艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦メイン。

少し真面目なシーン、ネタ、独自解釈含みます。


艦これSS二百七十三話

 

 ○○鎮守府、一二○○ーー

 

 埠頭ーー

 

提督「では全艦、黙祷!」

 

全員『…………』

朧「…………」

 

 今回、埠頭に集まったのは綾波型姉妹、初春型姉妹、秋雲、一航戦の赤城、加賀、五航戦の翔鶴、瑞鶴である。

 一九四二年のこの日は駆逐艦『朧』が占守島を経由し、キスカ方面へ向けて航海中にキスカ島の北西にてアメリカ陸軍航空軍の爆撃機による爆撃を受けた。『朧』は二機の撃墜をしたものの、被弾により舵故障状態となり、更に輸送中だった弾薬が誘爆して沈んでしまった日なのだ。

 

 この時、行動を共にしていた初春は大破しながらも当時の『朧』艦長を含む十七人の生存者を救助した。

 

朧「……………………」スッ

 

 一分間の黙祷の中、いち早く姿勢を直した朧は海へ向かって敬礼した。

 朧は決して黙祷を軽んじた訳ではなく、彼女の性格からしてあの頃の自分と英霊の人々に伝えることはシンプルな物だったからみんなより早く終えたのだ。

 

 共にあの日まで戦ってくれてありがとう

 

 これからも頑張ります

 

 この二言に今の朧の思いが全て詰まっているのである。

 

 すると、朧の右手を握る者が居た。

 

曙「…………」

 

 それは曙だった。朧はそれに少し驚いたが、すぐに小さく笑みを返し、朧も黙って曙の左手をギュッと握り返した。

 

 曙は第七駆逐隊の中でも一番姉妹を強く思い遣る艦娘である。いつも憎まれ口を言ってしまうが、それは曙がみんなを思い遣るがあまりの裏返しなのだ。

 

 艦時代の朧は当初こそは第七駆逐隊として編成されていたが、一九三五年に多くの駆逐艦へ被害があった『第四艦隊事件』に巻き込まれた朧は、台風の影響によって煙突が一部屈曲する被害を受けてしまった。

 そして太平洋戦争が開戦すると、朧は第七駆逐隊から引き抜かれ、秋雲と共に第五航空戦隊の護衛に回ることになり、朧は最後まで第七駆逐隊のメンバーと共に航行することは無かったのだ。

 

 艦娘に生まれ変わり、本来の第七駆逐隊が揃って遠征任務や出撃任務に向かえる現状は、朧は勿論、曙、漣、潮にとってはとても喜ばしいことだった。

 そして曙はその中でも一番現状を大切にしているのである。

 

朧「曙……そろそろ離してよ。アタシはもう大丈夫だから」ギュッ

曙「朧が先に離しなさいよ……全然手が離そうとしてないんだもの……」ギューッ

朧「曙だって……」クスッ

曙「……////」フンッ

 

 口ではお互いに手を離す離さないと言ってはいるが、朧と曙の手は『手を離そうとする気は毛頭無い』と言うようにずっと握られていた。

 

 朧と曙がそんなやり取りをしていると、それをすぐ隣で見ていた漣と潮が互いにアイコンタクトをして頷き合い、漣は朧の左手側へ、潮は曙の右手側へ立ち、それぞれの手を握った。

 

朧「漣もなの?」ニッコリ

曙「潮まで何なのよ……ったく」ニコニコ

漣「我ら第七駆逐隊は永久に不滅です!」キリッ

曙「何どこぞの野球選手の引退スピーチみたいなこと言ってんのよ」クスッ

潮「これからもみんなで頑張ろうね」ニッコリ

朧「うん♪」エヘヘ

 

 みんなで手を繋ぎ、満面の笑みで海へ向かって『えいえいおー!』と叫ぶ第七駆逐隊。そんな朧達を黙祷を終えた提督達は微笑ましく眺めていた。

 

赤城「ふふ、これからの第七駆逐隊に目が離せませんね♪」

加賀「元々が優秀な娘達ですから」フフフ

翔鶴「こういう日でも、ああやって笑えるのは強いですね」ニコッ

瑞鶴「それがあの娘達の良さよね♪」

 

