ナザリック大墳墓 ぼっちの自室
むふふ~。
ニヤケ面を晒したぼっちは上着をハンガーにかける。
やっと…やっとナザリックに帰って来れたぞー!!
心の中で思いっきり叫び声を上げるぼっちは上機嫌だった。人手も何とかなったし、物資に関しては第11階層で質の悪い物を生産して間に合わせた。…質が悪いと言うのはナザリック基準であってこの世界では上物に入るのではないだろうか?…復興の指示はほとんど終わり、あとはニグンがやってくれているだろう。何にしてもやっと出来た休みである。マインにも休みを出して今はカルネ村に帰っていると言う。
帽子を忘れていた事に気づき、仮面と一緒にフックにかけた。
やはり家と言うのは良いものだ。しかもこう安心できる家は特に。
『まだ僕には帰れるところがあるんだ。こんな嬉しいことはない』
まさにその通りだよね。帰ってきたら満面の笑顔で皆が出迎えてくれた。それだけでも本当に嬉しかった。ただシャルティアは腕の件で謝りに来た。罰が欲しいとの事でとりあえずマッサージを頼むことにした。最近仕事ばっかりだったから身体中が痛くって。疲労回復用のアイテム?ここに置いて行ってしまったんですよ…。本当ならこっちから何かするべきなんだけどな。
純白のカッターシャツのボタンを外しているとノック音が聞こえた。
「・・・どうぞ」
「失礼いたしんすううう!?」
スカートを摘み、会釈をして顔を上げたシャルティアは顔を真っ赤に染め上げた。首を傾げるぼっちであったがどう考えても理由はぼっちであった。
シャルティアはぼっちの事を好いている。これは間違いない。そのぼっちに呼び出されただけでも嬉しいく興奮しているのだ。部屋の扉を開けるとすらっと細身であるが鍛えこまれた上半身を晒す好いている相手がいるのだ。赤面もするだろう。
「・・・どうした?」
「ななななな、何でもありんせん///」
本気で理解してないぼっちはカッターシャツを畳んでベットの脇に置いた。
顔を真っ赤にするシャルティアはまともに顔を見ることが出来ず膠着する。
「背中からお願い・・・」
「ひゃい///」
噛みながらも勤めを果たすべく覚悟する。ゆっくりと歩みベット脇へと立った。ベットにはうつ伏せの状態で寝転がる半裸のぼっちが…
ゴクリ。
自分の喉が無意識に鳴った事で我に返り、申し付けられたマッサージを開始する事にする。前にお風呂場で触れたことのある背に触れる。以前触れたときより硬く感じる。それだけ人間共に扱き使われた言うことだろう。おのれ…
近くに居るだけで人を殺せるような殺気を放っていることに気付かずに背の感覚だけに集中する。
「凝っていらっしゃるでありんすね…お辛くありんせんか?」
「・・・ん。辛い。けど楽しい」
「楽しいでありんすか…」
「もちろんここの方が・・・楽しい」
「!!そ、そうでありんすか」
女の子の細く、柔らかい指先がピンポイントに圧をかけてくる。時折ゆっくりと擦ってくる。
はうあ~♪こういうのって凄く気持ち良いよね。湿布を貼ってても治るもんだけど誰かにして貰えるってのが特に良いよね。
…確かにマッサージはしている。指先で押す事はもちろん擦ることだってマッサージのひとつである。しかしこの場合の擦るはマッサージとしてではなく、指先ではなくもっと広い部分で感じたいと誘惑に負けた結果であった。
そんな事は露ほど知らないぼっちは蕩けた様な表情をする。ちなみに顔は王国で使用していた顔ではなく自分が好きな作品の少年時代の執事の顔である。知らない人は『ヘルシング』『ウォルター』『ショタ』で検索して欲しい。たぶんすぐに出ると思う。
