艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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一大事! の談。

キャラ崩壊、独自設定含みます。

いつもより長めです。


艦これSS二百六十四話

 

 ○○鎮守府、一三○○ーー

 

 埠頭ーー

 

金剛「艦隊無事に帰投ネ〜♪」

榛名「皆さん、お疲れ様でした」ニコッ

初月「お疲れ様」ニコッ

夕立「お疲れ様っぽ〜い!」ポイポイポーイ!

大鳳「お疲れ様でした」ペコリ

摩耶「おっ疲れさん♪」

 

 帰投した此度の第一艦隊の面々は互いに労いの言葉をかけながら、艤装を解除し修復と精密検査のためドックへ向かった。

 

 

 ドックーー

 

 ガチャーー

 

金剛「失礼するデ〜ス♪」

 

ドック妖精ズ『お疲れ様です!』ペコリ

明石「あ、おかえりなさい♪」

提督「皆、おかえり」ニコッ

長波(本日秘書艦)「お〜、お疲れさん♪」ノシ

 

 ドックに入るとドック妖精だけでなく、明石と提督、長波までもがいた。

 しかし艦隊がもっと注目したことがあった。

 

 提督が明石の前に座って上着を捲って明石の診察を受けていたからだ。

 

金剛「テ〜トク〜! 診察なんて受けてどうしたデ〜ス!」

榛名「どこか悪いんですか!?」

 

 金剛、榛名がそう言うと、他のみんなも『提督!』と緊迫した様子で提督や明石に詰め寄った。

 それを見て明石がゆっくりと説明し始めた。

 

明石「静粛に。提督は疲労による体調不良です。少しですが熱があるので、提督はこれから自室に戻って休んでもらいます」

提督「心配を掛けて申し訳ない」フカブカ

 

 提督が頭を下げると金剛や榛名が『頭を上げてください』と言うように提督の肩をポンポンと叩いた。提督が頭を上げると、そこにいた全員が提督に笑みを向けていた。

 

明石「じゃあ、傷のある方はドックへ。無い方は精密検査室に行ってください。長波ちゃん、提督のことよろしくね」

長波「はいよ♪」

提督「ではな、みんな。補給も忘れないように」

艦隊『はっ!』

 

 こうしてその場では大きな混乱も無く済んだが、長波に付き添われる提督や自室に戻った提督を目撃した者達から、『提督が風邪を引いた』ということが鎮守府全体へ瞬く間に広がった。

 

 

 一四○○ーー

 

 執務室ーー

 

長波「…………」アゼン

 

加賀「この書類整理終わりました。次をください」

グラーフ「こっちも終わった。次を寄越せ」

叢雲「次はこっちね。グラーフさんはファイリングをお願い」つ書類の山

祥鳳「あ、加賀さん。そろそろ遠征へ行っていた艦隊が戻る時間なので、出迎えに行ってきます」

高雄「次の第一艦隊、準備が出来次第、埠頭へ集合してください!」

 

 執務室は午前中の静けさが消え、艦娘達でごった返していた。

 提督が風邪で早退した報を聞いた者達(特にLOVE勢)が少しでも時間を作って提督がやり残した業務を引き継いでいたから。流石に提督でしか扱えない書類までもは捌ききれないが、それでも日頃から提督が一手に引き受けている雑務は手分けしてこなしていた。

 

巻雲「凄い人数ですね〜」←様子を見に来た

長波「全くだよ……まぁ、こっちとしては楽ちんだからいいけどね〜」ニガワライ

朝霜「LOVE勢のパワーとチームワークってすげぇな」←巻雲と同じ

長波「提督を本当に慕ってるから、こんな時だからこそ連携してるんだろ」

朝霜「誰が看病するだのなんだので揉めないはやっぱみんな大人だよな〜」

巻雲「秋雲の本読み過ぎですよ」ニガワライ

 

 巻雲がそう言うと朝霜はケラケラと笑って返した。

 LOVE勢は提督が弱っている今だから得点稼ぎをするのではなく、そういう時だからこそ自分達が出来る日頃からの感謝の想いから動いているのだった。

 

 

 一四○○ーー

 

 中庭ーー

 

龍驤「こんなに中庭に集まって何してるん? あれ」ユビサシ

鳥海「なんでも、司令官さんの風邪が治るようにお祈りしてるそうです」ニガワライ

 

大鳳「提督に巣食う病魔よ、滅せよ〜!」

 

 \滅せよ〜!/

 

山城「我らが提督のご体調よ、回復せよ〜!」

 

 \回復せよ〜!/

 

 中庭では『提督から幸せを貰い隊』が中心となって提督の回復を祈る儀式のようなことが行われていた。

 みんなで円を作り、中央には雪風や時雨などといった幸運艦を置き、みんなで天を仰ぎ、少しでも提督の回復が早まることをみんなして懇願していた。

 

