艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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戦艦メイン。

少し真面目なシーン、独自設定、独自解釈含みます。


艦これSS二百八十話

 

 ○○鎮守府、一○○○ーー

 

 中庭ーー

 

武蔵「」ハァ...

大和「」ギューッ

 

 武蔵は中庭のベンチに座り、大和の熱烈な抱擁を受けていた。

 大和は今朝からずっとこの調子なのである。

 

 武蔵も最初は引き離そうとしたが、互いに艦隊で一、二を争う力の持ち主であるため、引き離そうとすると大和が自分の腰に手を回していることにより自分の腰が悲鳴をあげる。よって武蔵は仕方なく今の状況に甘んじているのだ。

 

武蔵「なぁ、姉さん」

大和「いや! 今日は絶対に離さないから!」ヒシッ

武蔵「…………気持ちは嬉しいが、大袈裟だ。()()()の今頃、確かに私は地獄絵図その物だった。だが、今はあの日ではない。その証拠にこうして穏やかに過ごしているじゃないか」

大和「それでもい〜や〜だ〜!」

 

 諭すように武蔵は話したが、大和はダダっ子のように聞く耳を持たなかった。しかも自分を抱く力が増し、武蔵の作戦は失敗に終わった。仕方ないので武蔵はもう何も言わず、空を見上げた。

 

武蔵(そういえば、あの日も違う理由で空を見ていたな……)

 

 武蔵の言うあの日とは、一九四四年のこの日のことである。

 戦艦『武蔵』はこの日、レイテ沖海戦におけるシブヤン海海戦において、アメリカ軍から度重なる空襲により被雷二十本以上、被爆十七発以上、至近弾二十発以上と世界海戦史上最大の大損傷を受け、最後は艦首から沈んでしまった。

 そんな日と言うことで、大和は武蔵から離れようとしないのだ。

 離れたのは先程、埠頭で提督や参加艦達で行われた黙祷の時だけで、終わってからはまた引っ付いて来た。

 

「今日は随分仲がいいな」

「二人はいつも仲良しじゃない♪」

 

武蔵「?」チラッ

大和「あら、こんにちは♪」

 

 大和達に話しかけて来たのは長門と陸奥だった。二人は大和の挨拶に笑顔を返すと、大和達の前で立ち止まった。

 

武蔵「姉さんの心遣いはありがたいんだがな、ここまで露骨になると息苦しくてかなわん」ニガワライ

長門「はは、今日ばかりは潔く諦めるんだな」クスクス

武蔵「もうそうしているさ……」

陸奥「でもどこの姉妹もみんな一緒ね」クスクス

大和「どういうこと?」

長門「あそこを見てみろ」

 

 大和の問いに長門は目配せする。大和と武蔵がその方に視線を移すと、睦月型姉妹の卯月、水無月、文月、望月の四名が歩いていた。歩いてると言いうよりは、望月にくっ付いていると言った方が正しいかもしれない。

 

望月「ねぇ〜、あたしは平気だからさ〜、いい加減離してくれない? 歩き難いんだけど……」

卯月「ダメだぴょん!」ヒシッ

水無月「そうだよ!」ギュッ

文月「今日はずっと一緒なの!」ギューッ

望月「はいはい……もう諦めますよっと」クスッ

 

 一九四三年のこの日は、駆逐艦『望月』が輸送作戦中、深夜のジャキノット湾にてアメリカ軍からの爆撃を受け沈んでしまった日である。埠頭での黙祷の際も望月はずっと卯月達に引っ付かれながらだった。

 望月としては理由が理由なので強く拒否出来ないということもあるが、何より姉妹達からの気持ちが嬉しいのでこのままでいることにしたようだった。

 

大和「微笑ましいわね♪」

長門「ふふ、そうだな。美しい姉妹愛だ」

陸奥「目の前の姉妹愛もね♪」

武蔵「そりゃどうも」ニガワライ

大和「へっへ〜ん♪」ドヤァ

 

 \ワイワイキャッキャッ/

 

大・武・長・陸『?』チラッ

 

 何やら賑やかな声がする方をみんなで見ると、

 

子日「今日はみんなでケーキ焼こうね♪」

初霜「せっかくのお休みですからね♪」

初春「たまにはこんな休日もいいものじゃない」フフ

若葉「……ん、悪くない」ニコッ

 

