艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦メイン。

独自設定含みます。

いつもより長めです。


艦これSS二百五十九話

 

 ○○鎮守府、○八○○ーー

 

 ドックーー

 

明石「風邪ね。今日は一日安静ね」

吹雪「風邪ですか……」

 

 明石に風邪と診断された吹雪は小さく息を吐いた。

 吹雪は自分が風邪になるなんて思ってもいなかった。体の怠さも風邪ではなく、ただ眠れなかったせいだと思っていた。

 今朝起きて姉妹で朝食を食べていると白雪や磯波からは「顔が赤い」と指摘された。それで念のため明石に連絡をしてからドックで診てもらい、今の至る。

 

明石「朝御飯は食べられた?」

吹雪「はい。普通に一人前を完食しました」

明石「そう……それなら今回はお薬の服用も必要ないから部屋に戻って、お布団かけて夢の中へゴーよ♪」

吹雪「分かりました」ニガワライ

 

 明石の乗りに若干引き気味の吹雪だったが、お礼を言ってドックを出た。

 出るとドックの扉のすぐ隣で白雪と深雪が待機していた。

 

深雪「話し声聞こえてたよ。やっぱ風邪か」

白雪「司令官や高雄さん達には私が報告に行くから、吹雪ちゃんは深雪ちゃんと部屋に戻って」

吹雪「ありがとう」

深雪「気にすんなって♪」

白雪「じゃあ、報告に行ってくるね」ニコッ

 

 そう言うと白雪はパタパタと足早にその場を後にし、深雪は吹雪の手を引いて寮へ歩き出した。

 

 

 寮までの道中ーー

 

深雪「暑かったり寒かったりしてるから、そのせいかな〜?」

吹雪「どうなのかな〜? でも昨日は寝付けなったな〜」

深雪「この前の浦波の歓迎会ではっちゃけ過ぎたからとか?」クスクス

吹雪「あ〜……あるかも……」エヘヘ

 

吹雪「そう言えば、他のみんなは?」

深雪「あ〜、あいつら?」

 

 吹雪は他の妹達のことを深雪に訊いた。何故ならドックの前まではみんな揃っていたからだ。

 

深雪「初雪達は吹雪が風邪って聞こえた辺りから、寮へ戻ったな〜。多分布団の用意とかしてくれてんじゃね?」

吹雪「えぇ〜、大袈裟だな〜……」

 

 深雪から聞かされた吹雪は眉尻を下げ、少し困ったようなそんな複雑な表情を見せた。そんな吹雪に深雪は「こんな時くらい甘えろよ♪」と言いながら軽く吹雪の背中を叩いた。

 

吹雪「ありがとう」ニッコリ

深雪「おう♪」

 

 そして吹雪と深雪はまた手を繋いで部屋へ戻った。

 

 

 駆逐艦寮、吹雪・白雪・初雪・深雪部屋ーー

 

 部屋に入ると吹雪だけでなく、深雪までも驚いた。

 

叢雲「あ、吹雪。お布団敷いておいたわよ」

 

 完璧にキッチリと敷かれた布団。

 

磯波「タオルケットと……」

浦波「念のための毛布も用意したからね、姉さん」

 

 行き届いた配慮。

 

初雪「もし眠れなかった時のための暇潰し用の漫画置いといた……」

 

 優しい心遣い。

 

吹雪「みんな、大袈裟だよ」ニガワライ

叢雲「いや、大袈裟じゃないわ。吹雪が風邪を引いたのよ?」

磯波「そうだよ。吹雪ちゃんが……」

初雪「吹雪が風邪引くなんて珍しいからね〜」

吹雪(心配かけちゃったな〜)

 

 普段からそんなに甘えないとは言え、みんなからしたら吹雪は自慢の姉なのだ。そんな吹雪が風邪を引いたのだから、みんなとしては何も大袈裟なことではないのだ。

 吹雪は妹達の厚意に甘え、大人しく布団へ入った。

 それを見届けると初雪達はそれぞれ任務や訓練へと出向いた。去り際に『ちゃんと寝ててね!』と念を押して。

 

 部屋にポツンと取り残された吹雪。枕元に置いてある時計を見ると、○八三○を過ぎていた。

 

吹雪(今日は空母の人達と対空訓練だったのにな〜……)

 

 時計を眺めながらそんなことを思い出していると、吹雪は自身のまぶたが自然と下がってくるのを感じた。

 やはり気持ちは元気であっても、体はちゃんと休息を取ろうとしている証拠だった。

 

 こうして吹雪はゆっくりと眠りに就くのだった。

 

 

 一○○○ーー

 

 カラカラ……

 

敷波「勝手に入って大丈夫かな?」

綾波「寝てるんだしこっちの方がいいよ。これ置いて早く帰ろう」

敷波「うん」

 

 早朝からの任務を終えた二人は吹雪に差し入れの飲み物を持ってこっそりと部屋に入った。

 白雪達から吹雪が風邪ということを朧達が知り、朧はカル○ス、曙はオレンジジュース、漣はヴォル○ック、潮ははちみつレモンをそれぞれ用意した。それでそれを綾波と敷波が届けに来たのだ。

 吹雪の様子を伺うと吹雪は規則正しい寝息を刻んていた。

 

綾波「(大丈夫そうだね)」

敷波「(そうだね♪)」

 

