艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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笑顔のために。の談。

キャラ崩壊、独自解釈、独自設定含みます。

いつもより長めです。


艦これSS二百五十四話

 

 ○○鎮守府、○八○○過ぎーー

 

 食堂ーー

 

間宮「ふぅ……ラッシュが終わりましたね。今日はいつもより食堂へ来てくださる方々が少なかったのも幸いしました……」ニッコリ

速吸「伊良湖さんが午前中はお休みですから、どうなるかと思いましたが、鳳翔さんと天城さんが手伝ってくれたのでより助かりました」

鳳翔「いえいえ。いつものことですから」ニコッ

天城「私は好きでお手伝いしたので、お礼には及びません。それに伊良湖さん、そして秋津洲さんにとっては特別な日ですから……」

 

 一九四四年のこの日、給糧艦『伊良湖』はコロン湾でアメリカ空母艦載機の攻撃を受け、大破着底し放棄され、この時に同じ湾に居た秋津洲も艦載機の直撃弾を受けて爆発し、沈んでしまった。この二隻の他にも複数の艦艇が沈められている。

 天城が言うように今日は伊良湖と秋津洲にとって特別な日なのだ。

 なので伊良湖は秋津洲と時間を合わせ、この日に沈んだ艦時代の自分達と艦艇、そして亡くなった英霊の人々に黙祷を捧げるために午前中はお休みをもらったのだ。

 

鳳翔「伊良湖さんが戻って来たら、何か美味しいものでもご馳走しましょう。秋津洲さんもきっと一緒でしょうし」ニコッ

間宮「そうですね。せっかく今はこうして艦娘として生まれ変わったのですから、笑顔で過ごしてほしいです。それに乗組員の方々も甘味が大好きでしたから、美味しいものを食べてお二人が笑顔になった方が、英霊の方々もきっと喜んでくださいます」ニッコリ

 

 鳳翔と間宮がそう言うと、天城と速吸もニッコリと笑って頷いた。

 

天城「それで、お二人にどんな甘味をお出ししましょうか?」

鳳翔「そうですね……何にしようかしら」ウーン

速吸「時期的に秋らしいものがいいでしょうか?」

間宮「スペシャルパフェってだけじゃ味気無い気がしますからね……」ウーン

 

 せっかくだから秋らしいもので二人を喜ばせたい。そう考えた間宮達は何が良いのか、何が喜んでもらえるのかをみんなで考えていた。

 

 すると、

 

あきつ丸「ごめんください」

 

 厨房から食堂裏に出るドアからあきつ丸が現れた。

 定期的に食材の輸送と注文を伺いに来ているため、あきつ丸は鎮守府へ来ると食堂にも必ず顔を出すのだ。

 

速吸「おはようございます、あきつ丸さん♪」

間宮「いつもご苦労様です。今ご依頼表をお出しますね」

 

 あきつ丸は「了解であります」と敬礼して間宮に返すと、鳳翔があきつ丸へお茶を差し出した。

 

鳳翔「どうぞ」つ湯呑

あきつ丸「かたじけないのであります」ニコッ

 

 あきつ丸は鳳翔からお茶を受け取ると、ふーふーしてからゆっくりとすすった。

 

あきつ丸「はふぅ……緑茶は最高であります」ホッコリ

天城「ふふ、美味しそうにお飲みになりますね」

あきつ丸「美味しいですから、こうなるのであります♪」

鳳翔「あらあら、嬉しいですね」フフフ

速吸「今日は確か下ろすものはありませんよね?」

あきつ丸「はい。ですのでご依頼表を受け取って確認したら戻るのであります」

天城「あきつ丸さんはお忙しい身ですからね」

あきつ丸「いえいえ、自分は自分に出来ることをするのみです」

鳳翔「ご自愛くださいね?」

あきつ丸「お心遣いありがとうございます」ニコッ

 

 そんな話をしていると、間宮が依頼表を持って戻って来た。

 

間宮「お待たせしました。こちらが今回のご依頼表です」つ依頼表

あきつ丸「確かに……では確認させて頂きます」

 

 依頼表を受け取ったあきつ丸は内容のチェック作業に入った。中には納期が遅くなる物もあるため、それを確認して依頼主に知らせるためである。

 

 ものの数分でその作業を終えたあきつ丸は『よし』と頷いて、間宮の方へ向き直った。

 

あきつ丸「どれも予定通りにお届け出来るのであります。ただ毎度のことで恐縮ですが、多少前後してしまう場合もあるので、そこだけはご了承ください」

間宮「はい、大丈夫です。よろしくお願い致しますね」

あきつ丸「は!」ケイレイ

間宮「今度は陸軍の司令官さんとどこまで行ったのかも教えてくださいね♪」

あきつ丸「間宮殿!?////」

 

 間宮の爆弾発言にあきつ丸は思わず狼狽した。事情を知る間宮と鳳翔はニコニコしているが、天城と速吸は知らなかったため驚きの表情を浮かべたが、女性の性なのか即座に反応が変わった。

 

速吸「あきつ丸さんは陸軍の司令官とそんな関係だったんですか!?」キラキラ

天城「あらあらまあまあ」ニコニコ

あきつ丸「あの方との事は別にこれと言ってご報告することはありません!////」

間宮「あらあら、つれないですねぇ♪」

鳳翔「そうですよ〜。沢山ご相談に乗ったのですから♪」

あきつ丸「そ、それには感謝していますが、本当に何もないのでありましゅ! で、では自分は戻りましゅ!////」

 

 集中放火を浴びたあきつ丸は逃げるようにその場から去っていった。

 しかし、

 

