魔法少女リリカルなのは~白い冥王の妹、天翼の朱里~   作:天翼

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第3話

 

 はやてに出会ってから数週間が経ち、はやては何度も私の部屋に訪ねてきました。私達は順調に仲良くなり、私は待ちに待った事をはやてにお願いしていました。その結果が今日、でます。そう、それは神代の魔術師であるメディアさんに魔術を教えてもらうという事です。そして、魔術を使うには魔術回路が必要で、それを作る為の検査をしてもらったのです。

 

「では、結果からいいますね」

「はい」

「わくわくやな」

 

 はやてと一緒にメディアさんの言葉を待ちます。はやても魔術師だとメディアさん達の事を知って教えて欲しいという話になりました。はやての場合は護身の意味もあります。なんでも近頃ストーカーが現れたそうです。まったく、変質者ばかりで困ります。

 

「結果から言うとはやては才能があります。魔術回路の数は多めです」

「よっしゃっ!」

「それで朱里ですが……」

「ごくりっ」

 

 はやてはさすがですね。私にも数があればいいのですが。

 

「残念ですが、朱里は魔術回路が形成できません」

「なんでですかっ!?」

「貴女の身体には魔術回路とは別の物が隙間なく存在していました。ですから朱里に魔術回路を作る事ができませんでした」

「そっ、そんな……」

 

 病室のベッドの上でORZという姿になりました。まさか、魔法を使うための回路だと思っていたのにそれが別物だなんて思いもしませんでした。頑張って限界まで作りあげたのに。今は拡張できなくても生み出せる力の質を上げれるように頑張っているのですが、それが全部無駄だったというのですか?

 

「で、では……私に魔術は……」

「使えないですね」

「ど、どんまいや」

「い、いえ、諦めません。まだ私にはリンカーコアがあるはずです!」

「それが何か知らないですけど、確かに貴女の体内にある回路は昔見た事がある気がします」

「本当ですか?」

「ええ、おそらくですが。思い出したら知らせましょう」

「お願いします……」

「それで、私はどないしたらええの?」

「興味はありますから、一緒に教えてください」

「いいわよ。それじゃあ、教えましょう」

「お願いします、師匠」

「お母さん、よろしゅうや」

 

 こうしてメディアさんによる魔術講座が始まりました。

 はやてと一緒に基礎の魔術理論を勉強し、数日が経ちました。それからはやてが訓練をしている間に私はメディアさんに身体を調べてもらいます。

 

「それで本についてはどうですか?」

「そっちはおいおいですね。家を魔術工房から神殿に改造したからこれから本格的に調べます。軽く調べた程度ですが、どうにかなりそうです」

「それは良かったです」

「それよりもやはり見た事がありますね」

 

 なんだか実験体にされている感じですが、まあいいでしょう。これが何かわかれば私の力もわかりますから。

 

 

 

 

 ベッドで読書をしていると病室の扉が開けられ、中になのはが申し訳なさそうに入って直ぐに扉を締めました。

 

「どうしたのですか?」

「う、うん……実は……」

 

 なのはがそういうと締めた扉が開けられ、金髪の少年が勝手に入ってきました。私は即座にナースコールを手に取ります。

 

「お前がなのはの妹か! お前も俺の嫁にしてやる。光栄に思うが……」

 

 私は即座にナースコールのスイッチを押して携帯電話を取り出し110と押します。

 

『もしもし、警察ですが』

「今、私の病室に不審者が無断進入してきて俺の嫁にしてやると……」

「待てやこらぁっ!!」

 

 金髪の少年は私の方に飛びかかってきて、私を押し倒してきました。

 

「ひっ!? たっ、助けてっ、おっ、襲われっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『直ぐに救援を向かわせます!』

「やめろっ」

「助けてくださいっ、助けてっ!!」

「私の妹になにするのぉぉぉっ!!」

「ぐぎっ!? ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 襲われた私を見てなのはが何かをしてくれたみたいで、変質者は身体を痙攣させて私の上に倒れてきました。私はなんとかベッドの外へと落とすと、彼は痙攣しながら股間を押さえていました。

 

