7th DRAGON Ⅲ 夢幻の葬花   作:アレクシエル

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code:8 「あたしは、今までそうやって生きてきた」

 

 

 

 

 

1.

 

 

 

 

 

ドラゴハンマードを駆逐し、クラディオン居住区を目指して行進を続ける事数分、ヨリトモ達は下層通路の途中で不審なものを発見した。

 

「提督、これは…?」

「………靴跡か。しかも、まだ新しい」

「生存者有り、ということですね。運が良い。こんな竜の巣みたいな場所なのによく…」

「運……ねぇ」と、紫苑はユウマの言葉を拾い、"違う"とでも言いたげに更に奥を指差した。

遠目から見える場所に転がされていたのは数体の、しかもまだ新しいドラゴンの屍体だった。

 

「!? あれは………」

「ドラゴン……? いや、しかし……」

 

3人はすぐさま小走りでそこへ向かい、その屍体に刻まれた傷を見て、ユウマが瞬時に分析を始めた。

 

「………この裂傷は、どうやら人の武器によるものですね」

「俺達以外にも、ドラゴンとまともに戦える連中がいるようだな」

「ええ。恐らくは、このクラディオンにいるルシェの住人でしょう」

「ああ。それもある程度の訓練を積み、統率された集団だろう」

 

周囲を見回してみても地面や岩壁につけられた戦闘の爪痕はごく僅かであり、おおよそながらもドラゴン以外の血痕も見当たらないように見える。

アトランティカの兵達は下級のドラゴンにも手を焼いていたようだが、どうやらこれをやった人物は、少なくとも彼等よりも数段上の腕前を有しているのだろう。それくらい、戦いに恐れや迷いがなかったように感じ取れた。

迷いがないという事は、それだけ自分の強さに自信を持っているということだ。

もしかすると、その人物こそがウラニア姫の言う"エーグル"なのだろうか。

 

「………! ヨリトモ君、静かに」

「どうした、紫苑」

「奥から話し声が聴こえる。……"ドラゴン"とか言ってるから、たぶんこれをやった人かな?」

「提督、俺にも聞き取れました」と、ユウマが補足するように言った。

「本当か。何も聴こえんが………む、確かに話し声がするような………」

 

お前ら耳良すぎだろう、と内心で呟いたが、すぐに気を取り直して前方をさらに注視する。

この2人が人間離れしているのは、今に始まった事ではない。

 

「…むう、あれは」

 

遠目から見た場所には、3〜4人程の武装した男達が立っていた。

アトランティカの兵達とも異なる毛色の鎧を身につけた彼等は、さしずめこのクラディオンの私兵団だろうか。

 

「どうしますか、提督」

「行ってみよう。うまく協力関係を築ければ幸いだが…」

「どうだろうねー…ちぃと殺気立ってるっぽいよ」

「俺達も連中も、目的は同じだろう」

「うーん……まあ、何とかなるかな?」

 

紫苑はクラディオンに足を踏み入れてから、ひとつの事について思考を巡らせていた。

"エーグル"が真龍ニアラの討伐に力を貸してくれるかもしれないというウラニアの言だったが、それならば何故アトランティカを離れてこんな洞穴に篭っているのか。

もちろん、このクラディオンの居住区を守護する為という可能性もある。しかし、ニアラを倒したいと考えているならば、前線にいたとしても不思議ではない。

可能性として考えられるのは、アトランティカ…もっと言うならば、ニアラと心中するつもりでいる執政官タリエリと、対立関係にあるというものだ。

だとするならば彼らは外部の人間に対して敏感であり、下手をすればアトランティカの人間達だけでなく、紫苑達に対しても防衛と称して牙を剥いてくる危険性もあるだろう。

 

「…………ッ!」

 

そして、その紫苑の考えは数秒後すぐに証明されることとなる。

 

「提督、上です!!」

 

ユウマがそう叫ぶよりも、紫苑はコンマ数秒速く刀を頭上へと振り抜いた。

ガギィン!! と衝突音が鳴り、紫苑の刀に弾かれた何かが岩壁にぶつかり、地に落ちる。

 

「……あれは、槍?」

「──────チッ…」

「!!」

 

そこからさらにワンテンポ遅れて、紫苑達の頭上から褐色の肌の男が飛び降りてきた。

褐色の肌と尖った耳は、ルシェ族の男性特有の身体特徴だ。

男は吹き飛ばされた槍をすぐに拾い、身軽だが隙のない構えを取り、険しい目つきで3人と対峙する。

 

「………お前ら、ただの鍛冶場泥棒じゃねえな」

「待て、我々に敵意はない。剣を引け!」

「関係あるか! テメェ等もどうせタリエリの回しモンだろうが!!」

「タリエリ……? あの執政官か。お前とて、同じルシェだろうに」

「るっせぇ! あんなヤロウと俺達を一緒にすんじゃねえ!!」

 

槍を構えた男が吼えると同時に、紫苑達の周囲にどこからか兜を被った男達が集いだした。

 

「───俺の名はエーグル。クラディオン武装私兵団団長だ!」

 

その号令に呼応するように、現れた兵達が陣形を整えて3人をあっという間に取り囲んだ。

 

「囲まれた…!?」

「なるほど、確かに統率力には優れているようだな」

 

数だけでいえば、少々部が悪いようにも見える。

3人はISDF部隊よりも少し先行していたため、やや分断される形で取り囲まれてしまっている。それに、敵意がない事を示すならば、ここにいる3人のみでうまく動く他ない。

 

「紫苑、その男は頼みます。俺達はこっちを!」

「おーけー、任せて!」

 

が、紫苑は逆に刀を鞘に納め、右手の指をポキポキと軽く鳴らして応えた。

しかしその行為はエーグルの逆鱗に触れたようで、

 

「テメェ、ナメてんのか! わざわざこれ見よがしに!」

「だって、あなた達と戦う気なんてないもの」

「抜かしやがって……だったら遠慮なくやってやるぜ!!」

 

エーグルは怒りに任せて槍を携え、真っ直ぐに紫苑めがけて突っ込んできた。

しなやかな身のこなしに俊敏さを兼ね備えたその動きは、確かにアトランティカの兵とは別次元のものだ。

しかも、躊躇いはない。今この場で紫苑を絶命たらしめても構わない、といった動きだ。

 

「………はぁー……」

 

突進してくるエーグルを前に、紫苑は軽く呼吸を整える。

殺さないように、かつ効果的に、自分の力と意志を示す為にはどうすればいいのか。ほんの一瞬だけ考える。そして、

 

「─────人の話を、」

 

エーグルが駆けるよりも何倍も速く、刺突の構えを取ったその懐に、自ら飛び込んだ。

力強く踏み込んだせいか、紫苑が立っていた地面の部分は、砂利が深く抉れている。

 

「聞けっての!!!」

 

そのまま拳を振り抜き、急所を的確に外し、内臓や骨を傷つけないギリギリのラインで力を調整し、エーグルを殴りつけた。

 

「が……ッ!!?」

 

