艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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軽巡洋艦のみ。

真面目なシーン、独自解釈含みます。


艦これSS二百話

 

 ○○鎮守府、○○○○過ぎーー

 

 軽巡洋艦寮、川内型姉妹部屋ーー

 

神通「ん……ん〜……」

 

 ーー

 ーーーー

 ーーーーーー

 

 夜の海。

 鳴り響く砲撃音。

 探照灯に照らされし敵艦。

 降り注ぐ砲弾。

 

 駆逐艦への雷撃照準を阻止すべく、前へ出て探照灯で照らす。

 後方から駆逐艦達は探照灯が照らす目標へ砲雷撃を行う。

 しかし探照灯によって自身の位置も敵に分かり、集中砲火を浴びる形となった。

 

 どれだけの砲弾が来たのだろうーー

 

 どれだけの雷撃を受けたのだろうーー

 

 どれだけ反撃したのだろうーー

 

 あの時間は今までに感じたことの無いくらい長く思えた。そんな夜だったーー

 

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 

神通「!?」

 

神通「あの時の夢……」

 

 神通は記憶に残る艦時代の夢を見た。

 コロンバンガラ島沖海戦の夢を……。

 

神通(艦娘となっても艦時代の夢は見てしまう)

 

神通(でもそれは私が軽巡洋艦『神通』だったという証拠……)

 

 どんなに姿形が変わろうと、自分は軽巡洋艦『神通』の()()()()()()である。

 でもそれを悲しい思うことは今の神通にはなかった。

 

神通「提督……」

 

 神通は自分の枕元にいつも置いてある提督の写真を手に取ると、自然と言葉が出ていた。

 

神通「神通は提督に出会えて幸せです……」

 

 提督に出会って居なければ今の自分は居ない。

 他の鎮守府にも自分と同じ神通は居るが、今ここに居る『神通』は自分だけなのだ。

 提督は自分だけでなく、艦隊のみんなにそのことをいつも言っている。

 

提督『どんなに代わりが居ても、『神通』という艦娘個人に代わりは居ない』

 

 この言葉がどれだけ嬉しかったか……神通はこの言葉を思い出すだけで体がポカポカと温かくなった。

 

神通「提督……////」

 

 もう一度、写真の中の提督に声をかける神通。

 写真の中の想い人は変わらず笑顔を自分に向けてくれていたーー

 

「ーー提督、提督ってどうしたの?」

 

神通「っ!?」ビクッ

 

 突然声をかけられた神通は思わず小さな声をあげた。

 

 声のした方に目を向けると、そこには心配そうに自分を見る川内の姿があった。

 

神通「ご、ごめんなさい、起こしてしまって……」

川内「え? 別に謝る必要ないよ?」

神通「…………いつから起きてました?」

川内「いつからっていうかずっと? みたいな?」

神通「……////」カァー

川内「夜中に起きたと思ったら、提督の写真を手にとって『提督……提督ぅ……』って言い出すんだもん。LOVE勢特有の発作か何かでも起きたのかと思っちゃった」ニヤニヤ

神通「発作なんてありませんよ、もぅ……。姉さんは夜行性ですもんね……迂闊でした////」ポッポッ

川内「夜戦が無くても夜更かしは楽しいからね♪」ヘヘ

神通「…………寝てください////」

 

 川内は平常運転だった。

 自分が提督を異性として好いているのは川内も那珂も知っているが、流石に写真に向かってつぶやいているのを目撃されたのは恥ずかしい。神通は恥ずかしくて布団に潜るしか手段が無かった。

 

 すると自身のベッドが微かに沈んだ。

 布団から少し顔を出すと、ベッドに川内が乗っていた。

 

神通「姉さん?」

川内「今日は神通が頑張った日だよね……」

神通「」

川内「その時の夢か何か見たんでしょ?」

神通「はい……」

川内「神通は私の自慢の妹で誇りだよ。大丈夫、今の神通はちゃんと生きてるから」ギュッ

神通「姉さん……」

 

 神通を抱きしめる川内の手は力強く、それでいて優しかった。

 

神通「ありがとう、姉さん」ギュッ

川内「これでもお姉ちゃんだからね♪」

神通「そうですね」クスッ

 

「私だけ仲間外れは良くないと思うな〜」

 

