魔法少女リリカルなのは~白い冥王の妹、天翼の朱里~ 作:天翼
高町なのは
黒い服を着たなのは達は暗い気持になりながら、今日という日を迎えた。朱里が行方不明になって数日。毎日、皆と警察の人と一緒に探し回って居た。そして、臨海公園の森の中で、冷たくなっている朱里が見つかった。お父さん達の話を盗み聞きしたところ、朱里の服は乱れていて胸には大きな穴が開いていたらしい。犯人とおぼしき人の体液も見つかったらしいけれど、なのはにはわからない。ただ、なのはの心の中にぽっかりと大きな穴が開いて、お父さんやお兄ちゃんが凄く怖くなった。
喫茶・碧屋も今は店を閉めて、朱里のお葬式をやっている。
「なのは……その、なんて言ったらいいのか」
「なのはちゃん……」
「にゃはははっ、なのはは大丈夫だよ」
お葬式に来てくれた友達のアリサちゃんとすずかちゃんが心配してくれる。なのはは一生懸命、笑顔を作る。
「馬鹿っ、無理してんじゃないわよ。泣きそうになってるじゃない」
「なのはちゃん、悲しかったら泣いていいんだよ」
「っ」
すずかちゃんに抱きしめられ、アリサちゃんに頭を撫でられる。そういえば、朱里はよくなのはの頭を撫でてくれた。そう思うと涙がぽろぽろと流れ出て来る。しばらくすずかちゃんの胸で泣くとスッキリした。
「あっ、ありがとうなの」
「ううん、何かあったら何でも相談して」
「そうよ。なのはも朱里も友達なんだから。朱里に何があったのか、私も知りたいから」
「じゃあ、お願いするの。実は探して欲しい人が居るの」
「誰なの?」
「シュテルって人」
「どんな人なのかな?」
「私と朱里にそっくりで、特に朱里と似ていたの」
「朱里じゃなくて?」
「うん」
もしかして、シュテルは朱里のドッペルゲンガー? だから、死んじゃったの?
「話を聞く限り、そのシュテルって奴と間違って殺された可能性もあるようね」
「そうだね。朱里ちゃんが殺される理由なんてないし……」
「うん。朱里はただ賢くて、料理が上手くて、芸術が凄くて……」
「……一般人じゃなかった」
「あの子の作品、時価数百万は最低でもするしね。ここにも有名な人が結構来てるわ」
彫刻家の人や、壁画の人なんかも来ているらしい。朱里が暇つぶしと言って作っていた大量の作品があるの。それを売って欲しいって人まで来て、お兄ちゃん達が追い返してた。
「なのは、朱里の傍に居なくていいの?」
「あ、お姉ちゃん」
「出来る限り、傍に居てあげて。もう会えなくなるから……」
「うっ、うん。アリサちゃん、すずかちゃん、またね」
「うん、ばいばい」
「待ちなさい。アンタまで居なくなるんじゃないわよ。絶対に大人の人と一緒に行動するのよ? わかった?」
「うん、わかってるよ」
「そう、ならいいわ。じゃあ、またね」
「ばいばい」
二人と別れて、私は棺へと向かう。朱里の方を見ると、微かに違和感を感じる?
「あれ? 動いてるの?」
慌てて朱里の近くに移動して、棺の中で両手を組んで眠っている朱里の首に手をあてる。脈は無いし身体は冷たくて硬いし、心臓は無い。でも、違和感を感じる。なのはの額と朱里の額を会わせる。何かが違う。そう、それはまるでーー
「ちょっとええかな?」
「ふえ?」
声を掛けられて振り向くと、そこには茶色い髪の毛をした同い年くらいの女の子と綺麗な中学生くらいの人と、先生が居た。
「すまないな。私達も花を添えていいか?」
「あたしも花を添えたいんや」
「どうぞ」
少しして、先生がこちらにやって来た。
「悪いが、両親の所に案内してくれるか?」
「こっちなの」
私は先生を案内していく。二人の娘はなにやら朱里に話しかけていた。
「どうした?」
「あっ、ごめんなさい。あの二人は……」
「妻と子供だ」
「ふえ!?」
「高町。
「えっと……」
「例えば妻のメディアだが、彼女は既に成人している。高町夫妻と同年齢程度にはな」
「おっ、お母さんも若く見えるけれど、それ以上が居たの……」
お母さん達の所へと向かっていると、前方から黒いスーツを着た綺麗な女性が入ってきた。その人からは懐かしい何処かほっとする感覚がする。でも、何かが足りないし、おかしい。
「Oh、べりーきゅーとなガールですねぇっ!」
その女性はいきなりなのはに飛びかかってきた。
「ふん」
「ふぎゃぁっ!?」
だけど、先生の掌が女性の顔を掴んで止めてくれたの。
「何しやがりますか、この下等生物が……」