「な、なのは……なにをしたのですか……?」

「お母さんやお姉ちゃんが男の人の弱点は股間だって言ってたの。だから、思いっきり振り上げてやったの」

 

 なのはの手には棒が握られていました。その棒は俗に言う特殊警棒というやつでした。あれで股間を直撃させたのですね。恐ろしい事をしますが、ナイスです。

 

「お父さん達に剣術を習っていて良かったの。まさか、私の大事な朱里に手を出すなんて……万死に値するの」

 

 なのはが濁った瞳をして特殊警棒を振り上げて少年に何度も振り下します。

 

「ぐはっ!? や、やめろっ……」

「……」

「くそっ!」

 

 無言で殴り続ける怖いなのは。流石は未来の白い冥王様や魔王と言われる方です。それにしても剣術を習っているだけあって鋭い。それに対して少年は空間を歪ませて剣を……

 

「っ!?」

 

 直ぐにベッドから飛び出してなのはを押し倒して庇います。直ぐに衝撃が来て背中に熱い感触がし、激痛が走りました。

 

「ぐっ!!」

 

 しかし、痛みに慣れている私は耐える事ができます。

 

 《ーーを検知ーー複ーー開ーー》

 

 

「くそっ、やばいやばいっ、どうすれば……そうだ、これでっ!」

 

 私の背中に何かの液体がかけられると痛みが消えて背中が痛くなりましたが、私の意識も消えました。

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

 瞳を開けると眩しい光が視界に入り込んできます。息苦しさに視線をさまよわせると口元に酸素を供給するための装置が取り付けられていました。身体も動かしずらくて大変です。

 

「朱里、きた……よ……」

「おはようございます」

 

 病室になのはが入ってきたので挨拶をすると、なのはが固まってしまいました。

 

「お母さん!! 朱里が目を覚ましたの!!」

「本当っ!! よかったっ、良かった……」

 

 お母様がすぐに入ってきて私に抱きついてきた。泣いている事から何かとんでもない事が起きているのでしょうか?

 

「お母様?」

「ああ、えっとまずは先生よね。なのはは士郎達に知らせてきて」

「うん!」

「???」

 

 お母様はナースコールを押して直ぐに先生を呼び出しました。その後、直ぐに先生がやってきて精密検査を受けました。その時、聞いたのですが私は長い時間を眠っていたようで、気付かないうちに8歳になっていました。どうやら、あのあと私は意識を失いそのまま昏睡状態になっていたのです。

 事件の事を聞くと犯人は逃亡……いえ、事件そのものが無かった事にされていました。なのはの記憶も書き換えられたようです。なのはまだ一般人ですから、それぐらいは容易いのでしょう。今回は魔術関連という事もあり、神秘の秘匿が行われたのでしょう。

 それにメディアさんから聞いた話ですが、彼女が異変に気づいて駆付けた時、私の傷は既に無かったようで犯人が治療したようだとの事です。

 どちらにしろ、私は2年ほど眠っていた事になります。しかし、少しやりすぎてしまった感がありますが、まあいいでしょう。私のなのはに手を出そうとしたのですし、当然の報いでしょう。

 

 起きたてから三ヶ月。9歳になり私はリハビリを得て無事に退院しました。それから自宅でリハビリの続きなどを行いながらはやてと図書館へ行ったりしています。流石にまだ学校には行ってません。

 夜、夕食の時間となり、なのはが楽しそうに今日起こった事を教えてくれます。そこには聞き捨てならない事が含まれていました。

 

「フェレットですか?」

「うん。どんな種類かはわからないんだけど」

「私も興味があります。家で飼ってはどうですか?」

「そうだね。いいかもしれない」

「世話は私となのはでしますから」

「それなら文句はないな」

「だね」

「やった」

 

 それから食事を終えてなのはと一緒の部屋で、名前を考えます。無駄になりますが、気にしません。なにせ今日は楽しみな日なんですから。私となのはが魔法少女としてデビューする日なのです。そんな話をしているとなのはが急に耳に手を当てて苦しみ出しました。

 

「ッ!?」

「な、なのは……?」

 

 やばいです。私には何も聞こえません。

 

