艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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正規空母メイン。


艦これSS十一話

 

 ○○鎮守府、一四○○ーー

 

 鎮守府本館内・廊下ーー

 

赤城「私達にお呼びが掛かるなんて何かしら?」

加賀「多分、大規模作戦のお話なのではないかしら」

蒼龍「今回は正規空母がメインなのかな?」

飛龍「そうかも。でなきゃ、私達全員を呼ぶことなんてないもの」

 

 そう話すのは正規空母でニ航戦の蒼龍と飛龍。

 赤城、加賀に次いで空母を代表する艦娘である。

 

瑞鶴「でもそれなら、私達は呼ばれないんじゃ……?」

翔鶴「えぇ、私達はまだ実戦投入されて日が浅いですから……」

 

 そう言うのは五航戦で正規空母の翔鶴型姉妹の翔鶴と瑞鶴。

 鎮守府に来て日が浅いが、加賀や赤城達の訓練のお陰で既に頭角を現している。

 

加賀「浅くても貴女達を戦力と考えるのは普通のことよ」

赤城「私達から見ても十分活躍出来ると思いますし、大丈夫よ」

二人『はい……!』

 

 そして、執務室の前まで来た。

 

加賀「では、皆さん良いですか?」

全員『(コクリ)』

 

 それを確認して加賀がドアをノックしようとしたその時ーー

 

提督『加賀美人だな……』

加賀「…………え?」

全員『(…………えぇ!?)』

 

 突如、執務室の中から提督の声でそんな言葉を耳にした空母達は自分達の耳を疑った。

 

加賀「………………」シコウテイシ

赤城「あ、あの……加賀さん?」オソルオソル

加賀「……はっ!? そう、これは夢ね。ごめんなさい、皆さん。疲れは感じていないのだけれど、無意識に寝てしまうほど疲れていたみたいだわ」

蒼龍「いや、私達も確かに『加賀、美人だな』って聞こえましたよ? ね?」

 

 蒼龍が他のみんなに訊ねると、他のみんなも「うんうん」と頷いた。

 それを見て加賀は耳まで真っ赤にした。

 

赤城「か、加賀さん!?」

翔鶴「と、とりあえず中に入って確かめませんか?」

加賀「だ、駄目よ……今のこの状況で、て、てて、提督の顔なんて見れないわ……」

飛龍「で、でもだからと言って、ここで立ち止まってるのも……」

瑞鶴「そ、そうよ! それに早く入らないと、提督さんを待たせちゃうわよ」

 

 こうしてドアの前で立ち往生していると、またも提督の声が聞こえた。

 

提督『だから加賀美人だよ。それは譲れないな。私の一番のお気に入りだ』

 

 今度は先程よりもはっきりと聞こえた。

 

加賀「……………………ふふ」

 

 パタリ……

 

赤城「加賀さぁ〜ん!!?」

飛龍「は、早く部屋へ運ばないと!」

瑞鶴「じゃ、じゃあ、私が! 翔鶴姉手伝って!」

翔鶴「えぇ!」

蒼龍「私は提督にこのことを知らせて来ます!」

 

 ガチャーー

 

提督「何を騒いで……加賀!? どうした、何があったんだ!?」ダキカカエ

加賀「う……うん……?」

提督「加賀! しっかりしろ! 加賀!」

加賀「てい、と、く……提督っ!?////」ボンッ

 

 パタリ……

 

全員『加賀(さん)ーーー!』

 

 完全に気を失った加賀を部屋に運び、私は赤城を加賀の看病に残し、あとの者達を連れて執務室へ戻った。

 

提督「で、何があったか話してもらえないか?」

蒼龍「え、えーと……」メソラシ

飛龍「その~……」メソラシ

翔鶴「なんと言いますか……」メソラシ

瑞鶴「あぁもう! 提督さんのせいよっ!」ビシッ

提督「なん……だと?」ガーン

 

 瑞鶴の言葉は私の胸に心に凄まじい衝撃を与えた。

 

