艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

199 / 330
重巡洋艦メイン。

ちょっと真面目なシーン含みます。


艦これSS百九十六話

 

 ○○鎮守府、○九○○ーー

 

 大広間ーー

 

霧島「榛名、そっちテーブル拭いて。私はこっちのテーブルクロスを洗い場に出して来るから」

榛名「分かったわ」ニコッ

 

金剛「比叡、反対側を支えててくだサ〜イ♪」

比叡「お任せを!」

 

隼鷹「あ"〜、飛鷹〜。何であたしらいつもこんなにこき使われなきゃなんないの〜?」

千歳「そうよ、千代田〜。確かに殆ど私達が飲んだけど、他にも居たわよ〜?」

 

飛鷹「その大半を飲んだのは誰かしら?」ニッコニコ

千代田「自分達は飲むだけ飲んで朝までぐっすりだったのに良く言うわ〜」ニッコニコ

隼・歳『うわぁ〜ん!』

 

 今日は手の空いている者達で昨晩の七夕パーティの後片付けを行っている。

 

 空の酒瓶、床に落ちた食べカス、使った紙皿や割り箸、設置した機材、大広間を彩った七夕飾り等、みんながそれぞれ協力して片付けていく。

 

妙高「」

 

 そして妙高もみんなと同じで後片付けをしに、少し遅れて大広間まで来たのだがーー

 

那智「む、姉さん?」

足柄「妙高姉さん、寝てなくていいの?」

妙高「えぇ、大丈夫よ。心配掛けてごめんなさい」ニコッ

羽黒「妙高姉さん……無理してないですか?」

妙高「大丈夫。ちゃんとお薬も飲んだから」

 

 妙高は昨晩の七夕パーティで隼鷹達、飲兵衛艦達に捕まりいつも以上に飲まされた。

 そして今朝目覚めると、酷い二日酔いになってしまっていた。

 那智と足柄は責任を感じ、妙高に絶対安静を言い渡して後片付けに参加。羽黒は妙高が心配で看護に残っていたが、妙高に気を遣わなくても大丈夫と言われ、後ろ髪を引かれる思いで後片付けへ向かった。

 

 姉妹達が出て行った部屋で一人横になっていると、妙高はまたふと眠りに就いた。

 そこである夢を見た……自分が艦だった頃の夢。

 終戦後、異国の海へ向かい、沈んでいったあの時の夢を……。

 

 そんな夢を見てしまった妙高は、ただ一人で部屋に居るのは耐えられなかった。だからこうして薬を飲んで大広間までやって来たのだ。

 

那智「無理はするなよ?」

足柄「そうよ。私達のせいでもあるし、これ以上悪化したら嫌だもの」

妙高「なら、次からはちゃんと節度を守って飲んでね」ニコッ

那・足『はい……反省します』

 

羽黒「妙高姉さん、どうしてもお手伝いされたいのでしたら、向こうで駆逐艦のみんなが七夕の飾りをまとめてますから、あちらを手伝ってください。あちらならあまり動くことはありませんから」

妙高「ありがとう。なら私はあちらを手伝って来るわね」ニッコリ

 

 こうして妙高はゆっくりと駆逐艦の娘達が作業する場所へ向かった。

 ただ一人で部屋に居るより何かしていた方が気が紛れるから……。

 

 ーー。

 

妙高「みんなおはよう。私もまとめるの手伝うわ」

神風「あ、おはようございます、妙高さん!」

春風「おはようございます。では妙高さんはこちらの袋に輪っかを集めてください」ニコッ

妙高「えぇ、任せて」ニッコリ

 

 妙高は春風に言われた通り、輪っかの飾りを袋へまとめて行った。

 

初風「妙高姉さん、二日酔い大丈夫なの?」

高波「無理しちゃダメ、かもです……」ウルウル

霰「妙高さんはそこから動いちゃダメ」

 

妙高「貴女達……えぇ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう」ナデナデ

初風「べ、別にいいわよ……これくらい普通でしょ////」

高波「えへへ////」

霰「んちゃ////」

妙高「ふふ、でも嬉しいもの」ナデコナデコ

初風「と、取り敢えず、気分が悪くなったらすぐに私でも他の人でもいいから言ってね!////」

妙高「えぇ、分かったわ」ニコッ

高波「失礼します」ペコリ

霰「またね……」ノシ

 

 妙高が笑顔でそう返すと初風は照れ隠しなのか、逃げる様にその場を後にし、高波と霰も妙高に一言言ってから持ち場へ戻った。

 

 そして初風達と入れ違う形で妙高のそばへ立つ者が居たーー

 