「行かなきゃっ!!」

「なのは、どこに行くのですか?」

「ちょっと行ってくるね! お兄ちゃん達を誤魔化しておいて!」

「ちょっ!?」

 

 なのははそのまま行ってしまいました。これはどうすればいいのでしょうか? 私はユーノ君の声が聞こえませんでした。これはつまり、私にリンカーコアがないという事です。さらに言えば魔法も使えないという事です。

 

「なんですか、なんですか、これは……魔法少女じゃないじゃないですか! うぅ……魔法を使う夢が……今までの努力はいったい……」

 

 床にのの字を書きながらうつむいていると自然と涙が流れてしまいます。いっそこのまま普通の女の子として過ごすのもいいかも知れません。十中八九、転生者達に襲われるでしょうが。

 

「駄目です、やってられません。なんで双子のなのはにはリンカーコアがあって、私の中にはないのですか……この世界には夢も希望もないのですか……?」

 

 夢や希望……待ちましょう。何かが引っかかります。夢や希望、つまり願望。そうです、今回の事件は願望機の力を持つジュエルシードがこの海鳴市に落ちてきたという事です。それを取り込めば私にもリンカーコアが手に入るかも知れません。フェイトやなのはと敵対するかも知れませんが、おおいに結構です。

 

「よし、もしもし」

『こちら、地球連邦軍秘密基地。登録名と階級を述べよ』

「高町朱里。階級ははやての友達ですね」

『それ、階級なん?』

「昇進すると親友になります」

『まだ親友じゃなかったんか! ショックやわ』

「ふふふ、嘘ですよ」

『せやな。それでどないしたん?』

「少しお願いがあります。今から少しメディアさんと一緒に公園に来てください」

『わかったで』

 

 直ぐに私も着替えて外にでます。どうせ後でバレて叱られますから、気にしません。

 という訳で臨海公園につきました。そこには既に先生と師匠、はやてがいます。

 

「それで、急に呼び出してどうしたのかしら?」

「今日は大人モードですね」

「そうよ」

「戦闘があるかもしれん。すでに結界が展開されているようだ」

「やね。これやろ、呼び出した理由は」

「ええ。それでお願いがあります。このちかくにジュエルシードという聖杯もどきが複数落ちています。それの回収をお願いします。私はそれがほしいです」

「何に使うの?」

「魔法を使えるようになりたいですから」

「どうしますか、マスター」

「やってくれ」

「分かりましたわ」

 

 メディアさんが魔術を使用し、直ぐに見つけ出してくれました。

 

「はやて、そこの林に一つあるわ。後は海の中ね」

「そうです。お願いします、師匠」

「まかせなさい」

 

 メディアさんが海の中から魔術でジュエルシードを七つ、回収してくれました。

 

「ください」

「でも、これはまともに使えないわよ」

「わかっています。それでも、私は魔法を使いたいのです」

「そう。私達が見ていてあげるからやってみなさい。危険があったらすぐに止めるわ」

「はい」

「頑張るんやで」

 

 全部で八つのジュエルシードを受け取り、私は願いを込めます。ジュエルシードが光り、私の体内へと入っていきます。ですが、なんの変化もありません。

 

「特に変わったことはありません」

「そうなのね。まあ、いいわ。あちらも終わったようだしもう帰りなさい」

「そうします」

「うむ。送ろう」

「そうね。転送してあげるわ」

「お願いします」

 

 直ぐに転送してもらうとちょうどお父さん達が家から出てきました。

 

「朱里!」

「こんな夜更けにどこに行っていたんだ!」

「なのはが出ていってしまったので」

 

 嘘はついていません。嘘はばれそうですしね。真実を語って曲解してもらう方がいいです。

 

「探していたのか」

「もう、そういう時は私達にも知らせてよね」

「ごめんなさい」

 

 謝っているとなのはが、フェレットを抱えて戻ってきました。それからは原作通りに叱られました。そして、フェレットことユーノ君は我が家で飼うことになりました。

 

「なのは、その宝石はなんですか?」

「こ、これはね……その、ね……」

「隠し事ですか?」

「う、うぅ……もう遅いから寝よ! そうしよ!」

「そうですね」

 

