艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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重巡洋艦メイン。


艦これSS百六十八話

 

 ○○鎮守府、一七○○過ぎーー

 

 埠頭ーー

 

提督「皆、本日の出撃ご苦労だった。これにて本日の出撃任務は終了とする。各自ドックへ行って身体を癒した後、補給をしてくれ……以上、解散!」

連合艦隊『はっ!』

 

 私の言葉で連合艦隊のみんなはそれぞれドックへ向かっていく。

 先日から大規模作戦海域の攻略を再開した我が艦隊だが、やはり敵の戦力がこれまでの海域とは桁が違う。

 その証拠に中破、大破する者が後を絶たない。

 

提督(これ以上は誰かを失うかもしれない……)

 

 私は誰かを失ってまで勝利を手にしたいとは思わない。全員が生きてこその勝利だと思うからだ。

 

提督「」ガサゴソ

 

 胸ポケットに入れておいた煙草の箱を取り、中から煙草を取り出しそれを口にくわえた。そして愛用のジッポライターをズボンのポケットから出して火を付けた。

 

提督「すぅ〜……ふぅ〜……」

 

 煙草を吹かし、夕焼け色に染まった海を眺める。

 

提督(綺麗な空と海だ……)

 

 先程までこの夕焼け色の元で戦闘してたとは思えない程の美しさだった。

 

「司令官さん」

 

提督「?」クルッ

 

 背後から声をかけられ声のした方へ視線を移すと、そこには本日の秘書艦である羽黒が立っていた。

 

提督「おぉ、羽黒。お疲れ様」

羽黒「司令官さんこそ、お疲れ様です」ペコリ

提督「ありがとう……それで、何かあったか?」

羽黒「はい……司令官さん達が出撃していた間に大淀さんが大本営から重要書類を預かったそうで……その書類のご確認をお願いします」

提督「ふむ……そうか。わざわざありがとう、では一緒に執務室へ行くか」

羽黒「あっ……おタバコが終わってからでも……」

提督「……ならお言葉に甘えよう」ニカッ

羽黒「はい♪」ニッコリ

 

 それから煙草を吸い終え、吸い殻を携帯灰皿にちゃんとしまった後、私は羽黒と執務室へ向かった。

 

 

 執務室ーー

 

提督「では、早速その書類とやらを確認しよう。書類はどれかな?」

羽黒「はい……こちらになります」つ封筒

提督「ん、ありがとう」

 

 羽黒から重要書類が入った封筒を預かった私はすぐに目を通した。

 

提督「…………」

羽黒「」ドキドキ

提督「……羽黒」

羽黒「は、はい!」

提督「そんなに緊張して見つめられると読み難いのだが……」

羽黒「え、す、すす、すみません! わわ、私、お茶お茶、お茶を淹れて来ますね!」ハワワ

提督「落ち着いて行って来なさい」ニガワライ

羽黒「は、はひ!」

 

 羽黒が少し慌てた様子で執務室から出るのを見送ってから、私はもう一度重要書類の確認をした。

 

提督(ふむ……そうか……)

 

 確認した後すぐにその書類へ確認済みのサインをした私は羽黒の帰りを待ちつつ、同封されていた資料も確認した。

 

 ーー。

 

 ガチャーー

 

羽黒「お、お茶を淹れて来ました……」

 

提督「あぁ、ありがとう。戻ってきたばかりで悪いんだが、足柄を呼んでくれ」

羽黒「はい、今連絡します」

 

 羽黒は私の机にお茶を置いた後、通信機(スマホ)で足柄に連絡をした。

 するとほんの数分で執務室の外から走ってくる音が聞こえてきた。

 

 バーーン!

 

足柄「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ〜ン♪ 足柄、只今参りました〜!」

 

羽黒「」ニガワライ

提督「はっはっは、相変わらず元気がいいな足柄」

足柄「ふふ〜ん♪ それが私のいい所だもの♪ それで私に何の御用かしら? 久し振りに足柄特製スペシャルカツカレーでも食べたくなった?」

提督「すまないがそういう話ではないんだ。カツカレーはまたの機会に頼むよ」ニガワライ

足柄「あら、残念だわ〜」

羽黒「私は席を外しましょうか?」

提督「いや、羽黒にも関係しているから足柄と共に聞いてほしい」

羽黒「了解しました」

 

提督「実はな、先程の書類で二名の艦娘が着任することになった」

羽黒「わぁ、また仲間が増えるんですね!」

足柄「いいじゃない♪ 誰が着任するの?」

提督「神風型駆逐艦、一番艦の神風とその三番艦の春風だ」

羽黒「神風ちゃんと春風ちゃんが……」

足柄「久し振りね〜♪ 会ったらカツカレーご馳走しなきゃ♪」

羽黒「うん……早く、会いたいな」

提督「足柄、羽黒……二人が着任した時の面倒を君達に任せたいと思っているんだが、どうだろう?」

足柄「私は勿論オッケーよ♪」

羽黒「はい、お任せください!」

提督「うむ……ではそういうことで頼む」

足・羽『はい!』

 

 話を終えると足柄は鼻歌を歌いながら足取り軽く執務室を後にしていった。

 そして私は残った羽黒に声をかけた。

 

提督「羽黒、少しいいかな?」

羽黒「? はい……」

提督「送られてきた封筒の中に二人が艦だった頃の資料……艦歴が入っていた」

羽黒「そう、ですか……」

提督「羽黒の艦歴にも同じことが書かれていたが、神風とは深い関係だったな」

羽黒「はい……」

提督「これは前にも言ったことだが……」

羽黒「?」

提督「今度は私がお前達を守る。だから誰かを守る為に自分を犠牲にしないでほしい」

羽黒「司令官さん……」

 

提督「神風もせっかく艦娘として生まれ変わったんだ。今度こそ……何度でも神風と共に帰還してくれ」

羽黒「はい……ありがとう、ございます……」

提督「これからも頼りにしているぞ、羽黒」ナデナデ

羽黒「はい……頑張ります!」

提督「うむ」ニカッ

 

 それから私と羽黒は残った執務仕事を済まし、本日の業務を終えた。

 

 艦娘である彼女達の記憶には艦だった頃の記憶も受け継がれている。それがどんなに辛く、苦しい過去でも……。

 

 そんな過去の記憶にも負けず、艦だった頃と変わりなく人々を守り、懸命に生きている彼女達を提督である私が守らねばならない。

 

 私は改めてその気持ちを胸に、明日からの艦隊運用のことを考えながら今日を終えるのだった。




今回は少し真面目な回だったかも?
もう少しでイベも終わりですね〜。
イベに参加している提督の読者の皆様、頑張って参りましょう!

今回も読んで頂き本当にありがとうございました!

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