 小声で話、笑い合った二人は枕元に書き置きと飲み物を置くと、素早く退室した。

 

 

 一○三○ーー

 

 カラカラ……

 

暁・響・雷・電『(失礼しま〜す)』

 

 今度は暁型姉妹が顔を出した。遠征を終えた姉妹達は戻り際に遠征へ向かう叢雲から「時間があったら吹雪の様子を見に行ってほしい」と言われて様子を見に来たのだ。

 

暁「(よく眠ってるわね)」

響「(そうだね。ぐっすりだ)」

雷「(冷したタオルだけでもオデコに乗せましょう♪)」

電「(起こさないようにソ〜ッとやるのです)」

 

 吹雪の額には何も乗っていなかったため、雷はタオルを湿らせてから吹雪の額に慎重に乗せた。

 

暁「(電、あなた何してるの?)」

雷「(ん?)」

響「(それは……電が気に入っているザトウクジラの佐藤さんじゃないか)」

 

 電は寝ている吹雪の隣にソッと自身の安眠グッズである抱き枕を添えたのだ。

 

電「(目が覚めた時に誰も居なかったら寂しいのです。だから佐藤さんに一緒に居てもらうのです)」ニッコリ

 

 (エンジェル)が考えた微笑ましい心遣いに暁達は『あぁ、なんてうちの末っ子は天使なのだろう』と、つくづく思い知らされた。

 そうしてゆっくりと退室した後、暁は叢雲の通信機(スマホ)に吹雪の様子を報告した。

 

 

 一三○○過ぎーー

 

吹雪「ん〜……」パチッ

 

 吹雪はゆっくりと目を開け、枕元の時計を見た。

 

吹雪「結構眠っちゃってたな〜……お昼過ぎてる」

 

「あら、目が覚めたのね」

「気分はどう?」

「顔色はいいみたいだな」

 

 すぐ隣から聞こえた声に吹雪は「へ?」と間の抜けた声を出した。そして視線を移した先には提督と扶桑姉妹が揃って吹雪に優しい笑みを向けていた。

 

 提督はお昼休憩を使って吹雪の様子を見に来ていて、扶桑と山城は可愛い妹分の看病に来ていたのだ。

 

吹雪「えぇ!? 司令官に扶桑さんと山城さん!?」ガバッ

 

 その光景を目の当たりにした吹雪は起き上がろうとしたが、透かさず提督がそれを手で優しく制した。

 

提督「寝たままでいなさい。風邪なのだから」

吹雪「す、すみません……」

提督「謝るのは私の方だ。しっかりと体調管理をしていたつもりになっていた。申し訳ない」

吹雪「い、いえ、司令官のせいじゃないですよ。私が悪いんです」

提督「ならおあいこだな。お互いにこれから注意しよう」ナデナデ

 

 優しく微笑んで自分の頭を撫でてくれた提督に、吹雪は「はい////」と俯きながら返した。

 

 くぅ〜〜……

 

提督「?」

吹雪「〜〜……////」

 

 何やら可愛らしい音がした瞬間、吹雪は布団に潜り込んでしまった。

 

扶桑「ふふ、お昼も眠ってたからお腹が空いたのね♪」

山城「今何か作って来てあげるわね♪」

吹雪「ごめんなさ〜い////」

 

 姉妹に謝る吹雪を姉妹は布団の上から優しくぽふぽふと撫でてから、寮の厨房へ向かった。

 

吹雪「恥ずかし過ぎますぅ〜////」

提督「こんな時くらい甘えなさい」ナデナデ

吹雪「すみませ〜ん////」

 

 そして吹雪は自分の周りが妙に物が溢れていることにも驚いたが、全てに書き置きがされていて、吹雪は思わず涙ぐんでしまった。

 そんな吹雪を提督が優しく撫でると、吹雪は「治ったらみんなに何かお礼をします!」と涙を拭きながら決心した。

 

 そしてーー

 

扶桑「ふ〜ふ〜……はい、あ〜ん♪」つスプーン

吹雪「あ〜……はむっ////」モッモッ

扶桑「どうかしら?」

吹雪「美味しいです////」ニッコリ

扶桑「良かったわ」ニッコリ

 

山城「スープもあるからね」

吹雪「あ、ありがとうございます////」

 

 お盆を持って戻ってきた扶桑と山城。扶桑はレタスと豚肉を使った雑炊を作り、山城はえのきと卵を使ったスープをそれぞれ作ってきたのだ。

 

提督「しっかり食べて、しっかり休むんだぞ」ニッ

吹雪「はい♪」ニッコリ

 

 こうして扶桑と山城の料理を食べ終えた吹雪は、提督達に見守られてまた眠りに就いた。

 それを見届けると提督は仕事へ戻り、扶桑と山城は吹雪の妹達が戻るまで側を離れなかった。

 

 こうして次の日、全快した吹雪は妹達や看病してくれた扶桑姉妹、綾波達や暁達、そして提督を駆逐艦寮の大部屋へ招待してお手製の海鮮鍋をご馳走したそうなーー。




今日は吹雪ちゃんの進水日なので、ちょっと心が温まる感じのお話にしました!
吹雪ちゃん、おめでとう!

読者の皆様も体調管理には十分お気をつけください!
本日も読んで頂き本当にありがとうございました!

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