 なのはが先に入ったベッドに私も入ってなのはに抱きついてねます。なのはも私に抱きついてきます。私達はお互いに半身として殆ど変わりません。ですから互いに一緒にいるととても安心できます。なのでそのまま眠りにつきます。ですが、私の心の中ではなのはに対する嫉妬が少し芽生えました。

 

 

 

 夢の中、私の前に広がるのは広大な荒野で空は分厚い灰色の雲に覆われ、雪のようなものが降り注いでいます。そんな中、腰に翼をもつ紫の髪の毛をし、頭に輪をした少女と無数の機械が融合した身体を持つ黒髪の少女が戦っていました。

 

「敵・天翼……ジ……ル。勝……絶……0は、な……典開……」

「おや? ……種は……撃破……どなたかを……」

 

 この子達の姿、言葉、それは全て聞き覚えがあり、見覚えがあり、その戦闘方法は私は知っています。

 その二人の強さに、あの力が欲しいと思います。そして同時に涙が溢れ出てきます。ここで彼女は死に、一人は生き残ります。

 

「どうにかして助けてあげたいですね」

 

 その言葉を口にした瞬間、私の身体が光輝き、無数のジュエルシードが出てきました。

 

「ま、まさか……いや、心から願っていることではありますが……特にシュヴィについては……」

 

 光が視界を覆い、完全に見えなくなった瞬間、次に場面が変わり私は……機凱種(エクスマキナ)の少女となり、彼女の一生を体験させられました。次にもう一人の人生を体験させられました。いえ、彼女達本人になっていました。

 

 

 

 

「っ!?」

 

 起きたら全身が汗だらけで気持ち悪い感触がしました。身体が何か変わったようにも感じます。それに特に彼女の思いが私を締め付けます。まさか、ジュエルシードが助けるという思いを私を彼女達にして新たに人生を歩めとは、とんでもないことをしてくれます。そういえば二人の声は私と同じ田村ゆかりでしたね。シュヴィは知りませんが。

 

「んん~」

 

 隣には幸せそうに寝ているなのはがいます。それだけで私は嬉しくなって安心します。そして、時計を見て硬直しました。

 

「なのは、なのは!」

「ん~?」

「起きてください! 遅刻ですよ!」

「むにゃむにゃ」

「ふぅぅぅぅ、はっ!」

 

 呼吸を整えて掌をなのはの背中にあてて衝撃を叩き込みます。

 

「ふぎゃああああああぁぁぁぁぁっ!!」

「起きましたか?」

「お、おきたけど、もうちょっと優しく起こしてほしいの!!」

「? おかしいですね。前は揺さぶって起こしても起きなかったので、くすぐるとなのははやめてくれと言ったのでこちらにしましたが」

「いや、それでも……朱里、どうしたの? 大丈夫?」

 

 流石は私の半身です。直ぐにこちらの異変を感じ取ったようです。

 

「大丈夫ですよ。少し夢見がわるかっただけです。それよりも遅刻ですよ」

「ふにゃっ!? い、いそぐのっ!!」

「はい、急ぎましょう」

 

 なのはの着替えを手伝い、学校の準備もしてあげます。なのはは下に降りて急いで食事を取り直ぐに出かけました。私は朝食をゆっくりと食べてから、洗い物をしながら昼食を用意します。作っている時、少し指先を斬ってしまいましたが直ぐに治りました。不思議ですが、時間がないので洗濯などをします。それが終わると紅茶入れてケーキを持って自室へと向かいます。部屋で飲みながら読書します。近くにはフェレットがいますのでしっかりと見ます。

 

「じー」

「びくびく」

「やはり現在確認されている種族ではありませんね。解剖して調べてみますか」

「っ!?」

 

 慌てて隅っこに移動するユーノ君。私は移動し、彼を追い詰めます。手にはケーキを切るためのナイフを握りながら近づきます。

 

「ああ、でもなのはに怒られますね。ですが、念の為、去勢だけはしておきましょう。男は嫌いですから」

「っ!?」

 

 ユーノ君は股間を慌てて小さな手で押さえます。

 

「やはり、人の言葉を理解していますね」

「っ!?」

 

 冷や汗をかくユーノ君。私は素早く彼を捕まえてカゴにつめこみます。

 