あきつ丸「こ、これを忘れてました。あの方がご実家から送られたそうで、ご贔屓にしてくださる皆様へお裾分けだそうです。では!」バシュンッ

 

 風のように大きなダンボール箱を置いたあきつ丸は、今度こそ鎮守府を後にした。

 

間宮「お礼が言えなかったわ……あとでお礼のご連絡をしないと」

速吸「これ、どうします?」

間宮「とりあえず開けてみましょう」

 

 そしてあきつ丸が置いていったダンボールを開けると、そこには大ぶりの栗がどっさりと入っていた。

 

天城「立派な栗ですね……」

速吸「大っきい〜……」

 

 二人は思わずそう言いながら息を吐いた。

 

鳳翔「これはちゃんとお礼をしなくてはいけませんね」ニコッ

間宮「そうですね……あ、閃きました♪」

鳳翔「伊良湖さんと秋津洲さんにお出しする甘味ですか?」

間宮「はい♪ 栗で和洋の甘味を作ります!」ニッコリ

天城「お手伝いします♪」

速吸「速吸もお手伝いさせてください!」

食堂妖精ズ『自分達も居ますです!』キリリッ

間宮「はい、皆さんよろしくお願い致します」ニコッ

 

 こうして間宮達は協力して伊良湖と秋津洲に出す甘味の制作へ取り掛かった。

 

 

 そして、○九三○過ぎーー

 

 伊良湖は鳳翔が予想した通り、秋津洲と共に食堂へやって来た。そしてその隣には提督の姿もあった。

 

伊良湖「すみません。遅くなってしまって」

秋津洲「お邪魔しますかも〜♪」

提督「邪魔するよ。間宮さん、二人にスペシャルパフェを頼む」

 

 提督は二人と共に黙祷をし、二人を気遣って二人にスペシャルパフェをご馳走しに来たのだ。

 

間宮「気にしなくて大丈夫よ♪ 提督、秋津洲さん、いっらっしゃいませ♪」

速吸「ちょっと待っててくださいね♪」

 

 間宮と速吸は元気に返事をすると再び作業に戻った。

 その間、天城が提督達へお冷を出した。

 

提督「何やら厨房は忙しそうだな……」

伊良湖「わ、私もお手伝いした方が……」ソワソワ

秋津洲「でもご飯食べてる人はいないよね……」キョロキョロ

 

 みんなの行動を不思議そうに眺めていると、厨房から間宮を始めとした全員が提督達のテーブルへやって来た。

 

間宮「今日はお二人にとって特別な日ということで、パフェとは違いますが特別な甘味をご用意しました」ニコッ

伊良湖「え」

秋津洲「何何?」ワクワク

 

 そして間宮達が出したのは、

 

間宮「こちらです♪」

 

 そう言って間宮が出したのはモンブランケーキだった。

 それを見た伊良湖は驚きの表情を見せ、秋津洲はキラキラと輝いていた。

 

 そして間宮達に「どうぞ♪」と促された二人はフォークでそのモンブランを一口。

 

伊良湖「美味しい……」ハフゥ

秋津洲「ん〜♪」モグモグ

 

 二人はとても喜んで食べたが、間宮達が用意したこのモンブランはただのモンブランではなかった。

 

秋津洲「あれ? 中に何か入ってる……?」

伊良湖「これは……栗きんとん?」

提督「ほぅ……見事だな」

 

 見ていた提督もこれには驚いた。何故ならモンブランケーキの中に栗きんとんも入っていたのだ。

 

間宮「あきつ丸さんの司令官さんからお裾分けで沢山栗を頂いたので、贅沢に使いました」ニコッ

鳳翔「今日はお二人にとって特別な日なので、お出しするのも特別なものにしました」ニッコリ

速・天・妖ズ『』ニッコリ

 

伊良湖「皆さん……ありがとうございます!」ニッコリ

秋津洲「とっても嬉しい♪ ありがとう♪」ワハー

提督「良かったな、二人共」ニコッ

 

 伊良湖と秋津洲は間宮達が望んでいた笑顔でモンブランケーキを食べたーー。




 おまけーー

 完食後ーー

提督「そう言えば、あきつ丸さんと司令官殿の仲はどうだ?」
間宮「これといった進展はしていないそうです」
提督「ふむ……」ウデクミ

速吸「提督さんもやっぱり興味あるんですね!」キラキラ
提督「いや、速吸と同じ興味とは少し違うな。司令官殿には歳が近いせいか、前からよく相談されていてね……プレゼントはどんな物がいいかとか、自分と手を繋いでも彼女は汚れないかとか……私の意見が参考になるかは分からんが、相談を受けた以上はどうなるのか見守りたいのだ」
天城「つまりお二人は両想いなのですね……」ホウホウ
鳳翔「どちらも奥手ですからね……あんなに相思相愛だというのに……」ニガワライ
伊良湖「聞いてると凄くもどかしいんですよね」ニガワライ
秋津洲「少女漫画みたいな純愛かも〜」キラキラ

間宮「恋の秋とも言いますから、進展することを願いましょう」ニコッ
提督「そうだな」ウンウン

 こうしてあきつ丸と陸軍司令官の応援団達は二人の進展を願ったーー。

 ーーーーーー

今日は給糧艦『伊良湖』と水上機母艦『秋津洲』が沈んでしまった日です。この日沈んでしまった多くの艦艇、そして多くの英霊の方々に心からお祈りします。

いつもは轟沈してしまった艦娘メインのお話なのですが、今回はその艦娘へ他の艦娘がどう接するのかをメインに書きました。ご了承お願い致します。
そして本日はあきつ丸さんの進水日でもあるので、本編とおまけに登場させました!
あきつ丸さんおめでとう!

読んで頂き本当にありがとうございました♪

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