IF GOD - 神は斜陽に打ち震える - 完   作:鈴木_

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18 A‐N interval

「いよいよ来週から因縁の本因坊戦か」

 

手合いの打ちかけで昼食を食べ終えた休憩時間、緒方は休憩室で出前の掛けそばを食べたがアキラは昔からの習慣で昼食を取らずにお茶一杯だけ机に置いて、畳まれた囲碁新聞の表紙をただじっと見降ろしていた。

表紙は左右に分かれて対局中のヒカルと桑原の姿が映され、見出しは大きく『迫る本因坊戦』である。

 

「進藤との年齢差を考えれば体力的にキツイものがあるが、しかし桑原の爺もいい加減本因坊に居座ってきた鬼だからな」

 

過去に何度か桑原と対局した経験がある緒方は、その対局のことを苦々しく思い返す。棋力だけで考えれば決して劣っているわけではなく、若さという勢いもあった。しかし勝てなかった。

桑原お得意の盤外戦にまんまと嵌められて、小さなミスを桑原に待ってましたとばかりに突かれてしまった。

その隣で、

 

「進藤は勝ちますよ。必ず」

 

アキラは断言する。

 

「桑原先生は鬼かもしれない。けど人が本物の鬼に叶うわけがない」

 

「鬼?どういう意味だ?」

 

アキラの言葉の真意を測りかねて緒方がその意味を尋ねるがアキラは答えることなく、じっと新聞のヒカルを眺め、

 

――鬼が本気で本因坊を狙ってる

 

ヒカルの中にヒカルが2人いると確信し、今ヒカルとして打っているのが本当はsaiであると分かってしまえば、新聞に映ったヒカルは姿形だけそっくりな全くの別人にしかアキラには見えない。

 

「進藤はsaiだけどsaiじゃなかった。saiを隠そうとしたお父さんの判断は正しかったんです」

 

「先生が言っていた意味が君はわかったのか!?」

 

意味深で不可解な行洋の謎かけ、そしてヒカルの隠された真実へ繋がるヒントだったのだろうが、結局緒方はその謎を解くことが出来なかった。それをアキラが解いたのかと目を見開く。

『light』がヒカルなのか。アキラがlightと直接対局出来たことは緒方も知っているしその対局棋譜も手に入れたが、肝心のアキラは何も言うことはなく、前に言っていた通りネット碁に入り浸るのをやめたため緒方もそれ以上追及することはなかった。

 

 

だが、ここは棋院の休憩室で部屋にいるのは緒方とアキラだけではない。少し離れた位置に棋士たちがそれぞれ休憩を取っており、突然大声を上げた緒方に何事かと振りむく。

その注目に気づいてはっと我にかえった緒方がしまったと口元を抑えたところで、アキラは冷静さを保ったまま静かな声で

 

「でも、愚かだった……。守ろうとしたものをお父さんは最後まで守りきれず、鬼が表に出てきてしまった」

 

そうして本当に守ろうとしたヒカルは闇に沈んだ。

 

 

 

 

一人暮らしをしている和谷の家に、院生時代の仲間とプロになったばかりの若手棋士たちで集まる研究会。未成年の多い院生だと平日は学校があり、プロは手合がある。集まれるのは自然と休日に限られる中、研究スペース提供者の和谷の仕事や用事が入っていない日に、皆が集まる形となる。

 

「う~ん」

 

すでに和谷のアパートに一番乗りして、皆を待つ間、パソコンで囲碁関係のネットニュース記事を読んでいたフクが珍しく神妙な唸り声をあげる。まだ研究会の約束時間までまだ少し余裕があり、部屋には家主の和谷を含めて数人いる程度だ。

その中で近くにいた奈瀬がフクの声に気づき、

 

「どうしたのよ、フク。唸っちゃって。そんなに面白い詰碁でも載ってた?」

 

囲碁関係のネットニュース記事下にはオマケのように詰碁が載っていることが珍しくない。だから一瞬、詰碁が解けなくてフクが悩んでいるのかと考えたのだが、

 