力をセーブしたとはいえ、その一撃はとても女の身から放たれるような軽い威力ではない。

エーグルは突然の反撃に対応できず、槍だけは手放さなかったが、その身体は数メートル程後ろに跳ねた。

さらに紫苑は一歩踏み込み、今度は刀の柄に手をかけ、態勢を崩したエーグルの近くまで詰め寄った。

威殺さんばかりの鋭い眼光でエーグルを見据えながら、エーグルの身体ギリギリ手前あたりを掠めるように刀を振り抜く。

十六手詰め───巨大なドラゴンでさえも容易く細切れにしてしまう紫苑の必殺技は、エーグルの周囲の土や岩を削り飛ばし、ズシャアッ!!と激しい音をかき鳴らし、地を深く抉った。

 

「……な、何だぁ今の……!?」

「…まあまあ、だね。でもあたしとやり合うなら、その命5つ分くらいの覚悟をするんだね」

「……その程度でこの俺が怖気づくとでも!?」

「それと、あたし達はタリエリとは関係ない。…あたし達の目的は、ニアラ」

「ニアラ………!?」

 

ここでようやく、エーグルの表情にかすかな変化が見られた。

それに応えるように、紫苑も完全に戦闘態勢を解く。

2人の一瞬の攻防を目の当たりにしたせいか、3人を取り囲んでいた私兵団員達も、剣を振るう動きを止めてしまっていた。

当然ユウマ達も必要以上に攻撃することはなく、紫苑の対話に片耳を預けていた。

 

「タリエリはニアラを仕留める為に、アトランティスを支える全ての星晶石を破壊して、大陸ごとヤツを海に沈めようとしてる。けれどそれじゃあ、アトランティスの民の命も道連れになってしまう。……そんな事が、許されていい筈がない。そう思わない?」

「あ、ああ………」

「あたし達は、ニアラを倒す為にこのアトランティスへとやって来たの。けれどそれには、絶対必要不可欠なものがある。それを探しにここに来た。……ウラニアちゃんからあなたの事を聞いてね」

「ウラニアだと!? お前、アイツにも会ったのか!」

「そうだよ。だから、わかるの。…この先には竜殺剣の手掛かりと、アトランティスを支える星晶石のうちの一つがあるってね。……エーグル、君はここの指導者なのかな?」

「………違う、俺は私兵団のリーダーだ。この奥に長老がいる」

「!」

 

エーグルは苦虫を噛んだようにしかめ面をし、改めて紫苑らを一瞥し、思考を巡らす。

信頼に値するのか否か。この者達はアトランティスにとってどういう存在となるのか。それらを懸命に考えた末に、1つの答えを見つける。

 

「……この奥に俺達の集落がある。ついてこい」

「おいエーグル! いいのか、余所者を………」と、私兵団員の1人が言うが、

「ニアラを倒すってんなら、俺達と目的は同じだ。…とにかく、一度長老に会わせてみたい。話はそれからだ」

 

エーグルは紫苑達の返事を待たずに踵を返し、すたすたと奥へと向かって行く。

私兵団達も困惑しながらエーグルに続き、それから遅れて紫苑達、そしてヨリトモに誘導されてISDFの隊員達も、エーグルが向かった先へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

2.

 

 

 

 

 

 

 

クラディオンの洞穴をさらに奥へと進んでゆくと、一段と広い空間へと差し当たった。

岩壁のあちこちに小さな住居がいくつも備えられ、離れた岩盤同士が丸太橋で繋がっており、その下には水が心地良い音を立てながら流れている。

そして何より一際目を惹いたのは、集落の中央に浮かぶ巨大なオリハルコンの塊────アトランティカの祀り場にあったものよりも、ひと回り大きな星晶石だった。

 

「…こいつは、すごいな」と、ヨリトモは息を呑みながら呟いた。ユウマもたまらず星晶石に魅入っている。

だが、紫苑だけはひとり別のところを見ていた。

彼女が見ていたのは、岩盤の隙間を流れる泉水だ。

 

「………これ、まさか」

 

紫苑は集団から抜け出て泉の近くまで走り、しゃがみ込んで水を軽く手で掬ってみた。

 

「おい待て! その水を飲むな!!」

 

エーグルがそう叫ぶよりも前に、紫苑は手に取った水を軽く口に含み、味覚と嗅覚に集中して違和感の正体を確かめた。

 

「……大丈夫だよ、エーグル。あたしは毒には強いの」

「毒、ですって………!?」意外にも、真っ先に反応したのはユウマだった。

「うん、ほんの少しだけどね。普通の人が継続的にこれを飲めば、ショック症状を起こす」

「…………お前、どうしてわかった?」

 

エーグルは信じられない、といった表情で紫苑に尋ねた。

 

「匂い、かな。見た目は綺麗だけど、この水はどこからか汚染されてる。たぶん星晶石の真下だからこの程度で済んでると思うけど、本来ならもっと汚染されててもおかしくない。

それと…この集落、住居が沢山あるけれど、感じる人の気配の数がそれに釣り合ってない気がするの」

「…ニアラが現れて少しした辺りからだ。このクラディオンにも帝竜が現れたんだ。ここの水は、その帝竜の影響で汚染されちまってる」

「………毒を使う帝竜、か」

 

帝竜といっても、その種類は実際そこそこ豊富である。過去のデータから参照すると、東京を占拠するべく真龍が従えた帝竜は、7体だったとされている。だが、世界各地からかき集められた情報によると、7種類ではとても収まらない数が確認されている。

例えば、先の帝竜スペクタス。そしてアトランティカを突如襲撃した帝竜ウォークライ。これらはそれぞれ、過去にアメリカ及び日本で確認された個体だ。

だが、毒を使う帝竜自体はそう多くはない。それでいて、こういった水場を好む帝竜となれば、自然とその正体が絞られてくる。

そのドラゴンの名は、

 

「「帝竜メイヘム」」

 

と、紫苑とユウマはほぼ同時に答えた。

 

「なるほど…ここには巨大な星晶石があるから、あまりドラゴンが近寄れない。だからこうして遠方から水を汚染しているという事ですかね」

「ああ。しかもヤツは、よりにもよって俺達の鍛冶場に巣食ってやがる。だが、ヤツに戦力を割けばここの警備が手薄になっちまう。周りはドラゴンだらけなんだ、いくら星晶石があるからといって、ここを全く襲ってこないわけじゃない」

「鍛冶場? …先程も俺たちの事を"鍛冶場泥棒"と言ってましたが、まさかここには………」

「竜殺剣の鍛冶場がある。そうじゃない?」と、紫苑がユウマの言葉尻を借りて問いかけた。

「…その通りだよ。先王ユトレロがニアラとの戦いに挑んだ時に持って行った竜殺剣は、このクラディオンの鍛冶場で鍛えられたものだ」

「! じゃあ、既に竜殺剣は完成してるんだね?」

「一応、な。けどここにはもう無い。…ユトレロ王がニアラに負けて以来、行方不明なんだ。それに、鍛冶職人達もドラゴンやこの水の毒でやられた。もうここには、竜殺剣を造れる人間がいない」

「そんな………!?」

 