「黙れ。貴様はさっさと
「仕方ないですね~これもマスターの為ですし? この子は食べちゃいたいですが、仕方ありません。ええ、仕方ありません」
そう言いながら、朱里の方へと向かっていく彼女。なのはは慌てて追いかけようとする。
「案内してくれ。彼女なら大丈夫だ」
「わっ、わかったの」
それから、お父さん達の場所に行くと、先生が朱里の事で話し込んでいく。なのはは慌てて式場の中に戻ると、さっきの女の子と先生の妻の人。それになのはくらいの小さな女の子が一緒に歩いて来た。その子からも先ほどの女性と同じ感覚がするの。
「あれ?」
周りを見渡すと、何処にも女性が居ない。まるで最初から居なかったみたいに。
「おかしいの……」
『なのは、無事っ!』
「ユーノ君っ、どうしたの?」
『先程、そっちの近くで一瞬だけ結界が展開されたんだ! この前、近所で起きた山崩れの事もあるし、なのはに万が一の事があれば……』
「こっちは大丈夫なの。それよりも、結界が展開されたの?」
『それは間違いない。でも、術式がまるで違うんだ』
「その時間はどれくらいなの?」
『えっと、今から約ーー』
ユーノ君が教えてくれた時間から、なのはは急いで朱里の姿を見る。やっぱり違和感を感じる。それも、さっきまでとはまた違う。先程と同じようにして調べていく。でも、とりあえず
「なのは、どこ行くの?」
「ちょっと買い物なのっ!」
走りながらユーノ君にサーチャーを放つようにお願いする。
『見つけ……潰された! 彼女達は魔導士だ!』
「やっぱり! 棺の監視もお願い。私は急いで彼女達を追うの!」
『任せて!』
それから、少ししてなのは神社へと到着した。そこには賽銭箱に座って、膝に狐を二匹乗せている少女がなのはを待ち構えていた。
「……」
少女は私をじっと無機質な瞳で見つめてくる。
「教えて。朱里は何処に居るの!」
「……解、答……朱里、死ん、だ……事実……」
「うそっ!」
「……嘘、違、う……
「そんなの無理だよ! 私にとって、朱里は半身なんだから! だから、教えて!」
「……警、告……これ以、上……駄、目……排、除す……る……」
「そう、なら、力強くでも、絶対にお話しを聞かせて貰うから」
直にバリアジャケットへと変わる。すると、相手も何処からともなく、銃を取り出してきた。
「アクセルシューター、シュートっ!!」
「……む、だ……」
全てのアクセルシューターが驚くほどの早打ちで全て撃ち落とされた。なのはどんどん攻撃していく。でも、まるで先読みされているかのように的確に撃ち落とされる。それどころか、なのはに対しての攻撃が頑張れば防げるくらいに手加減されている。まるで、
「ならっ、これで! 全力全開っ、スターライト、ブレイカァァァァァッ!!」
「……エネル、ギー総、量……危険度・軽傷……
全力の攻撃も全てが無駄であるかのように、無数の黒い球体で出来た黒い球体にスターライトブレイカーが全て吸収されてしまった。
「……よわ、い……」
「かちーん、なの」
「……じ、じつ……」
「……集え、集え……」
「……?」
「幾億幾千幾万の
シュテルがやっていたように、回りから
「……精、霊……過、剰……き、けん……」
「どうしやがるです?」
彼女以外の声が何処からともなく聞こえてくる。
「……ちゃー、じ……待た、ない……」
「ふえ!? 今まで待ってたのにここでそれは卑怯なの!」
「……誰、も……待、つと……言っ、てない……」
「ふぎゃっ⁉」
お腹を殴られて、吹き飛ばされて木々を何本も圧し折ってようやく、止まったの。
「ごほっ、ごほっ」
「私も入れろや、です」
「……だ、め……帰、る……」
「ちっ」
急いで戻った時には誰も居なかったの。
「まだ、手がかりは……」
葬式所に戻ると、そこには火葬場に朱里が入れられた所だった。二度目に確認した時、脈は無かったけれど朱里の身体は暖かかった。急いで止めようとすると、建物が揺れた。
「地震かしら?」
「大丈夫のようですね」
「一応、確認して貰えますか?」
「わかりました」
一旦、出して貰った朱里の身体は既に焼けていて骨だけになっていた。でも、今度は何も感じない。違和感も何も、これは抜け殻だってなのはには簡単にわかった。さっきまでとは違う。あの二人が限りなく怪しい。でも、問題は無茶苦茶強い上に仲間が居るという事なの。いったい、どうすれば……