「記事っていうかこの写真、進藤くんっていつも扇子なんて持ってたっけ?」

 

ホラ、とディスプレイに映された画像をフクは指さす。そこには対局中の様子ではなく、扇子を持ち対局相手のいない盤面と向き合うヒカルの横顔が映されていた。

 

「ほんとだ。扇子持ってる」

 

フクの言う通り、院生時代からヒカルを知っている奈瀬もヒカルが扇子を持っているところを見たことは一度もない。

写真に写っているヒカルは、ベージュがかったオフホワイトのパーカにGパン姿で、片膝だけ立ててその上に顎を乗せる形で一手も打たれていない盤上をじっと見つめていた。それだけならプライベートを取った一枚なのだろうと流していただろうが、扇の持ち手を右手で逆手に持ち、その上に左手を乗せている光景から目が離せなくなる。

 

「進藤くんが扇子?似合わないような、どうも想像できないな」

 

「……そうかしら、この服装に扇子だから絶対不似合いな筈なんだけど……でもすごく様になってると思うわ」

 

ははは、と皆が集まるまでと本を読みながら苦笑する門脇に、奈瀬がむっとして自分も見てみろと手招きする。

それに苦笑いしたまま子供の我が侭に付き合う大人の素振りで、門脇はもったいぶって重い腰を上げたのだが、実際に椅子に座るフクの背後からディスプレイを見た瞬間、それまでの笑みがピタリと消えた。

 

「確かに……様になってる………」

 

扇子以外でヒカルに変わった様子はどこにも見つけられない。公式対局のようにスーツ姿でもないし、髪型を変えたわけでも、派手なアクセサリーを付けているわけでもない。見慣れたオフのヒカルの姿だ。

 

なのに、たった一つ、白い扇子がヒカルの手にある姿が、符号が合うかのように様になっていると門脇も認めざるをえない。

 

「流石は6冠の貫録ってやつか?トップ棋士たちと対局しまくりで、もう雰囲気からして俺たちの知ってる進藤くんじゃないな」

 

先ほどまでの少し小馬鹿にした苦笑いではなく、驚きと称賛でディスプレイから視線を外すことなく門脇は小さく笑み顎を撫でた。

画像に映っているのはヒカル一人である。ヒカルはプロ棋士であり決して歳が若いからと扇子を持っているのが不自然というわけではない。

けれども、誰も干渉できない世界でヒカルが一人碁を打っているような印象を画像から受ける。

 

「なんだか進藤くん、かっこいいね。勝負師って感じがする。僕も扇子買ってみようかな」

 

「扇子一本持っただけで強くなれたら世話しないわよ」

 

間延びしたようなフクの感想に、奈瀬は思わず大きなため息をついてしまった。

 

「どれ?」

 

ヒョイと。皆から遅れて台所横に置かれている冷蔵庫からジュースを持ってきた和谷が、皆が集まるパソコンを隙間から覗き込み、途端に眉間に皺が寄る。

 

「あ~、あん時のやつか……マジで使ったのかよあの記者……」

 

その言葉はこの画像をネットニュースに掲載した記者に対して『余計なことをしてくれた』という本音が隠すことなく伝わってくる。

 

「あの時?」

 

フクが首を傾げるのを視界の端に映しながら、和谷は無言で前に出て手を伸ばしマウスを取って、記事の内容や掲載期日を確かめる。

掲載日は今朝。タイトルは『本因坊戦直前』とある。流し読みで記事の内容にざっと目を通せば、来週から始まる本因坊戦に関する短いコラムのような内容。下へとスクロールさせれば、去年本因坊を防衛した桑原の画像も載せられていた。

 

ヒカルの画像が撮られた森下の研究会は3日前で、記者は鮮度感のある最も新しい写真を使ったのだろう。これでヒカル本人に画像掲載の承諾を取っていなかったら棋院から文句を入れてもらおうと和谷は頭の隅で思う。