背の感触を楽しんでいたのだが右側を押すシャルティアの手が弱々しい事に気がついた。理由にもすぐ思い当たった。ベットは壁よりでシャルティアはぼっちの左側にいる。必然的に右側は遠い位置になりやり辛い体制になってしまうのだ。
「・・・乗って」
「何にでありんすか?」
「・・・上に」
「…まさかとは思いんすけどぼっち様の上でありんすか?」
「・・・(コクン)」
「いいんでありんすか!?」
「・・・(コクン)」
「本当にでありんすか!?」
「・・・(コクン)」
「本当に!本当にでありんすか!!」
「・・・(コクン)」
真っ赤にして確認を取るシャルティアに対して頭を縦に振るう。
緊張気味にベットに上がり途惑ったように膠着するがいつまでも待たせる訳にもいかず腰にゆっくりと腰を下ろす。
よくさぁ『重いなんて言ったら許さないから』なんて言葉あるじゃない。一瞬でも『言わないように気をつけなきゃ!』と思った自分が居たけど実際そんな余裕が無い!ただ乗られているだけなのに気持ち良く感じるのはぼっちがおかしいの?腰から凄く柔らかい感触が…ハッ!?駄目だ。シャルティアは真剣にしてくれているのに何を考えているんだ。
「んしょ…んしょ…」
腰に乗ったことで両側に力が加えれるようになり満遍なく一定のリズムで筋肉を解されていく。
「ぼ、ぼっち様。重かったら言っておくんなまし」
「・・・大丈夫。むしろ丁度良い」
「丁度良いでありんすか。良かったでありんす♪」
嬉しそうにやってくれるシャルティアに微笑みながら楽しんだ。背が終わり肩に手が伸びた。グニ、グニと揉まれる。
「肩も結構凝っているでありんす」
「・・・そうか」
以外に書類仕事多くてね。次はアレ。今度はコレって勢いでいろいろやらなきゃいけなかったし…ああ!!クライム君の養子の手続き忘れてた!!…まぁ王国に行った時で良いか。領地に向かう前に行かなきゃならないしね。
考えていたら肩のマッサージは終わっていた。だいぶん楽になった。
「では次は足のマッサージをするでありんす」
「分かった・・・」
「きゃああ!?」
この時自分の馬鹿さ加減には呆れてしまった。足を揉むなら座った体勢の方がいいだろうと思って腰を浮かしたのだ。シャルティアが乗っているのにも関わらずだ。急に持ち上げられたことで前のめりに倒れたシャルティアはぼっちに抱き付く体勢となってしまった。
顔は見えないが膠着して動かないのが分かる。怒らしてしまっただろうか?
「大丈夫ですかぼっち様!?」
「ぼ、ぼっち様。先程の声はいったい?」
シャルティアの声が聞こえたのだろう。近くに居たらしいアウラとマーレが急いで扉を開けて確認しに来た。
その瞳に映るのはぼっちに抱き付くシャルティア。二人のハイライトが消えた…
「お姉ちゃん」
「何かなマーレ?」
「シャルティアさんがぼっち様に抱きついてるように見えるんだけど見間違いかな?」
「見間違いじゃないよ。だってあたしも見えるもん」
「そうか。そうなんだ」
「ふ、二人とも落ち着くでありんすよ」
不味い気配と言うか状況に気付いたシャルティアは慌てて治めようとするが聞く耳を持たない二人はゆっくりと近づく。
「どうした?・・・アウラ、マーレ」
「はわわ///」
「ふぁああ///」
ただならぬ雰囲気をスキル無しで感じたぼっちは不思議そうに首を傾げながら起き上がる。アウラとマーレの視線は釘付けとなった。
「私はぼっち様にマッサージを頼まれていていただけでありんすよ。二人が想像するようなことは決して…」
「マッサージ!?ぼっち様に!!」
「ぼ、僕もしたいです!!」
「駄目でありんす!!これは私がぼっち様に直接言い渡されたお仕事でありんすから」
凄い力説してるけどそんなに力説することなん?
その後、シャルティアにマッサージされるのを二人は眺めることで収まったと言う。
・・・・・・解せぬ。