 第七駆逐隊の様子を見ながら、赤城達は朧達を優しく見つめ、彼女達の強さ、志に改めて感心した。

 

初春「わらわ達、第二十一駆逐隊も負けては居れぬのぅ」クスクス

初霜「私達も頑張りましょう!」フンス

若葉「任務は必ず遂行させる」フフン

子日「子日達も海に向かって『えいえいおー♪』ってする?」

若葉「それはーー」

初春「そこまで真似せずとも良いじゃろ」ニガワライ

初霜「私達は私達なりに気持ちを改めれば大丈夫ですよ」ニッコリ

子日「そっか〜♪ そうだよね〜♪」

若葉「……そ、そうだな////」←やる気満々だった

 

敷波「なんかみんな気合い入ってるね〜」ニガワライ

綾波「綾波達の十九駆逐隊も気合い入れなきゃね」ニコニコ

敷波「えぇ〜、いいよ〜……恥ずかしいじゃん////」

綾波「海に向かって『えいえいおー』はしないよ?」クスクス

敷波「し、知ってるし……改めなくても『いい』って意味だし////」

綾波「そっかそっか〜♪」ニコニコ

敷波「……////」プイッ

 

提督「私も皆の命を預かる者としてより気合いを入れよう」

秋雲「秋雲は取り敢えずこの光景を描き残すのに気合い入れよ〜♪」カキカキ

 

 一方の提督や駆逐隊達は第七駆逐隊に倣うように、自分達も更なる努力をしようと気持ちを改めた。

 

漣「ご主人様〜!」

 

 すると漣が笑顔で提督の右腕に引っ付いて来た。更に漣の後には朧を始めとした第七駆逐隊も一緒だった。

 

提督「どうした、漣?」

漣「朧ちんがお腹空いたって!」

提督「む、そうか。そういえばみんなお昼はまだだったな……食堂へ行こうか」ニッコリ

漣「勿論ご主人様の奢りですよね。分かります!」キリッ

赤城「奢りと聞いて!」キリリッ

 

 二人が提督にやけにいい顔で詰め寄ると、提督は「みんなの分を奢らせてもらおう」と嫌な顔もせずに快諾した。

 

曙「あんたねぇ……」ハァ

加賀「赤城さん……」ハァ

 

 そんな漣や赤城に対して保護者役の二人は頭を抱えながらため息を吐いた。

 

朧「いいのかな〜?」ニガワライ

秋雲「提督がいいって言ってんだしいいじゃん♪」ニシシ

潮「なのかな〜?」ニガワライ

綾波「せっかくのご厚意だからお呼ばれしましょう」ニッコリ

敷波「司令官は一度ああ言うと譲らないからね〜」ニコニコ

 

初春「相変わらず甲斐性があるのぅ////」

子日「(初春ちゃんは今日も提督にメロメロだね~♪)」コショ

若葉「(恋する乙女だな)」コショコショ

初霜「聞こえちゃうよ?」ニガワライ

初春「聞こえておるぞい」ニッコリ

子・若『ひぃ〜!?』

 

瑞鶴「一気に賑やかになったわね……英霊の方々に怒られないかな?」ニガワライ

翔鶴「賑やかなのが鎮守府(ここ)のいいところだから、きっと許してくれるわよ。それに朧ちゃんもニコニコしてるもの」ニッコリ

 

提督「遠慮せずに好きな物を食べなさい、朧。朧が生まれ変わって来てくれたことへの私からの感謝だ」ナデナデ

朧「うん、ありがと、提督♪」ニパー

漣「漣はトルコライス食べたいです!」キラキラ

赤城「私はちゃんぽんのアカギ級(赤城専用盛り)がいいです!」キラキラ

 

加・曙『少しは遠慮してください(しろっ)!』

赤・漣『はいぃっ!』ガクブル

 

全員『あははは♪』

 

 こうして提督は朧達に昼食をご馳走し、朧は姉妹艦達や関わりある艦のみんなと楽しい時間を過ごした。

 その中で朧はトルコライスを姉妹みんなで頼み、笑顔で頬張っていたーー。




今日は駆逐艦『朧』が沈んでしまった日なので、そのことをメインに書きました。
駆逐艦『朧』と亡くなられた英霊の方々に心からお祈りします。

それでは此度も読んで頂き本当にありがとうございました!

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