事態は、紫苑が思っていたよりも深刻だった。竜殺剣の手掛かりは確かにあった。だがその技術を継承しているルシェが、皆やられてしまっていたのだ。

竜殺剣は、対真龍最終兵器。紫苑やユウマがいくら強くとも、竜殺剣がなければ真龍ニアラに引導を渡す事は叶わない。

せっかく手掛かりを手にしたのに、と苦い顔をしたその時、集落の奥から向かってくる足音が聞こえてきた。

反射的にそちらの方を見ると、柔らかながらも凛とした立ち姿の妙齢の女性と、青い長髪をしたまだ若いルシェの少女が、こちらへと向かってきていた。

 

 

「トグラウ長老!」エーグルは、その丸太橋を渡ってくる女性をそう呼んだ。

 

「………お主らは、いったい…? 敵意は感じぬが…」

「俺達は…竜殺剣を探しに来たんです。ニアラを狩る為にね」と、ユウマが代表して答える。

「なんと…竜殺剣を……!?」

 

長老は突然の来訪者が口にした単語に戸惑いを覚えるが、どうやらエーグルが少し心を許しているようだと勘づくと、まず深いため息をついてから語り始めた。

 

「……そう。竜殺剣は、ドラゴンに対抗する為にこの星の民に授けられた、唯一の知恵。それは遠い昔…この地に異界の巫女・"エメル"と"アイテル"が降り立った時に授けられたもの」

「ヒュプノスの姉妹………」

「知っておったのか…! そう、その姉妹は真龍の襲来を予見し、竜殺剣の製法を我らに与えた。このクラディオンの民は、その託宣を得た刀鍛冶の末裔なのじゃ。…だが、もうここには竜殺剣は無い」

「エーグルから聞いたよ。ユトレロ王が戦いに使ったってね」

「そうじゃ。…我らは予言に従い、鍛えた竜殺剣を王に献上したのだ。だが王は戦いに破れ、剣も行方知れずよ…」

「…その予言って?」

「"大いなる災い来たるとき、心優しき勇者に剣を授けよ。剣の名は竜殺剣。勇者の名は"竜を狩る者"。其れは災いを打ち払う星の意志──" …今となっては、そのどちらも無い。もはや希望など……」

「………ううん。まだ、希望はあるよ」

 

全てを諦め、疲れ切った顔をした長老を励ますように、紫苑は胸を張って言った。

 

「鍛冶場を取り戻そう。そして、もう一度竜殺剣を作り直すんだ」

「だが、もう造れる人間が……普通の刀を鍛えるのとはワケが違うのだぞ?」

「それでも、何か手掛かりが鍛冶場にあると思うの。…それに、この泉だって、メイヘムがいる限り汚染されたままだ。あなた達はここを離れるわけにはいかない。だから、メイヘムはあたし達が倒してくる。…そうすれば、ちょっとはあたし達の事信じてくれるかな」

「確かにその通りだが、しかし……うむ、そこまで言うのなら、あなた方に任せてみよう」

 

ほんの少しだけだが、長老の顔にかすかな期待が見え隠れしたような気がした。

史実から参照しているに過ぎないが、ニアラによるアトランティス崩落まで、もう10日もない。

このままメイヘムに手をこまねいてここに留まり続けていても、事態は好転しない。ただ滅亡を待って集落で最期の時を過ごすか、多大な犠牲を覚悟してメイヘムに突撃するか、今の彼らにはその2択しかなかった。

そこに、紫苑という第3の選択肢が現れた。それが長老達にとってどういう風に取られたかまでは紫苑には読めなかったが、少なくとも、メイヘムを狩れば次の一手が見えてくる筈だ。

 

「……………………」

 

そんな紫苑達を冷ややかな目で見つめるのは、長老トグラウに同伴してきた青髪の少女だ。

 

「長老様、エーグル。…私も行く」

「エイル…?」

 

エイル、と呼ばれたその少女は、自ら紫苑達と共に前線に出る事を志願してきた。

 

「今、泉の毒を中和する薬を調合してるの。…あとは、帝竜の身体の一部があれば完成しそう。それに、鍛冶場までの道案内も必要だよね?」

「ああ。けど、コイツらがメイヘムを倒せるとは限らねえんだぞ!? もしコイツらがやられちまったら、お前だって!」

「……"竜を狩る者"」

「…えっ?」

「私達占星術師(フォーチュナー)の中で語り継がれてきた、ヒュプノスの姉妹が残した伝承にある勇者」

「おい…まさかお前、コイツらが"狩る者"だってのか? あの言い伝えは、ユトレロ王を指してたんじゃあ……」

「…長老様には口止めされてたけど、私にはわかってた。ユトレロ王は"狩る者"の器じゃない。竜殺剣を渡しても、ニアラを倒す事はできないって」

「そんな…なら、なんで!」

「居なかったから。このアトランティスには、強い魂を持つ"勇者"が。竜殺剣を使いこなせる人間が。だから最も優れた武人だったユトレロ王が行くしかなかった。…けど、この人達は、少し期待できそう。それも見極めてくる」

「お前………!」

 

エーグルとエイル。この2人はどういった関係なのか。少なくとも、ただの仲間というよりは、歳の近い兄妹にも見えるような気がした。

行かせたくはないのだろう。エーグルの顔を見れば瞭然だ。だが、解毒薬の為のサンプルが必要だという名目を立てられては、エーグルがエイルを止めるわけにはいかなかった。

恐らく、占星術師(フォーチュナー)と名乗る彼女にしか薬の扱いはできないのだろう。

 

「…わかった。けど、エイル。絶対に帰ってこいよ。これは団長としての命令だ」

「了解。ちゃんとメイヘムの体組織も取ってくる」

「そうじゃなくて! ああもう! …紫苑とか言ったよな。エイルを頼むぞ」

「任せて! …これ以上、誰1人だってあなた達を死なせやしない」

 

それは、エーグル達に対するというよりは、紫苑自身に対する誓い立てに近かった。

先日のウォークライの急襲によって、助けた筈のルシェの何人かが惨殺されてしまった。

今現在、身寄りを亡くして紫苑の部屋で面倒を見ているミルラの祖母とてその1人だ。

その事は紫苑の心の中に今も燻り続けている。

1人でも多く、ではない。全てを守らなければ気が済まない。

その決意はもはや使命感などという小綺麗なものではなく、かつてナガミミが苦言したように、まさしくエゴのようなものだ。

 

「ナガミミ様。今の話、聞いてた?」

 

紫苑は、手首に装置したノーデンスウォッチ越しにナガミミへと通信を入れた。

 

『ああ、しっかりと聞いてたぜ。お前がまた面倒な事に首を突っ込んでるって事はよぉくわかってる。ヤレヤレ……』

「そういうわけで、これからメイヘムを狩りに行くから。ナビゲート、よろしく頼むわね」

『へいへい。ああ忘れてた、お前等が今いる所、比較的座標が安定してるから転送ポイントを作れそうだ。テメェ等が無事に帰って来る頃までには、設置しといてやるよ』

「さっすが! 助かるわぁ!」

 

 

 

かくして、紫苑ら3人組に加えて新たな仲間が加わることとなった。

どうやらクラディオンのルシェの協力も得られそうだ、と紫苑達は安堵して次なる戦闘の準備に取り掛かる。

 

(……………ヒュプノスの姉妹の伝承にある"勇者"。この人達は確かに強そうな気がする。でも……)

 

 

…が、占星術師エイルだけは紫苑とユウマ、2人の戦士を見て、複雑な面持ちをしていた。

 

(…この人達から感じる"力"。マトモじゃない………一体、何なの…?)