 初春型姉妹が仲良く歩いていた。それぞれの手にはビニール袋を持っていて、酒保の帰りだと分かる。

 これまでの姉妹より過保護な感じはしないが、こちらの姉妹も姉妹愛に溢れていた。

 

 駆逐艦『若葉』も一九四四年のこの日、海へ沈んでしまった艦である。

 若葉が所属する第二十一駆逐隊も同じくレイテ湾へ突入する予定であったが、輸送任務のため、当時の第二十一駆逐隊『初春、若葉、初霜』は本隊より遅れて行動を開始した。しかし 十月二十四日の午前八〜九時、第二十一駆逐隊はアメリカ軍空母艦載機約二十機による空襲を受けてしまう。この戦闘で駆逐艦『若葉』は直撃弾と至近弾による艦底損傷により浸水被害を受け、後に沈没してしまうのである。

 

 朝の黙祷でも、四人は互いに手を繋ぎ合って黙祷を捧げる程で、姉妹愛を強く感じさせた。

 

大和「向こうも楽しそう」クスクス

陸奥「えぇ、本当に」クスクス

武蔵「どこの姉妹も同じようなものだな」フフ

長門「姉妹だけじゃないさ」フッ

武蔵「どういうことだ?」

 

 長門の言葉に武蔵が訊ねると、

 

島風「武蔵さ〜ん!」ノシ

清霜「大和お姉様〜、武蔵さ〜ん、長門さ〜ん、陸奥さ〜ん!」ピョンピョン

 

 二人から少し後に浜風と利根、筑摩、青葉、衣笠、大淀が武蔵の元へやって来た。

 

武蔵「お前達……どうしたんだ?」

利根「こ奴らが遊びたいとせがんでの。しかし吾輩達はこれから哨戒任務があるのじゃ。良かったらお主らに代役をと思ってな」ニガワライ

大和「あらまあ」クスクス

長門「そうか」アハハ

浜風「申し訳ありませんがお願い出来ませんか?」

 

清霜「武蔵さ〜ん、今日は武蔵さんにとって特別な日だから、一緒に過ごそ〜よ〜♪」ギューッ

島風「かけっ子じゃなくてもいいから〜♪」ギューッ

陸奥「あらあら、モテモテね、武蔵」フフフ

大和「遊びましょうよ、武蔵」ニコッ

武蔵「ったく、仕方ない……この武蔵に続け!」

清・島『おぉ〜♪』キャッキャッ

 

筑摩「ふふ、よろしくお願いします」ニコニコ

陸奥「えぇ、そっちも頑張ってね」ニコッ

利根「吾輩が居れば何も問題は無いのじゃ!」ドドーン

浜風「慢心せずに頑張ります!」ケイレイ

青葉「青葉にお任せあれ♪」

衣笠「そっちも二人をよろしくね♪」

長門「あぁ、任された」ニコッ

 

 長門が笑顔で返すと、利根達は任務へと向かった。

 

清霜「武蔵さん、武蔵さん♪」ギューッ

島風「早く遊ぼ〜♪」ギューッ

武蔵「分かったからそう急かすな」アハハ

 

大和「長門の『姉妹だけじゃない』って言葉の意味が分かったわ」フフフ

陸奥「鎮守府(ここ)ではみんなが家族だものね」クスッ

長門「そういうことだ」ニコッ

 

清霜「大和お姉様達も早く〜!」ノシ

島風「おっそ〜い!」ノシ

武蔵「置いてくぞ〜!」ノシ

 

大・長・陸『今行くわよ〜(行くぞ〜)♪』ノシ

 

 こうして鎮守府はあの日とは違い、穏やかな一日としてみんなが過ごしたーー。




今回は本編に書きました通り、戦艦『武蔵』、駆逐艦『若葉』、『望月』が沈んでしまった日です。
この日沈んでしまった武蔵、若葉、望月。そして亡くなった多くの英霊の方々に心からお祈りします。
本編の情報はWikipedia、『大日本帝国海軍 所属艦艇』から得ました。
そして年は違いますが、この日はガダルカナル島の戦いがあった日でもあります。
この戦いで亡くなった多くの英霊の方々にも同じく心からお祈りします。

更に今日は暗いことだけではなく、陸奥さんの竣工日と衣笠さんの進水日です!
二人共、おめでとう!

ということで此度も読んで頂き本当にありがとうございました☆

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