艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自解釈含みます。


艦これSS二百四十二話

 

 ○○鎮守府、○七○○ーー

 

 埠頭ーー

 

敷波「………………」

 

 敷波は海に向かって黙祷を捧げていた。

 

 本日は駆逐艦『敷波』が船団護衛任務中にアメリカ潜水艦による雷撃を受けて沈んでしまった日なのだ。

 

 当時の『敷波』はシンガポール沖で起こした座礁事故により、応急修理はしたものの本格的な修理は出来ず、本国へ戻らなければいけなかった。

 そこで内地へ向かう船団の護衛をしながら向かうことになった。

 一九四四年の九月十二日、深夜。船団が航行中にアメリカ潜水艦による雷撃を受ける。船団護衛の旗艦をしていた艦艇に一本の魚雷が命中。閃光と水柱が上がり、それが消えると旗艦の姿も消えていた。旗艦を失って混乱を極める船団。アメリカ潜水艦部隊はそれを好機と見て、次々と雷撃。それにより被害が次々と増える中、『敷波』は対潜掃討を行っていた。

 しかしその日の○六五五、海南島東方洋上で船団旗艦を沈めた潜水艦が再び魚雷を発射。その魚雷を二本立て続けに受けてしまった『敷波』はその後すぐに海の底へ消え、乗組員の多くが亡くなった。

 

敷波「」フゥ

 

 一分間の黙祷を終えた敷波は再び海を眺めた。

 

「おはよう、敷波」

 

敷波「」ビクッ

 

 突然背後から声をかけられた敷波は思わず肩を震わせた。

 内心ドキドキしているのを落ち着かせながら平静を装って背後に視線を移すと、そこには提督の姿があった。

 

敷波「なんだ司令官か〜……びっくりさせないでよ。おはよ。あ、別に怒ってる訳じゃないから……」

提督「あ、あぁ、すまない」ニガワライ

敷波「怒ってないって言ったじゃん」ムゥ

 

 ちゃんと「怒ってない」と伝えたのにも関わらず、それでも謝った提督に敷波はぷっくりと右頬を膨らませた。

 

提督「お、お〜……すまなかった」ナデナデ

敷波「別にいいけどさ〜……ん////」←撫でられて嬉しい

 

敷波「提督は埠頭に何しに来たの? 軍服着てるから鍛練じゃないんでしょう?」

提督「黙祷を捧げに来たんだ」

敷波「え」

提督「今日は駆逐艦の『敷波』の特別な日だからな。それと同時に英霊達にも黙祷を捧げる日だ」

 

 そう言うと提督は海の方を向いて、静かに黙祷を始めた。

 敷波は黙祷する提督をただただ見つめていた。

 

敷波(ちゃんと覚えててくれたんだ……)

 

 そう思うと敷波は胸の奥が軽くトクンと跳ねた。それと同時に体温が上がっていくのが分かった。

 

敷波(やっぱ覚えててもらえるのって嬉しいなぁ……////)

 

 思わず頬が緩みそうになるのをキュッと引き締めた敷波は、未だ黙祷を続ける提督と同じ方向を向いて気持ちを落ち着かせた。

 

提督「…………ふぅ……」

 

 提督は小さく息を吐くと姿勢を直し、海へ向かって敬礼した。敷波も思わず提督と同じように敬礼をする。

 

提督「敷波、ありがとう」

敷波「え?」

 

 突然お礼を言われた敷波は提督の顔を見た。すると提督は優しく微笑んで敷波の頭をぽんぽんと軽く叩くように撫でた。

 

提督「いやなに……不謹慎かもしれないが、君が生まれ変わって来てくれたことが嬉しくてな。唐突過ぎてすまない」ニコッ

敷波「ば、ばかぁ……////」シュー

 

 提督がかけた言葉に敷波は反射的に俯いてああ返してしまったが、その声は弱々しく消え入りそうな声だった。

 

敷波(あ〜! もう! 馬鹿馬鹿! 司令官の馬鹿! 顔見らんないじゃなん!////)

 

 敷波は自分でも自身の顔が赤くなってるのがよく分かった。何故なら朝の潮風がやけに冷たく感じたから。

 

提督「はは、すまない」ポンポン

 

 なおも謝りながら頭を撫で続ける提督。

 

敷波(〜////)

 

 敷波は嬉しさと恥ずかしさが入り乱れ、更には自身の鼓動の高鳴りで頭の中が真っ白だった。

 

提督「敷波?」

敷波「何?////」

提督「耳が赤いが……どうかしたのか?」

敷波「…………ちょ、ちょっと熱いだけ////」

 

 本当は『司令官のせいでしょ!』と怒鳴りつけたかったが、それだとこれまでの経験上、提督に気を遣わせてしまうことになるので敷波は事実だけを簡単に伝えた。

 提督は「そうか」とだけ返した。

 

提督「」ポンポン

敷波「〜////」

提督「」ナデナデ

敷波「〜〜////」プルプル

提督「」ナデコナデコ

敷波「いつまで撫でてるのよぉぉぉ!////」ウニャー!