 

 

 

 

 

 

 

3.

 

 

 

 

 

 

 

「ここから先の坑道は、メイヘムの影響でマモノの巣窟になってる。さっきまでの比じゃないぞ」

 

支度を終えた紫苑達は現在、集落の東側出口───鍛冶場へと通じる通路の前まで移動していた。

鍛冶場へ向かうのは、紫苑・ユウマ・ヨリトモ…そして、エイルの4人のみの少数構成だ。

ISDFの隊員達は集落に残り、クラディオン私兵団と合同で集落の防衛にあたる事となっている。

紫苑達が身支度を整えている間に、集落の西口───出口方面のルートから、またもマモノ達が押し寄せようとしていたのだ。

 

 

「俺達はここを何としても守る。頼むぜ、紫苑」

「おーけー、あなた達もがんばんなさいよ!」

「では───行くぞ!」

 

ヨリトモの号令に従い、いよいよ4人は鍛冶場へと向けて進軍を開始した。

ほんのりと輝く星晶石に照らされた集落から離れると、少し薄暗い岩の通路へと差し掛かる。

周囲には集落同様に泉水が流れているが、その色は集落の水よりもわずかに濁っているようにも見える。

 

「気をつけて、みんな。星晶石の浄化作用はここまでは届いてないみたい。毒が気化している可能性もあるよ」

『それに加えてお前等にお知らせだ』

 

そこに、ノーデンスウォッチから聞こえるナガミミの声が、岩だらけの空間に木霊した。

 

『最新のデータで計測してわかったが、そこから先にはドラゴンがウジャウジャ沸いてやがる。数にして、少し増えて12〜3体ってとこだ』

「ここから先は狭い足場が続いてる。戦う時は気をつけて」と、勝手知ったるエイルが付け加える。

その彼女も今は、手に大きな鎌のような武器を持っている。見たところ、重量はそこまででもないようだが、少々使い勝手が悪いのではないか、とユウマは疑問に思った。

その視線に気付いたのか、エイルはユウマの方を向いて、

 

「…珍しい?」

「ええ。少なくとも、俺はそういう形の武器を実際に目にした事がなかったので」

「まあ、お世辞にも使い勝手は良くないよ。でも私の本領は肉弾戦じゃないの」

「というと?」

「今にわかるよ。ほら、来た」

 

エイルが前方を指差すと、そこには先程までとは比較にならないサイズのドラゴンが1体、道を塞ぐように立っていた。

ドラグメガマウス─────鮫のようにびっしりと並ぶ鋭い牙と、全長のおよそ半分を占める巨大な顎を持つ、アンバランスな格好をしたドラゴンだ。

その顎は捕食する為というよりは、嚙み砕きつつ丸呑みする事に特化しているようにも見える。

さらに特筆すべきは、稀に猛毒を吐瀉してくる事がある、という点だ。

 

「行くよ!」

 

まず紫苑が先陣を切って、ドラグメガマウスに突撃する。

巨体であるが故に動作は愚鈍だが、その分外皮は他のドラゴンよりも、やや弾性や硬度に優れている。

その中でも一番外皮が薄い所───腹の下あたりへと正確に狙いを定めた。

 

『グオォァァァァァッ!!』

 

前脚を持たないドラグメガマウスは、その自慢の顎を使って紫苑を喰い散らかしてやろうと構える。

今までの相手と比べると、少し厄介そうだ。そう判断したユウマは、紫苑を援護すべきかほんの少しだけ悩む。

だがそれよりもユウマの隣で、振るうでもなくただ鎌を掲げ、瞑想をしているエイルの姿にも視線が寄ってしまう。

 

(何を… これは、歌……?)

エイルが口にしているのは、一定の音階を含んでいるような呪文。アトランティス文化独特のものだろうか、ユウマの頭の中にはエイルの呪文を理解するだけの知識は備わってなかった。

 

「─────私達占星術師(フォーチュナー)は、星を読み、風を読み、自然と一体となって神秘を行使する。だから、こういう事ができる!」

「…っ!?」

 

次の瞬間、少し強めの風が洞穴の中に吹き渡った。

ユウマは身体の奥底から力が湧き上がってくるような感覚を覚える。

 

(…なんだ、これは。まだ"解放"してないのに、力が漲るようだ…!)

 

それとほぼ同時に、スパァン!! と、硬質の肉が細切れにされる音が前方から響いた。

紫苑の技量は確かなものだ。いかに相手が巨体だろうと、その剣を振るえば敵は無いのかもしれない。

だが、それにしてはあまりにも簡単すぎる。帝竜ほどではないにしろ、あのドラゴンも中々に手強い種類だと心得ていたが、

 

「…私の専門は、戦闘の補助」と、困惑するユウマとヨリトモに対してエイルが語る。

「味方の能力を最大限に引き出し、敵の弱点を分析する。これが私の戦い方」

「戦闘の……補助…?」

「行こう。風が吹いているうちに」

 

いよいよエイルも鎌を持ち直し、前線へと加わる態勢を整えた。

だが、鎌は不得手だと言っていた。恐らく、エイル単独ではせいぜいマモノの相手が精一杯だろう。あくまでドラゴンを狩るのは3人───もっと言うならば、規格外の戦闘能力を持つ2人の役割だが、

 

「ユウマ、俺はエイルの援護に回る。あまり離れすぎるなよ」

「…了解です。では、遠慮なく行かせてもらいます!」

 

言ったそばから、とヨリトモは軽く頭を抱えたが、既にユウマは次のターゲットへと向けて突進し始めていた。

ドラゴンを1体倒した事で、洞穴内のマモノや他のドラゴン達が活性化し、一斉に牙を剥きだす。

そこかしこから咆哮が飛び交うこの空間は、さながらに竜の巣窟という表現がよく似合っているだろう。

それを、たった今からヒトの手に取り戻す。

 

 

「ふっ飛べぇぇぇぇぇッ!!」

 

洞穴の奥から、エイルが起こしたものとは別の、更に強大な風が巻き起こった。

金翅鳥王旋風(こんじちょうおうせんぷう)─────エイルの援護術を受けて更なる力を解放した、紫苑の新たな必殺技だ。

その一閃が巻き起こす暴風は、それ自体が鎌鼬のような鋭さを持ち、ドラゴン1匹に加えて周囲の雑魚までもを引きずり込んで、ズタズタに引き裂く。

同時多発的に断末魔が響き渡り、吹き上げられたマモノ達の鮮血が岩壁を汚すが、その鮮血が紫苑を汚すことはなく、次なる獲物へ向けて駆けていた。

 

「ふッ!!」

 