「まあ、冗談ですが去勢はしておきましょう」

 

 バタバタと暴れるユーノ君を封じようとすると、携帯電話が鳴りました。私はすぐに電話にでます。

 

「はい、朱里です」

『はやてや。家に来るようにっておかんが呼んでるで』

「分かりました。すぐに行きましょう」

『ほな、あとで』

「命拾いしましたね」

 

 ユーノ君を開放すると一目散にベッドの下に隠れて行きました。私はそのままはやての家へと向かいました。

 

 

 八神家の地下にある訓練所で私は準備運度を行います。これから身体検査をするそうですから。

 

「それで、身体は大丈夫なん?」

「ええ、むしろ前より調子はいいですね」

「なのはどうなの?」

「なのはも大丈夫です」

「そう、良かったわね」

 

 例の事件の時に駆け付けて記憶を消したのはメディアさんだったので、なのはのことを心配してくれたようです。

 

「それで朱里の回復力は掛けられた薬と昨日のジュエルシードが原因みたいやね。おかんが無茶苦茶気にしとったで。なんや、生命の水やらエリクサーやら言っとったし、願望機なんやろ?」

「実際に使われたのは霊薬とか神薬とかそのレベルよ。願望機の方はおそらくだけど失敗作ね」

「それらのせいですか。何故か傷を負ってもすぐに回復してしまいますし」

「そうなん?」

「ええ」

 

 実際に何時もの濃度を圧縮する為に回廊を強化すると、一部の血管が破裂して吐血していたのが一瞬で治療されていました。ものは試しに腕を少し斬ってみます。斬った傷は直ぐに再生しました。

 

「超人になってんな」

「否定はしませんね。どこまで回復するのかは怖くて試せませんし、何時薬が抜けて効果を失うかわかったものでもありませんし」

「せやな」

 

 腕を完全に切断しても治るかなんてわかりませんからね。途中で回復力がなくなるのも特に辛いです。

 

「ところでそっちこそどうなんですか?」

「ん?」

「魔術の鍛錬です」

「おかんから一流の魔術師としては認められたで。免許皆伝には至ってへんけどな」

「当たり前よ。まだそこまでの域には至ってないわ」

「でも、十分凄いですよ。神代の魔術師、それも女神ヘカテーの弟子なのですから」

 

 神代の時代でも魔術師としては最高峰の方ですし。

 

「ふふ、私はもう強いで」

「では試してみますか?」

「本気なん?」

「私とて剣術家の家に生まれていますし、戦えますよ。それに今なら回復できますしね」

「ええで、ええで。ほな、いっちょやったるか」

「ええ、模擬戦と行きましょう」

 

 地下にある訓練所で私とはやては対峙します。はやては杖を持ち、私は木刀を持っています。

 

「模擬戦ですので、いざという時はこちらでなんとかするわ」

 

 大人モードという奴で見てくれるようです。

 

「私が見ててあげるから好きなだけ戦いなさい」

「「はい!」」

「では、はじめ」

 

 メディアさんの掛け声と共に全力で走ります。はやては杖を振るって無数の魔術式を空中に展開してきます。

 

「行くでぇっ!!」

「っ!?」

 

 弾幕の雨が私に襲い掛かりますが、私は軌道を見切って回避し、避けきれない弾幕は木刀で斬り払います。

 

「無茶苦茶やな!!」

「これからですよ」

 

 高町家に伝わる移動術・縮地を使って瞬時に接近してはやてに木刀を叩きつけます。

 

「あっぶなぁ~」

 

 しかし、魔術式障壁で防がれてしまいました。

 

「残念です」

「私の障壁を抜けん限りは……」

「わかってます」

 

 連続で同じ場所に斬りかかりますが、手応えはあまりないですね。

 

「そか。なら、これはどうやっ!」

「なっ!?」

 

 障壁が爆発して私は吹き飛ばされました。

 

 《攻撃ーー複ーー》

 

「追撃や!!」

「くっ!!」

 

 しかも容赦なく私に弾幕を放ってきます。空中で避ける事が出来ずに弾幕に撃墜されます。そのはずでした。

 

「なっ!?」

「え?」

 

