艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自解釈含みます。


艦これSS二百五十一話

 

 ○○鎮守府、一五○○ーー

 

 駆逐艦寮、皐月・水無月・文月・長月部屋ーー

 

皐月「ん〜……すぅ……」Zzz

水無月「すぅ……すぅ……」Zzz

文月「くぅ……くぅ……」Zzz

長月「…………」ペラッ

 

 長月はお昼寝タイムの三人をよそに読書していた。

 

皐月「ん〜……」ネガエリ

 

長月「?」

 

 すると先程まで規則正しい寝息を刻んでいた皐月の寝息が微かだが乱れ始め、寝返りも先程から随分多いことに気が付いた。

 

長月(起こすべきか……?)

 

 長月は読んでいた本を机に置き、皐月のすぐ隣まで行って様子を見た。

 本日は気温も低く、薄手の長袖でも寒いくらいの気温であるのにも関わらず、皐月はそれとは反対に物凄い量の汗を掻いていた。

 

長月「(おい、皐月……皐月)」ペシペシ

 

 流石の長月もこれは異常だと思い、他にも眠っている水無月や文月を起こさないよう配慮しながら、皐月の頬を軽く叩きつつ出来るだけ小声で皐月の名前を呼んだ。

 

皐月「ん……んぅ?」パチッ

 

 すると皐月はゆっくりと目を開けた。そしてすぐ横で心配そうに見つめる長月を確認すると小首を傾げた。

 

皐月「長月? どうしたの〜?」クシクシ

 

 寝惚け眼を擦りながら長月にそう訊ねる皐月。

 

長月「寝苦しそうにしてたぞ。取り敢えずその汗を拭け」

皐月「え……うわっ……すごい汗……」

 

 長月に指摘された皐月は小さく驚き、長月が持って来たタオルを使って体を拭いた。

 

長月「何か嫌な夢でも見ていたの?」

皐月「…………艦の頃の夢だよ」

長月「……そうか」

 

 皐月の答えに長月はそれ以上の言葉はかけられなかった。

 

 一九四四年のこの日、駆逐艦『皐月』は船団護衛任務中にマニラ湾沖でアメリカ空母による艦載機の爆撃を受け海へ沈んだ日なのだ。

 

 

皐月「ふふふ……」

長月「?」

 

 突然笑い出した皐月を見て、長月が首を傾げていると皐月は普段通りの笑顔で口を開いた。

 

皐月「ふふ、ごめんね……ただ、あの時沈んだボクがこうして今を過ごしてるのって不思議な感じがしてさ……」

長月「それはみんなに言えることだろう」フフ

皐月「だよね……あ、ボク、黙祷して来る! みんなに今のボクを報告しなきゃ♪」

長月「怒られないようにな」クスッ

皐月「うぐっ……た、確かにゲームとかしてるけどさ〜……みんな分かってくれるよ〜、多分……」

長月「だといいがな」クスクス

 

 こうして皐月は急ぎ足で外へと向かった。長月はそれを黙って見送ったが、その表情はとても優しかった。

 そして長月は皐月の足音が遠くなるを感じながら、中断した読書に戻るため、再び本に視線を落とした。

 

 

 埠頭前ーー

 

皐月(やっぱり黙祷するなら海に向かってした方がいいよね……埠頭でするか防波堤でするか……)ウーン

 

 埠頭前の広場までやって来た皐月はそう考えながら埠頭と防波堤を交互に見比べながら腕組みをしていた。

 どちらに行こうか悩んでいると、防波堤に見慣れた背中を見つけた。

 

 いつも通りの白い軍服に白い軍帽。そして腰に掛けられている普通の物よりも少し長い日本刀。

 皐月はその背中に吸い寄せされるように防波堤へ向かった。

 

 

 防波堤ーー

 

皐月「しれ〜かんっ♪」ムギュッ

提督「皐月……今日も元気だな」

皐月「えへへ〜♡ 司令官が一緒だともっと元気だよ〜♡」スリスリ

提督「はは、嬉しいことを言う」ナデナデ

皐月「にゃ〜♡」ゴロニャーン

 

 提督の背中に抱きついて提督の腰辺りから頭を出す皐月。そんな皐月をいつものように優しく撫でやる提督。

 

皐月「司令官は何しに防波堤に来たの〜? 艦隊のお出迎え?」

提督「黙祷を捧げにな……今日は皐月にとって特別な日だろう?」

皐月「覚えててくれたの〜!?」

提督「勿論だとも」

皐月「〜♪」

 

 皐月は言葉が出なかった。いや、言葉に出来なかったの方が適切かもしれない。心から慕う提督が自分のことをちゃんと覚えていてくれている。これがどれだけ嬉しいことか……皐月は満面の笑みで再び提督にぎゅっと抱きついた。

 

提督「せっかくだ、一緒に黙祷を捧げよう」ナデナデ

皐月「うん!」ニパー

 

 提督の声に元気に頷いた皐月は提督のすぐ右隣に立ち、一緒に一分間の黙祷を捧げた。

 

 

 