次いで、ユウマも力を集約した拳を精密にドラゴンの身体に叩き込む。

紫苑同様に、発勁を始めありとあらゆる技術を織り交ぜて洗練された対竜格闘術は、ユウマの技量と合わさって確実にドラゴンの内臓を破壊する。

呻き声を上げながら倒れるドラゴンの姿を確認するまでもなく、さらに次のドラゴンへと拳を振りかざす。

 

「いいぞ、このまま一気に押し切る!!」

 

ヨリトモも銃を携えて、2人に気圧されることなく果敢に突撃してゆく。

 

「この程度……はぁっ!!」

 

その傍らではエイルも、鎌に風を纏わせつつ振りかざし、一度に大多数のマモノを血祭りに上げてゆく。

数自体は4人と少ないが、ここに集まるのは間違いなく現段階で最高峰の戦力。

一歩ずつ、しかし確実に、新たな未来の可能性は切り拓かれつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

4.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラディオン坑道・最奥部─────

 

 

 

鍛冶場ももうすぐという辺りに差し掛かる頃には、既に音を発するのは紫苑ら4人しかいなかった。

残る敵は帝竜メイヘムのみ。突き進んできた道筋には大量のマモノとドラゴンの骸が積み上げられているが……ここは元来、ルシェの人々がよく出入りしていた所だ。

恐らく逃げ遅れたのだろう犠牲者達の亡骸も、無残な姿で道中に転がされていた。

ある者は胴を引き裂かれ、食い千切られ…毒を吐きかけられて身体の半分が溶けて事切れた者もいた。

 

「………着いた。この奥が鍛冶場だよ」

 

エイルが指差した方角からは、静かながらもやや毒気を含んだ空気が漂ってきている。

あまり長居するのは得策ではない。毒に強い紫苑だけならともかく、他の3人はその限りではないだろう。

…が、エイルは自分の身を案ずるでもなく、後ろを振り返って鎌を地に立て、目を閉じて祈りを捧げる。

犠牲者達に対する弔いだろうか。自然と調和する事こそが占星術師の極意ならば、これも彼女なりの思いやりなのかもしれない。

 

「………待たせたね。さ、行こう」

「うん。…大丈夫だよ、エイルちゃん。メイヘムは必ず倒す。あの人達の仇は、絶対に取るから」

 

エイルはクラディオンのみならずアトランティカの女性と比較しても、王女ウラニアにも劣らない程の美人だ。

普段の紫苑ならば冗談交じりの口説き文句でも浴びせたかもしれないが、今はとてもそんな気分ではなかった。

むしろ、奥へ進めば進むほどに雑念が取り払われ、紫苑本来の精神状態に近くなってきている。

守ることに固執し、ドラゴンを憎む───その証拠に、紫苑はまだ気付いてはいないが、頭頂部の髪の色がまたも白髪に変わりつつあった。

 

(………あの時と同じ、か)

 

ヨリトモはそれを見て、先日のウォークライとの交戦を思い出す。

あの時も、怒りに駆られた紫苑の髪は部分的に白く変わっていた。

感情の昂り───それも"怒り"によって、彼女の身体の中に何かしらの変化が起こっているのではないか。そんな事を考えつつも、銃の弾倉を再度確認する。

一歩、また一歩、4人はいよいよ鍛冶場の中へと足を踏み入れる。

 

 

 

『──────グルルルルルルル………』

 

 

 

鍛冶場の最奥部には、まるでアルビノ質のように白い外皮を持つ、巨大な鰐のような姿のドラゴンが唸り声を上げていた。

漂う毒気は、間違いなくそのドラゴンから放たれているものだ。

水棲帝竜・メイヘム。クラディオンを蝕んでいる元凶と、いよいよ剣を交える時が来たのだ。

 

「ヤツが、メイヘム…!」

「油断するな、ユウマ。記録は頭に入ってるだろうが、ヤツの凶暴さは尋常でない」

「わかっています。では─────」

 

エイルの力を借りるでもなく、ユウマは身体の奥底に眠る力を解放し始めた。

ISDFの最終兵器の所以たるその力は、この戦いにおいても絶大な力を発揮するだろう。

だが、

 

 

 

「─────ぐ…ッ!?」

「! どうした、ユウマ!?」

「ガ……あァァッ………ハァ、ぐぅぅっ……あ、頭が……っ!?」

 

突如として、ユウマは激しい頭痛を訴えてその場にしゃがみ込んでしまった。

額からは冷や汗が滲み出ており、唇も青ざめている。何事かと2人がユウマに視線を寄せるが、ヨリトモは、

 

「……インストールの副作用か…!? ユウマ!」

「だ…い、じょうぶです、提督……!」

「馬鹿を言え! そんな状態で戦わせられるか!! くっ……!」

「……インストール?」

 

ふと、紫苑はヨリトモが呟いた単語に注視した。

ユウマの力はマトモじゃない。そのルーツは何処にあるのか、先程から紫苑は、ずっとそれを頭の片隅で考えていた。

そして、ヨリトモの放った今の一言だ。それは、紫苑がユウマの能力を看破するのに十分過ぎた。

 

「………ほんと、冗談じゃない…!」

「紫苑…!?」

「このバカ共が……あんた達はそうやって、いつまで同じ過ちを繰り返せば気が済むってのよ!! まあいいわ……ここはあたしがやる。あんた達はそこで大人しくしてなさい」

 

紫苑の赤髪は、いつしか根元から15センチ以上が白髪へと変わっていた。怒りが徐々に増しつつあるのだ。

 

「エイル、援護してくれる?」

「…う、うん」

『おい待て、紫苑! ISDFのボウヤ抜きでやれるのか!?』と、異変に気付いたナガミミが通信で割り込んできた。

『ソイツは外皮を硬質化して、攻撃を弾き飛ばしてくる! スペクタスなんて比じゃねえぞ! ソイツは過去に、ミサイルの直撃を受けてもピンピンしてたって話だ!』

「問題ない。あたしなら、やれるよ」

 

聞く耳持たずといったところだろうか、紫苑は既に両手に50口径のスペシャルマグナムを握っていた。

メイヘムと、視線が交差する。新たな獲物を見つけ歓喜したメイヘムは、高らかに咆哮を上げた。

 

 

『──────オォォォォォォッ!!!』

 

 

しかし、その程度では気圧されない。

メイヘムの咆哮に対抗するかのように、紫苑は2挺銃を撃ち放った。

鍛えた軍人でも片手で使うことはまずない大口径の拳銃を、轟音を鳴らしながら軽々と連射してゆく。

狙っているのはメイヘムの顔の部分にある、青白い稲光のように発光している両角だ。

 

『───って、おい! ミサイルも効かねえって言ったばかりだろ! マグナムなんか効くかよ!』

「わかってるよ。これは陽動」

『なんだと………?』

 

確かに弾丸自体は全く効いていないのだが、どうやら発光機関はメイヘムにとって重要な部位なのか、執拗に弾を撃ち込まれて不快感を覚えたようだ。

 

「来るよ! あんた達、戦えないなら下がりなさい!!」

「う、うむ……すまん、紫苑!」

 

