艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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戦艦メイン。

独自設定、独自解釈、少しのシリアス含みます。


艦これSS二百十九話

 

 ○○鎮守府、○八○○ーー

 

 埠頭前ーー

 

大淀「艦隊の皆さん、おはようございます。集合されている方々から順に、前日にお伝えした通りの並びで整列をお願い致します」

 

 本日は広島へアメリカ軍により原子爆弾を投下された日である。

 

 提督、艦娘、妖精の全員が埠頭前へ集まり、広島の方角を向いて各自整列をする。早い者は八時前から集合していた。それからみんなは速やかに型毎に整列を終えた。

 それを確認した提督はみんなの前に立ち、大きな声で全員に聞こえるように口を開いた。

 

提督「本日は皆も知っての通り、広島へ原子爆弾が投下され、多くの人々の命が失われた日である。あの日、被爆し亡くなった人々、そして急性障害、後障害で亡くなった人々の御霊に向かい、謹んで、哀悼の誠を捧げると共に、被爆による後遺症に今でも苦しんでいる人々に対し、皆で心からの祈りを捧げよう!」

 

 提督の言葉に艦隊の全員が口を揃えて『はい!』と力強い返事をし、そしてその時を待った。

 

 ○八一五ーー

 

提督「黙祷!」

 

 提督の号令で全員が同じ方向を向いて静かに黙祷をする。

 しっかりと手を合せる者、直立不動でただ目を閉じる者、お辞儀をする者と様々だったが、みんなの想いは一つだった。

 

 一分間の黙祷を捧げ、大淀の合図でみんな元の姿勢に直った。

 

 そして提督の解散の合図を最後に朝の埠頭での朝礼が終わり、みんなはそれぞれの想いを胸に任務へと向かった。

 

 

 埠頭ーー

 

榛名(旗艦)「榛名! いざ、出撃します!」

霧島「気合を入れ過ぎて突出しないでね!」

榛名「榛名は大丈夫です♪」

雪風「絶対、大丈夫です!」ニパー

龍鳳「頑張りましょう」ニコッ

利根「索敵は任せておけ♪」

筑摩「出撃します」ニコッ

葛城「行くわよ〜!」フンス

 

 第一艦隊に続き、遠征部隊である第二、第三、第四艦隊の面々も次々と任務へと向かった。

 

 みんなの表情はとてもやる気に満ち溢れていた。

 

 そんな艦隊を見送りながら埠頭で佇む艦娘が居た。

 

アイオワ「…………」

 

 アメリカ艦のアイオワである。

 アイオワは今でこそ日本へ来て、こうして日本で生活をしている。つい数ヶ月前に着任したアイオワだったが、これまでの短い期間で多くの日本人、そしてここの鎮守府や他の鎮守府の日本の艦娘と触れ合ったことにより、この日はとても複雑な心境だった。

 

 祖国アメリカが戦争とは言え非人道的な兵器を使ったこと、それにより多くの日本人が亡くなり、今も苦しんでいる日本人がいるということ、考えれば考える程、アイオワはみんなにどういう顔をすればいいのか分からなかった。

 

「アイオワさん?」

「いつまで突っ立って居る気だ?」

 

アイオワ「?」

 

大和「」ニッコリ

武蔵「」

アイオワ「ヤマート……ムサーシ……」

 

 アイオワが振り向くとそこには、笑顔で日傘を差す大和とその隣に腕組みをする武蔵が並んで居た。

 

武蔵「またなんか小難しいことでも考えてたんだろう」フフ

アイオワ「そうだけど……そんな言い方しなくたっていいじゃないの」ムゥ

武蔵「はは、悪い悪い……でも言葉を訂正するつもりはないぞ」ニッ

大和「武蔵……」

アイオワ「いいのヤマート、その通りだから……」ニガワライ

大和「アイオワさん……」

 

武蔵「アメリカ艦のお前からしたら複雑な日だろう。しかもお前は親日家だから尚更な」

アイオワ「Know all along……全てお見通しって訳ね」フフフ

武蔵「この武蔵を侮るなよ?」フフン

大和「武蔵ったら……」ニガワライ

アイオワ「おみそれしました」ニッコリ

 

 アイオワがそう言うと、武蔵はアイオワの両肩を軽く叩いてから言った。

 

武蔵「広島への原爆投下による悲劇、惨劇を忘れることはないし、人々の記憶から消えることもないだろう。そしてこれはもう何度も言っているが、もうあの戦争は終わった。アメリカとの戦争を経て今があるんだ。我々は今ある日本を、世界を深海棲艦の危機から人々を守るために集った仲間だ。お前が私達や日本の国民へ謝る必要もない」

