少し真面目なシーン、独自解釈、独自世界観を含みます。
いつもより少し長めです。
○○鎮守府、一四○○ーー
執務室ーー
提督「ふむ……」
私は悩んでいた。
先の大規模作戦を成功させた功績により大本営から新たな艦娘の着任許可が許された。
しかしその艦娘が私の頭を悩ませた。
アイオワ級戦艦一番艦、アイオワ。
そう……初のアメリカ艦である。
それは喜ばしいことと同時に過去の大戦時に敵国だった艦の着任ということも事実だ。
あの大戦終結から長い年月が過ぎた。
その長い年月が過ぎた今ではアメリカと日本は友好的な関係を築けている。
しかし艦娘である彼女達の記憶の奥底には大戦時の記憶が根強く残っている。
未だにその頃の記憶によるフラッシュバックや夢に苛まれている者達も居る。
そんな彼女達にアメリカ艦であるアイオワの着任は酷なことではないかと思えてならないのだ。
またその一方で私はこうも思っている。
今の日本はアメリカと戦争をしているのではなく、深海棲艦と戦っているのだ。日本だけでなく、全世界が深海棲艦との戦いに全力を尽くしている。
過去のことに固執し、手を取り合うことを拒否するのは間違っている……これも事実なのだ。
提督(どうしたものか……)
コンコンーー
提督「……入りなさい」
ガチャーー
電「失礼します。電、只今参りました」
提督「あぁ、電。よく来てくれたね」
電「司令官さんのお願いなら、電はいつだって参上するのです♪」
提督「頼もしいな」
電「えへへ」ニコニコ
提督「早速だが、相談に乗ってもらえないか?」
私はこのアイオワ着任のことを初期艦であり、ずっと私を支えてきてくれた電に相談しようと彼女を執務室へ呼んだのだ。
本日秘書艦である高雄には席を外してもらった上で。
電「あの……もしかして、アイオワさんのことですか?」
提督「……何故そのことを?」
電「青葉さんの情報収集によってもう既に判明しているのです。艦隊の皆さんももう知っていますよ」ニコッ
提督「そ、そうか……」
(流石は青葉だな……)
提督「それなら話が早い。電はアイオワ着任をどう思っているか聞かせてほしい」
電「なのです」ニコッ
私とは対照的に明るく返事をした電はゆっくりと口を開いた。
電「その前にこれから言うことなのですが……これは電だけの思いでなく、艦隊の皆さんの思いとして聞いてほしいのです」
提督「……分かった」
電「アイオワさんの着任、大歓迎なのです♪」
提督「本当か? みんながそう思っていると受け止めていいのか?」
電「なのです♪」
私の問い掛けに先程と同じく明るく答えた電。
そして電は更に続けた。
電「確かに電達が艦だった頃……アイオワさんの国とは敵同士でした。そのためアメリカ軍との海戦等で沈んだ方達も居るのは事実なのです」
電「でも、あの戦争が終わったのも事実のです。未だに艦だった頃の記憶を皆さんが持っています。でもでも、それを理由に力を貸してくれるアイオワさんを拒んだり嫌ったりする理由にはならないのです」
電「当時の電達、そしてアイオワさん達はそれぞれ自分の国のため、自分の国に暮らす国民のために戦ったのです。でも今は深海棲艦と戦争をしているのです。みんなで力を合わせなくてはいけないのです」
電「ですから……その、えっと……」
言葉を詰まらせる電。きっともっと沢山言いたいことがあるのだろう。それでも私の迷いを断ち切るのに、もうこれ以上の言葉は不要だった。
提督「ありがとう、電。皆の気持ち、しかと受け止めた。私はもう迷わない」
電「司令官さん……」
提督「私は考えていた。アイオワ……大戦当時は敵だった国の艦娘を着任させることで、皆の心を苦しめる結果になるのではないかと……遠路遥々着任してくれたアイオワに嫌な思いをさせるのではないかと……」
電「司令官さんは昔から優しいのです」ニコッ