ヨリトモは今もなお頭を抱えて唸るユウマを引き摺り、ひとまずメイヘムの射程圏外まで後退した。

それを確認してから紫苑は拳銃からいよいよ刀へと持ち替え、不動の構えをとり、精神を研ぎ澄ます。

 

 

『オォォォォォォアァァァァァッ!!』

 

 

激昂したメイヘムはドスドスと乱雑な足音を鳴らしながら、地を這うように突進してきた。

だが、紫苑は動かない。ギリギリまでメイヘムを引きつけ、そして、

 

 

 

「─────はぁっ!!」

 

 

 

ガギィン!! と、激しい金属音が響いた。

クロスカウンターの要領で、メイヘムの突進の勢いと紫苑自身の抜刀術のタイミングを合わせ、必殺の薙ぎをメイヘムの左脚に浴びせたのだ。

その一撃は、どんなに硬質だろうと確実に対象物を両断せしめる。

紫苑は、大型のドラゴンと対峙する時はまず脚から狙うことが多い。

そうすることで敵の行動に縛りをつけ、本来不利であるはずの竜対人の戦いを、より優位に運ぶのだ。

 

『ギャアァァァォォォォ!!!』

 

そうして、丸太のようにメイヘムの左脚は斬り離され、そこからバランスを崩して前方に倒れながら滑り込んできた。

エイルは横に退避しながら術の詠唱を開始し、紫苑のサポートを継続する。

紫苑は倒れんだメイヘムに間髪入れずに追撃を浴びせるべく、全力で跳躍しながら刀を構えた。

さらに空中で縦に1回転し、重力さえもかき集めて剣先へと集約する。

力閂(ちからかんぬき)オロシ。剣先はメイヘムの頭部に吸い込まれるように振り下ろされる。だが─────

 

『ガオォォォォッ!!』

 

メイヘムの両角が、一段と激しく明滅し出した。

それに伴って、アルビノ質の外皮は一気に光沢を増し、大理石を思わせる質感へと変化する。

 

(………硬化が始まったか…!)

 

それに気付いた時には既に遅く、重力を乗せて振り下ろした刃は無情にもメイヘムの硬皮に弾かれ、バキン、と音を立ててへし折れてしまった。

 

「ちっ……!」

 

すぐさまメイヘムを蹴って跳躍し、後方に飛び降りて体勢を立て直す。

一度硬質化を始めたメイヘムには、並の攻撃は通用しない。ミサイルすらものともしない、という過去の記録は、この硬質化によるものなのだ。

 

「……どうする…?」

『おい紫苑、聞こえるか!?』

「ナガミミ様…? どうしたの」

『いいかよく聞け! …帝竜反応が、もう一つ現れた。メイヘムだ! その場所にメイヘムがもう1匹いやがる!!』

「…な、なんですって!?」

 

馬鹿な、と紫苑は悪態をついてしまった。

通常、同じ場所に複数の帝竜が集まることはまずない。過去の記録を見ても、それは確かだ。

まるで群れを成すかのように、同種の帝竜が一つ所に存在しているなど、あり得ない筈なのだ。

 

「距離は!?」

『もう十数メートルもない! 来るぞ!!』

 

地鳴りは、鍛冶場の外から響いてきた。そこには行動不能のユウマとヨリトモが避難しているはずだ。

 

『─────グルルルルルルルァァァァァァァァ!!!』

 

もう1体のメイヘムの咆哮が外から聞こえてきた。

かたや前脚を切断され、手負いながらも獰猛さを増している。新たに現れたメイヘムは当然無傷。そして紫苑以外で唯一ドラゴンと互角以上に戦えるユウマも、動ける状態ではない。

久方振りに、焦りが紫苑の中に生じつつあった。

刀は折られ、手元にあるのは効果の薄いマグナム2挺のみ。それに加えるとすれば、対竜格闘術だろうか。

 

「…………やるしか、ない…!」

 

2体のメイヘムを同時に狩る事は、紫苑1人では物理的に不可能だ。ならば可能な限り迅速に、手負いの1体を潰す。

一切の守りを捨て、真正面からぶつかるしかない。

 

「エイル、手伝って! 秒速でコイツをぶっ殺す!」

「でも、向こうにも…!」

「だからよ! 行くよ!!」

 

へし折れた刀を投げ捨て、呼吸を整える。エイルのサポート術も取り入れ、唯一手元に残された武器と言っても過言ではない拳に、全力を賭けて。

 

『ゴォォォォォアァッ!!』

 

手負いのメイヘムが大きく口を開き、喉奥から猛毒を含んだブレスを放ってきた。

避ける暇すらも惜しい。しかも背後にはエイルが控えている。ならば紫苑がとる行動はひとつだ。

 

「─────失せろッ!!」

 

 

格闘術の極意・凶転ず也─────メイヘムのブレスに真っ向から拳を打ち出し、これを打ち消す。

猛毒のブレスは背後のエイルにまでは届くことはなく、紫苑の反撃によって霧散した。

 

「…………ぐっ…!」

 

だが、無傷とまではいかなかった。ブレスに含まれた猛毒を正面から受けてしまったことで、紫苑の身体がそれに蝕まれ始めた。

濃紺のブレザーは毒を受けて袖口が破れ、その下の皮膚を軽く焼く。

胃の奥底から不快感が込み上げる。常人がこれを受けていれば、その時点で行動不能となっていただろう。

だが、紫苑は自他共に認める規格外(バケモノ)だ。それに、猛毒などで倒れてやるほどの余裕などない。

 

「おぉぉぉぉらあァァァァァァァァッ!!」

 

そのままメイヘムの腹の下───最も外皮の薄い部分へと潜り込み、硬質化している中で一番柔らかい部位を適確に判断し、滅多打ちにする。

まるで重機でコンクリートを掘削しているかのような音がそこから鳴り渡り、力を集約した拳は割れ、血飛沫が散り出している。

それでも攻撃の手が緩むことはない。毒にまみれようと、拳が砕けようと。

 

『グ!? アオォォォッ!!』

 

メイヘムが悶え始めた。紫苑が執拗に殴りつけている部位に、ほんの僅かに亀裂が生じたのだ。

だが、紫苑にとってはその"ほんの僅か"な亀裂で十分。かすかに空いた傷から、一気に衝撃を押し通す。

 

「これで!! トドメぇぇぇぇっ!!!」

 

全力を賭した最後の一撃・怒りの重爆。それを受けたメイヘムの腹はついに砕け、硬質化が一気に解かれた。

突き当てられた衝撃はメイヘムの臓器を破壊し、毒を含んだ大量の血がそこから滝のように溢れ出る。

紫苑は太腿のアダプターから2挺銃を抜き、メイヘムの腹の傷から内臓めがけて至近距離で連射し始めた。

ドガガガガガッ!! と、拳銃にあるまじき爆撃音と共に、メイヘムがさらに苦しみ叫ぶ。

 

『ギャアァォォォッ!! グアァァァァァァァ!!』

 

内臓に直接弾丸を連射されたメイヘムは、激痛に悶え、背筋を仰け反らせて腹部を露わにした。

なおもどす黒い血が噴きこぼれる傷口に、紫苑は飛び上がって追い、ダメ押しの銃撃を叩き込む。だが、今手にしているのは銃1挺のみ。

硬質化した腹を叩き割った拳は骨がひび割れ、連射の反動でさらに悪化し、片手で持てなくなっていたのだ。

 

