艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

キャラ崩壊、少し真面目なシーン、独自解釈、独自設定含みます。


艦これSS二百二十九話

 

 ○○鎮守府、一四○○ーー

 

 執務室ーー

 

提督「」カリカリ

 

 本日の私は執務に追われていた。

 我が鎮守府は皆の活躍によりマラッカ海峡沖を確実に攻略して行き、今では全ギミックも解除した上で拡張作戦完遂までもう少しのところまで来た。

 しかしだからと言ってここで一気に突き進めるのではなく、私は敢えて本日はみんなに休暇を与えて身体を休めてもらい、万全を期して攻略に臨もうと考えた。

 中には今の状態のまま攻め込むべきとの意見もあったが、確実性を高めるために敢えて止めたのだ。

 あの時こうしてたら、あの時ああしてなかったから、等のタラレバの事態になるのは最も避けたいことなのだ。

 

提督(次はどういった編成で行くのかも、また考えなくてはならないな……)

 

 私は書類にサインをしながら、頭の中では艦隊編成を考えていた。

 

 コンコンーー

 

 すると聞こえてきたドアをノックする音に、私は手と思考を止め、ドアに向かって声をかけた。

 

提督「入りなさい」

 

 ガチャーー

 

睦月「こんにちは、司令官」ピョコ

 

 開いたドアから姿を現したのは睦月だった。

 しかしいつもの睦月よりは少し静かな印象だった。

 

提督「よく来たな、睦月。ソファーへ掛けなさい」ニコッ

 

 私は敢えて何も聞かず、睦月をソファーへ座るよう促した。

 睦月は静かに頷き、素直に執務室のソファーにちょこんと腰を下ろした。

 私はそれを確認してから、睦月の隣にゆっくりと座り、睦月の頭を軽く撫でた。

 

睦月「ん……お仕事中なのにごめんなさい……」

提督「謝る必要はないぞ。それに仕事ばかりだとまた皆に怒られてしまうからな」フフ

睦月「にゃしぃ……」コクン

 

 私はどうして睦月が執務室……というより私の所に来たのかなんとなく分かっていた。

 

 今日は睦月が第二次ソロモン海戦で沈んだ日だからだ。

 いくら明るい睦月でもこの日ばかりは色々と思うことがあるのだろうと思い、私は敢えて何も言わなかった。

 

睦月「ねぇ、司令官……」

提督「ん?」

睦月「去年の時みたいに抱っこしてもらってもいい?」

提督「あぁいいとも。おいで」ニコッ

 

 睦月の要望に私は笑顔で両手を広げて返すと、睦月はおずおずと私の胸に顔を埋めてきた。私は安心させるようにゆっくりと睦月の背中をぽんぽんと叩きながら睦月を膝の上に乗せて抱っこした。

 

睦月「司令官……」ギューッ

提督「あぁ、分かっているよ。大丈夫。睦月は大丈夫だ」ポンポン

 

 私のことを呼びながらしがみつく睦月。

 去年のこの日、睦月はずっと謝罪の言葉しか言えなかった。それは自分が味方艦を雷撃処分したこともあり、その直後に睦月自身が攻撃を受けて沈んでしまったことから出る謝罪の言葉だった。

 私は去年、睦月に『思いを忘れる必要はないが、縛られてはいけない』と声をかけた。睦月も私の言葉に頷き、その後は『あの時出来なかったことを今の睦月はしたい』と笑顔を見せてくれた。

 しかし艦だった頃の記憶が鮮明に浮かぶと、やはり気持ちが揺らいでしまうだろう。ましてやこんな小さな身体にどれだけ多くの辛く、重い記憶がのしかかっているか想像も出来ない。

 

睦月「司令官、睦月、頑張るから……だからもう少しだけこのままでもいい?」

 

 顔を上げず、つぶやくように訊いてきた睦月に、私は小さく「いいぞ」だけ返し、今度はゆっくりと睦月の髪を優しく梳いた。

 

睦月「司令官に抱っこされてると安心する……」

提督「これくらいいつでも言いなさい。それに睦月は他のみんなと一緒に、よく私のことを『お父さん』と呼んで甘えてくれるじゃないか」ナデナデ

睦月「えへへ……ありがとう、お父さん」

提督「そうだ。笑顔の方がきっとあの時の英霊の方々も艦も喜んでくれるぞ」ニコッ

睦月「うん♪」ニャシィ

 

 やっといつもの睦月らしい笑顔が戻ったことに私は嬉しく思い、睦月の頭を今度はワシャワシャっと撫でた。

 髪型が崩れてしまうが、睦月にはこれくらいの方が好評なのだ。

 