提督「おぉ、すまなかった」パッ

敷波「ふ〜っ、ふ〜っ!////」

提督「」ニガワライ

 

 まるで猫が興奮した時のような声をあげる敷波。提督は撫でていても敷波が全然避けようとしなかったので喜んでくれているのだと思い、撫で続けていただけなのだ。

 

敷波「もう、馬鹿!////」

提督「はは……」アタマポリポリ

 

 敷波は提督に『馬鹿』と言い過ぎてると内心では思いながらも、ついまた口に出してしまった。

 

提督「じゃあ、私はそろそろ食堂に向かう。敷波も良かったら一緒に行くか?」

敷波「え……一緒に?////」

提督「あぁ」コクリ

敷波「…………いく////」

 

 敷波は提督の軍服の袖をキュッと掴んで俯いたまま、そう短く返事をした。

 

提督「では行こうkーー」

敷波「…………////」グッ

提督「敷波?」

 

 提督が食堂へ向けて歩き出そうした矢先、敷波に強く袖を引っ張られた。

 敷波の方をまた向いて声をかけると、

 

敷波「あのさ、司令官にさ……言いたいことが、あるんだけどさ……////」

 

 敷波は顔を真っ赤にしながら右手を自分の口の前にやり、提督の顔をチラチラと覗き見ながらそう言うと、提督は「何かな?」と先程と同じく、優しく微笑んで敷波の言葉を待った。

 

敷波「えっとさ……あのさ……////」モジモジ

提督「」ニコッ

敷波「『敷波』のこと、覚えててくれて……その、ぁ……ありがと////」ニッコリ

提督「私は当たり前のことを覚えていただけだ。何もお礼を言われるようなことじゃない」ナデナデ

敷波「馬鹿……////」プイッ

提督「ふふ、すまない。では今度こそ食堂へ行こう」

敷波「ん////」コクリ

 

 こうして提督と敷波は埠頭に背を向け、食堂へとゆっくり歩き出したーー。




 おまけーー

 その後ーー

提督「む?」
敷波「? どうしたのさ、司令kーー」

綾波「」ニコニコ
朧「」ニッコリ
曙「」ソシラヌフリ
漣「」ニヤニヤ
潮「」ペコペコ

 埠頭からすぐ近くの建物の物陰から綾波型姉妹が現れた。

敷波「」ハイライトオフ
提督「皆、おはよう」ノシ
綾波「おはようございます♪」ホッコリ
朧「おはようございま〜す♪」ホクホク
曙「おはよ」ソッポムキ
漣「おはようございますにゃ〜ん♪」ニヒヒヒ
潮「お、おはようございます////」ハワハワ
敷波「お は よ う」ゴゴゴゴゴ
提督「???」クビカシゲ

綾波「今日は敷波の特別な日なので、姉妹で黙祷をしに来たんです♪」
朧「敷波姉は先に行ってると思って敢えて遅れて来たんだ〜♪」
曙「こういう日はひとりで考える時間も必要だからね」
潮「か、隠れてた訳じゃないの!」アワアワ
漣「いやぁ〜、ご主人様とキャッキャうふふをsーー」

 ドゴォ!←敷波のノーモーション腹パン炸裂

漣「」チーン
提督(不覚にも見えなかった……!)
綾波「うふふ、敷波ったら〜♪」ホッペツンツン
敷波「う、うるしゃい////」ウググ
朧「あはは♪ それじゃ朧達も黙祷して来るから、敷波姉は提督と先に行って席取っといて♪」
曙「(良かったわね)」ボソッ
敷波「(ありがと////)」
潮「あの……あの……////」
敷波「悪気があった訳じゃないのは分かったから、(それ)連れて黙祷して来なよ」ニコッ
潮「うん」ニコッ
漣(解せぬ……)

 そんなこんなで綾波達は埠頭へ向かって歩き出した。(漣を運びつつ)

敷波「みんな〜!」

 すると少し離れたところで敷波が綾波達を呼んだ。
 その呼び声に綾波達が振り向くと、

敷波「『敷波』や乗組員のみんなのためにありがと〜! 食堂で待ってるからね〜!」ノシ

 満面の笑みでそう叫ぶと、敷波は「司令官、行こ♪」と提督の左腕を引っ張って食堂へ向かった。

綾波「うふふ♪」
朧「最高の笑顔だったね♪」
曙「しっかり黙祷しなきゃいけないわね」クスッ
漣「元からしっかり黙祷するつもりだったくせにとは言わないであげるお!」キリリッ
曙「潮〜、せ〜のでこいつを海へ投げ込むわよ〜♪」
潮「え、えぇ!?」
漣「ごめんなさい調子こきました許してくだしゃぁ!」
曙「はい、せ〜の♪」
潮「きゃぁ!」

 脚を持っていた曙は思いっきり漣の脚を放り投げたが、上半身を持っていた潮はそんなことは出来ず、漣は仰向けの状態で横にくの字で腰が曲がった。

漣「ちょ、(うっしー)! 離して! 腰が、腰がぁぁぁぁ!」
綾波「みんな〜、遊んでないで黙祷始めますよ〜?」
朧「整列して〜」ニガワライ
曙「は〜い♪」
漣「くぅ……何も言えねぇ……」ズキズキ
潮「ご、ごめんね、漣ちゃん」サスサス

 それから綾波達はしっかりと一分間の黙祷を捧げて、食堂へ向かった。

 ーーーーーー

今回もちょっと真面目に書きました!
この日に沈んでしまった駆逐艦『敷波』と他の艦艇、そして英霊の方々に心からお祈りします。

今回も読んで頂き本当にありがとうございました!

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