提督「ほ、本当なのか、みんな……?」

四人『(コクリ)』

提督「…………そうか。では、腹を切って詫びねばなるまい」スチャつ刀

蒼龍「ちょ、ちょっと提督!?」

飛龍「重く受け止め過ぎですよ!」

翔鶴「お止めください!」

瑞鶴「それはやり過ぎよ!」

提督「離してくれ……! これは私のケジメなのだ! 倒れるほどに加賀を酷使した自分への処罰なのだ!」

四人『だからってそれはダメーーー!』

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

翔鶴「落ち着きましたか、提督?」

提督「あぁ……」ズーン

瑞鶴「念のため刀は預かるからね」

提督「あぁ……」ズズーン

蒼龍「切腹なんてしたら加賀さんやみんなが悲しみます!」

飛龍「私達だって悲しみます! そもそも、提督が居なくなったらこの鎮守府はどうなるんですか!」

提督「あぁ……」チーン

 

 すると赤城が執務室に姿を現した。

 

赤城「……提督?」

提督「っ!?」ビク

赤城「? どうかされましたか?」

提督「い、いや、何でもない。それより、君がここに来たと言うことは……」

赤城「はい、加賀さんが目を覚ましましたので、お知らせに」

提督「そ、そうか。分かった。では……」スクッ

赤城「提督?」

提督「私のせいで加賀があぁなってしまったのだ。私は加賀に謝りに行く」

赤城「え? え?」

提督「では、私は加賀の所に向かう。みんなすまなかった」

 

 ガチャ、パタンーー

 

赤城「……どういうこと?」

蒼龍「それは……」チラ

飛龍「かくかくしかじか」

赤城「まるまるうまうま、と……。そんなことがあったのね……」

瑞鶴「わ、私が言葉足らずだったから……」

赤城「でも、これは加賀さんの為かもしれないわ」

四人『え?』

 

赤城「提督が加賀さんに勘違いの謝罪をする→加賀さんは意味が分からず事情を訊ねる→提督が説明する→加賀さんに違うと言われる→ならば倒れた理由を提督が訊ねる→加賀さんが赤面しながら理由を話す→後は分かるわね?」ニコ

蒼龍「告白タイムですね、分かります!」ワクワク

飛龍「そして、加賀さんとケッコンカッコカリですね!」ワクワク

 

赤城「提督を加賀さんに取られるのは悔しいけど、加賀さんなら納得出来るわ」

翔鶴「そ、そうですね。それに、ケッコンしたからと言って加賀さんだけと接する訳ではないですし……」

瑞鶴「頑張ればジュウコンカッコカリも出来ますよね!」

赤城「そう! それで私達はまるまるうまうまな関係になるんです!」

瑞・翔『おぉ!』パチパチ

蒼・飛『(あ、この三人はLOVE勢だったか……)』

赤城(加賀さん、頑張ってね! 私達の為にも!)

 

 その頃ーー

 提督は加賀と赤城の部屋の前に居た。

 

提督(今は加賀一人……謝るなら今しかない!)

 

 コンコンーー

 

加賀『はい』

提督「私だ。君の顔を見て話がしたい。入っても良いか?」

加賀『て、提督!? は、はい』

提督「失礼する」

  (かなり声が裏返っているな。そこまで私を恐れているのか……)

  (しかし、だからこそ誠意を持って謝るんだ!)

 

 ガチャーー

 

提督「寝たままで構わない……体調はどうだ?」

加賀「え、えぇ……問題ありません」

提督「そうか……」

  (布団を被ってしまっているな。それほど私の顔を見るのが嫌なのか……)

加賀(提督の顔を直視できないわ……////)

 

 沈黙が部屋に漂う。

 

提督「そのままで良い、聞いてくれ」

加賀「は、はい////」

提督「加賀、私はいつも君に頼りっぱなしだった。執務、出撃、訓練、どれをやらせても君は難なくこなし素晴らしい結果を私に示してくれた」

加賀「も、勿体無いお言葉です////」

  (どうして、いきなりそんなことを?////)