 一分間の黙祷を終え、姿勢を正すと提督は海へ向かって敬礼をした。皐月もそれに倣って自分も海へ敬礼をした。

 

提督「皐月、少しいいか?」

皐月「? いいよ、何?」

 

 敬礼を終えた提督の問に皐月が素直に答えると、提督は「うむ」と短く返してから更に言葉を繋げた。

 

提督「睦月達がこれから遠征任務から帰って来る。帰って来たら、みんなとこれで甘い物でも食べなさい」

 

 そう言って提督は皐月に姉妹分のスペシャルパフェ券を手渡した。

 

皐月「え!? いいの!?」

提督「あぁ、せっかく生まれ変わったんだ。笑顔で過ごす時間を多くしてほしい」ナデナデ

皐月「司令官……」

 

 すると皐月は感極まって提督の胸に飛び込んだ。提督は皐月を受け止め、また同じように皐月の頭を優しく撫でる。

 

皐月「ありがとう、司令官!」

 

 皐月はお礼を言いながら提督の上腹辺りに自分の顔をグリグリと埋めた。提督は「あぁ」と短く返すと、にっこりと優しい笑みを皐月に向けるのだった。

 

 

 埠頭前ーー

 

文月「うわぁ……」キラキラ

水無月「あんなに甘える皐月(さっちん)初めて見た〜」キラキラ

長月「…………////」プルプル

 

 水無月と文月はお昼寝から起きて長月に皐月のことを聞いた。それで皐月を迎えに来た水無月達は埠頭前の広場に着いた時、防波堤に立つ二人を見つけた。

 距離が少し開いていたが三人の目には、提督に甘えている皐月の姿がバッチリ見えていた。

 

長月「皐月の奴……////」グヌヌ

文月「妬かない妬かない♪」ナデナデ

水無月「今日は仕方ないよ」クスクス

長月「ったく……////」フンッ

 

 皐月のために三人は黙って部屋に戻り、皐月の帰りを待った。帰って来た皐月はとてもキラキラしていた。

 

 それから睦月型姉妹でスペシャルパフェを堪能している時もその後も、皐月はずっとキラキラとニヤニヤが治らなかったとかーー。




 おまけーー

 一九○○ーー

 駆逐艦寮、春雨・五月雨・涼風部屋ーー

五月雨「お風呂気持ちよかったね〜♪」
春雨「そうだね♪」

涼風「ホットミルク飲む奴いるか〜?」

春・五『は〜い♪』ノシ

涼風「ん〜♪」ノシ

五月雨「そう言えば聞いて! 今日は白露とぶつかってないんだよ♪」
春雨「良かったね」ナデナデ
五月雨「うん♪」

涼風「何もない所で二回転んだけどな〜」

五月雨「むぅ〜! 今日は二回だけだもん! 昨日よりも三回も減ったんだよ!」
春雨「昨日は五回も転んだの?」ニガワライ
五月雨「あ…………うぅ////」ウツムキ

涼風「昨日はずっと青葉さんから貰った写真見ながら歩いてたのが原因だな〜」ニシシ

五月雨「〜////」

 五月雨は恥ずかしさのあまり掛け布団に潜った。

春雨「怪我しなかった?」ポンポン

 春雨は布団の上から五月雨の背中部分をポンポンと撫でながら聞くと、五月雨は布団から頭だけを出して「うん////」と真っ赤な顔で頷いた。
 そんな五月雨に春雨は「良かった」と言って五月雨の頭を優しく撫でた。

五月雨「みゅ〜////」

 五月雨は嬉しいけど恥ずかしいといったような複雑な表情を浮かべるも、春雨の撫で撫でから逃げようとはしなかった。

涼風「しっかし五月雨もあんだけ転んだり頭ぶつけたりしてるのに、よく怪我しないよな〜」

 涼風はどこか感心した感じで言いながら、ホットミルクを持って二人の側までやって来た。

五月雨「怪我はしないけどちゃんと痛いんだよ!?」
春雨「まあまあ、五月雨ちゃん」ヨシヨシ
涼風「痛くなかったら逆に心配するっての」ニガワライ
五月雨「絶対に今年こそドジっ娘を治すんだから!」
涼風「つってから、もう今年も後三ヶ月とちょっとになったな〜♪」
五月雨「治すもん!」ムゥ
春雨「でも何かの雑誌で、ドジっ娘の方が異性にモテるって書いてあったような……?」
涼風「提督はどっちが好みなんだろうな〜?」ニヤニヤ
五月雨「…………どっちでも治すもん」

春・涼『(揺らいだ)』ニガワライ

 その後暫く五月雨は悶々としつつもその日の夜もぐっすりと眠り、春雨と涼風はそんな五月雨に『いつまでもこのまま純粋でいて欲しい』と願いながら眠りに就くのだったーー。

 ーーーーーー

今日は本編にも書きました通り、駆逐艦『皐月』が沈んでしまった日です。英霊の方々と駆逐艦『皐月』に心からお祈りします。

そして今日は春雨ちゃんの進水日でもあるので、おまけで登場させました!
おめでとう、春雨ちゃん!

読んで頂き本当にありがとうございました!

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