艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦メイン。

キャラ崩壊、他作ネタ、ネタ含みます。

いつもより少し長めです。


艦これSS二百四十四話

 

 ○○鎮守府、一一○○ーー

 

 埠頭ーー

 

卯月「すこしゆうきが♪ ありゃ♪ ばっちり♪ しっかり♪ にっこり♪」

菊月「………………」

 

 卯月と菊月は埠頭で海の方へ少し身を乗り出しながら、折り畳み式の玉網を持って海面を見ていた。

 菊月は真剣に海面を睨んでいるが、一方の卯月は歌を歌いながら楽しそうに眺めていた。

 

菊月「なぁ、うーちゃん……」

卯月「ぴょん?」

菊月「もう少し真剣に出来ないのか? 私達は大切な任務を遂行しているんだぞ?」

卯月「え〜……ただ待ってるだけなんてつまらないぴょ〜ん」プップクプー

菊月「ならせめて、そのほんわかした歌を止めてくれ。緊張感が薄れる」

卯月「うぅ〜……分かったぴょん……」

 

 菊月に注意された卯月は素直に頷くと、少し考えてからまた別の歌を歌い始めた。

 

卯月「ひ〜かる〜♪ 雲を突き抜け フライ アウェ〜イ♪」

菊月「フライ アウェ〜イ♪ ……じゃなぁぁい! 何で今度はその曲なんだ!? しかも私も好きな曲だからつい歌っちゃったじゃないか!!////」

卯月「えぇ〜……ほんわかしたものじゃないからいいと思ったのに〜……」ムゥ

菊月「ダメだダメだ! テンポの激しい歌もダメだ!」

卯月「むぇ〜……じゃあどうしたらいいぴょん」

菊月「と・に・か・く! 止めろ! 分からないなら歌うな!」

卯月「は〜い……」

 

 菊月に押し通された卯月は釈然としなかったが、菊月が迷惑するのは卯月としても嫌なので、卯月は違うことをしようと考えた。

 

「何してるんじゃ、お二人さん?」

 

卯月「ぴょん?」

菊月「ん?」

 

 背後から声をかけられた二人が後ろを振り返ると、そこには浦風と磯風が立っていた。

 

卯月「浦風ちゃんだぴょん♪」トビツキ

浦風「うわっと……もぉ、急に飛び付いて来たらびっくりするじゃろう?」ナデナデ

卯月「えへへ〜、ごめんなさ〜い♪」スリスリ

浦風「ちゃんと謝れたから、えぇよ〜♪」

 

磯風「何か海面にあるのか?」

菊月「いや、上がってくるのを待ってる」

磯風「?」クビカシゲ

 

 菊月の答えに小首を傾げる磯風。すると浦風が卯月を抱っこしたまま菊月に訊いた。

 

浦風「何が上がってくるのを待ってるんじゃ?」

菊月「秋刀魚が上がってくるのを待っているんだ」

磯風「秋刀魚?」

卯月「出っ歯でよく『ひゃ〜!』って引き笑いする人だぴょん♪」

浦風「それは魚じゃのぉて、ひらがなの人じゃろ……」ニガワライ

磯風「秋刀魚を捕るなら、釣り糸を垂らした方がいいんじゃないか?」

菊月「このままでいいんだ」

 

浦風「そもそもどうして秋刀魚なんじゃ? 食堂に行けば今は旬じゃけぇ、食べられるじゃろう?」

卯月「自分達で捕った方が美味しそうだからだぴょん! それに今日はみんな長期遠征とかでうーちゃん達は暇だし!」キリッ

浦風「ほうか……」ニガワライ

磯風「しかし、ただ待ってるだけでは捕れないだろう?」

菊月「ふっ、まぁ見ていろ」

 

 菊月の自信に満ちた態度に浦風と磯風は首を傾げたが、次の瞬間ーー

 

菊月「来た!」クワッ‼

 

 ザッパァ! ザッパァ!

 

 海面に魚影が浮かぶと菊月は卯月が持っていた玉網も使い、二刀流で素早く網へ魚を入れ、そして引き上げた。

 

 ピチピチピチピチ!

 

 見事な秋刀魚が二つの網を合わせて三尾入っていて、菊月はその秋刀魚を氷の入ったクーラーボックスの中へ収納した。

 

磯風「ほぅ……捕れるものだな」

浦風「嘘じゃろぅ?」ニガワライ

卯月「沢山捕れたぴょん♪」バンザーイ

 

 その後も菊月は素早い玉網捌きで秋刀魚を捕獲し、合計で八尾の収穫となった。

 訳が分からない浦風とただただ感動している磯風。すると海面に秋刀魚よりも遥かに大きな影が浮かび上がった。

 

イク「っは〜! どうだった〜!?」

ニム「捕まえた〜?」

 

