少し真面目なシーン、独自設定含みます。
○○鎮守府、一四三○ーー
中庭ーー
野分「……はぁ……」
野分はベンチに座り、盛大なため息を吐いていた。
そんな野分の背後に忍び寄る者が居た。
「だ〜れだ?☆」
野分「え? えっ!?」
突然両目を手で押さえられた野分は驚き、答えが出て来ない。
見かねた犯人はヒントを出すことにした。
「もぉ〜、この声を聞いて誰だか分からないの〜? 寂しいな〜。悲しくてないちゃうぞ?☆」
野分「那珂……さん?」
そう答えると視界が一気に開かれ、犯人が野分の前に姿を見せた。
那珂「ピンポンピンポ〜ン♪ 正解♪ 那珂ちゃん、嬉しい☆」キャハ
野分「良かった……合ってて……」ホッ
相変わらずうz……んんっ、可愛く登場した那珂に対し、野分は安堵のため息を吐いた。
しかし那珂は少しだけ物足りない様子だった。
何故なら、
那珂「でもでもぉ、那珂さんじゃなくて、那珂
とのこと。
野分「いくら那珂さんがそう言っても、野分にとって那珂さんをちゃん付けでなんてとても呼べませんよ」ニガワライ
那珂「むぅ〜……野分ちゃんはいっつも堅いんだから〜」プンプン
野分の言い分にまたもうz……ゲフンゲフン、可愛く両腕を胸の前で組んで怒った振りをして見せる那珂。それに対し、野分は『勘弁してください』と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。
すると那珂は野分の隣に腰を下ろすと同時に、話題を切り替える。
那珂「そ・れ・よ・り〜♪ どうしてため息なんて吐いてたの? ため息を吐くと幸せが逃げちゃうんだよ?」
野分「…………」ウツムキ
那珂「笑顔じゃない野分ちゃんを見ると、那珂ちゃん、寂しいな」ナデナデ
野分「那珂さん……」
いつものように優しく自分を気遣ってくれる那珂。そんな那珂の優しさに野分は「実は……」と前置きしてから話を始めた。
野分「本当に情けないことなのですが……先程、舞風とその、口論になってしまいまして……」
那珂「」ウンウン
野分「舞風はいつものことですが今回はスポーツの秋と言うことで、ダンスをしようと誘われまして」
那珂「」フムフム
野分「自分で言うのも何ですが、野分はリズム感がありません。だから他の人とやるように言ったんです。そしたら『何でいっつも踊ってくれないの!? のわっちのバカ!』と言われて……」
那珂「つい言い返しちゃったんだ」
野分「……はい。いつもなら『ダンスが苦手だから』と言うんですけど、バカと言われたのは今回が初めてで……ついカッとなってしまって……」
那珂「そっかそっか〜……」
野分「本当はケンカなんかしたくなかったのに……」
野分は話をする声が段々震えていった。握っていた拳を更に握りしめ、微かに肩も震え、自分の行動にとても責任を感じていた。
ふわっ
野分「っ!?」ビクッ
野分はまたも突然視界を塞がれた。しかし、今度は那珂が野分を優しく抱きしめたから。
那珂「誰だってついカッとなることはあるよ。私だって川内お姉ちゃんや神通お姉ちゃんとケンカしちゃう時あるもん」
野分「那珂さんも……?」
那珂「うん。でもちゃんと謝ると許してくれるし、舞風ちゃんだってちゃんと謝れば許してくれるよ」ナデナデ
野分「……」
那珂「じゃあ逆に……野分ちゃんは舞風ちゃんを許せない?」
野分「許すも許さないも……元々は野分が悪い訳ですから……」
那珂「じゃあ許せるんだね?」
野分「え……はい。と言うか既に許しています。だからこそ後悔してしまっている訳で……」
那珂「ん、そっかそっか♪」
那珂は明るくそう言うと野分から離れ、その場から少し離れた植木へ向かって声をかけた。
那珂「だってさ♪」
「さ、ここからは自分の口で言いなさい」トンッ
「ひゃぁ!?」
野分「!?」
植木の陰から押されるように出て来たのは舞風だった。更には舞風の後から提督までも姿を現した。野分はあまりにも突然のことで固まってしまった。
提督「(ほら、舞風)」ニッ
提督は笑顔を浮かべ、舞風の背中をポンッと押しながは小さな声で後押しした。
そして舞風は頷き、未だ固まったままの野分にゆっくりと近づく。
舞風「のわっち、あのね……」モジモジ
舞風「バカなんて言ってごめんなさい!」
舞風は野分に深々と頭を下げて謝った。
野分「舞風……」
舞風「あたしついカッとなって言っちゃったの! 本当にごめんなさい! あたしあの時、いつも誘ってるのにどうしてって気持ちと、のわっちの気持ちが、こう……わ〜ってなっちゃって、それで……」
野分「いいの……もういいわ、舞風」ギュッ
舞風「のわっち……」
野分「野分こそ、いつも断ってごめんなさい……」
舞風「うん……」ギューッ
野分「舞風……少し苦しいわ」クスッ
舞風「のわっちこそ……」クスクス
お互いに謝り、そして笑い合う野分と舞風。その光景を見てた提督と那珂は『一件落着』と言った具合いに仲直りした二人を微笑ましく眺めた。
それからーー
野分「まさか舞風が司令にご相談をしていたとは……お騒がせして申し訳ありませんでした」フカブカ
提督「頭を上げなさい。私がしたのは些細なことだからな。それに今回の件は私よりも那珂の協力あってこそだ。な?」ナデナデ
那珂「えへへ、だって野分ちゃんと舞風ちゃんがずっとケンカしてたら那珂ちゃん悲しいもん♪」
舞風「提督、那珂ちゃん、ありがと♪」
野分「本当にありがとうございました」ニッコリ
提・那『どういたしまして』ニコッ
すると那珂が二人の手を握って口を開いた。
那珂「じゃあ♪ 仲直りの記念に食堂で甘い物食べよ♪ 那珂ちゃんがご馳走してあげる☆」キラッ
野分「え……でも……」
舞風「迷惑掛けちゃったのはあたし達なのに……」
提督「せっかくのご厚意なんだ。ここは那珂の顔を立ててあげなさい」
那珂「そ〜だよ〜♪ それに〜、アイドルの那珂ちゃんが特別に二人だけにご馳走してあげるんだから〜♪」キャハ
野分「分かりました」ニコッ
舞風「ゴチになりま〜す♪」
こうして三人は提督に笑顔で挨拶をしてから食堂へと向かって歩き出した。
野分「那珂さん、舞風……」
那・舞『?』
野分「後で野分でも踊れるダンスを教えてください……////」
那珂「勿論♪」
舞風「じゃあじゃあ、手始めに恋の2-4-11の合いの手と観客ダンス(ヲタ芸)から始めよ〜!」キラキラ
野分「い、いきなり過ぎない!?」
那珂「大丈夫大丈夫♪ 覚えちゃえば簡単だから♪」
野分「…………が、頑張ります」グッ
那珂「うんうん♪ じゃあ、甘い物を食べてその後で三人で楽しくダンスレッス〜ン♪」
舞風「お〜♪」
野分「お、お〜!」
こうして三人は那珂を中心に仲良く手を繋いで足取り軽く中庭を後にした。
提督はそんな三人を見送り、ほっこりした気持ちで喫煙所へと向かうのだったーー。
今日は野分ちゃんの進水日!
なので野分ちゃんをメインにちょっと真面目でハートフル?的な回にしました!
そして野分ちゃんおめでとう!
それでは此度も読んで頂き本当にありがとうございました!