提督「優しい、のか?」
電「なのです♪ いつも電達のことを第一に考えてくれますし、今も電達だけではなくてアイオワさんのことも考えてくれます♪」
提督「優柔不断なだけだ……」
電「む……そういう素直じゃないところも昔からなのです」ジトッ
提督「す、すまない……」
電「電達は大丈夫なのです」
提督「電……」
電「終わったことをいつまでも引きずっていたら前を向けないのです! 前を向かないと暁の水平線は見えないのです! 電達はその暁の水平線に勝利を刻むことが指名なのです!」
提督「そうか……そうだな」ニコッ
電「やっといつもの司令官さんの素敵な笑顔に戻ってくれたのです♪ 電は嬉しいのです♪」
提督「はは、やはり電には敵わないな」
電「初期艦は伊達ではないのです!」エッヘン
提督「電様様だな」アハハ
電「なのです♪」
提督「これで何の躊躇いも無く書類に確認済みのサインが書ける。やはり電は私にとってなくてはならない存在だ」
電「そ、そんな……嬉しいですけど、恥ずかしいよぅ////」ドキドキ
(それにそんなこと言われたら期待しちゃうのです////)
提督「何も恥ずかしがる必要はないだろう? 私と電の仲なのだからな」ニッ
電「な、なのです////」キュンキュン
提督「本当に電に相談して良かった。今度何かお礼をしなくてはな」
電「そんな! 電は何もしてないのです! 気にしないでください!」
提督「それでは私の気が済まないんだ。私に出来ることなら何でもいいぞ?」
電「……でしたら////」モジモジ
提督「?」
電「でしたら、司令官さんのお膝の上に座らせてほしい、です////」カァー
提督「お安い御用だ、おいで」ニカッ
電「し、失礼します////」オズオズ
電は頬をほのかに赤くしながら、背中を私の方に向けてゆっくりと私の膝の上に座った。
提督「座り心地はどうかな?」
電「とても……安心するのです♡////」ハフー
提督「それは良かった」ニッ
電「えへへ♡////」
提督「他には何もないのか? 遠慮する必要ないんだぞ?」
電「じゃ、じゃあ、このまま頭を撫で撫でしてほしいのです♡////」
提督「あぁ、いいとも」ナデナデ
電「はにゃ〜♡////」トローン
私は電の頭を優しく撫でた。すると電は恍惚の表情を浮かべ、まるで猫が甘える時に出すような声をもらした。
思えばこんな風に甘やかせてあげるのも随分前のことのように感じる。
よくよく考えてみれば、電は初期艦とは言え普通の女の子であれば甘えたい盛りだ。
提督(これまで甘えさせてやれなかった分、今は存分に甘やかしてやろう)
そう考えた私は電がいいと言うまで彼女を膝に乗せて頭を撫でてあげようと決めた。
提督「」ニコニコ
電(とっても幸せなのですぅ〜♡)
電「司令官さ〜ん♡////」ハニャーン
提督「これからもよろしく頼むな、電」ナデナデ
電「こちらこそ、なのです♡////」ニパー
執務室外、ドアの前ーー
高雄(いいなぁ、電ちゃん……////)コソッ
↑話が終わった頃合いと思って戻ってきた。
愛宕(今度私もお願いしようかしら////)コソッ
摩耶(気持ち良さそうだなぁ////)コソッ
↑提督に会うために手伝いに来た。
鳥海「」ニガワライ
↑愛宕と摩耶に強制連行された。
それから約一時間後、執務室から出て来た電は見たことがないくらいキラキラ輝いていたと艦隊の全員が口を揃えて言っていたいう。
今回は少し真面目なお話にしました。
アイオワさんをどう話に組み込むか悩みましたが、やはりこういうお話を挟んでおいた方がいいと思い、今回のお話を書きました!
不快に思われた方が居ましたら、申し訳ありませんでした。
これも一つ物語として受け取ってくださるよう、ご了承お願い致します。
今回も読んで頂き本当にありがとうございました!