艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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重巡洋艦メイン。

少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自設定含みます。


艦これSS二百八十五話

 

 ○○鎮守府、一三○○ーー

 

 重巡洋艦共同厨房ーー

 

妙高「さて、始めましょうか」ニコッ

高雄「はい。みんなが帰って来る前に」ニッコリ

 

 妙高と高雄の二人は厨房でお菓子作りを開始した。

 本日、妙高と高雄は揃ってお休みだったので、今訓練や出撃任務に赴いている妹達へカボチャを使った一口マフィンを作ることにしたのだ。

 

妙高「ふふ、高雄としては提督のためにも作らなくてはいけないものね………………」

高雄「わざわざ言わないでくださいよ、恥ずかしい////」

妙高「ごめんなさい……でも提督は本当にお優しいですね」フフ

高雄「はい、本当に……この鎮守府はあのお方が提督だから、戦いの日々でも笑顔が絶えないんだと思います」ニッコリ

 

 妙高に高雄は心からの優しい笑顔でそう答えると、妙高は『そうね』と返すように笑顔で頷いた。

 本日、高雄が休みなのには提督からの気遣いもある。

 一九四六年の同日は、重巡洋艦『高雄』が接収されたイギリス海軍の手によってマラッカ海峡で海没処分された日なのだ。同年七月八日には同じ海峡、ほぼ同じ地点で先んじて重巡洋艦『妙高』も海没処分されている。

 高雄のこうした日ということで提督は高雄に休暇を与えたのだ。そして妙高と休みが重なったのも、提督本人からは言われてないが提督の計らいだと感じた高雄は、その感謝の意味も込めて提督にも同じくお菓子を作ることにしていたのだ。

 

高雄「今朝、愛宕達と埠頭へ黙祷を捧げに行ったら、先に提督がしていたものだから驚いたわ」フフ

妙高「提督らしいわね」クスクス

高雄「えぇ……それと不謹慎かもしれないけれど、昔の私も今の私のこともあのお方が大切に思ってくれていると思うと、嬉しくてとても心が温かくなったわ」ニッコリ

妙高「そうね……私も貴女と同じことを思ったわ。高雄とは少し熱の入れ方が違うけど」ニコッ

高雄「ちゃ、茶化さないでくださいよぅ////」

 

 妙高にまた自分の提督に対する恋心のことを突かれた高雄は、反論しながら頬を真っ赤にし「はぅ」と言いながら火照った頬を手で押さえた。そんな乙女モードの高雄を妙高は優しく見つめるのだった。

 

 ーー。

 

高雄「そう言えばハロウィンがもうすぐあるけど、妙高さん達は何かお菓子を作ったりするの?」

妙高「お部屋に訪ねて来る娘達が居ますから、その娘達の分は何か作るろうかって妹達と話してるわ。何を作るかまでは決めてないけど……高雄の方は?」

高雄「私の方は日持ちするクッキーかビスケットにする予定です♪ 卯月ちゃんや時津風ちゃんにイタズラされたくなかったらお菓子を用意するようにと通告されたので」クスクス

妙高「うふふ、それは新しいわね」

 

 それから二人は生地を完成させ、生地をアルミ製の型に流し入れ、その上にチョコチップなどのトッピングを少しだけした後、予熱も完了したオーブンに入れて焼き上がるの待った。

 

「お料理中にごめんなさい。少しいいかしら?」

 

 そう声をかけられた二人が声の主を確認すると、五十鈴と阿武隈が厨房の出入り口に立っていた。

 互いに笑顔で挨拶を交わすと五十鈴が本題に入った。

 

五十鈴「見てないならいいんだけど、ここら辺で駆逐艦の声とか聞いてない?」

阿武隈「今お休みの娘達のケイドロに付き合ってて、泥棒役の娘がなかなか見つけられなくて……」ニガワライ

五十鈴「私達が探してるのは神風と皐月なの」

 

高雄「う〜ん……申し訳ないけれど私達は……」

妙高「お力になれず申し訳ありません」ペコリ

 

