気にしなくていいですわ。誤って()()を通してしまったこちらの責任ですもの♪」

「そう言ってもらえると助かるわ」フフフ

 

 そしてその女性は()()()から現れた一人の女性と共に林の中から姿を消すのだったーー。




今回は分かる人にか分からないネタで申し訳ありません。
ちょっとした不思議な出会いの回ということでご了承を。

そして今日は長門さんの進水日なので長門さんを登場させました♪
おめでとう!

では此度も読んで頂き本当にありがとうございました☆

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