桃子視点
【私立 明矢児小学校】〔数年前〕
「何で私はこんなところにいるっすかね。」
私の呟きに誰も答えはしない。
私と座っている席が教室から切り離された別の世界にいるような感覚・・・ステルスモモと呼ばれていた前世よりもさらに強力になった影の薄さを現世では身に付けていた。
「好きだった麻雀もこの世界では大人にならないとできないっすか。・・・せっかく神様からもらった・・・」
バチ カタカタカタ
「能力も使えないっすね。」
《九蓮宝燈》
「・・・一巡先を無条件で見る能力、運の強さ・・・加治木先輩ならまた私を見つけてくれると信じてるっすけど・・・ここまで麻雀の競技人口が少ないっすからわからないっすね。」
私は普通の声で喋っているが存在を認知してくれる人はいなかった。
【椚ヶ丘中学校】〔2年前〕
「・・・なんすか?これは?」
入学説明会で特別強化クラスの存在を口頭で説明されていたが、実際に見た私は
「・・・ヘドが出るっす。」
と呟いた。
隔離校舎で満足に勉強することもできず、まるで見せ物のように扱われる彼らに同情する一方、同じ学校の仲間なら彼らをそこから引き上げてあげようとする人が存在しても良いと思うのだが、誰もそんなことをしないし、校長が
「え、勉強も頑張るように・・・さもないと誰かさんみたいなことになりますからね。」
と全校の前で普通に言うのだ。
「決めたっすよ。私が彼らを助けるっす!!」
とはいっても1人でできることは限られている。
部活には入らないで放課後に隔離校舎に行って誰もいないことを確認して掃除をしたり、グランドの草を休みの日にむしったりしていた。
「勉強がしやすい環境にすれば本校に戻ってこれるっす!!そうすれば差別は減らすことができるっす!!」
本心ではそれでも根本的に解決するには理事長を説得するしかないとわかっていたが、それを聞き入れる人物ならこんな方針の学校にしないだろうとわかってはいた。
「それでも・・・。」
小さな正義感だった。
〔1年後〕
私は理事長室に呼ばれていた。
「・・・君は私の教育理念に反対なようだね。」
「そうっす。あれでは人は潰れるっす。」
「・・・そうだね。・・・でなんだい?それだけかい?」
「それだけっす。」
「・・・ふむ。実に幼稚だよ。」
「わかってるっす!!・・・ただ周りの人が異常に見えるっす。」
「・・・周りの人が異常に見えるなら君がもしかしたら異常かもしれないね。・・・こんなのを見つけたよ。」
「・・・!?何でこれがあるっす!!」
「学校に麻雀の牌を持ち込んで何をする気だったのかな?」
「返してほしいっす!!それは私の大切な!!」
すぐに牌牌返されたが
「今後も同じ行動を続けるのなら君自身がE組に行きなさい。」
悩んだ末、私は結局E組に行くことにした。
2年の夏のことであった。