 ですが、はやての弾幕は全て私の周囲に展開された魔術障壁が全て弾き飛ばされました。

 

「なんでなん!? 使えへんはずじゃ……」

「それに劣化しているみたいだけどはやての術式にそっくりね」

「ひょっとして……」

 

 はやてに向かって弾幕を展開し、放つように意識すると魔術式が展開されて実際に魔術弾が発射されました。

 

「数は少ないのだけど……」

「ちょっ、威力がおかしいって!」

 

 私の弾丸ははやての障壁をがんがんと揺らし、破壊してしまいました。

 

「生成されている魔力の質が高いのね。というか、星から自然の力を吸収して魔力に変えているの? あれってもしかして……いえ、人間が持ってるはずないわね」

「??」

「気にしないで。それよりも朱里の力は模倣なのね」

「みたいですね」

「反則やん。チートやん」

「はやてみたいなチート少女に言われても……」

「まあ、せやな。もっと強くやるで」

 

 大規模魔術を発動させようとするはやて。

 

「やめなさい。やるなら別のところにしなさい。結界や神殿が壊れるわ」

「は~い」

「そうですね」

 

 しかし、私も力が持てて良かったです。ジュエルシードさまさまです。

 

「あ、もしかしてこの回復力も薬の力を模倣したからですか?」

 

 その可能性もあります。ひょっとしたら、元から模倣の力を持っていた可能性がありますから。そうでなければ精霊回廊かそれに接続する神経が存在しているのはおかしいですから。

 

「可能性はあるわね。回復は少し時間を置いてからなのでしょう?」

「そうです。数秒経ってからですね」

「それなら模倣なのかも知れないわね。でも、攻撃で判断したのかしら?」

 

 魔術障壁を爆発させた事が攻撃として判断されたから模倣できたのかもしれません。でも、それならこの回復はどうなのでしょうか? ひょっとして傷口にぶつけられたりかけられたりしたから攻撃と判断したのでしょうか? かなり痛かったですし、私が攻撃と認識してもおかしくありません。それとも全て触れたものを模倣するのでしょうか?

 

「要検証ね」

「いえ、その必要はなさそうです」

 

 意識を向けていると攻撃によって模倣した事が何故かしっくりと来ました。これが私のチートみたいです。しかし、これはまるでノーゲーム・ノーライフで出て来た機凱種(エクスマキナ)の能力です。そう、あの黒髪の少女、シュヴィちゃんがそうです。

 ちなみに機凱種(エクスマキナ)とは生物ではなく、機械でできた種族です。その能力は機凱種が受けた攻撃を解析し、その攻撃と同等の能力の武装を瞬時に設計したり、その攻撃を模倣して自分たちのものとすることができる事です。それ故に、理論上無限に強くなることができます。また、模倣以外にも原理を解析し解決策となる応用兵器も開発可能との事でチート種族です。

 私の模倣もこんな感じのようですね。今は劣化しか作れていないようですが、解析が足りないのかもしれませんね。

 

「あっ、もしかして」

「どうしたのかしら?」

「ん?」

「いえ、なんでもありません」

 

 もしも、もしも、私の体内にあるのが……精霊回廊接続神経か精霊回廊そのものなら大変な事になります。そもそも、機凱種の力は精霊回廊から大量の精霊を吸い上げ殺すことで霊骸を排出して動力を得ます。そして、精霊を殺すという事は霊骸を生み出すという事で、霊骸は全ての生物にとって猛毒となります。精霊自体は魔法を運用するための人類には知覚できない者達で、自然環境を司っているとも言われています。しかし、これって本当ならどう考えても封印指定ですよね。

 

「そろそろ帰らないとまずいのではないかしら?」

「あ、もうそんな時間ですね。お邪魔しました」

「また来てや」

「ええ、待ってるわ」

「はい」

 

 帰っていると変な気配……ジュエルシードの気配がしたのでそちらの方へ向かっていきます。するとそこには予想通りの光景が浮かんでいました。それも最悪の状態です。なにせ、他の人達もいるからです。

 

 

 

 

 

 

 




天翼でばれていると思いますが、朱里の力はエクスマキナの模倣にアレです

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