艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦メイン。

キャラ崩壊、独自設定含みます。


艦これSS二百七十六話

 

 ○○鎮守府、二二○○ーー

 

 執務室ーー

 

提督「ふむ……こんなところだな」ノビー

 

 張った肩を鳴らしつつ長引いた仕事を終えた提督はやっと一息吐いた。

 本日の仕事量はそうでもなかったが重要な書類が多く、熟読していたらこんな時間になってしまったのだ。

 

 コンコンーー

 

 すると珍しい時間にドアをノックする者が現れた。

 

提督「開いているよ。入りなさい」

 

 提督がそう言うとカチャっと小さくドアが開いた。

 

早霜「司令官」ヒョコ

 

 開いたドアから頭だけを出して中を確認したのは早霜だった。

 

提督「どうした早霜? 遠慮せずに入って来なさい」

 

 提督が手招きしながら言うと、早霜はオズオズと入って来た。そしてその手には何やら包があった。

 

早霜「司令官、今お時間大丈夫?」

提督「大丈夫だ。仕事も丁度終わったしな」

 

 すると早霜は「良かった」と小さな笑みをこぼした。

 

早霜「あの……実はさっきまで私達の部屋でお月見をしていたんです」

提督「月見か……満月だけが月見ではないからな。秋らしくていいな」

早霜「朝霜姉さんが夜更かししたかっただけなんですけどね」クスッ

提督「はは、朝霜らしいな」

早霜「それでちゃんとお団子も用意したんですけど、お酒も飲んでて……」

提督「言い出しっぺが寝てしまったと?」

早霜「はい」ニガワライ

 

 苦笑いを浮かべて返した早霜は、更に言葉を続けた。

 

早霜「それから清霜さんも寝てしまって、仕方ないからお団子を共同厨房の冷蔵庫に保管しようと廊下を歩いていたら執務室の電気がついてたので、司令官がまだお仕事をされてるんだと思って……あの、もしよければ、これ……お夜食に如何ですか?」

 

 早霜が事の経緯を説明して持っていた包を解くと、包の中から一口サイズの団子がぎっしり詰まったプラスチックのパックが出てきた。

 

提督「それはありがたい申し出だが、いいのか?」

早霜「はい♪ 冷蔵庫に入れてしまうと固くなってしまいますから。せっかくですし今の内に召し上がってください」ニコッ

提督「ならば執務室で私と月見をしないか?」

早霜「まぁ……嬉しいです♡ 喜んでお供致します♡」

 

 こうして急遽、早霜は提督と執務室でお月見をすることになった。

 

 執務室の灯りを少しだけ暗くして、月が見えている方の窓を開ける。ソファーを移動させたらあっと言う間に月見の準備が完了した。

 

提督「さぁ、秋の月を楽しもうか」ニカッ

早霜「はい♡」

 

 ソファーに腰を下ろすと、丁度窓からは今宵の月、『更待月(ふけまちづき)』が秋夜を穏やかに照らしていた。

 

提督「良い月だな……」

早霜「えぇ……素敵♡」ウットリ

 

 提督は秋の月に目を細めたが、早霜は月を見上げる提督の姿に見惚れていた。

 

早霜「あ、司令官。煙草吸う?」

提督「……いいかな?」ニガワライ

早霜「司令官はお仕事中は吸わないものね。私に構わないでいいから、吸って。ね?」ニコニコ

提督「すまないな……ではお言葉に甘えて」スチャ

 

 早霜の心遣いに提督は胸ポケットから煙草を取り出し、一本を咥えて愛用のジッポライターで火をつけた。

そんな提督に早霜は透かさず、テーブルから灰皿を持って来た。

 提督は「ありがとう」と言って早霜の頭を優しく撫でると、早霜は恍惚な表情を浮かべた。

 

提督「すぅ〜……はぁ〜……」

早霜「〜♡」ウットリ

 

 煙草の煙を肺に溜め、ゆっくりと窓の外に向かって煙を吐く。すると月が煙草の煙で陰り、季節外れの朧月と変わる。が、すぐにその煙は消え、またハッキリと月が顔を出す。

 

早霜「風流ね……♡」

提督「そうだな」

 

 早霜は提督が煙草を吸う仕草が好きなのもあるが、こうして煙に見え隠れする月も好きなのだ。

 

 その後、提督が煙草の火を消すと、早霜がタイミング良く提督に切り出した。

 