提督「私は知らず知らずの内に加賀なら大丈夫だと信じ込んでいたんだろう」

加賀「え……?」

提督「私のせいで加賀を倒れるほどにまで追い詰めていた。私の顔を見たくないから、その布団を取らないのだろう?」

加賀「そ、そんな!?」グッ

提督「いや、分かっている。無理に布団を取らなくて良い。これも私が招いた結果だと、真摯に受け止める」

加賀「あ、あの……」

 

提督「すまなかった! 加賀、君が倒れるまで君の疲れを見抜けなかった! 本当に申し訳なかった!」フカブカ

加賀「え? え?」

提督「これが今私に出来る精一杯の謝罪だ。もちろんこれで満足出来ないのなら、煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わない。君の気が済むなら、私はこの命をーー」

加賀「提督!」ガバッ

 

 私の謝罪の言葉を遮り、加賀が布団から体を起こした。

 

提督「ど、どうした?」

加賀「それはこちらの台詞よ。一体何なのかしら、今の謝罪は?」

提督「いや、だから……加賀を追い詰めていた私の行いをだな……」

加賀「私は至って健康です。どんなに激務でもちゃんとお休みは貰ってますし、いつも快く仕事をさせてもらっているわ」

提督「? では、何故あんなに顔を赤くして倒れたりしたんだ?」

加賀「そ、それは……////」ボン

提督「私のせいではないなら、尚更説明してくれ。加賀の力になりたいんだ」ジッ

加賀「あなたは意地悪ね……知っているくせに////」

提督「話が読めないんだが……」

 

 また沈黙が二人を包んだ。

 

加賀「て、提督が……わ、私のことを、その……び、びび、美人だと言ったから……////」ウツムキ

提督「私が……? いつだ?」

加賀「私が倒れる前、私達正規空母を執務室に呼んだ時よ……////」ドキドキ

提督「昼過ぎ…………あ。あれを聞いていたのか?」

加賀「~~////」コクコク

提督「そ、そうか……」

  (ど、どうすれば……)

 

 時はお昼過ぎまで遡るーー

 

提督『さて、次の海域攻略は空母が鍵になる。それを皆と相談せねばな……』

 

 Prrrrr……Prrrrr……

 

提督『もしもし……あぁ、久しぶりだな。どうしたんだ?』

 

提督『甘口の日本酒で好きな物……?』

 

 ここからが加賀達が聞いた所。

 

提督『加賀美人だな』

 

提督『あぁ、あぁ……いや、だから加賀美人だよ。それは譲れないな。私の一番のお気に入りだ』

 

 \ワーカガサン!! シッカリー!/

 

提督『ん? どうやらみんな来たみたいだ。また連絡する。ではな』

 

 そして、現在ーー

 

提督(なんて具合の話だったんだが……)

加賀「提督?」ウワメズカイクビカシゲ

提督(本人に言うべきか……)

加賀「っ////」チラチラ

提督(しかし、加賀が美人なのは周知の事実……ならば……)

 

提督「あ、あぁ、恥ずかしいな。まさか聞かれているとは思わなくてな」

  (すまない、加賀!)

加賀「っ!? で、では、本当に私のことを?////」

提督「あぁ、美人だと思っている」カワイタエガオ

 

◆加賀eyes

提督『あぁ、美人だと思っている』キラーン

 

加賀「と、とても嬉しく思います////」プシュー

提督「そうか。しかし、それで倒れるとは加賀も可愛い所があるんだな」ナデナデ

 

◆加賀eyes

提督『なんて可愛いんだ。私を虜にしてどうする気なのかな?』キラキラ

 

加賀「赤城さん……貴女が無事なら……」パタリ

提督「お、おい! 加賀! 加賀ーー!」

 

 その後、提督は加賀に本当の事を言えず、加賀はそれ以来笑顔が増えたと言うーー。




読んでくれて本当にありがとうございました!

今回は私の好きな日本酒のネタを混ぜてみました。
甘口の日本酒でとても美味しいです。
日本酒好きで二十歳以上の方は是非ご賞味あれ!

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