 その正体はイクとニムだった。つまりイクとニムが秋刀魚を追いかけ海面へ追いやり、卯月と菊月がそれを網で捕るといった戦法だったようだ。それを察した浦風と磯風は『なるほど』と言ったように笑みをこぼした。

 

菊月「バッチリだ。良くやったぞ二人共」ノシ

卯月「お疲れ様ぴょん♪」

 

 二人の言葉にイクとニムは笑顔を返し、海から上がった。

 

菊月「ん」つタオル

イク「ありがとうなの♪」

ニム「ありがと♪」

 

 菊月からバスタオルを受け取った二人は濡れた髪や体を拭きながらクーラーボックスの中を確認した。

 

イク「沢山捕れたのね〜♪」

ニム「うんうん♪」

 

浦風「お疲れさん、二人共」ニコッ

磯風「斬新な漁獲方法で面白かったぞ」フフ

イク「二人も一緒だったの?」

ニム「えへへ♪ 泳ぐ訓練にもなるから一石二鳥だよ♪」

卯月「二人はシャワー浴びて来るといいぴょん」ニコッ

菊月「その間に私達が調理しておくから、駆逐艦の寮へ来てくれ」

 

 卯月達にそう言われたイク達は「了解」と笑顔で返してシャワーを浴びにその場を後にした。

 

卯月「さぁ〜、後は七輪でバーニングだぴょん!」

菊月「あぁ」ニコッ

 

浦風「ち、ちぃと待って! そのまま焼くんか!?」

卯・菊・磯『?』

浦風「何でみんなして『それが何か?』みとぉな顔しとるんじゃ! ちゃんと下処理をしにゃぁいけんのよ!」

 

卯月「どうやるんだぴょん?」

菊月「私は知らない……」メソラシ

磯風「仕方ない……ここはこのーー」

浦風「うちがやっちゃるから寮の厨房に行こう!」

卯・菊『おぉ〜!』キラキラ

磯風(解せぬ……)

 

 こうして卯月達は一先ずクーラーボックスを持って駆逐艦寮の共同厨房へと向かった。

 

 

 駆逐艦寮、共同厨房ーー

 

 玉網を片してから厨房へ入った卯月達。浦風は手を洗い、エプロンを装備して腕まくりをする。

 

浦風「それじゃあやってくけぇのぉ♪」

菊月「頼む」つ秋刀魚

浦風「ん、任しとき♪」

 

 浦風は菊月から秋刀魚を数尾預かるとテキパキと処理を始めた。

 

浦風「まずは頭の部分の背中半分に切り込みを入れて、包丁で頭を押えて身を引っ張ると、簡単に内臓と頭を一緒に取れるんじゃ♪」

卯月「おぉ〜!」キラキラ

浦風「後はお腹を切って中を洗えば焼けるからねぇ♪」

磯風「簡単なんだな」メモメモ

 

浦風「えっと、食べるんは卯月ちゃん、菊月ちゃん、イクちゃん、ニムちゃんの四人よねぇ?」

卯月「浦風ちゃん達も一緒に食べようよ〜!」

浦風「え?」

磯風「何もしていないのにいいのか?」

菊月「こうして手伝ってくれているんだ。気にするな。それにみんなで食べた方が美味しいだろ?」

浦風「ありがとう」ニコッ

磯風「ならば私が焼いてーー」

浦風「うちが焼くけ、磯風は大根をおろすのとすだち切っといてくれんか?」ニコニコ

磯風「…………分かった」

卯月「うーちゃんも一緒にやる〜♪」

 

 こうして卯月と磯風は大根おろし作りとすだちを切る作業に入った。

 

浦風「うちらが焼いて食べる分は終わったけぇ、残りの二尾はお刺身にする?」

菊月「(。✧ω✧)」コクコク

浦風「ん♪ じゃあ三枚におろしぃの〜♪」

 

 スッスッサッ……

 

浦風「皮を取りぃの〜♪」

 

 サッサッ……

 

浦風「食べやすい大きさに切りぃの〜♪」

 

 スーッスーッ……

 

浦風「お皿に盛り付けて終いじゃ♪」

菊月「お見事!」パチパチ

浦風「それじゃあ、これは冷蔵庫に保管して、外に行って七輪で焼こ」ニコッ

菊月「あぁ」ニコニコ

 

 その後も菊月と浦風は簡単お料理講座をしつつ、秋刀魚を調理した。その間に卯月と磯風は食堂でご飯を調達し、イクとニムが到着した時には秋刀魚も食べ頃になっていた。

 

 それから六人はせっかくだからと中庭へ料理を持って行き、中庭でピクニック気分を味わいながら仲良く秋の味覚を楽しむのだったーー。




今回は秋の味覚、秋刀魚を題に日常系な回にしました!
秋らしかったり暑かったりと不安定なので体調にはご注意を。

そして今日は卯月ちゃんと浦風ちゃんの竣工日です♪
二人共、おめでとう!

ということで、今回も読んで頂き本当にありがとうございました!

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