やっちゃおう、バーサーカー!! 作:ヘッラクレッス
いや、めんどくさかったとかじゃないですよ?
FGOがイベントやるもんだからつい、ね?
彼、蛭子影胤は思考をフルに活動させ考える。今私たちが戦っている者は何者だと。
銃というのは対人戦において、しかるべき距離で使用すれば最強の武器だといえる。銃弾の速度は音速の域にまで到達しており、さらに銃によってはさらにその上を行く速度で飛ぶのだ。とても人間なんかでは反応できないし、対処など無理だろう。
だが、この男にはこれが効かない。
別段特殊な対処方法をとられているわけでもなければ、銃弾が当たっていないわけでもない。
いったいどんなカラクリがあるのかは知らないが、非常に厄介である。
ならば、と影胤は接近戦に切り替える。接近戦では圧倒的な強さを誇る小比奈も交えて多彩な攻撃を仕掛けることができる。これは大きなアドバンテージだ。相手のイニシエーターであろう少女は一向に戦闘に参加する様子はない。つまり1対2の状況だ。実力が未知数である相手に何の算段もなしに戦闘を仕掛けるのは無用心であるが、この状況なら撃破は可能なはずだ。
しかし、その思惑は次の瞬間崩されることになった。
「ッ!」
陽動を仕掛けるはずの小比奈が一瞬のうちに吹き飛ばされた。
接近戦では今まで負けなしであったはずの小比奈がだ。
ここで攻めるのは悪手だと理解した影胤はすぐさま飛びのこうとする。しかし
「■■■■■■■■ーーー!」
引くことが許されることはなかった。
男が恐るべきスピードでこちらへ向かって駆けてきたからだ。
影胤からしてみるとこれは完全に隙を突かれたことになる。
迎撃しようにも今の状態ではなすすべがない。
だが、こんなところでまんまと倒されてしまうわけにはいかない。
影胤は瞬時にできうる対抗策を導き出す。
「マキシマムペインッ!」
それは2つの物体間で互いを離すように作用する力、斥力を利用して自分の身を守る最強の盾を膨張させ、周りのものを押しつぶすことも可能とする技だ。この力の前では弾丸さえも彼を傷つけることはできない。
青白いフィールドが広がり攻撃を防ぐために男へと迫る。だが、男はそれがどうしたと言わんばかりにさらに距離をを詰め腕を振るう。
そして男の攻撃と激突した。
その瞬間影胤が大きく後ろへと飛ばされた。
木を多数折りつつ派手に転びながらしばらくして岩へと叩くつけられようやく止まる。
「な..に...?」
影胤は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
今使用したのは絶対の防御力を誇る盾のはずだ。余程の威力の攻撃を与えられない限りはダメージどころか衝撃さえまでも吸収することができる。
そう、普通ならただの人間なんかの攻撃をいなせないはずがないのだ。
そのはずなのに容易く破られてしまった。
その事実は彼らを怯ませるのには十分だった。
「バーサーカー」
一言、少女が男の名?を呼ぶと男は一気に後退し蓮太郎と延珠を抱えあげ少女の下へと舞い戻る。
「本当なら今すぐにでもあなたを倒しておいたほうがいいんだけど、彼、早くしないと死んじゃいそうだから今回は見逃してあげるわ。バイバイ」
そういい残して少女と男は去っていった。
彼、蛭子影胤は自分たちの実力がいかに高いかなど自負しているつもりである。しかし、今の戦闘が続いていたのなら命がなくなってしまうのは確実であった。
あの見ず知らずの男はそれほどまでの相手だったのだ。
「やれやれ、面倒なことにならなければいいのだがね」
今回の計画で障害として数えていたのは蓮太郎ただ一人であった。
しかし、今の男までもがこちらの邪魔をしようものなら、正直いうと今回の計画は早々に破棄したほうがよいレベルだ。
それでも蛭子影胤は動き出す。
幸いにもケースは今こちらの手元にある。これさえあれば計画の実行自体は問題ではない。
"戦争にて我らに価値を"そのためならどんなことでもしようじゃないか。
影胤は気絶した小比奈を拾い上げ一人森を進む。
計画を続行するために。
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連太郎は目を覚ますと、まずは自分がベッドに寝かされていることをまだ覚醒しきっていない頭ながらに理解した。そして、次に現状を理解しようと目の前の人物に話しかける。
「よう、木更さん。俺はどのくらい寝てたんだ?」
「丸一日と少しよ。治療にも、ものすごく時間が掛かったんだから。それに、もしあの人たちが連れてきてくれなかったら命があったかどうかも危うかったのよ?まあ、それでもしっかりと生きていてくれたのは、偉いと思うわよ」
そこで蓮太郎はふとひっかかる箇所があったのをすぐさま尋ねた。
「あの人って誰だよ?」
「え?里見君たちの危ないところを助けてくれたって延珠ちゃんが言ってたんだけど、里見君は見てないの?」
「あぁ~そういえば気絶する前に延珠をかばってくれた人がいたような・・・・」
よく思い返してみると確かにいたような気がする。
結構大きな人だったような...?