「ぐぅ………っ、あと、1発…!!」

 

両手でしっかりホールドしていても、50口径の反動を相殺し切れずに更なる激痛が紫苑を襲う。

そして、もう1つの銃は何処にあるのか。

ゴォン!! と、鉄の塊を落としたような銃声に乗せて、最後の1発がメイヘムの傷口へと飛んで行く。

その弾丸が着弾した瞬間、メイヘムの腹の中から猛烈な炸裂音が聴こえてきた。

 

『ガァァァァッ─────ゴォァァァ……ッ!!』

 

紫苑は片方の拳銃に弾丸を目一杯詰め込み、撃鉄を起こした状態で、メイヘムの腹の中に置いてきたのだ。

その拳銃の片割れを、外から銃撃を加えて破壊する。そうしてその銃はメイヘムの腹の中で暴発を起こし、詰め込まれた50口径の弾丸が飛散して内臓を破壊し尽くしたのだ。

ドズン!! という衝撃と共にメイヘムは鍛冶場へと倒れんだ。角の発光機関も完全に沈黙している。激闘の末に、メイヘムの討伐に成功したのだ。

だが、まだ終わりではない。鍛冶場の外にはもう1体のメイヘムがいる。しかし───

 

 

 

「…………はぁ、っ……ユウマ………」

 

 

唯一戦える紫苑は既に満身創痍。刀もなく、拳はひび割れ、銃も1挺しか残されていない。

さらに、真正面からメイヘムの猛毒を浴び続けて、かすかに口元からも血が溢れていた。

立っていられる事自体が奇跡。とても戦いになる状態ではなかった。それでも紫苑は、ふらつきながらも鍛冶場の外へと駆けつけようとする。

エイルはその姿を見て戦慄すらしたが、すぐに紫苑を止めに入った。

 

「無茶よ! あなた、これ以上は死ぬわよ!?」

「………へいき、あたし……死なない、から…ううん…死ねな、い…ごほっ…!」

「何を言ってるの!」

「…ごめん、ユウ、マくんのとこ……連れ、てって…くれる………?」

「……わかったわ。掴まって!」

 

こんな状態で何ができるのか、とエイルは頭を悩ませたが、実際にメイヘムを数分で撃破して見せたその腕前は、しっかりと記憶に焼き付いている。

エイルは紫苑に肩を貸してやり、歩幅を合わせながらやや早足で出口へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

5.

 

 

 

 

 

 

 

そして鍛冶場の外では、なおも頭痛に苦しむユウマと、ヨリトモ。その2人の眼前数メートル先には、凶悪な牙を開いたメイヘムの姿があった。

 

「…………っく、提…督……! 逃げ、て…ください……!」

「馬鹿者! お前1人置いてなど行かん!!」

「です…が……あ…ぐあぁぁっ……!」

 

滝のように冷や汗を流し呻くユウマの姿に力はなく、このままならばメイヘムに惨殺されてしまう事は目に見えていた。

せめて、部下の数名でも連れてきていれば。そう後悔したが、時既に遅かった。恐らく部下達は今も、集落でマモノやドラゴンと交戦しているだろう。

その時、ヨリトモの持つ通信機に何処からかの通信が飛び込んできた。

 

『─────もしもし、聞こえてますか!?』

「む…!? その声、どこかで……」

『オペレーターの那雲 澪です! 今そちらに応援が向かっています! それまでなんとか逃げてください!!』

「ミオ、だと……!? なぜお前が……むぅ、了解した!」

 

どうやらミオは、ノーデンスのシステムを使ってヨリトモの通信機に割り込みをかけてきたのだろうか、とヨリトモは考える。

 

(………まさか、ミオにナビゲートされる時が来るとはな……)

 

それよりも疑問点はいくらでも出てくるが、ひとまずは退避する他ないだろう。

 

『片方の帝竜は、紫苑が倒してくれました! ひとまず鍛冶場の中へ!!』

「うむ!」

 

なおも苦しむユウマを抱え、ヨリトモは鍛冶場の中へと引き返し始めた。

 

『ゴガアァァァ!!』

 

だが、メイヘムは獲物を逃すまいとして腹這いで突進を開始する。

メイヘムの動きは帝竜の中では愚鈍な方だが、それでも人が走るよりも速度では優っている。

巨大な口を開き、退避するヨリトモ達をその牙で蹂躙しようとするが──────

 

「…これまでか………む…!?」

 

直後、メイヘムの遥か後方から何かが射出されたような音が聞こえてきた。

そしてそれはメイヘムの背中部分で炸裂し、ドォン!! と、爆音を立てる。そう、まるでロケットランチャーでも放ったかのような音が。

 

「増援が来たのか…!? いや、だが…あれは…?」

 

粉塵の向こう側に微かに見えたシルエットは、ISDFの軍服でもルシェの装束でもなく…現代日本ではわりとありふれた、しかしこんな有事の場では絶対にお目にかかるはずのないような姿。

そこにいたのは、重火器を大量に抱えたメイド服の女だった。

 

「お待たせしました。状況確認─────作戦行動に移ります」

(あきら)さん! 無理しないでください!』

「この程度、問題ありません。お任せください!」

 

メイド服の女───晶はカラになったロケットランチャーを投げ捨て、擲弾筒付きのライフルへと持ち替え、メイヘムに向けて射撃を開始した。

紫苑の使っていたマグナムよりも威力には期待できそうだが、相手は圧倒的な巨体の持ち主。

 

『ゴアァァァァ!!』

 

メイヘムは目標をユウマ達から晶へと変え、反転して吼えながら再度突進し始めた。

 

『晶さん!?』

「大丈夫です、ミオさん。想定の範囲内です!」

 

しかし晶はパニックに陥ることなく、むしろ射撃の手を緩めない。メイヘムが開いたその大きな口の中めがけて、正確に狙いを定めて擲弾筒のトリガーに指をかけた。

 

「! ……大したものです、このライフル」

 

ドシュン! という重厚感のある射出音に乗せて、擲弾筒に装填された特殊弾頭が発射される。

現在晶が使用しているのは、ノーデンスの最新技術を駆使して秘密裏に製造された銃。

多少の反動は覚悟していたが、その銃は紫苑よりもやや小柄な晶が取り扱っても、反動はアブソーバーにしっかりと吸収され、殆ど感じなかった。

そして、メイヘムの口内でグレネード弾が炸裂する。

 

『ガァァァッ!?』

 

そのグレネード弾もまたノーデンス製の特製品である。

対竜を想定し、クラスター弾の原理を応用して製造された弾頭は、通常の弾頭よりも殺傷力が何倍にも引き上げられている。

メイヘムは鋭い牙の隙間から鮮血を吐き出し、やや弱々しい咆哮を上げた。

 

「………ぐ、うぅぅぅっ………!!」

 

その時、頭痛に苦しむユウマの表情がわずかに変化した。

苦痛に苛まれている表情の中に、ほんの僅かだが笑みが見えたのを、ヨリトモは見逃さなかった。

 