龍驤「あれ、傍から見たら変な宗教団体やで?」

鳥海「あれだけを見ますとそうなりますね」ニガワライ

龍驤「気持ちは分かるけどな〜。ただの風邪やのに大袈裟なんちゃうか〜?」

鳥海「何もしないではいられないんですよ。執務室の方はもう手が足りてますから……」

龍驤「司令官の看病は『提督の全てを世話し隊』が仕切っとるからな〜」

鳥海「司令官さんは滅多に風邪を引きませんから、親衛隊の皆さんは凄く張り切ってましたね」

龍驤「しかも邪魔にならないように静かに静かに看病しとるからな〜」

鳥海「しつこく看病しては逆効果ですからね。ちゃんとそういうところを分かっている皆さんは流石ですね」クスッ

龍驤「ま、うちらはうちらでいつも通り訓練しよか〜」ニカッ

鳥海「はい♪」

 

 提督への思いはみんなが同じ『早く元気になってほしい』ただそれだけだった。

 艦娘達はそれぞれが自分達に出来ることで行動していた。

 

 

 一八○○ーー

 

 食堂ーー

 

間宮「じゃあこれ、お願いね。提督によろしく伝えておいて」ニコッ

伊良湖「これもお願いします。お大事にとお伝えください」ニッコリ

雷「了解よ♪ ちゃ〜んと伝えるわ♪」

鳳翔「では、早速持って行きますね」ニコッ

 

 間宮と伊良湖が用意したお粥とアイスを鳳翔と雷はお盆に乗せて提督の自室へ向かった。

 それを見送った間宮と伊良湖は厨房に戻り、いつも通りに艦娘達へ料理を振る舞った。

 食堂でも提督の風邪の話題が盛んだったが、みんながみんな提督の回復を心から願っていた。

 

 

 提督自室ーー

 

雷「は〜い、司令官。間宮さん特製の『風邪なんか吹き飛ばせ粥』よ♪ それと二人がお大事にって♪」つレンゲ

提督「私が未熟なばかりに、今日はみんなに迷惑を掛けてしまったな」モグモグ

鳳翔「申し訳ないと思うのは間違ってますからね?」

提督「そう、だな……回復したらみんなにちゃんとお礼を言うよ」ニコッ

雷「そうよ〜♪ 謝るよりも感謝の気持ちの方がいいもの♪」

提督「そうだな」フフ

 

 代表の二人が提督に食べさせつつ提督を気遣うと、提督は納得するように微笑んだ。

 

雷「完食出来たわね♪」

鳳翔「お着替えとシーツ交換も済ませましたので、あとはゆっくりお休みになられてください」ニコッ

提督「あぁ、ありがとう二人共」ニコッ

 

 提督がお礼を言うと二人はニッコリと笑って部屋を出ていった。提督は二人の去り際にもう一度心でお礼を述べてから、着替えと歯磨きを済まして布団へ入った。

 

提督(私は本当に仲間に恵まれたな……)

 

 提督は布団に入ると今日の出来事をしみじみと思い出して、そう実感した。

 実際に看病やお見舞で来た艦娘達は提督が頭を下げると、全員が『頭を下げないでほしい』と言うような言葉や態度を取った。『自分達はただ提督に元気になってもらいたい』その一心なのだと、言葉で言わずとも眼差しや態度にありありと出ていたのだ。

 

提督(今日は早めに眠ってしっかりと風邪を治し、元気になって皆に感謝を伝えよう)

 

 カチャ……

 

提督「どうした、電?」

 

 提督は気配で電だとハッキリと分かった。

 

電「はわわ、どうして分かったんですか?」

提督「電とは一番長い付き合いだからな。誰の気配よりもハッキリと分かるんだ」

 

 そう言って提督が体を起こそうとすると、電が慌ててそれを止めた。提督は「ではお言葉に甘えて……」と言ってそれまでの体勢に戻った。

 

電「ちょっと失礼しますね」スッ

 

 電はそう言って提督のおでこに自分のおでこをくっつけ、提督の今の具合を確認した。

 

提督「昼間よりは下がっているはずだが……」

電「ん……今は平熱ですね。でも油断大敵なのです♪」

提督「あぁ、分かっている」ニコッ

電「なのです♪ では電は戻りますね。何かあったら誰でもいいので必ず連絡してくださいね?」

提督「あぁ」コクリ

 

 提督が頷きを返すと電は笑顔で応えて部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。

 

 すると、

 

提督「電」

 

 提督が電を呼び止めた。電が「はい?」と振り返ると、

 

提督「ありがとう。おやすみ」ニッコリ

 

 短く感謝の言葉を伝えた。

 

電「はい♪ おやすみなさい♪」

 

 電は満面の笑みでそう返し、提督の部屋を後にした。

 長い間共に歩んで来たからこそ、あの短い言葉に互いの思いが全て詰まっていた。

 

 そして提督はその後ぐっすり眠り、朝には見事に回復した。

 

 提督は朝礼を開き、早速みんなに対して心からの感謝を伝えると、みんなはそれに満面の笑みで応えた。

 風邪という不幸に見舞われたが、艦隊はまた一つ絆を深め、より良い絆を結ぶのであったーー。




今回は提督さんが風邪になってしまった時の鎮守府の様子を書きました!
このように思い思われる関係が一番ですよね♪

此度も読んで頂き本当にありがとうございました!

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