五十鈴「気にしないで♪ こっちこそ突然悪かったわね」ニコッ

阿武隈「ご協力ありがとうございました!」ニコッ

 

 そう言って五十鈴と阿武隈は他の場所へと向かった。

 すると、

 

皐月「いやぁ、危なかった〜」ヒョコ

神風「だからここは止めようって言ったのに……」ヒョコ

 

 神風と皐月が厨房の冷蔵庫の影から姿を見せた。

 この場所は冷蔵庫の前に行かない限りは死角となる上、神風や皐月といった者ならギリギリ二人までは隠れられるスペースなのだ。

 突然登場した二人に高雄は驚きの色を隠せなかったが、

 

妙高「ふふ、上手くいったわね」ニコッ

 

 妙高は『知っていた』とばかりに余裕の笑みで二人に声をかけた。

 

皐月「えへへ、妙高さんなら大丈夫って思ってたんだ♪ ありがと♪」

神風「ありがとうございます♪」

妙高「いえいえ♪ でも五十鈴さんの方は勘が鋭いので油断は禁物よ?」ニコッ

神・皐『はい!』ケイレイ

 

 和気藹々と会話する妙高達だったが、高雄だけは未だに状況が飲み込めずにいた。

 

高雄「二人はいつの間に……?」

神風「高雄さんが妙高さんと話している時に侵入しました。驚かせてしまってごめんなさい」ペコリ

高雄「そ、そうだったの……気付かなかったわ」

皐月「妙高さんにはすぐにバレちゃったけどね〜」ニガワライ

妙高「私はその時、位置的に出入り口の方を向いていたからね」クスッ

 

 するとタイミング良くオーブンのタイマーがチーンと音を立てた。

 

妙高「完成ね♪」

高雄「そ、そうですね……二人共、良かったら味見してくれないかしら?」

皐月「その言葉を待ってた!」キラキラ

神風「あ、ありがとうございます!」キラキラ

 

 高雄は型から取り出した一口マフィンを二人が火傷しないようにキッチンペーパーに包んで手渡した。

 

皐月「頂きま〜す♪」

神風「頂きます!」

 

 受け取った二人は礼儀正しくそう言ってから、フーフーした上でそのマフィンをその小さな口に含んだ。

 

妙高「どうかしら?」

高雄「甘過ぎたりしてない?」

皐月「とっても美味しいよ!」ニパッ

神風「カボチャの甘さもあって美味しいです♪」ニパー

 

 二人の笑顔に妙高と高雄はホッとした笑顔を見せた。

 それから神風と皐月はすぐにそのマフィンを食べ終え、二人にお礼を言って次の潜伏場所へ移動するために厨房から出て行くことにした。

 

皐月「あ、高雄さん」

 

 すると出入り口手前で皐月が高雄に声をかけた。

 

高雄「何かしら?」

 

皐月「そのマフィンとっても美味しかったから、司令官もきっと喜んでくれるよ♪」

 

高雄「っ!?////」ボンッ

 

 皐月はそう言うと顔を真っ赤にする高雄にお構いなく「じゃあね〜♪」と無邪気に去った。

 

妙高「皐月ちゃんのお墨付きね」クスッ

高雄「まさかそんな前から居たなんて……////」

妙高「ふふ、提督のことで頭がいっぱいだったから」ニコッ

高雄「か、勘弁してください////」ァゥァゥ

 

 その後、高雄は予定通り提督に一口マフィンを渡し、提督から「とても美味しいよ」と言われて、また顔を赤く染めるのだったーー。




今日は本編に書きました通り重巡洋艦『高雄』がマラッカ海峡で海没処分された日です。
あの戦争を戦い抜き、最後には日本から遠く離れた海で沈んでいった重巡洋艦『高雄』に心からお祈りします。
そんな日ですが、今回はほのぼのとちょっと甘い感じのお話にしました!
そして今日は更に五十鈴さんの進水日でもあります!
五十鈴さん、おめでとう☆

では今回も読んで頂き本当にありがとうございました♪

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