「ってかここにはいないのか?」
「ええ、里見君たちを連れてきてからすぐにどこかへ行ってしまったわ」
「・・・・・礼の一つでもしたかったな」
次にあったときは何かお礼をしようと蓮太郎は誓ったのだった。
「で、延珠はどこに?」
「ここだっ!」
「うおっ!?」
隣から急に出てきた延珠に蓮太郎は大いに驚く。
そんな賑やかな病室の雰囲気も長くは続かない。
蓮太郎はこの後蛭子影胤のIP序列を知り、ケースの中身を知り、ステージⅤが関係することも聞き、東京エリアを守るために戦うことを決意するのだった。
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暗い森の中、今はもう誰も利用することのない廃墟と表現するのが正しい建物の中に二人の姿はあった。
まず見えるのは男の方。少女のすぐ横で動きを見せないその男は大きな体を持ち、その筋骨隆々とした姿は見る者に男の実力がどれほどのものか悟らせるようであった。
次に見えるのは少女。大人びた雰囲気を持ってはいるが年齢的にはまだ10といったところの少女である。少し大き目のベッドに寝転びリラックスしている姿は年相応のあどけなさが感じられる。
この建物は少し前に彼女たちが発見したもので、見た目ほどボロくはなさそうだったから使っているものだ。
現在彼女らは今日動き回って疲れた体を休めるためにここにいた。男のほうはどういうわけかいくら活動しようと疲れることは無いが、少女は違う。
普通の人間とは違う特殊な体質をしてはいるが疲れるものは疲れるのだ。
行動し続けようと思えばできるが、いつ動くことになるかわからないため、休めるときに休む、を心掛けている。
「今日はおもしろい人たちと会ったね」
そう少女は傍らの男に話しかけた。
しかし、男がその言葉に返事をすることはない。
なぜかわからないが出会ってから今に至るまでに男が言葉を発したことはない。
だから、少女はそのことを特に気にせずさらに話しかける。
「イニシエーターの子たちもなかなかだったけど、あのパートナーはもっとおもしろそうな体をしてたでしょう?
ふふ、あれはなんなのかしら」
少女が知るところではないが蛭子影胤は強者である。その実力は「元」がつきはするがあのガストレアを打倒できる幾万の猛者の中でも特に異常とされる位階にあわや足を突っ込もうかという百三十四位である。
だが少女はさもおもしろそうに今日であった男――――蛭子影胤のことを考えていた。
普通の人間がもし蛭子影胤と戦ったなら殺される、或いは生き残ったとしてもその実力の次元の違いに武器を取るのをやめてしまうかもしれない。
―――なら少女の余裕はどこから来るのか?
それはひとえに彼女の従者の実力にあった。
鋼の肉体はあらゆる攻撃を無効化し、岩のような腕から振るわれる一撃は全てをなぎ払い、その存在は少女に際限のない安心感を与えてくれる。
彼は、絶対に負けない。
その気持ちがある限り少女は何者にも怖気づくことなく、屈することもないだろう。
その後しばらく話した後少女は眠りに付いた。
通常の人とは違うがやはり幾分か疲れが溜まっていたようだ。
今まで喋り続けていた少女が眠ってしまったことでこの場所に一時の静寂が訪れる。
そんな中でも男は変わらず、ただ少女のすぐそばに立っていた。
その姿はまるで、
―――いとしき我が子を慈愛の目で見る父親のようであり、
儚い夢を掴み取ろうとする哀れなヒトのようだった。
彼がこの地に呼ばれた理由は誰にもわからない。
だが彼はかすかに残る理性で決意を固める。
この小さきものを守り通す。
彼の表情は変わらないし、その口からは言葉も発されない。
だがその裏には固く、何よりも固い意思があった。
バサクレスが神秘も何もない人と戦ったら戦闘も何もないと思うんだ(確信)