「ユウマ……!?」

「……ドラ、ゴン……はぁ……っ、コロ…す………!!」

「おいユウマ! どうしたというのだ!?」

 

のそり、と緩慢ながらもユウマは自身の脚で立ち上がる。

変わらず顔色は悪く、頭痛も酷いのか片手で頭を抱えているが、やはりその表情には違和感がある。

そう、例えるならばその笑みは、殺戮を求めている者のような──────

 

その時、ヨリトモの背後からザリ、とややすり足気味で土を踏む音が聞こえた。

 

「………ユウ、マ………」

 

その声は紫苑のものだった。しかし紫苑は負傷し、エイルに肩を担がれてようやく鍛冶場の外まで出てきた、といった様子だ。

毒を浴びてしまったのか、ほんの僅かに吐血し、髪の色ももう半分近くが白くなってしまっている。

 

「……紫苑、お前……!?」

 

が、心配そうに声をかけるヨリトモを気にかけるでもなく、紫苑の瞳はまっすぐにユウマを見据えていた。

そして、

 

 

「──────ユウマぁぁァァァァっ!!!」

 

 

ビリビリと空気が振動する程の大声で、その名を呼んだ。

 

「この……バカ!自分を見失うんじゃないわよ!! その程度の衝動! 飲み込んじまいなさい!!」

 

その叫び声に、ユウマがぴくり、と反応を見せた。

苦悶に満ちた瞳には、何かに抗う意志のようなものが浮かぶ。

ユウマを苦しめているのは破壊衝動だ。その衝動に喰われてなるものか、という反逆の意志を強く持ち、

 

「………し、おん……ぐぅっ……あぁぁぁ!!」

 

力を込めて荒々しい叫び声を上げ、その瞳に力強い光を再度灯した。

 

「ハァ……ハァ………提督、すみません……」

「ユウマ! 大丈夫なのか!?」

「ええ…もう問題ありません。では─────行きます!!」

 

そうして、秘められた力を自身の元に完全に取り戻したユウマは、力を解放し、瞬間的にメイヘムの懐へと跳んだ。

明確な敵意を感知したメイヘムの発光機関は激しく明滅を始め、外皮が端から一気に硬化しだす。

 

「させる……ものかぁ!!」

 

だがそれよりも僅かに速く、ユウマの拳がメイヘムの胸元───心臓付近にズドン!! と音を立てて叩き込まれる。

 

『ギャアヴ………ッ!!』

 

拳から伝達した衝撃は確実にメイヘムの心臓を破壊し、その息の根を止める。

その巨体は硬化が解けて弛緩し、それ以上の咆哮すら上げずにゆっくりと沈み、地面を揺らした。

 

「…………ふぅ……終わった……」

 

が、ユウマの表情には余裕はない。

突如として襲ってきた頭痛と、それによる行動不能という"失態"。

辛くもメイヘムを撃破する事ができたから良いものの、もしあの時紫苑が声をかけてくれなければ───今頃、どうなっていたのだろうか。そう考えると、とても素直に勝利を喜べやしない。

 

『ヤレヤレ……どうやらなんとか助かったみてえだな』

 

と、ナガミミのぼやく声が全員の通信機から聞こえてきた。相手がISDFの提督だろうと、そのどこか投げやりな言葉遣いは変わらない。

 

『居住区の方もドラゴン共を無事追い払ったみてえだ。ウチで医療班を待機させてるから、さっさと戻ってこい』

「増援、感謝する。だがこれは…何がどうなっているんだ? あのメイド服の女は、一体………」

『まぁ、なんつうか……コムスメが連れ帰ってきた"S級"の変人だ』

「S級…!? まさか、紫苑と同じ?」

『アイツはS級どころじゃねえ、バケモンだろ。そこのメイドは銃火器のスペシャリストだそうだが、そこまでぶっ飛んじゃいねえよ……多分。…で、だ。その様子だと、一番怪我がひでえのは紫苑みたいだな』

「そのようだ、担がれてぐったりしている。おそらく毒のせいだろう」

『メイヘムの毒か……ヤレヤレ、ワクチンも追加だな』

 

もっとも、紫苑の場合はワクチンを使うまでもなく治してしまうかもしれないが。

口には出さずとも、その場に居合わせた者たちはそう思っていた。

ただ2人、心優しい少女と、まだ紫苑の事をよく知らぬメイド服の女以外は。

 

『紫苑っ!! 聴こえてる!?』

 

紫苑の持つノーデンスウォッチから、不安げな声が響いてきた。

紫苑は血まみれの腕を上げ、口元にノーデンスウォッチを近づけて答える。

 

「……ミオ、ちゃん…?」

『紫苑! 大丈夫!?』

「…あはは、ちょっと無茶しちゃったかな? でも大丈夫…ミオちゃんのかわいい声聴いたら、元気出てきたよ」

 

実際問題、メイヘムが2体同時に出現するなどというハプニングさえなければ、紫苑がここまで負傷することはなかっただろう。

緻密な作戦を立て、攻撃を躱し、仕留める。

彼女の負傷は、守りを棄てて挑み、結果を急いだことによるものだ。

ならば、その責は誰にあったろうか。そもそも帝竜と戦うという行為自体、それ相応のリスクがある。誰も責められようがないのだ。

…だというのに、ユウマはとても申し訳なさそうに、不甲斐なさを悔いるような顔をして、エイルに担がれている紫苑の元へ歩み寄った。

 

「……俺のせいで。申し訳ありません、紫苑」

「いいのよ、気にしない気にしない。それより、あんたの方こそ大事なくてホッとしたわ」

 

いつの間にか、メイヘムの毒による身体の不調が少しずつ改善されてきているようだった。先程までと比べると、紫苑の顔色も良くなってきている。

 

「……俺が、もっとちゃんとしていれば。もっと強ければ、こんな事には。俺はその為に……!」

「…そういう問題じゃないよ、ユウマ」

「え……?」

「強い力には責任が伴う。今のあんたに必要なのは、強さじゃない。覚悟だよ、力を持つという事に対しての。…あたしは、今までそうやって生きてきたから」

「覚悟……ですか」

「それがなければ、力に喰われるだけだよ。覚えといて、あたしら(・・・・)が持ってる力はそういうモノなんだ」

「…………ええ」

 

喰われる。まさにその表現は、先刻のユウマの状態にしっくりとくるものだった。

あの時、頭痛と共に心の奥底から湧き上がってきた感情────"目の前の敵を、殺す"という純粋欲求だ。

もしあのまま、その感情に身を任せていればどうなっていたのか。帝竜を殺し、ただそれだけで終わっただろうか。

ユウマと同じような力を秘める彼女は、今までどうやって自分を律し続けてきたのだろうか。紫苑と共に戦いを続ければ、その答えが見えてくるのだろうか、と。

 

 

 

(………責任、ですか)

 

 

 

真龍の領域─────ヒトの垣根を超えた領域(セカイ)に足を踏み入れた2人の運命は、複雑に絡み合い、交錯してゆく。

 

 

 

 

 


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