ただし、記事事態はあくまで本因坊戦に関することがメインであり、画像が撮られた時の様子は一言も触れられていないことに和谷は内心ほっとする。

マウスから手を離し、

 

「進藤の真似ならやめとけ。アイツはそういうカッコつけとかでこの扇子持ち始めたわけじゃねぇから」

 

「そうなの?」

 

と、奈瀬が意外そうな声を上げる。若い棋士が扇子を持つきっかけとして、安直だが尊敬する棋士への憧れや棋士らしさを演出するオシャレしか思いつかなかったせいである。

 

ならばどういう心境の変化でヒカルは扇子を持つ気になったのか。

画像が一枚ネットに載っただけで不快そうな顔をする和谷なら、いくらか事情を知っているのだろうという流れになる。

その空気に和谷は居心地悪さと共に、少し思案してから口を開く。この場にいるのは和谷の他にフクと奈瀬、門脇の4人だけだ。まだ他のメンバーはアパートに着いていない。

 

―このメンバーならベラベラ吹聴するような性格じゃないから大丈夫か

 

院生時代からヒカルと直接付き合いのあるメンバーだ。間違ってもお調子者の真柴あたりに知られたら、自分が見たことのように喋りまくる光景が簡単に想像できる。

 

「ソレ、塔矢先生が使ってたものらしいんだ。それを塔矢アキラが形見分けと名人の祝いで進藤に譲ったんだと」

 

「うそっ!?えっ!ほんとに!?」

 

「本当に塔矢先生の使ってた扇子なのか!?」

 

咄嗟に声を上げたのは奈瀬で、直後に門脇はさらに顔をディスプレイに近づけ画像に小さく映っている扇子を瞠る。いきなりヒカルが扇子を持つようになった理由を知りたいとは思ったが、あくまで軽い興味本位程度のもので、それほど深く考えてはいなかったのだ。

 

「だからその扇子は進藤にとって特別大事なものなんだと思う」

 

和谷がそこまで言うと、水を打ったように部屋が静まりかえった。

 

――やっぱ誰でもそうなるよな。俺だって知った時は何も反応できなかったし

 

研究会でヒカルが俯き加減に話した時も、今と同じように誰も言葉を発することが出来なかった。もっとも、その時部屋には研究会のメンバーしかおらず、記者は扇子の元の持ち主については知らないはずである。

知っていたら、間違いなく画像と共に元の持ち主のことも記事にしていただろう。

 

「……俺なら塔矢先生が使っていた扇子なんて、譲られる以前に触れるのも憚られるな。なんていうか……えっと……」

 

ごくりと唾を飲み込む門脇の口元は平静を取り繕うと笑みを作ろうとしているが、微妙に震えてしまっている。そして最後に、自分の気持ちを上手く言い表す言葉があと少しのところで出てこない。

 

「勿体ない?」

 

と和谷が適当に当たりをつけるがピンとこない。

 

「ちがう」

 

顔を横に振る門脇に、次は奈瀬とフクも思いついたままに言ってみる。

 

「身に余る?」

 

「恐れ多い?」

 

「相応しくない?」

 

「そう!それ!相応しくないだ!」

 

最後に和谷が言った言葉が門脇の中にストンと落ちて、正解とばかりに和谷をつい指さしてしまう。

 

「6冠の大棋士が愛用していた扇子なんてプロなりたてのひよっこがおいそれと軽い気持ちで持てる代物じゃない。公式対局で使うどころか大事に机ん中に仕舞って終わりだ」

 

何も知らない者であれば『たかが扇子一本』と大げさ過ぎると笑うかもしれない。しかし囲碁打ち、中でもプロ棋士であれば誰も門脇の言葉を馬鹿にする者は一人といないだろう。

例えタイトルを取るようなトップ棋士であっても、おいそれと受け取るのを憚れる代物だ。6冠を保有した状態で突然亡くなった大棋士の扇子なのだ。息子のアキラなら話は違ってくるかもしれないが、内弟子である緒方でもその扇子を受け取るのは躊躇うかもしれない。