アイオワ「でもミーはーー」

大和「それでも……どうしても気になるなら、深海棲艦から人々を守ることで返していけばいいと思うの。今のアイオワさんは私達の敵ではなく、大切な仲間だもの」ニッコリ

アイオワ「ヤマート……」グスッ

 

 大和と武蔵の言葉にアイオワは大粒の涙を流し、何度も何度も頷いた。

 大戦時は敵艦だったアイオワと艦娘となり味方艦のアイオワ。アメリカ艦である誇りと日本人や日本の艦娘達へ対する想いがぐちゃぐちゃに交錯し、アイオワは本当にどうしたら良いのか分からなかった。そんな時に大和と武蔵から貰った言葉『仲間』……この言葉がアイオワの想いを一つにした。

 自分はアメリカ艦としての誇りを持って、今度は日本人や大切な仲間のために力を尽くそうと。

 そして泣きじゃくるアイオワを大和と武蔵は気遣うようにそっと抱きしめ、大和は優しく背中をポンポンと叩き、武蔵は優しく頭を撫でてやるのだった。

 

 

 その少し離れた場所ではーー

 

萩風「アイオワさん、大丈夫かな?」

嵐「あの人なら大丈夫だろ。それに大和さんと武蔵さんがついてるからな♪」

舞風「アイオワさんもアイオワさんなりに悩んでたんだね……」

野分「あの当時は互いに敵同士……でも今は互いに同じ方向を向いて戦う仲間……とても素敵なことよね」

萩風「うん……そうだね」ニコッ

 

 野分達、第四駆逐隊がアイオワと大和達のやり取りを見守っていた。

 

嵐「俺としちゃ、アイオワさんが投下した訳じゃないんだから気にしなくていいと思うけどな〜。そこら辺はやっぱ色々あるんだろうな〜」

野分「こればかりはね……でも大和さん達が言うように、今は大切な仲間なのは確かよ。国境なんて関係ないわ」ニコッ

舞風「そうそう♪ それにアイオワさんって優しいし面白いもん♪」

 

「お〜い」

 

野・嵐・萩・舞『?』

 

 振り向くと少し離れた場所から海風と江風、涼風が手を振って野分達を呼んでいた。

 

 野分達はこれから江風達と浜辺で遊ぶ約束をしていたからだ。

 今日は広島に原爆投下された日でもあるが、江風、嵐、萩風にとってはまた別で特別な日なのだ。

 

 一九四五年の広島の悲劇より二年前の一九四三年のこの日、嵐、萩風、江風は輸送任務中、ベラ湾にて哨戒するアメリカ軍の駆逐隊からの雷撃にて沈んでしまった日でもあるのだ。これがベラ湾夜戦である。

 

 そんな日なので、提督は三人とそれぞれの姉妹達に少しでも明るい思い出が作れるように休暇を与えたのだ。

 

江風「こンな日だけど、しっかりと休もうぜ♪ 休むこともまた仕事って言うしな!」ニカッ

涼風「みんな準備に取り掛かってたぞ♪ あたい達も行こうぜ♪」ニカッ

海風「任務やお仕事をしてる方々には申し訳ありませんが、提督のお心遣いに感謝してゆっくりしましょう」ニコニコ

嵐「おしっ! 全力で遊ぶぜ〜!」ウォォォ!

萩風「嵐ったら」ニガワライ

舞風「浜辺でダンスパーティしよ〜♪」

野分「ダンスなら那珂さんの曲のダンスがいいわ」ニコッ

 

 こうして艦娘達は過去を受け入れ、明るく未来へ向かって今日を過ごすのだったーー。




今日は日本人として忘れてはいけない日です。
あんなことが繰り返されないよう、心から平和を祈り、原爆により亡くなった方々、後遺症で亡くなった方々に心よりお祈りしましょう。
そして今も尚、後遺症で苦しんでいる方々に心からお見舞いを申し上げます。

更に、本編にも書きましたようにベラ湾夜戦にて沈んだ駆逐艦『江風』『嵐』『萩風』と艦と共に沈んだ乗組員の方々にも心からお祈りをします。

因みに今日は本編では触れられませんでしたが雲龍さんの竣工日です! そして昨日は更新出来ませんでしたが武蔵さんの竣工日でした!
二人共、おめでとう!

それでは此度も読んで頂き本当にありがとうございました!

最後にこのお話を読んで気分を害してしまった方々、申し訳ありませんでした。

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