睦月「んにゃ〜♪」トローン

 

 撫でられて喜んでいる猫みたいな声をあげる睦月。

 すると、

 

 ぐぅぅぅ〜……

 

提督「?」

睦月「あぅ////」

 

 何かの音と共に睦月は顔を真っ赤にして自身のお腹を押さえた。

 先程の音は睦月のお腹の音だったようだ。

 

提督「思い悩んでいたせいでご飯が喉を通らなかったといった所か?」

睦月「冷静に解説しないでよぅ////」テシテシ

 

 恥ずかしさからか、睦月は私の胸を軽く叩いて抗議してきた。

 

提督「ふふ、すまないな……どれ、もうおやつ時だ。何かご馳走してあげよう」

睦月「本当ですか〜!?」キラキラ

提督「あぁ」ニコッ

睦月「あれ……でも司令官、昨日散財したって青葉さんの新聞で読んだよ? いいの?」

提督「あ〜……流石にあの額をまた払うとなると笑えないが……寧ろ睦月はそんなに食べられるのか?」

睦月「睦月ね、期間限定のプレミア厶パフェ食べたい!」キラキラ

提督「ほう……あのフルーツやアイスクリームが盛りだくさんのやつか」

睦月「うん♪ 普段のスペシャルパフェとは違って三種のアイスが入ってて、アイスの味も選べるんだよ♪」

提督「ふむ……それならご馳走することは容易いぞ。早速行こうか」

睦月「うん♪ 他のみんなにバレちゃうと大変だもんね!」

提督「心遣い感謝するよ」ニガワライ

 

 こうして提督は睦月に手を引かれて食堂へ向かった。

 

 そして二人でこっそりとおやつを食べていると、睦月を心配して様子を見に来た如月を始めとする妹達に見つかり、提督はみんなにも睦月と同じようにプレミアムパフェをご馳走し、姉妹の楽しい思い出作りをアシストしたーー。




 おまけーー

 食堂ーー

皐月「ねぇねぇ司令官!」
提督「何かな?」
皐月「今度水無月が着任することになったでしょ?」
提督「なったな」
文月「さっきね〜、鎮守府(こっち)に着任する水無月(みっちぃ)からお手紙来たの〜♪」
睦月「え、本当に!?」
長月「本当だ……会えるのを楽しみにしていると書いてあったぞ」
菊月「あとは司令官にもよろしくと書いてあったな」

如月「長月(ながなが)ちゃんも菊月(きくちん)ちゃんも、もっと面白いことを書いてあったじゃない♪」
長月「その呼び名で呼ぶな!」
菊月「不本意だ!」
提督「可愛いあだ名じゃないか」ニコッ
長月「な、う、うるさい////」プイッ
菊月「そんなことでご機嫌が取れると思うな////」フンッ

長月(可愛い……私が? 可愛い……可愛い……かわいい…………ふへへ♡)ニヨニヨ
菊月(も、もし司令官にきくちんって呼ばれたら…………いいかもしれない♡)デヘヘ
如月「」クスクス

提督「因みに他の姉妹のことは何と呼んでいるんだ?」
如月「睦月ちゃんことは『むっちゃん』で私のことは『さらっち』よ♪」
弥生「弥生のことは『やよやよ』だそうです」クスッ
卯月「うーちゃんは『うーちゃん』だぴょん♪ 世界共通だぴょん♪」
皐月「ボクのことは『さっちん』だよ♪」
文月「あたしは『ふみちゃん』って呼ばれてるの〜」ニコニコ
三日月「それで長月姉さんが『ながなが』で菊月姉さんは『きくちん』……私が『みぃちゃん』です」ニッコリ
菊月「きくちんなんて呼ばれたくないぞ、私は」ニヘヘ
長月「私もながながとは呼ばれたくないな」エヘヘ
望月(説得力無いな〜)
  「最後にあたしはみんなからみたいに『もっちー』だよ〜」

提督「そうなのか……また賑やかになりそうでいいな」

 そして提督と睦月達はその後も水無月の話題で大いに盛り上がったーー。

 ーーーーーー

はい、とういう訳で今日は駆逐艦『睦月』の沈んでしまった日なので、今回は少し真面目な感じで書き上げました! そしておまけは水無月ちゃんの話題を少し取り上げました!

この日に沈んでしまった駆逐艦『睦月』と、亡くなってしまった方々に心からお祈りします。

今回も読んで頂き本当にありがとうございました!

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