 今度は反対側から少し拗ねた声がした。

 

神通「あ、那珂ちゃん……」

川内「那珂も起きちゃったか〜」アハハ

那珂「神通お姉ちゃんが『提督に出会えて幸せです』って言った所から起きてました〜」ツーン

神通「えぇ〜!?////」

川内「殆ど最初じゃん。それなのに寝たフリとか性格悪いな〜」

那珂「そんなんじゃないもん。この日は神通お姉ちゃんにとって色々とある日だから、敢えて寝たフリをしてたの。なのに川内お姉ちゃんったら話しかけちゃうんだもん」

神通「那珂ちゃん……」

 

川内「何よ、その言い方〜? まるで私が空気読めてないって言ってるみたいじゃん」

那珂「那珂ちゃんはそこまで言ってないよ〜? 自分でそう言うってことは自覚あったの〜?」ニヤニヤ

川内「私は神通を思って声をかけたの! 何もしなかった那珂に言われる筋合いないから!」

那珂「私は神通お姉ちゃんのために黙ってたの! 声をかけないのも優しさだもん!」

 

 /ギャースギャース\

 

神通「」ニガワライ

 

 それぞれの思い遣り方の違いから口論になる長女と三女。それはいつも通りで()()()()にとっては当たり前の日常だった。

 

 神通にとってこの日は確かに辛い思い出が残っている。しかし目の前で口論し、それぞれ自分のことを思い、行動してくれた姉妹が『自分は確かに今を生きている』ということを教えてくれた。

 

川内「大体、那珂はーー」クドクド

 

 普段から何かと夜戦夜戦と喧しいが戦闘や私生活では頼りになる姉、川内。

 

那珂「川内お姉ちゃんだってーー」プンプン

 

 一方で普段から艦隊のアイドル(自称)として艦隊のムードメーカーである頼れる妹、那珂。

 

 神通は姉妹揃って居られる今を心から幸せに思い、そんな幸せをくれる姉妹を見ていつも通りーー

 

神通「夜中に大声で喧嘩しないでください、二人共」ニコニコ

 

川・那『アッハイ……』ガクブル

 

ーー華の二水戦旗艦のオーラを遺憾なく発揮し、二人を大人しくさせるのであった。

 

 その後は姉妹仲良く夜通しガールズトークに花を咲かせるのであったーー。




 おまけーー

 その日の昼ーー

神通「ーーということで今回の海上訓練でのご報告を終わります」ケイレイ
提督「うむ、報告ありがとう。今日はもう休むといい」
神通「了解しました」ケイレイ
衣笠(本日秘書艦)「お疲れ様、神通ちゃん♪」
神通「ありがとうございます、衣笠さん」ニコッ

衣笠「それでさ……」
神通「はい?」
衣笠「どうしても気になってるから訊くけど、その酷いクマってどうしたの?」ニガワライ
神通「あぁ……つい夜更かしをしてしまいまして……」ニガワライ

提督「ふむ……今日は神通にとっては色々と思う日だからな。なかなか寝付けなかったのだろう」ナデナデ
神通「あ、いえ……」チク
衣笠「あ〜、今日はそういう……辛かったね」ヨシヨシ
神通「あ、あの……」チクチク
提督「よし、なら特別に私が膝枕をしてやろう。幸い今は急ぎの仕事が無いしな」
衣笠「流石提督♪ やっさし〜♪」
神通「ふぇ〜!? あ、あの……////」

 そして提督はソファーへ移り、自分の膝を叩いて神通を呼んだ。

神通「〜////」ポォー

 眠気と訓練での程良い疲れ、そして自身が恋い焦がれる提督の膝枕……神通はその甘美な誘惑に抗える訳がなく、吸い寄せられる様に提督の膝枕に頭を乗せ、提督の優しい笑顔と絶妙な撫で撫でに為す術もなく眠りに就いた。

 そしてその眠りの中で神通は艦隊みんなと幸せに過ごすという夢を見るのだった……。

 ーーーーーー

今日はコロンバンガラ島沖海戦があった日なので神通さんメインでこの様なお話にしました!

あの夜に沈んだ軽巡洋艦『神通』と英霊達に心からお祈りします。

ではでは、此度も読んで頂き本当にありがとうございました!

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