早霜「お団子食べますか?」

提督「ん、そうだな。頂こう」

早霜「ではお茶を淹れて、お皿に移すわね」ニッコリ

提督「ありがとう」ニコッ

早霜「いえいえ♡」

 

 そして早霜はお茶を淹れ、お茶菓子用のお皿に自身が作った団子を移した。

 

早霜「どうぞ♡」つお皿

提督「頂くよ……」パクン

 

 提督は早霜から差し出された団子をひとつ、口に放り込んだ。

 

早霜「お味はどうかしら?」ニコニコ

提督「これは……実に美味い」ニッコリ

早霜「ふふ、良かった♡」ニヨニヨ

 

 ニッコリと笑って最高の褒め言葉をくれた提督に、早霜は思わず頬が緩みに緩んでしまった。

 

提督「しかし、ただの餡ではなく、これは……栗か?」

早霜「はい。他にもカボチャ、サツマイモを使った餡をそれぞれに入れてあるの♪」

提督「ほう……ということは……」パクッ

 

 そう言って提督はまた新たな団子を食べたが、今度は一口ではいかずに半分だけを食べた。

 すると団子の中から黄色い餡が現れたのだ。

 

提督「月見にはもってこいの団子だな」ハムッ

早霜「お気に召してもらえて光栄だわ♡」

 

 美しい月夜に、美味い団子。そして耳を澄ませば、遠くからコオロギ、鈴虫、松虫といった秋の夜を奏でる虫の声。

 早霜はいつしか提督の肩にもたれ掛かっていた。提督もそんな早霜の頭を優しく撫でやりながら静かに秋を満喫していた。

 

 すると、

 

隼鷹「何二人っきりで月見してんだよ〜! あたしらも混ぜろ〜! ヒャッハ〜!」

飛鷹「ちょっと隼鷹!」

 

 ヒャッハーさんとその保護者のお出ましだった。

 

提督「おぉ〜、よく分かったな」

隼鷹「鳳翔さんとこの帰りに灯りが付いてるの見えたから、偵察機飛ばしてちょちょっとね♪」

飛鷹「お邪魔してごめんなさい。今出て行きますから……」

 

 ほろ酔いで上機嫌の隼鷹とは違って飛鷹がすぐに退室しようと隼鷹の服を引っ張ると、早霜が「お二人もどうぞ」と笑顔で誘った。

 

飛鷹「え……いいの?」

早霜「はい、お月見様もみんなに見てもらいたいと思うから」ニッコリ

飛鷹「そういうことなら……ありがと」ニコッ

早霜「いえいえ♪」

隼鷹「おっしゃ〜、月見酒だ〜♪」

 

 すると隼鷹はどこからともなく酒瓶を取り出した。

 

 しかし、

 

提督「執務室での飲酒は禁止だ」キッパリ

 

 提督に一蹴されてしまった。

 

隼鷹「うぇぇ〜!?」

飛鷹「当たり前でしょ……」ヤレヤレ

 

 ショックを受ける隼鷹だったが、すぐに提督が笑顔を浮かべて切り出した。

 

提督「隼鷹、執務室の電気を消してくれ」

隼鷹「え?」

提督「暗ければ何を飲んでいるのか分からないからな」

 

 そう言って提督はいたずらっぽくウインクしてみせた。その意味を理解した隼鷹は表情を輝かせて執務室の電気を消した。

 

飛鷹「本当、提督は甘いんだら……」

  (やることが素敵過ぎるし……何なのもう♡////)

提督「ははは……」ニガワライ←笑って誤魔化す

早霜「まあまあ飛鷹さん」ニコニコ

  (司令官のそういうとこ大好き♡)

隼鷹「それじゃ、()()()()()()で乾杯だな♪」

提督「私はせっかくだから()()にするかな」フフ

早霜「では()()()と氷を用意するわね♡」

飛鷹「はぁ……仕方ないんだから♡」クスクス

隼鷹「へへ、今夜の月見は最高だぜ♡」

 

 こうして提督達は()()()に酔いしれ、穏やかに月見を楽しむのだったーー。




今回は九月に書くのを忘れていたお月見回にしました!
そして今日は早霜ちゃんの進水日なので、早霜ちゃんをメインに書きました☆
おめでとう、早霜ちゃん!

そしてこの日は第一航空艦隊・大西中将が神風特別攻撃隊(神風特攻隊)を初編成。加えて訓示と命名式を行った日でもあります。

では読んで頂き本当にありがとうございました☆

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