 

そんな大層な代物をヒカルはラフな格好で持っているにも関わらず、扇子の事情を知ってなおその手にあるのが不自然ではなく、既にヒカルの手にあるべきだと考え始めている自分に気づいて門脇は内心驚いていた。

またそれは門脇だけでなく、羨望と呆れを滲ませ奈瀬が

 

「プロとかそんなの関係ないと思う。きっと進藤以外に相応しい人なんていないわよ。扇子の方が進藤を選んだからこんなに様になってるのね」

 

「これで本当に進藤君が本因坊取ったらどうなるんだろうね?もう想像出来ないや」

 

フクののんびりとした口調は生まれつきなので変わることはなかったが、それこそ7冠になればヒカルが行洋の扇子を持つことに文句をつける者は誰もいなくなるだろう。

 

「この写真撮られた師匠の研究会の日にもさ、進藤のやつ一般人に捕まらないよう2時間前に棋院来て研究会の部屋入ってたらしくて。俺が準備とか事務所用事あるからだいたい1時間前に行くんだけど、その時にはもうすっげぇ自分の中入り込んでてさ、ピクリとも動かないで一手も打たれてない盤面睨んでまじで集中半端ねぇんだよ」

 

扇子の事情を話すかどうか初めは迷ったが、この様子なら3人とも気軽に吹聴することはないだろうと確信しつつ、和谷はヒカルの画像が撮られた時の様子を話し始める。

ヒカルが森下の研究会に参加しているのは棋院関係者にかかわらず一般も周知だが、そのせいで棋院にヒカル目当てでやってくる一般客が決して少ないわけではないことを和谷は知っている。

タイトルを取り始めた当初はそこまで警戒しておらず、いつも通りにやってきたヒカルをサイン用色紙とマジックペンを持った一般客たちが囲み騒ぎになってしまい、慌てて出てきた棋院の事務スタッフが注意したのも1度や2度ではない。

 

そんな経験を何度かして、ヒカルも騒ぎを起こさない対策として時間に余裕をもって研究会に来るようになっていたのだが、先日は別の意味で騒ぎになってしまった。

 

「一手も打たれてない盤面?」

 

とフク。

 

「そ。鬼気迫るってやつ?先生たち来ても全然気が付かねぇし、そんときの偶然棋院来てた記者が撮ったやつだよ。もうすぐ本因坊戦あるし森下先生も進藤ほっといて別の部屋で研究会を始めようって段階になって、そこでやっと進藤が反応してさ。一手目の黒石ばしっと天元だ」

 

「て、天元って真ん中の!?」

 

今度こそ驚きで奈瀬は開いた口が塞がらず、かろうじて開いた口に手を添えて隠すので精一杯である。

別に天元に打ってはいけないというルールはない。どこへ打とうと自由だが、打った人物が6冠の棋士で来週から本因坊戦を戦う棋士となると、一手の重みが全く変わってくる。

 

「その天元。その一手でやっと集中切れたみたいでこっち気づいて、『みんなもう来てたの?早いねどうしたの?』だぜ?もうとっくに研究会開始30分以上経ってるってのに」

 

その時の様子を思い出して、和谷はもうため息しか出てこない。最初部屋に入ったとき、和谷も一言声をかけてはいるのだ。

しかし、ヒカルから返事が返ってくることはなく碁盤を眺めたままで、その時点でヒカルが尋常ではない程集中しているのだと和谷は気づいて皆が来るまではと放置を選んだのだが、それがまさかあんな大事になるとは考えもしなかった。

 

どんなに待っても集中が切れる様子のないヒカルと、その集中を邪魔してはいけないかとこのまま研究会を開いていいものか迷う周囲。

研究会の主催者である森下が、タイトル戦前のヒカルを気遣い別室を取ろうと判断して事務所に問い合わせた時、たまたま偶然事務所に居合わせた記者がこのことを知り部屋にやってきたわけなのだが