高雄「お隣、いいかしら?」ニコッ

妙高「高雄……えぇ、勿論」ニッコリ

 

 高雄だった。高雄が笑顔でそう訊ねると妙高も笑顔で返した。

 

高雄「妙高さんも昨日は飲んだの?」

妙高「はい、恥ずかしながら飲まされちゃって、この様よ……そういえば、『も』ということは高雄も?」

高雄「えぇ、私の場合は自業自得だけどね。昨晩は鳳翔さん達と一緒だったの。それで鳳翔さんと祥鳳さんって酒豪だからつい見栄を張っちゃって」ニガワライ

妙高「あぁ、分かるわ。私も前に経験があるもの」ニガワライ

高雄「ふふ、私達って案外似てますよね」クスクス

妙高「そうね……」フフ

 

 この時、何処か寂しそうな妙高の笑顔に高雄は気が付いた。

 

高雄「差し出がましいことかもしれませんけど……」

妙高「何かしら?」

高雄「その……妙高さんはちゃんと今を生きてるわ。妹さん達も居ますし、初風ちゃん達も、みんなが揃ってます。だからその……思い詰めないで」ニコッ

妙高「高雄……」

高雄「同じネームシップ、しかも四姉妹の長女。そして最期は同じ海域で眠りに就いた者同士。何となく分かっちゃうの」フフフ

妙高「同じく二日酔いでもあるしね」クスクス

高雄「私達らしいわね」クスクス

 

 妙高と高雄は暫く笑いあった。そして妙高は高雄の言葉に深く感謝し、先程までの憂鬱はいつの間にか消えてなくっていた。

 

 今から七十年前の七月八日。この日、イギリス海軍は日本から接収した重巡洋艦『妙高』をマラッカ海峡にて海没処分した。同年十月二十九日には同じく日本から接収した重巡洋艦『高雄』もこれまた同じくマラッカ海峡にて海没処分している。

 

那智「妙高〜!」

愛宕「高雄〜!」

 

妙・高『?』

 

 笑い合っていた時、ふと名前を呼ばれた二人は呼ばれた方へ視線を移す。

 

足柄「提督がお茶淹れて来てくれたわよ〜!」ノシ

摩耶「みんなで一旦休憩にしようぜ〜!」ノシ

 

妙高「那智、足柄、羽黒……」

 

 妹達が自分を呼んでいた。更に妹達だけでなく、他にも自分と高雄を呼ぶ仲間達と提督が笑顔を向けていた。

 

羽黒「妙高姉さん、歩けますか〜?」

鳥海「無理なら持ってきますよ〜?」

 

神風「妙高さん、手貸しましょうか?」

初風「肩でもいいわよ?」

 

妙高「皆さん……」

高雄「行きましょ、みんなが待ってるわ」ニッコリ

妙高「はい♪」

 

 こうして妙高は高雄に背中を押され、神風と初風に手を引いてもらいながら姉妹やみんなが待つところへと歩き出して行った。

 

 その表情は妙高型重巡洋艦のネームシップ、妙高の誇り高いいつも通りの妙高だったーー。




 おまけーー

妙高「お待たせしました」
提督「大丈夫か、妙高?」
妙高「はい。私にはみんながついていますから」ニッコリ

那・足・羽『姉さん……』

高雄「」フフフ
全員『』ニコニコ

提督「そうか……心配は無用のようだな」ナデナデ
妙高「あ、はぅ……て、提督////」
提督「私も妙高が言う『みんな』の中に入っているだろう?」ニカッ
妙高「もぉ……狡いんですから////」
提督「はは、今日くらいは素直に甘えなさい。今の妙高はこうして私達の目の前に立っているのだから」ナデナデ
妙高「はい」ニッコリ

那智「提督が淹れたせいか、いつもより茶が甘いな……」フフ
足柄「姉さんもそんな顔するのね〜」ニヤニヤ
羽黒「姉さん、可愛いです」ニコニコ
全員『』ニヤニヤ

妙高「はっ……て、提督! そ、そろそろ、その……頭を撫でるのは……////」ハワワ
提督「たまにはいいじゃないか」アハハ
妙高「いいですけど良くもないんです〜!////」カァー

全員『あはは♪』

 そして妙高は暫くキラキラ状態が続くのだったーー。

 ーーーーーー

という訳で今回は妙高さんメインで少し真面目なお話にしました。
高雄さんと妙高さんは色んな共通点があって、不思議な縁がありますよね。
私も知った時は驚きました。

では此度も読んで頂き本当にありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。