 

――いきなりケイタイ向けて写真とった時は、コイツどういう神経してんだと思ったぜ

 

まだ囲碁記者になって年数が浅いだろうと思われる20代前半の記者だったが、仮にもプロ棋士が集中して碁盤と向き合っているところに何の承諾もなく写真を撮る神経を和谷は疑った。

勿論それは和谷だけでなく、森下や白川も同じでシャッター音でヒカルの集中が途切れてしまったのではと真っ先に危惧した。

 

タイトル戦は何度経験しても、対局前は神経が高ぶるものだ。ピリピリした神経は普段気に留めない些細なことにも過敏に反応し、本番の対局に影響する。

だがヒカルはシャッター音も耳に入っていない様子で碁盤に向き合ったままだったので、皆ほっと胸をなでおろしたものだ。

そして写真はダメだと白川が記者を注意したところで、ヒカルが碁笥から黒石を取ったのだ。

 

「ほんとすごいわね、シャッター音にも気づかない集中力とか私もあやかりたいものだわ」

 

「他のタイトルも勝つ気だったけど、今度の本因坊戦は今までと意気込みとか覇気が比べ物になんねぇよ。アイツ本気で本因坊取る気だ」

 

実際、写真が撮られた経緯を別として、ディスプレイに映ったヒカルは本因坊戦に対する意気込みが見事に現れているいい一枚だと写真には素人の和谷も正直思ってしまう。

 

「7大タイトル制覇か。そんなことが実現したら後世まで進藤の名前が残ること間違いなしだな」

 

いつか自分もタイトルを取れるような棋士になりたいと思うが、まずは目の前の現実である。当時にヒカルの棋力に多少文句はあれど、同じ院生時代を共に過ごした仲間である。

応援せずにはいられない。

 

「でもここまで来たら進藤くんに獲ってもらいたいよね、本因坊!」

 

「それで未成年で7大タイトル制覇よ!」

 

フクと奈瀬も両手を握りしめ興奮気味に言うその隣で、反比例したように消沈気味の門脇がぽつりとつぶやく。

 

「しかし……プロ棋士になってみたものの、進藤君と同世代になって俺たちは嬉しいような悲しいような複雑だなぁ~」

 

「どうして?門脇さんが老けてるから?」

 

と、年上の門脇であろうと平然と言えるのは女性という特権を持った奈瀬である。例え年下の院生でも女性に手をあげるわけにはいかない。もしこれが和谷かフクだったなら、すかさず後頭部をはたかれていただろう。

 

「違う!俺が老けてるのはほっとけ!俺が言いたいのはだな!プロ棋士になって何万と対局して勝ち進んでも行きつく先はこれが全部ラスボスだってことだ!」

 

ディスプレイのヒカルを指さし、違うか!?と迫る門脇に、和谷たちはハッと各々顔を見合わせる。門脇の言う通りだ。今は応援する立場かもしれないが、いずれ自分自身が強くなり倒さなければいけない相手なのだと思い出す。

しかもヒカルが7冠となれば、確かにラスボスは全部ヒカルとなる。それも史上最強のラスボスと向き合うことになるわけだ。

 

「こいつが7大タイトル全部ラスボスかぁ~……」

 

はぁと和谷がため息をつくと、他3人もうつったかのよう一声にため息をつく。先ほどまでの応援の雰囲気が一気に消し飛ぶ。いつかはとは思うが、今の段階でヒカルに勝てる気が全くしないのが悲しい。

そこにタイミングを合わせたかのように、鍵のかけていなかった戸が開き、伊角が入ってきて、

 

「入るぞ、和谷。……て、どうして研究会始まってもいないのにみんな沈んでるんだ?」

 

決して広いとは言えないアパートの一室でパソコン前に集まり凹んでいる4人に、伊角は思わず室内にあがるのを躊躇ってしまった。

 

 

 


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